メールマガジン

HICPMメールマガジン第533号(平成25年11月18日)

掲載日2013 年 11 月 16 日

HICPMメールマガジン第533号(平成25年11月18日)
皆さんこんにちは

わが国の住宅政策は、国民のために住居費負担を引き下げ、国民の所有する住宅の資産価値を向上させる住宅政策ではなく、ハウスメーカー主体で住宅産業が売り上げを拡大し、利益を拡大する政策のです。営業広告宣伝費をかけ、それを販売価格で回収する粗利が拡大硬直する方策で、国民に低い価値の住宅を高額販売することになります。日本では、1戸当たりの利益を拡大する方法には、「単純に粗利の比率を高めるか」、「直接工事費を圧縮するか」の方法しかないと考え、粗利拡大に向かっています。しかし、欧米では営業広告宣伝費を削減し、粗利率20%を変えないで「生産性を高め1戸当たりの粗利を短期間に手に入れ」、期間当たりの「建設業者の粗利」と「労働者の賃金」を高める政策を、住宅産業政策として実践しています。実は昔の日本では、現在の欧米のような工務店経営をしていました。「段取り8分に仕事2分」という「工事生産性」を高める方法で、製造業では一般的な方法です。

大手住宅会社のための日本の住宅政策「詐欺商売」支援策
世界中を調べても、国民が衣食住の中で家計支出を切り詰めて、最も大きな費用を掛けて購入した住宅の資産価値が下落し、自己破産や住宅ローン自殺に追い込まれている国は日本だけです。住宅をもつことで国民が資産を失うようになったのは、戦後の、高度経済成長以降の半世紀の日本においてだけです。ハウスメーカーを中心に住宅産業は住宅を販売するために、住宅性能表示や瑕疵担保履行を使った広告、宣伝、営業に巨額な費用を投入し、大量宣伝・大量販売で、巨額の粗利を手にしています。住宅の資産価値と同額以上の巨額な広告宣伝費を住宅販売価格で回収することを政府が容認し、金融機関が住宅の資産価値を逸脱した販売価格通り融資してきました。広告宣伝費は住宅の価値の増加に寄与しません。

住宅の価値は住宅市場の需給関係を反映した取引価格で決まります。しかし、価値形成の基本となるものは住宅生産に投入した直接工事費(土地代、材料費、労務費)と建設会社の平均利潤で決まります。住宅金融は住宅の価値を担保に行われ、欧米のモーゲージでは住宅金融は、住宅の価値を前提に、直接工事費に対してしか行われません。金融機関は差し押さえた住宅を競売した場合でも、直接工事費以上の価格以上で売却することが前提で、住宅建設業者の粗利分は金融機関の手にする利益と考えています。

日本の住宅政策では、資本主義の市場原理を歪めた「住宅の価値」とは違った「販売価格」を設定する不当な住宅産業経営を、政府が支援してきました。その政策が長期優良住宅政策で、住宅性能表示制度と瑕疵担保履行制度で、住宅メーカーと共謀して、「安心を与える付加価値を付けたから、高い価格で販売してよい」と「差別化」と「手離れのよい住宅販売」を進めてきました。政府が「付加価値」と言っているものが、政府が用意した性能表示や瑕疵保証を口実に巨額の広告宣伝費用として企業粗利に採りいれた「付加価値」で、その実体は購入者には購入時点で「泡」と消えてしまう経済価値のないものです。そのため、住宅購入者が住宅を販売しようとしたときには販売価格に入れられないものです。

つまり、住宅性能表示制度は、それにより実質性能が上昇するわけではなく、計画された住宅性能を表示しただけで、実質性能の保証でもなければ、検証の方法すらありません。計画性能を表示する手数料や審査料の経費が加算され、住宅価格を引き上げます。政府は性能表示制度や瑕疵担保履行に要した費用を含め、住宅供給業者が住宅に掛けた経費のすべて(5-10%)を販売価格に粗利とし転嫁することを容認してきました。粗利を大きくした分だけ住宅の価値が上昇したということはありません。通常の住宅建設業者の平均粗利は20%で、それ以上は過大な粗利でその分を住宅販売価格に転嫁することは、実際の価値以上の価格で販売することになるので、詐欺商売となると欧米では考えられています。

