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HICPMメールマガジン第539号(平成25年12月23日)

掲載日2013 年 12 月 24 日

メールマガジン第539号(平成25年12月23日)
皆さんこんにちは、

規制緩和とマンション建て替え円滑化法(おさらい)
バブル経済崩壊により、地価が下落し、土地担保金融は担保割れ金融になってしまいました。金融機関は金融機関自身の破綻を避けるため、多くに融資先から資金を回収を行い、倒産させるようなことを行ってきましたが、金融機関ともたれ合った融資先に対しては地価が下落したにもかかわらず、帳簿上地価が下落してなかったことにし、金利の利払いがあれば有担保金融と扱い、融資金の取り立てはしませんでした。しかし、それは利払いだけが継続する利用不可能な土地に対する金融で、それが日本経済全体を「不毛の20年」にしていました。「知恵者」と言われた竹中平蔵は、凍結された不良資産を優良債権化する方法を考えたのでした。それが「規制緩和による贋金づくり」だったのです。その方法が規制緩和であり、具体的な事業手法の一つが都市再生事業としてのマンション建て替え事業だったのです。

狙われた再開発利益
都市再生事業の対象として政府が取り上げた諏訪2丁目住宅団地は、相模原線〈京王線〉永山の駅から徒歩5分から15分以内の位置にある640戸の住宅団地です。1985年頃からマンション建て替え対象地として多くのマンション業者やデベロッパーが建て替えの話を持ち込んできました。住宅団地の居住者の一部も、建て替え事業によって再開発利益を上げようと期待する区分所有者は、建て替え事業を実施することで期待される再開発利益を求めてマンション建て替えを実施しようと組合員に働きかけ、何度も組合員の意識を高めるための「建て替え決議」を実施しました。しかし、この地を「終の棲家」として穏やかな生活を求める高齢世帯は、これまでのマンションでこれまでのコミュニティを大切にして生活することを望んだため、マンション建て替え事業は具体的事業に進むことはありませんでした。しかし、マンション建て替え事業は、マンション所有者(その多くは財産相続を受ける子供たちの意向に従うことになる人、または、現在この団地に居住せず自宅を賃貸住宅に出している人)及び建て替え事業者に大きな利益を生むため、建て替えにより経済的利益を得たいと願う人は、一部の反対を切り捨てても建て替えをできるようにしてほしいという要求は強く存在していました。

公共賃貸住宅事業者の求めるマンション建て替え強制事業
一方、全国的に公共住宅経営が収支アンバランスで事業主体の経営を悪化させ、財務省や総務省の財政上の視点から建て替え事業が強く求められていました。そのためにマンション建て替え事業を実施し、経営を改善させようと狙っていました。しかし、憲法第29条(私有財産権の保障)の関係で、私的利益のために他人を犠牲にすることはできないので、「マンション建て替えは、マンション所有者全員の合意が必要」という大きな障壁に突き当たっていました。つまり、公営、公団、公社という公的住宅経営主体は、家賃収入と住宅団地の維持管理経費が逆ザヤになっているため、マンションの建て替えを行って、再開発利益を手に入れたいと願っていました。その最大の推進者はマンションの維持管理費用を修繕積立金で賄いきれず、事業主の負担になっている経営管理をする財務省及び総務省でした。しかし、いずれも居住者の反対を押し切って建て替える法的根拠がないため、マンション建て替え事業は進めることはできませんでした。任意建て替え事業は行き詰まってきました。

「耐震診断」を使った「白を黒とする」建て替え事業
その後、十勝沖地震の鉄筋コンクリート短柱の座屈や、耐震技術(新耐震設計法)の発展と、既存鉄筋コンクリート造でアルカリ骨材、海砂、海砂利使用コンクリートの問題から、鉄筋コンクリート造の安全性に問題が指摘されることになりました。そして昭和58年には、マンション建て替えの「口実」として、構造耐力的に危険性が認められるマンションに対する緊急的対応として、修繕か、建て替えかの2者択一の選択に当たり、区分所有者の絶対過半数(5分の4以上)の賛成があった場合には、強制権をもって建て替え事業を実施できるように建物区分所有法の改正が行われました。
区分所有法のマンション建て替え条項の改正は、マンション自体が構造耐力的に危険で安全が脅かされている状態にはないマンションに対し、建て替えの口実を与えるように運用されました。実際の取り組み事例のほとんどがマンション建て替えにより高騰した地価を顕在化させ、経済的利益を手にしようとするものでした。昭和58年の区分所有法の改正後、建て替えの口実を得るために、マンションの劣化診断や耐震診断が多数実施されてきましたが、そこで、耐震診断により危険であるとされたマンションの中に、建築基準法第9条を根拠に、特定行政庁が危険性を理由にして強制的に除却又は改修を命じなければならない事態にあるものはありませんでした。政府は平成7年建築物の耐震改修促進に関する法律を制定し、事実上耐震改修義務付けを行う法律を進めてきましたが、明らかに、建築基準法第9条に違反して、事実上、耐震改修か立替を強制する行き過ぎの強制法になろうとしています。

