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HICPMメールマガジン第538号(2013年12月16日)

掲載日2013 年 12 月 16 日

HICPMメールマガジン第538号(平成25年12月16日)
皆さんこんにちは

小泉竹内閣のとき規制緩和により都市計画の破壊が進み、「都市計画とは何か」が問われています。
法定都市計画は100年後の都市の都市計画区域の住民の合意で決めたマスタープランです。そのため、その実現のために都市計画決定をした内容には公共性が認められています。今、アベノミックスで実施されようとしている小泉竹中内閣の規制緩和は、法定都市計画を破壊するものです。

マスタープランとアーキテクチュラルガイドライン
欧米では、都市計画された土地利用計画は、「モザイク画の下絵」のように、都市を全体としてどのような環境につくるかを、国家権力を背景に強制力を持った計画として定めます。都市計画は百年を超える恒久的な計画として世代を超えて遵守することで完成させる計画です。都市計画は一朝一夕に完成する計画ではありません。通常、2次元の都市計画図等として定められますが、それをより具体的に定めるため、3次元(立体)の空間計画として定め、模型を造って広く国民の合意が作られています。街区の3次元的な設計図と模型により何年も掛けて市民の都市環境形成の合意を採る行政が、ドイツの都市計画法(バオゲゼッツ)の中では、B(ベバオウングス)プランとして行われています。このマスタープラン(モザイク画)と表裏一体の関係をもって、個々の建築物(モザイクの石)が建てられ(埋め込まれ)ることで、マスタープラン通りの建築物が都市計画どおりに建てられます。そのため、各宅地と建築物との関係をアーキテクチュラル・ガイド・ライン(建築設計指針)で具体的に規定します。
世界の都市計画では、マスタープランとアーキテクチュラル・ガイド・ラインは、都市計画法の中で一体的に行政がなされています。しかし、日本だけは例外で、マスタープラン及び予定建築物の敷地の整備までを都市計画法で行い、建築物の規制は建築基準法第3章と第6章(第86条)で行います。
都市計画法と建築基準法の二つの法律の関係を「姉妹法の関係」と呼び、建築基準法の施行主体である特定行政庁は、都市計画決定されたとおりの都市空間を創りあげることが義務付けられています。
しかし、現実の都市計画は開発業者目先の利益に左右され、開発許可をしないでよいと言い、特定行政庁が建設事業者の目先の利益のために都市計画決定に違反した建築計画を例外許可し、違法な規制緩和をし、業者が不正利益を上げる法違反を幇助し、マスタープランに虫食い穴を拡大してきました。

開発業者に対する不正利益供与と政治献金の資金源:規制緩和
公共団体(行政庁)は、無節操に都市再生による規制緩和を支持し、マンション建て替え事業等で高層高密度開発により新規居住者を増やし住民税を増加させ、不動産を増設し固定資産税の増収を図ることを、あたかも国民の利益を増進するかのように言ってきました。建設業者にバブル崩壊により地価が下落し、塩漬けになっていた土地に特段の規制緩和による利益を供与するために小泉内閣が規制緩和を行いました。それは事実上の不良債権を帳簿上粉飾し、規制緩和で粉飾を解消し、それで得られた不正利益の一部を業者からの政治献金としてキックバックさせることが本当の狙いでした。その実態はバブル経済を進めてきた失政と、バブル崩壊後の経済立て直しの失敗を、帳簿上の会計処理をして不良債権を塩漬けにした不正を、既存の規制があたかも経済活動を妨害しているかのように政治宣伝を行い、規制緩和を正当化してきました。特定行政庁がマスタープラン(法定都市計画)を、規制緩和の大義名分の傘の影に隠れ開発許可を免除し、制限解除をし、建築物の容積率を緩和し、建築物高さを撤廃して開発業者に利益を与えてきました。中でも、国土交通省が準則として纏めた「総合設計制度(準則)」の改正は、法律上の根拠自体が疑わしい制度下で、特定行政庁が法定都市計画に違反した例外許可を与え、マスタープランを規制緩和を口実にし法定都市計画を破壊してきました。住友不動産による「ラ・トゥアー・ダイカンヤマ」の例に見る通り、法律違反のデパートのような開発が可能にされてきました。