それは住宅の品質確保促進法に基づく住宅性能表示制度と住宅瑕疵担保履行法を根拠に実施している政策です。前者は住宅性能の格付けを行い、「高い性能格付けを受けた住宅は高い価値をもった住宅である」と購入者を騙し、ハウスメーカーによる高額の住宅価格設定を容認するものです。後者は、瑕疵保証保険に入ったことで住宅業者は、保険制度に責任を転嫁し売り抜けられると言う制度です。両制度による詐欺商売を国が率先して実施し、販売価格の半額の価値しかない住宅を価値の倍額で販売し、金融機関は住宅を担保に販売価格通りの住宅ローンを認め、金融機関も住宅販売価格を適正であるとして「みなし融資」をしてきました。この融資は、「詐欺商売の幇助金融」と言われても仕方がありません。

金融機関は住宅を担保にしただけではなく、住宅融資の対象ではない住宅の敷地まで担保に抑えながら、それでローン債務を相殺しません。金融機関は住宅ローンを実施しながら、融資対象の住宅の価値を全く評価していないのです。住宅金融機関は、「金融機関には不動産鑑定評価する能力は持っていない。」と恥ずかしげもなく口にします。大手ハウスメーカーの住宅にはその言いなりの融資をしてきました。金融機関の預金者に対して、「価値の分からない住宅に金融機関はどうして融資できる」のでしょう。

欧米の金融機関はモーゲージですから金融機関は住宅ローンの前提に、住宅不動産鑑定評価を専門家に実施させ、それをもとに金融機関が担保を差し押さえ、それを売却して貸金を回収できる額を限度に融資をします。モーゲージローンを実施している国と比較すれば、日本のハウスメーカーの言いなりのローンを実行している住宅金融は、極めて不健全な金融であり、それを容認している金融省の住宅金融制度や国土交通省の住宅政策も、同様に、詐欺商売を幇助している不健全な政策であると断言できます。

ハウスメーカーの場合、住宅性能表示や瑕疵担保履行法関連の費用に加え、それらを広告宣伝営業に要する費用の合計は、住宅価格の半分を占めています。住宅価格の60%を占めるの粗利分は、ハウスメーカーが住宅を販売するために使われる費用で、販売された住宅の価値がその費用分上昇したわけではありません。住宅を購入した人が中古住宅市場で販売しようとしたときの住宅価格が、新築住宅の実際の価値です。住宅の再販価格に転嫁することが不可能な新築住宅の過大な広告宣伝費は、住宅価格の中の粗利率を硬直的に高めるだけではなく、それらの住宅を中古市場で売却するとき、中古住宅に転嫁できまず、新築購入者が損をすることになります。つまり新築住宅購入者は詐欺にあったことになります。

平成2006年から政府が住生活基本法で進めてきた政策は、性能表示や瑕疵担保制度のように、一見消費者の利益を守る消費者保護政策のようですが、その実態は、価値の低い住宅を性能表示で価値があるように騙し、また、実際には民法上の瑕疵の定義に該当する帆法律解釈で明記されている瑕疵の一部のしかを保証しないのに、民法で規定する瑕疵のすべてを保証するかのような不当景品表示し、住宅を詐欺的手法で売り抜けさせる制度です。消費者が騙されたことに気付いたとき、住宅会社がその追及を断ち切り、容易に逃げ切らせる口実を与える制度なのです。それでも逃げ切れなかったときのために政府は、日本の非科学的な不動産鑑定評価制度を持ち出して、住宅は償却資産で、住宅の価値は残存価値であると騙し、木造は20年経てば住宅の価値自体がゼロで資産価値はないと説明してきました。

性能表示された住宅は標記されたとおりの実態性能を有しているわけではありませんし、表示された実体性能を確かめる方法もありません。表示性能は単なる計画性能であって、実態性能を保証しているわけではありません。消費者が購入した実体性能の有無を争おうとしても、その基準を計測方法も存在しないため、訴訟にすることもできません。もちろん、性能は住宅の経済的価値を表示するものではありませんから、住宅性能が高いことが住宅の価値が高いことを意味していません。法律の建前上、そこで表示された住宅性能は国民が健康で安全な生活を営むために必要な性能でなければなりません。

日本のように気候が地域によって大きく異なる国では、地域ごとに機密断熱の性能は違っていることは必要です。同様なことは地震列島に住んでいる日本国では、活断層の位置や地盤の種類によって違っていておかしくはありません。むしろ違っていることが当然です。しかし、住宅性能表示制度は同じ地域に対し複数の性能を設定して、それを選択できるようになっています。気密・断熱等級や構造安全等級は、地域ごとに1種類あればよいにもかかわらず、複数の等級を定めることができるようになっています。そうして等級の高い性能を持っている住宅は高額で販売できるという扱いをしてきました。