経済的利益追求の隠れ蓑としての「耐震診断」と「マンション建て替え円滑化法」
マンションの劣化・耐震診断は建て替え事業推進を前提に、専ら、マンション所有者や建設業者の経済的利益追求を実現する環境条件づくりとして耐震・劣化診断等の結果が使われ、裁判で耐震劣化診断自体の適正が争われることになりました。耐震・劣化診断自体に明確な判断基準がなく、行政が進める耐震安全性の向上という枠組みの中で建て替えを支持するものでした。その建て替えに向けての診断に、その判断をする能力のない裁判官が迎合し、安全性を高める大義名分の下で、建て替え反対者の訴えは否定されました。耐震・劣化診断を口実に建築後30年程度のものにまで「構造安全性」を理由に建て替えを容認する国の異常なマンション建て替え政策が進み、危険でもないマンションを「危険」と判断して建て替えるマンション行政の異常さを司法が追認する裁判の異常さが限界に来ていました。
特に阪神大震災で構造的に危険なマンションや経済的に不良なマンションが生まれ、これらの不良な不動産を担保とした不良債権問題を解決するためにも、潜在地価を顕在化させるマンション建て替えを可能とする法律の整備が求められるようになりました。そこで取り上げられた法律がマンション建て替え円滑化法(以下「円滑化法」という)です。円滑化法はマンションの物理的な危険性やその危険性を排除する必要性に、緊急性があると判断されなくても、経済的利益を追求するマンション所有者の絶対過半数(5分の4)以上の区分所有者の賛成があれば、経済再建・社会的な利益のために大多数の区分所有者の合意により少数の反対を従わせてよい、という非常に単純明快な結論が、円滑化法を制定させました。

経済主義に立った「マンション建て替え円滑化法」を蹂躙した国土交通省
新規に立法された円滑化法では、マンションの老朽化、構造安全診断条件を一切外し、経済的利益追求のためにマンション建て替え事業が実施できることになりました。その代り円滑化法第4条に基本方針を定め、区分所有者の合意形成の手続きを「マンションの建て替えに向けた合意形成に関するマニュアル」を国土交通省が法律条文の解説として定めました。マニュアルでは、建て替え事業の取り組みの始まりから建て替え工事に着手するまでを14段階の手順として分解し、建て替え事業計画として設計段階に入る段階と、設計段階から工事段階に入る段階の2つの節目で、マニュアルで定める作業結果を基に絶対過半数の賛成という決議(「建て替え推進決議」及び「建て替え決議」)を定め、その決議を前提に都知事が建て替え組合に強制事業権を付与する制度としてつくられました。
もう一度問題を整理してみますと、一般論としては、憲法第29条で定められている私有財産権の保障を基本法として、私有財産権は憲法によって保護されています。その例外として昭和58年区分所有法の改正では、安全上危険であるとされたマンションに関しては、修繕か建て替えかの二者択一の選択をしなければならないが、その際、5分の4以上の賛成があれば経済的負担が大きくてもそれに見合う利益が約束される建て替え事業に全員を巻き込んで強制的に実施することができる道が開かれました。しかし、現実には安全上危険であるマンションはほとんど存在せず、実際上は口実として危険性を上げているだけで、実際上は建て替え利益の分配をすることで建て替え事業が行われてきたことを認めて、経済的利益の追求という本音で建て替え事業を実施する制度が生まれることになりました。

