メールマガジン

HICPMメールマガジン第542号(2014年1月13日号)

掲載日2014 年 1 月 16 日

HICPMメールマガジン第542号(平成26年1月13日号)

皆さんこんにちは、今週は関西に出かけたためメールが遅れました。大阪駅や京都駅周辺の都市空間は小泉・竹中内閣の規制緩和を受けて全く様変わりしています。規制緩和がこれほど都市空間を醜くするものかということを改めて認識しました。都市関係者に都市近代計画とは何かということをぜひ勉強ウィ手いただきたいと思ってこれから10号ほどこの問題を取り扱います。

アベノミックスで再登場の
規制緩和の贋金造り(その1)
―私有財産権の保障と公共性(法定都市計画)―

アベノミックスの原点:「不毛の20年」に取り組んだ小泉・竹中内閣の規制緩和政策
14年小泉・竹中内閣が、バブル経済崩壊後の「不毛の20年」の対策を考案しました。それは、この20年間土地担保金融の名の下に、融資されていた不動産金融の対象不動産が活用できず塩漬けになっていたものを、規制緩和により活用できるようにしたものでした。小泉・竹中内閣の規制緩和の仕組みが国民には正当な経済政策のように勘違いされていますが、実は国民の都市生活環境を将来的に悪くする非常に危険な政策です。その理由の理解には、原因となったバブル景気が、1986年(昭和61年)12月から1991年(平成3年)2月までの51か月間に日本で起こった資産価格の上昇と好景気とそれに付随して起こった社会現象を理解することが不可欠です。バブル景気自体は1986年、「プラザ合意」を受け、ドル価格は1ドル240円から130円台に、最終的には1ドル80円を割り込むまで下落した結果、「日本の土地総額で米国を3つ購入することが出来るといわれました。日本からはニューヨークのロックフェラーセンターを三菱商事が購入することに象徴されるように、日本の法人や個人による米国の不動産購入が積極的に行われました。

日本では当時、「ジャパン・イズ・アズ・NO1」と言われ、日本人の勤勉さや日本人の資質、日本文化が潜在的に優れたものと勘違いさせられ、欧米に出掛け「おれが建材や住宅設備、さらには不動産を買ってやる」と傲慢な態度で買いあさり、顰蹙も買っていました。お金があれば何でも変える、人の心も買えると日本人が金権礼賛に走った時代です。少なくとも、ドルの価値が日本人の努力ではなく、米国がベトナム戦争で敗退し、経済、財政が破綻し、ドルの価値が円の半分に下落したわけですから、正に「濡れ手に粟」をした日本人が、努力をしなくて獲得した力を「日本人の底力」と勘違いしました。日本人の経済力の根拠は米ドルのベトナム戦争での財政破綻によるもので、日本人の努力はありません。自力と未だに信じているわけですから困ったものです。その勘違いが、実態の伴わない日本人の空自信になっています。

制御不能になったバブル経済の崩壊
このバブル経済自体は、日本の経済そのものに国民の所得と遊離した物価上昇をもたらしました。その結果、国民経済が景気や大企業の利益の拡大と反対に、国民生活を危機に陥れることになり、政治混乱の原因となりました。そこで、このバブル景気の終焉は、金融操作で経済をコントロールする立場にあった日本銀行三重野総裁が、金融での操作が利かなくなり、焦って急ブレーキを掛けました。三重野日銀総裁の理性を失った金融引き締めを行ったことで、金融を引き揚げられた経済活動は失速し、ハードランディングと言われる連鎖倒産が相次ぎ、大量の失業者が発生しました。
住宅ローンを借り受けた勤労者は、返済不能に陥り、厳しい取立てに合い絶望し自殺を選ぶ人が相次ぎました。その結果、生命保険を最終担保としていた住宅ローンは、生命保険での最終清算を求め、生命保険でのローン債務弁済を求めたため、多数の生命保険会社が金融機関ともども倒産しました。政府は緊急景気対策として取り組んだ住宅政策による景気浮揚が失敗したことで事態を一層悪くし、その後の国の経済政策で住宅政策を活用することが出来なくなってしまいました。
バブル経済崩壊後、政府はあまりに厳しい景気失速が発生したため、緊急経済対策として投資額の3倍の波及効果を持つ「最も経済波及効果が高い住宅産業」を使った財政政策で景気浮揚を実施しました。それは国民に年収の8倍近いローンを組ませて住宅を購入させ景気浮揚を図ろうとするもので、ローン借受人のことを考えた対策ではありませんでした。