憲法25条の考え方に立てば、かつて、池田勇人首相が「貧乏人は麦を食え」といって顰蹙を買ったように、貧乏人は性能の低い住宅に住み、金持ちは安全性の高い家に住めと言っているのと同じです。仮に選択できる性能の最下等でも安全衛生が十分であるならば、それ以上は過剰品質で、資源の無駄遣いをしていることになります。欧米でも住宅性能を複数用意していますが、それらは地域地区の違いに適用するためで、社会的に設けるべき必要な基準は、同じ地域地区には1種類の性能しか設けません。

性能が違っても、大手ハウスメーカーは大量生産をするため、どのような性能の住宅を造っても、製造価格に大きな差異はありません。販売価格を高くする理由にできることから大手ハウスメーカーは高性能を標準仕様に入れて高額販売を進めてきました。性能が価格を左右するという間違った説明を政府と御用学者がしてきました。しかし、製造原価(コスト)を左右するものは材料と労務の数量と単価です。その選択により、同じ性能のものを安くつくることも高くつくることもできます。それであるにもかかわらず、性能表示制度を進めた国と御用学者は、性能表示という価値表示ができて、住宅の価値が向上したといって、大量生産が可能な大手ハウスメーカーの高性能住宅の高額販売を正当化してきました。

住宅の価値の2倍の住宅価格を正当化する政府の住宅政策
政府が進める住宅政策で最大の政策支援対象とされているハウスメーカーの住宅価格のうち直接工事費の占める割合は、販売価格の40%です。米国でモーゲージを受けるとしたら,住宅の価値は平均利潤として20%の粗利を認めた価格、つまり、現在のハウスメーカーの販売価格の半額の価値と評価されます。その住宅には、販売価格の40%の融資しか受けられません。米国の金融機関は、日本のハウスメーカーのモーゲージを差し押さえたとき、その住宅はよくて販売価格の半額でしか、既存住宅市場で販売できないと判断します。ハウスメーカー及び政府の弁明は、「ハウスメーカーは住宅販売に掛けた費用を住宅価格として回収しているのですから、不当利益を得ているわけではない。」と言います。

ハウスメーカーが広告宣伝、営業のために政府の用意した詐欺の小道具というべき性能表示や瑕疵担保に要した審査、評価、手続きに要した費用は、いずれも住宅自体の品質を向上させるものではなく、住宅購入者を騙すための資料作成に使われた費用です。住宅の不動産価格はその時点での推定再建築費としての見積価格です。さらに、性能等を満足していることを広告宣伝するための費用も、基本的に住宅会社が販売促進するための費用で、それにより購入する住宅の価値が向上するわけではありません。そもそも性能表示の対象としてつくるべき性能は、日本の文明水準で当然充足すべき基準で、殆どの住宅建設業者でできることばかりです。住宅の共通仕様書で定め、それを融資条件にしておけば、定められた性能の住宅を住宅建設業者はつくれるし、金融機関が真面目に融資をするならば審査でできることです。つまり、現在住宅性能表示制度で手数料を取って行っていることは、ほとんど蛇足に過ぎず、この制度で利益を受ける官僚と政治家の利益のためにつくられた制度になっています。

住宅を購入した人がその住宅を購入した価格で、その住宅を既存住宅市場で販売したくても、それは不可能です。その理由はハウスメーカーが性能表示等に掛けた費用や営業販売に掛けた費用は、住宅自体の品質向上に実質的に何一つ貢献していませんから、その費用を住宅価格に載せて販売することはできません。分かり易くいえば、ハウスメーカーは実際の住宅の価値の2倍の価格で、それだけの価値があるといって住宅を販売していますが、これらの性能表示や営業販売に掛けた費用を、単に回収するために価格構成に入れているだけで、住宅の価値自体を高めてはいません。

住宅産業界では販売価格と建設価格の差額を「付加価値」と呼びますが、それは住宅流通経費と利益であって生産により創造された価値ではありません。建設業は土地、建築材料、労働力で住宅を製造し、製造前後のものの価値の差を、住宅生産で生まれた「付加価値」と言います。実際に生産によって価値は想像されて言います。経済学でいう「付加価値」は、製造業において製品価格と製造原価の差額をいいます。材料は形を変え、労働力が価値を創造していることから「労働価値説」が生まれました。