規制緩和の犯罪性を問題にしない御用学者たちと判事たち
規制緩和が法定都市計画を破壊することは都市計画の理論に照らせば明らかです。それにもかかわらず、官僚養成機関である東京大学都市工学関係者からは規制緩和におもねる意見しか出されておらず、都市計画にとって重大な危機という意見は、大学・研究機関も含め、何処からも全く提起されていません。
2000年代の大都市のスカイラインを一挙に変えてしまった外資導入を受け入れた都市再生関連開発は、開発許可違反の事業として実施され、史上最大の利益を上げ、既存の都市景観と都市環境を破壊し、開発地周辺に多くの社会問題を発生させてきました。規制緩和による既存の法定都市計画が蹂躙されたことで、全国各地では、規制緩和による開発処分に対する行政事件が多数提起されました。
しかし、裁判所は原告の訴えに真面目に答えず、行政がなした違法な処分でも容認できるという馬鹿げた判決を繰り返してきました。住民が裁判費用を支払って処分の違法を提訴しているのですから、裁判官は原告の訴えに対し説明責任を果たす判決を書くべきです。しかし、裁判所はそれを避け、「行政庁の行った処分でよい」という行政迎合の判決しか書いてきませんでした。小泉内閣の規制緩和に起因する行政事件訴訟は、行政法体系を理解できない司法の下で、司法は業者の経済的利益の追求を行政が容認する行政追従の判決を繰り返し,法律違反の都市形成の片棒を担ってきました。

「都市再生」・「規制緩和」という現代の「贋金づくり」
1985年9月「プラザ合意」にはじまった日本のバブル経済が1989年に最高株価(日経平均株価38、915円)を記録してから、日銀の金融引き締めによりバブル経済は崩壊し、その後20年以上景気が低迷し「不毛の20年」と言われてきました。バブル崩壊で資金が不足した企業はハード・ランディングを余儀なくされましたが、資金的に余裕のある企業は帳簿上の高い地価を前提に、金融機関に借入金の金利だけを支払い形式上の担保金融を維持してきました。それらの企業では土地担保借入金の返済凍結と金利払いが企業経営を圧迫してきました。高地価を顕在化できない土地は市場に供給できず凍結を余儀なくされ、それが企業経営を悪化させ「不毛の20年」の原因をつくってきました。
利用できない土地を利用するため、バブル経済崩壊後の支払い能力の縮小した不動産購買力に見合った不動産価格で不動産販売を行い、不動産販売額の合計がバブル時代の高額な不動産価格にならないようにする政策が、小泉・竹中の経済政策・「規制緩和」でした。小泉内閣の解決方法は不動産販売価格を市場価格まで下げるが、土地の販売総額は高地価時の地価総額を維持する方法です。その方法は、高層高密度開発により販売不動産量を法定建築床面積の何倍にも拡大する方法しかありません。小泉竹中内閣が取り組んだ規制緩和がその不可能を可能にした「贋金づくり」の錬金術でした。

都市計画の目的とは都市環境整備の実践プログラム
都市計画は「100年の計」とも言われているように、将来永久に変えることのない人々にとって住みやすい美しい都市空間利用計画を作成し、マスタープランと呼ばれる法定都市計画とおりに都市基盤を整備するとともに、マスタープランを実現するアーキテクチュラルガイドライン(建築設計指針:建築基準法第3章規定)により建築物を建築し、維持管理する都市経営により都市を計画とおりに熟成させる制度です。人びとは都市計画が計画どおりつくられるから、都市計画決定は公共性が高い計画規制として、法定都市計画は公共性があり、強制的に遵守することが義務付けられています。
道路、公園、下水道等の都市施設、学校等教育施設、医療福祉施設、商業・娯楽・利便施設等のすべてが都市のマスタープランの中で調和するように計画され法定都市計画として都市計画決定され、都市施設の整備は強制事業として行われます。憲法第29条で私有財産権の保障が定められ、資本主義による自由主義経済の国では民法の規定のとおり、「土地の権利はその上下に及ぶ」と古代ローマの法律と同じ文言で保障されていますが、公共性実現の事業には従うべきことが定められています。