政府自身は政府機関である住宅金融公庫には、年収の5倍までの融資を限度にしましたが、その他の金融機関との合わせ融資により、結局は年収の8倍以上になるケースが一般的でした。つまり、政府が行ったことは、当面の経済政策として国民から当面のお金を引き出すために、巨額の借金を住宅ローンとして消費者に借りさせる方便でした。政府は国民が返済出来ない借金を住宅ローンとして行わせた極めて悪質な国民生活を破壊する政策が、住宅金融公庫を使った「ゆとり償還」だったわけです。バブル経済が崩壊して、企業の倒産や労働者のリストラという名の解雇が始まっていた時期の住宅金融公庫による「ゆとり償還」とは、最初の5年間は金利だけの返済を逓増する方式をとりました。その間、住宅取得税減税を拡大し、当座のローン返済はその所得で返済できるプログラムを作り、ローンを組んでも返済は可能な仕組みを、バブル経済そのものが持続するであろうとする過程の上に作りました。その返済プログラムも、国民の所得はバブル時代同様の所得上昇率を維持するという仮空の想定の上につくられていたため、すぐにそのプログラムは破たんしました。

粉飾決算を容認してきた会計処理と不動産鑑定評価制度
それと同じ仮定のうえに実施された金融政策が、「不毛の20年」の原因を成すものでした。日本の金融は「土地担保金融」と説明されて着ましたが、欧米の不動産金融で行われているモーゲージのように融資債務を担保とした不動産で清算するものではなく、不動産が金融の最終担保ではありません。最終の担保は融資の借受人の信用が担保のため、多くの場合、金融機関は連帯保証人を立てさせて、個人信用の担保を連帯保証人(個人または法人)に転嫁出来るようにするか、生命保険額を担保にすることがやられました。その結果、日本では、世界の常識では考えられないような、異常に多い連鎖倒産が連帯保証制度によって発生しました。連帯保証制度は、日本では情実に縛られて行われることが多く、金融機関は、日本の人情に弱みに踏み込んで実施してきた極めて悪質な封建的な金融制度です。この金融制度を悪用したものが、不動産価値が下落しても会計帳簿上不動産価値の下落が起きていなかったように扱う馴れ合いの会計処理です。

金融機関は不動産価値が下落して融資の担保価値が不足した場合には、担保価値の不足した分の金融を引き揚げるか、融資額相当より多い担保を要求することになります。それが出来ないときは、預金者や株主に対する立場上、金融機関の経営者は融資の借受人に対し、融資を引き揚げる以外に方法がありません。しかし、日本の金融機関の経営者はもうひとつ「隠し玉」を使って問題を処理してきました。それは会計帳簿の操作です。バブル経済の崩壊は、金融機関が貸し金を引き上げようとしても融資額が大きすぎて引き上げられないとこともあり、また、引き揚げてもそのお金を融資する先もないという事態にありました。金融機関も融資先もそれまでのバブルの状態が継続していることにすれば、帳簿上、土地担保金融がなされていることになります。金融機関に融資額に対する金利の支払いが滞っていなければ、「金融機関に損失を与えていないから優良資産」扱いをするやり方です。その担保割れ金融の実態は粉飾であり、会計法上の違法行為です。

会計処理で粉飾を可能にしている原因は、日本の不動産鑑定評価制度です。不動産評価を社会的に行う制度として地価公示制度や、路線化による地価評価制度、固定資産税評価などもっともらしい評価制度があります。しかし、いずれも不動産鑑定士が裁量により評価を強いてきい変更できるもので、どの不動産鑑定士が評価しても同じに評価する制度にはなっていません。この制度を基本的に狂わせてきたものは、日本の不動産鑑定制度自体が、明治時代の民法の制定時点から、土地と建築物とを別の不動産(物)と扱う非科学的な不動産の取り扱いと評価に仕組みにあります。基本が非科学的の不動産の扱いをしていますから、日本の不動産鑑定評価制度は、形だけはもっともらしく欧米の不動産鑑定評価制度(アプレイザル)を真似して繰られていますが、その実際は不動産鑑定士が、政府やその依頼主の希望に従う形で、極めて恣意的に不動産価格を操作できるようになっています。金融機関は依頼主として不動産評価機関にその希望する価格の評価を何時でも必要なときは架空の評価書を作成してもらえるため、自由に会計帳簿の不動産価格を操作します。

政府が操作してきた不動産価格
これまで国は全国総合開発計画や新全国総合開発計画で列島改造を進める過程で、都市改造土地区画整理事業を実施して来ました。これらの事業には、財政から公共事業費(補助金)や土地所有者の負担(減歩)をありますが、多額の事業費は財政投融資や金融機関からの金融を受けなければ実施することはできませんでした。これらの事業が経営上採算をあわせるためには、地価は融資を受けた金融の金利分と同じ比率だけ土地の価値は増進したと言う仮定のもとで事業採算計画が認められてきました。その結果、これらの都市改造土地区画整理事業が実施されたところの地価は、金利分だけ上昇した扱いをし、事業採算を成立させてきました。しかし、その事業採算地価では建築物を建てても固定資産税が高すぎて利用できません。そこで租税特別措置法により、固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の一に減額し、区画整理地での建築促進を図りました。この租税特別措置法によって、土地区画整理地の建築物の建て上げが進みました。