マンション建て替え事業に提供された規制緩和の利益
マンション建て替え事業による利益を最大にする方法は、これまでのマンション地に対して、既存の開発容積(法定容積率100%、実質容積率50%)を事実上、4倍以上(法定容積率も実質容積率も200%)に高めさせることにより、これまでの土地総額を4倍に高めることを可能にし、既存住民にはそれまで居住していた床面積のマンションを補償しても、その3倍以上の利益を得られるということにありました。そのためには、既存のマンション地の法定容積率や高さ制限と撤廃し、事実上開発容積率を
円滑化法の施行と並行して小泉・竹中内閣により、都市計画法及び建築基準法の「規制緩和」が行われ、それに対応する形で、この団地に定められている法定都市計画用途地域は第2種中高層住居専用地域(建蔽率60%、容積率200%)、建築物の高さ制限なしに緩和され、一団地住宅施設が取り消されました。敷地の上空空間は無限大に利用できるため、容積率を法定制限一杯使っても十分な隣棟間隔が維持でき、超高層住宅として優れた環境の住宅を提供できることになりました。過去に定めた法定容積率には正当性がなかったのかという議論は全く問われることなく、建て替え事業を可能にするために規制緩和をするというだけの法定都市計画の改正でしかありません。そのような法定都市計画に強制権を付与できる正当性があるのかという疑問には全く答えてはいません。

規制緩和による利益を政・官・業で分配するシステム
諏訪団地の場合、既存の住宅所有者にそれまでのマンションと同様な容積空間のマンションを提供するとすれば、4倍もの空間をつくることがでます。そのため、既存のマンションにとって必要とされた土地の3倍分が建て替え事業者の建て替え利益になりました。既存のマンション所有者の土地建物の市場評価は、マンションを取り壊した更地の評価額と同じとされ、それが一戸当たり、1、500万円とされました。区分所有者には従前の床面積と同じ面積のマンションを代償として与えたことから、既存の960億万円の資産が、建て替えにより、4倍とすれば全体で3、840億円の資産に増大したことになりました。このような巨額な利益がマンション建て替え業者の手に落ち、その利益の一部が官僚の天下り先の外郭団体と政治家の政治献金になっているのです。この事業で国庫補助金は23億円投入されました。巨額の利益を上げることのできた事業に国民の税金が投入されているのです。まさに利益補助の事業というほかありません。官僚と政治家は、税を自らの利権と勘違いし、民間の事業に補助金と支出し、それを政治献金や公益団体への会費、官僚機構と官僚の昇進という仕組みを使って自らの利益のためにキックバック(還流)させてきました。これらの巨額な利益は、広告宣伝費という被目で広告媒体を潤わせ、メディアに対し、不正な事業の口封じをしてきました。諏訪2丁目の事業の提灯記事は5大紙や赤旗まで掲載されましたが、この事業の区分所有者で、最後まで法律に違反した事業に賛成できないと主張し、平成23年8月12日の東京地方裁判所の執行吏の手により自宅マンションから叩き出され、真夏日の続く10日間に亘り野宿を余儀なくされた区分所有者のことは全く無視されました。朝日新聞および読売新聞の記者は広告部の好まぬ記事は扱えないと公言しています。

法定都市計画の改変
日本住宅公団が開発した鉄筋コンクリート造5階建て640戸の共同住宅諏訪2丁目は、一団地の住宅施設として都市施設として開発された所です。当時多摩ニュータウンは5階建て以上の高い建築物は立てないという計画で始められました。しかし、その後法定都市計画を数年ごとに改正して、容積や高さは緩和され、小泉竹中内閣のときは高さに関しては青天井の都市計画に代わってしまいました。多摩市に定められた法定都市計画を守って住宅を建築してきた人や、住宅を購入してきた人たちは、開発事業者の利益本位の圧力を受けた法定都市計画の変更により、どんどんその都市環境は悪くさせられ、今では無政府状態の多摩市になってきました。しかし、それを小泉・竹中内閣が経済活動の活性化ができたと自画自賛するのと同じように、都市工学の専門家たちは規制緩和による都市再生事業を、「経済活性化を実現できたと」礼賛しています。
しかし、世界の都市計画家たちは、日本で最大のニュータウンの汚さやその文化的な貧しさに驚いております。そこで多摩市民は不当な都市計画行政に異議を申し立て行政訴訟を行ってきましたが、司法は悉く住民の訴えを切り捨ててきました。その背景に日本の都市計画学が全く国民のためではなく、開発産業の目先の利益にしか目が向かないで、その開発を正当化する論陣を張りってきました。御用学者たちは行政の各種審査会に名を連ね、行政の処分を正当化することに協力し、その見返りに卒業生を採用してもらい、調査研究費を補助されるといった利益のおこぼれに与ってきました。それは、国の行政機関から都道府県の行政機関、市町村の行政機関のすべてにおいて、産学官の癒着構造ができていることに原因があります。行政が法律に従って立法を支えている学問を背景に正しく行われるのではなく、政治家と官僚の利益を正当化するような学問研究が行われている所にあります。法定都市計画を知事や市長が決定する前に、都市計画審議会の議を経ることに法律上なっていますが、その都市計画審議会の学識経験者で構成されているレベルがきわめて低い所に間違った法廷都市計画が横行する原因があります。