製造された製品と製造に使われた原材料と労働力とは全く別の商品で、その価値は違っていますから、「製造業における付加価値は、労働により創造された価値」と説明されてきました。流通業で販売価格と仕入れ価格の差を「粗利」と言いますが、その実体は、流通経費と流通に携わった人の労賃です。流通の過程で取り扱った商品自体は変化しませんから、その間に価値が創造されることはありません。価値を量ろうとすれば、取引き価格で判断するしかありません。そのため、流通の過程で生まれる価格差が製造過程で生まれる価格差と同じように勘違いされ、同じ「付加価値」という名で呼ばれています。

しかし、製造業における製造では新たに商品が創造されるのとは違って、流通業では同じ商品が移動するだけです。商品自体の価値には変化がなく、流通が長くなれば商品の価格は高くなりますが、商品の価値は高まっていません。それで、消費者の購買力との対応ができないときには、「流通の中間省略」が行われます。価値が創造されない過程の省略ですから、商品の価値に影響を与えず取引価格が下げられます。日本では重層下請けによる住宅生産がやられています。その仕組みは流通と同じですから政府は建設業を流通サービス業と言います。欧米では原則一層下請けしか認めず、製造業と扱います。

日本の住宅建設業
建設業は製造業です。建設業法はGHQ(連合軍総司令)が日本を統治していた当時できた法律ですから、建設業は製造業として法律がつくられ、建設工事における請負契約ではその材料労務の原価と数量を明確にすることを第21条で明記しています。米国の見積の方法を規定したもので、米国の不動産鑑定評価の「原価方式」による不動産の価値の決定方法です。しかし、日本では公共事業に始まり、重層下請け方式で請負工事費は「材工一式」で見積もられ、流通サービス業として行われてきました。
実行予算と言って、下請けの都度、実際の工事と言う生産を行わない中間業者が請負工事費から、粗利分だけ痩せさせて行き、その都度、実行予算が組まれてきました。公共事業の場合は粗利の合計が発注工事費の70%を超すことも不思議でない状態になっています。この公共事業のやり方が建設業全体を汚染し、政府は建設業を建設サービス業と呼び、住宅産業も同様の扱いをするようにさせてきました。

そのため、直接工事費と粗利とが重層下請けの請負段階で「材工一式」単価に混ぜ込められ、実際に最末端で支払われている材料と労務単価と数量自体が元請業者にさえ分からなくなっています。その結果、建設業の経営はどんぶり勘定と言われ、結果主義になり、「掛った費用は販売価格として回収できれば、そのプロセスは問題にしない」とされてきました。会計検査院の建設工事費単価がまさに伏魔殿です。
それを象徴するものが、ハウスメーカーの経営であり、政府の住宅政策です。住宅建設の直接工事費が販売価格の40%であっても、利益を上げて完売できるようにすることが住宅経営であるとされ、住宅購入者予定者を集め、直接工事費の2.5倍の販売価格でも売り切る方法を政府と一丸になって進めてきました。それが日本の政府が完了OBの「骨拾い」と言う天下りをさせる住宅産業政策でした。

政府は住宅性能表示や住宅瑕疵保証など、住宅の価値を高めることに直接関係しない評価、審査、保険といった国民の不安を煽って政府が安全を約束するように説明して実施させてきた制度で、「1戸あたり100万円相当の住宅価格が上昇したこと」を認めて、政府の政策に従った住宅を「長期優良住宅」と名付けて、それを購入した人には100万円の国庫補助金を交付することを始めました。しかし、その政策はハウスメーカーにさらに100万円住宅価格を引き上げさせることになっています。これらの住宅性能表示や瑕疵保証等に関係する調査、試験、保険、格付け業務は、ハウスメーカーの詐欺商売の小道具であり、住宅官僚や住宅行政OBの天下り先の賃金の原資でしかありません。

日本の住宅政策は、戦後の国家再建のときの初心を忘れ、憲法で定めた国家と国民の契約を忘れ、官僚と政治家と住宅産業と住宅金融界が国民を犠牲にして自らの利益を拡大する官僚主導の護送船団方式の詐欺集団になったといって過言ではありません。官僚による建設業法違反による公共事業を始め、不正な既成事実の積み重ねによって、住宅政策自体が戦災復興と住宅難世帯の解消から取り組まれてきましたが。60年日米安全保障条約の改定で、日米対等の軍事同盟になり、住宅政策は初めは産業振興のため、やがては住宅自体が産業活動を支援する経済政策の手段に組み込まれていきました。やがて、住宅そのものが景気を引き上げる経済政策の手段になっていきました。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



コメント投稿




powerd by デジコム