土地の私的所有と都市空間の社会的利用
私的に所有される土地の上下の空間では、太陽光、風、水(雨)、光、音、自然の鳥、虫、含む動植物のすべて森羅万象が敷地境界線に縛られることなく自由に移動し、都市空間はまさに社会的・公共的に土地に縛られていません。土地の私的所有にもかかわらず土地の利用は社会的であるため、その矛盾を調整するために、都市では都市計画区域に関し土地所有者の排他独占的な土地利用内容を都市計画として決めることが、近代都市計画として実施されてきました。土地利用規制には形態規制もあれば、建ぺい率や容積率のような空間利用比率や建築物用途のような利用内容も含まれます。法定都市計画は、都市計画法で定められた法手続きに従って市民の合意により決められるものですから、一旦決められた法定都市計画は、都市住民の合意なしに勝手に変更することは許されません。それは、金本位制による通貨は金の含有量を厳密に決めないといけないことに例えることができます。決められた金の含有量が支配者の手で勝手に変えられると経済活動が変調をきたします。法定都市計画とは、「都市施設とバランスした土地利用計画(金の含有量)を都市計画区域住民の総意で決めること」です。

小泉・竹中内閣による「規制緩和」の本質
都市計画の場合も同じです。第1種低層住居専用地域には人口密度が低いので、発生交通量が少ないから幅員4メートル以下の道路でよくても、そこに高層建築物が建てられると道路に渋滞が発生するだけではなく緊急車両の通行ができなくなります。小泉・竹中内閣が実施した規制緩和は、都市施設や学校教育施設、医療厚生施設に見合わない巨大なマンションの建設を規制緩和の下に実施したため、規制緩和を受けた建築物により、道路交通量が道路幅員を逸脱し交通渋滞を生み、下水道があふれ、学校や医療・福祉施設が不足し、年を追って新しく生活した人だけではなく、それまで住んでいた人たちの生活も大きなしわ寄せを受けます。そして、大震火災など都市災害が発生すると違法な規制緩和の矛盾が一挙に露見します。現在の規制緩和によって既に多くの社会問題が発生していますが、規制緩和を受けた建築物が建ったから、都市災害になるものではありません。それまで建築物の高さや容積制限を受けてきた法定都市計画を遵守してきた人びとの都市空間が、突然、規制緩和を受けた建築物の出現により、道路への採光通風を配慮して高さと容積が制限撤廃されることになり、狭い道路には大気汚染と自動車交通の渋滞が始まり、日陰が街を覆い、日射は失われ、眺望は遮られ、ヒューマンな都市空間が破壊されることになりました。それは部分的な被害ですが、関東大震災のような大震火災が襲ったときには、阪神大震災のように、規制緩和の矛盾は都市災害に対応出来ません。法定都市計画はそのような事態にあっても国民の生命財産を守る最低の基準として定められているものです。

「規制緩和」による都市破壊の本質
1968年に英国の都市農村計画法に倣って新規立法された都市計画法では、「都市施設整備が対応できない開発行為は行ってはならない。」と開発許可制度が設けられました。しかし、小泉・竹中内閣は開発許可制度を一挙に骨抜きにし、都市計画法と建築基準法とが「姉妹法の関係」によりマスタープランと建築規制を繋ぐ一対の関係を切り離し、それぞれの規制緩和を法律改正や行政運用で緩和させました。その総てが矛盾した状態で都市再生と呼ばれる小泉竹中内閣のもとで行われました。
先進工業国の都市計画では土地利用の詳細な計画を定め、土地所有者の排他独占的に利用できる空間利用を3次元的に制限しています。日本もドイツの例に倣い地区計画制度を導入しましたが、小泉内閣の「規制緩和」はその趣旨に逆行したものでした。都市計画区域の中の土地を最高高さの制限を取っ払って利用する横暴や、既存の法定都市計画で決められた法定容積率を用途地域と一体の規制として何倍にも高く定めることが当然のように行われました
当然、それまでの法定都市計画に従って建築し生活してきた人たちの既得権は侵害され、日照・日射、空気や風、眺望や景観、都市施設、医療福祉施設、教育文化施設等の利用に大きな支障を受けることになりました。つまり、土地利用に関し、当初決定された法定都市計画を信じてきた市民に規制緩和により、当初都市計画決定をした都市施設と対応した法定都市計画ではない「贋の土地利用計画」をお仕着せられたことになります。まさに、過去の都市計画環境を持たない「贋金づくり」でした。