HICPMが提案したリモデリング計画
諏訪2丁目の問題では、都市計画及び建築基準法による規制緩和により、法定都市計画が事業者本位で改正されましたが、その改正の理由は建て替え事業者が経営上十分な利益を上げられるためだけであって、既存の法定都市計画で守ってきたものがどうなってしまうのかという議論は全くなされていませんでした。既存の法定都市計画は建て替え事業の邪魔になるという判断しか説明されていません。かつて定めた都市施設として定めた一団地の住宅施設は間違っていたのか、その考え方を尊重した改良の途はなかったのかという疑問には何も答えていません。現在の建て替え事業のアンチテーゼとして、HICPMでは5階建てマンションを壊さないで、その上階に2層の住宅を載せて、そのマンションの前後に空間を増築し住戸の延べ面積を2倍にする鞘堂をつくる形で、居住者の経済的負担ゼロの高気密高断熱で、かつ、優れたデザインのマンションに作り変えるリモデリング案を立案しました。この居住者の経済負担ゼロの提案は、開発業者に利益を与えないものと考えられて取り上げようともされませんでした。HICPMの提案は、基本的にこれまで生活してきた人たちの生活の連続性を考えて、これまで住み続けたマンションに住み続けながら、限られた経済負担の中で、床面積を倍増し、エネルギー使用を少なくして快適な居住ができ、かつ、一団地の住宅施設として優れたデザインの住宅を実現するものでした。すべて、この地区が開発されてからの歴史文化を破壊するのではなく継承し、時代の要請に合うようにマンションの機能と性能を現代の最も進んだ状態に改良するマンションに発展させる計画でした。

日本は法治国か
HICPMの提案は最初からマンション建て替えを実施すると裏で約束されていた旭化成ホームズ㈱が、諏訪2丁目団地のマンション建て替え事業推進派の間で組合員に説明する機会を与えるだけで取り上げないとし、あとは「円滑化法」に定めた手続きで建て替えに向けて一直線に進められることになりました。法律通りに事業が進められるならば、組合員がそれを選ぶならば、それは尊重されるべきです。しかし、円滑化法は、経済的利益を求める事業として強制事業として実施できる法律である代わりに、憲法29条の私有財産権の保障の関係で厳重は手続きを求めています。それはマンション建て替え円滑化法の中で(第4条基本方針)区分所有者の合意形成を民主的にすることを定めてあり、その内容を同法の施行者である国土交通省が、「マンションの建て替えに向けての合意形成に関するマニュアル」(以下「マニュアル)という)で具体的に円滑化法を解説する形で定めました。
しかし、実際に行なわれた事業は、マニュアルに違反しながら、マニュアルに適合しているように見せた行政手続きで進められました。マニュアルでは合意形成を進める手続きを全体で14の段階をつくって進めるように定め、その中でマンション建て替え事業計画を区分所有者全員を強制参加して進めることを決議する「建て替え推進決議」と、そこでまとめられた建て替え事業計画を基に建て替え事業に区分所有者全員を強制して進める「建て替え決議」という2つの節目を設けました。そしてその2つの節目では、それぞれ区分所有者の5分の4以上が賛成をすることを決議条件にしました。
その2つの条件を満足した場合には、円滑化法の定めに従い、東京都知事がそのマンション建て替えを強制事業として実施することのできる建て替え組合を認可し、その認可に基づき事業は実行できることに法律上定められています。しかし、2つの決議も東京都知事の認可も、いずれも法律に違反してなされました。そこで、法律上の手続きが違法になされた事業には正当性がないという訴えを区分所有者が裁判所に提訴してきましたが、裁判所は行政庁の処分で進めても違法ではないと言い、原告である区分所有者の訴えに対してはまともな審理をせず、その訴えが間違っているという根拠も判断もしないで却下しました。つまり、司法は原告(区分所有者)と被告(行政庁)の主張だけは明確にしたうえで、被告(行政庁)の答弁でよいと判断したのです。

原告が裁判費用を支払って訴えを提起しているのにもかかわらず、原告に説明責任を果たすことのできない判決で、被告(行政庁)の言いなりの判決をするならば、裁判制度が国民のためになるとは言えません。法治国は「闇」です。
次回は、この事件を法律の違反を具体的に示すことで日本の闇を白日の下に晒すことにします

(NPO法人 住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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