しかし、この高額な土地の売却は出来ず、購入者は損失を出しての売却を嫌って、多くの人達は、その土地での建て替えをすることで、子孫に土地利用を継続させることになりました。しかし、少子高齢化社会で相続人を失った住宅は空き家化し、取り壊すと固定資産税及び都市計画税が6倍、3倍になるため、住宅を取り壊せず、住宅が老朽した状態で自然倒壊を待つ危険な状態が生まれています。そのような住宅不動産評価が、少なくとも地価に関しては、市場ではありえない評価がされています。多くの地方公共団体では、実際の取引地価とかけ離れた高い固定資産税額評価を基に徴税されています。そのような異常な固定資産税評価が市場の不動産取引を歪め、健全な市場取引自体を妨害しています。

小泉・竹中内閣が実施した規制緩和
JS(旧都市整備公団)、地方公共団体など大量な住宅地を抱えているところでは、バブル崩壊による地価下落により、バブル時代に金融機関から融資を受けて土地を購入した不動産業者同様、その経営は厳しくなっています。これらの事業者は地価の下落により、その地価で事業を実施できない状況に置かれていました。これらの土地は、再度、地価が高騰する以外に、それらの保有土地を利用することはできない状況に置かれていました。金融機関にはわずかでも借り入れ金利を支払って、保有不動産を担保に借り入れた資金は不良政権ではないという扱いをしてきましたが、実際はそれらの土地は活用できないため凍結され、事業者は利用できない土地を抱え、粉飾会計により「不毛の20年」に耐えてきました。それが日本経済そのものを低迷させてきました。その解消無しには、日本経済の復興はありませんでした。

NPO法人住宅生産生研究会は小泉内閣当時当時新進党(海江田現代表)に対し、その解決策として、不良債権を作り出した責任者の処分と引き換えに、不良債権の容積と高さ制限による良債権化を提案しましたが、一蹴されました。その1ヵ月後、民主党の井上議員(HICPM会員)と対応を検討していたとき、小泉竹中内閣から規制緩和の基本的に同じ提案が提起されたことが示されました。内容を検討したところ、不良債権形成の経営責任は全く取らずに、全面的に不良債権の良債権化を「規都市再生事業・制緩和」の名の下に実行するものでした。この提案は、基本的に都市計画制度自体を混乱に導くものでしたので、都市計画官僚が徹底的に抵抗をするだろうから、実現されないと考えていました。しかし、結果はその逆でした。官僚たちが御用学者ともども全面的にその手先となり、都市再生・規制緩和を積極的に推進しました。そこには財務省、総務所という国有地、公有地のバブル崩壊後の資産価値の回復の要請の後押しがありました。

二つの大きな経済圧力
経済的にバブル崩壊により不良債権した債権を良債権するためには、債権の担保となっている土地そのものの価値をバブル崩壊以前の価値で処分することが出来なければなりません。土地そのものの面積自体は変えられません。しかし、その土地を利用する建築物の高さと建築物の容積を、「バブル崩壊時点の地価から現在までの地価の縮小比率」の逆数分だけ容積率を拡大することができれば、地価総額としてバブル崩壊時の地価総額を回復することが出来ます。単に容積率を拡大するだけでは、高さ制限を受けて建築空間は豊かな屋外空間を享受できなくなります。そこで、容積緩和は建築物の高さ制限を緩和して、建築物がその上空空間を排他独占的に利用させることが必要になります。そのための対策が都市再生でした。都市の空間利用の秩序を狂わせても経済活動を優先することで、実質不良債権化して凍結されていた土地を生き返らす政策でした。そのためのカンフル注射が規制緩和といわれる都市計画法と建築基準法のこれまでの仕組みを前面的に破壊し、死に体になっていた土地を経済的に利用できるように生き返らせるような規制緩和をすることでした。

もう一つの重要なことは,土地は移動することが出来ないために、経済開発をするために存在する一団の土地を強制的に合理的な開発をすることが出来るようにする事業に対し、公共性を付与する規制緩和です。その最大の対象とされた土地が、戦後の住宅政策で地方公共団体が開発してきた住宅団地、日本住宅公団以来の公団が開発してきた住宅団地、地方住宅公社が開発してきた住宅団地等の低密度で開発されてきた中低層住宅団地の土地を、高層住宅団地に建て替えることで巨額の開発利益を生み出すことができ、国及び地方にとって大きな財源を提供することになるということです。当然、これらのマンション建て替え事業を行うことによって、巨額な開発事業が生まれ、居住者が増大することになるため、建設業者に大きな利益の挙げられる事業を生み出し、地方公共団体に固定資産税、都市計画税、住民税及び事業税収を拡大することになります。小泉・竹中内閣による都市再生事業は、正にバブル崩壊後の経済低迷の元凶であった不良債権を、その責任を全く問わないで、良債権化する手法をすべての土地に規制緩和を適用して救済したのです。(次回に続く)

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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