高度成長化の住宅政策の残照
多摩ニュータウンに日本住宅公団が1970年代に建設した諏訪2丁目住宅団地は、法定都市計画は、建ぺい率50%、容積率100%、高さ制限20mで、都市計画法による「一団地の住宅施設」が定められていました。そこに建てられた分譲マンションは、建ぺい率10%、実容積率100%の鉄筋コンクリート造5階建、総戸数640戸(1戸当たり床面積45㎡)の大規模住宅団地でした。建設後団地内の樹木は大きく育ち、鬱蒼とした森・歴史を感じる環境を形成していました。
1970年当時、働き盛りの勤労者のために建設した住宅団地は子育て中の人たちが対象で、団地は子どもたちが一杯で賑わっていました。その子供たちが巣立った後には老親だけが残され、又は、成人した子供たちと同居するため引っ越し、空家は単身世帯や賃貸住宅に利用され、建設当時の勤労者階層の住宅地とは様変わりしていきました。多くの小中学校は廃校となり近隣商店街はシャッター街になりました。遊園地からは子供の姿が消え老人たちが静かに生活をしている住宅地になりました。
この住宅団地には入居当初から終の棲家として住宅を購入した人や、子どもたちが巣立った後、マンションのローンを支払い終え、月額7、000円程度の住宅団地管理費と年間2万円程度の固定資産税、都市計画税だけの住居費負担で足りる住宅費の安さで定住している人が多数住んでいました。この団地は交通の便もよく、店舗や文化施設が利用しやすい緑豊かな公園のような住宅地でしたので、特に所得の増大を見込めない年金生活者にとって、少ない家計費負担で誰にも依存せず、自立して住みなれた人たちと安心して住める「終の棲家」として、安心して生活をしていました。

諏訪2丁目住宅団地の建て替え事業
マンション建て替え事業者にとっては、「そこで建て替え事業をすることで儲かるか」が問題であって、「そこに住んでいる人たちがどのような生活をしているか」は問題になりません。また、多摩市にとっては、古い住宅で、そのマンションを売却すれば売却損が生まれることを恐れて売却せず、結果的に、子育て中の人に売却できず、周辺の学校は閉鎖となり、居住者が老齢化し、団地周辺に店舗はシャッター街になった所には働き盛りの人には魅力はなく、マンション購入者も失われ、衰退化していきます。マンションが物理的に老朽化する以前に、居住者の老齢化により、若い世帯に魅力のない住宅地になり、住宅市場では安い住宅でしか売れない住宅地になってきました。このように、住宅の取引価格が低下していく悪循環に入った住宅地は、マンション建て替え業者にとっては大変魅力的な住宅地です。交通の便が良く、新築したら高い価格で販売できるマンション地として映るため、マンション建て替え事業は既存のマンションを安く買いたたいて住民との軋轢を起こさなくても、安い現状資産相当のマンションを供給すれば、住民は、「等価交換」で建て替えに応じ、そこにこれまで利用していた土地利用の4倍近い容積のマンション床を供給できれば、まさに「濡れ手に粟」の事業ができるからです。
関係政治家(族議員)は業者からの政治献金を期待して建て替え事業を進める政策を推進しようとし、官僚は政治家の求めるお金と票を取りまとめるための事業として、マンション建て替え事業を政府立法として行い、それに優良建築物を整備することになるという口実で国庫補助金を交付する制度をつくりました。お金の面からみると、官僚にとっては建て替え事業を立ち上げることで、国民の税を事業者に配分することを通して、政治家に対し官僚が補助金を民間事業者に配分した一部を政治家にキックバックさせ、その見返りに官僚は政治家に官僚のポストの拡大と昇進を求め、合わせて官僚自体の天下り策を拡大することを求めました。

都市計画不在の政官癒着の不正金儲け事業

今回の諏訪2丁目マンション建て替え事業は、現国土交通省住宅井上俊之局長が国庫補助金等適正化法に違反して、法律に違反した不正文書(詐欺文書)を作成させ、それに基づいて国庫補助金を不正に交付したことから建て替え事業は始まりました。もし、この違法な国庫補助金の交付がなければ、この建て替え事業自治存在しませんでした。井上局長はマンション建て替え円滑化法の担当室長ではないにもかかわらず、優良建築物等整備事業補助金の担当室長の地位を悪用して、マンション建て替え円滑化法違反を教唆し、国庫補助金を不正に交付しました。この間の事実は次回に詳しく説明することにします。そこには法定都市計画を破壊することで、「不正利益を上げること」しか頭の中にない政治家、官僚、不正業者による護送船団を見ることができます。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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