メールマガジン

HICPMメールマガジン第545号(平成26年2月3日)

掲載日2014 年 1 月 30 日

メールマガジン第545号

みなさんこんにちは

NAHB・IBSが解されますので、それに参加するため2がつぃ1日に日本をたちます。そこでメールマガジンを早めにお送りします。

アベノミックスで再登場の
都市再生事業のための規制緩和(その4)
―官僚支配による護送船団方式のからくり―MM545号

公共事業のからくり
日本の財政力が豊かな時代、即ち、全国総合開発や新全国総合開発により列島改造が推進されていた田中角栄時代、それまで大蔵大臣、農林大臣、通産大臣と経済企画庁間で構成されていた経済閣僚に建設大臣と運輸大臣が参加し、公共事業が国の経済を財政が牽引していくことになりました。米国が戦後の日本を占領していた時代、戦災復興の重要性を認めていたGHQ(連合軍総司令)は、建築基準法、建築士法及び建設業法の当時「建設3法」を制定し、戦後復興の制度として整備しました。米国にはこの3法が成文法として存在していたわけではありません。建築基準法は民間団体が作成していた法律の準則を地方自治体が採用し法定化し、建築士法と建設業法はコモンロウ(慣習法)として控訴審判決を編集したものを使っていました。しかし、日本は「法定刑罰主義に立つ制定法の国」ですから、GHQは日本の社会に適合するように成文法として建設3法を造りました。現在の日本の建設3法を見ると、米国の建設3法の考え方を見ることができます。

かつて、筆者が中央官庁で建築基準法と建築士法を建築士班長(課長補佐)として施行担当していたとき、請負契約を建設業法に違反し実施していた業者の行政処分を実施することになり、建設業法担当課長と強調して行政処分を行うための協議しました。協議に当って建設業課長は、「その企業では、官僚OBを幹部に雇用してもらっているから、処分は出来ない。」と言いました。そこで、官僚は「李下に冠りを直さず、瓜田に沓を入れず」の例えのように、「国民から疑惑を受けるような法律施行はすべきではない。」と話をしたことがあります。建設省内におけるその協議の場で建設業課長は、「公共事業は国家が施行者として実施している事業であるから、法律上の監督は発注者として十分成されてあり、国家の利益に反すれば、指名を停止すればよい。それは、建設業法による行政処分や刑罰より遥かに重い罰則が適用できるから、建設業法は公共事業には適用しない。」と言い切り、官僚OBを雇用していた建設業法違反の企業の行政処分をしませんでした。この事件の該当条文は建設業法第20条でした。そこでは請負契約の前提として工事費見積りを作成するべきことを定め、そこでは材料と労務の数量を明確にし、それにそれぞれの単価を乗じて見積りを行うことを定めています。

しかし、公共事業の請負金額の見積もりは、複合単価といって、材料と労務の単価を一つの単価に取りまとめて、その内訳を判らないように「材工一式単価」して、重層下請け構造で粗利を累積して公共事業費単価を決めるものです。米国でも概算工事費単価として、工事費目安を決める「平方フィート当り単価」はありますが、このような概算単価を、請負工事費や、住宅ローンや建設工事日金融の見積りに使うことはありえません。日本では公共事業を監督する会計検査院が公共事業を実施している国土交通省と農水省の発注単価の実績を元に検査対象適正工事費を決め、その工事費と実績とを照合して検査の適正を検査しています。実際に材料費及び建設労務費として支払われている額は、その3分の1以下です。請負工事費は重層下請けの都度、粗利が抜き取られ、もっともらしく実行予算が組まれていくからです。このようになっている理由は、建設業者自身が工事現場を管理する能力をもっていないこともありますが、封建的な重層的な下請け支配によって公共工事を官僚が支配してきたからです。米国の場合は、原則的に一層下請けによって仕事が請け負われています。

基本的に変わらない新年度挨拶
建設業者の粗利は、元請、下請けの違いにかかわらず、本社経費、営業経費、利益に分けられ、本社経費の過半は人件費であり、その多くは発注者の天下り人事の人件費、営業経費の殆どは発注する公共団体等外郭団体の会費(一般会費と受注高に応じて供出する賛助会費)であり、利益の一部は公共事業の配分に口を利いた地元選出の政治家に対する政治資金として支出されてきました。大体100億円の公共事業のうち政治家や役人の天下り人件費等の粗利として消えて行くお金は、少なく見積もって70億円になり、実際の材料費と工事費には30億円程度しか使われていません。現在の政治家や官僚及び公務員の中で、財政支出(税金)を国民のために使わなければならないと本気で考えている人は皆無です。「いかにして政治家と公務員が自分たちの現在及び将来のために使えるように還流させるか」しか考えていません。30年以上昔の経験です。公共事業者を集めた年度初めの愛媛県の挨拶は、かつては身内に本音を語る以下のようなものでした。
「建設業者の皆さんのご努力のお蔭で、無事公共事業を実施して参りましたことを感謝しています。この公共事業は皆さんの下請け、子請け、孫請け、卑孫請け等の下請け業者の手で実施されて参りましたが、その下請けや孫請け等の業者の中で建設業協会の会員以外の方に下請けされていることが分かったときには、元請である皆様を公共事業の指名から外さざるを得ませんので、この点は今年も徹底していただきたい。また、本件の公共事業に関しましては塩崎議員と関谷議員のお力に負うところが大きいので、これらの議員の皆様には今後も、公共事業を獲得するためにご支援をお願いします」、

東日本大震災字の「廊下鳶」たち
平成11年3月東日本大震災が発生した後、国会、国会議員会館には復興予算に群がる利権が飛び交っていました。未曾有の震災事故ということで政府の対応は行き詰まり、応急事業と長期事業とが輻輳した形で進行しました。筆者自身は退官してから20余年経過し、実際の様子を生々しく知ることが出来る立場にはありませんでしたが、現場で起きていることは筆者の官僚時代と基本的に変わっていませんでした。岩手県でも、宮城県でも、緊急対策を口実に、建設業協会の役員会社が「特名」で50億円単位の仮設事業を受注し、40戸程度の仮設住宅団地を5団地程度受注していました。そこに誰が入居するかについて、業者は何も知らず、簡易な土盛りをした上に、丸太で造った木杭に、恒久仕様のプレハブ住宅が設置された「仮設住宅」が建設されていました。仮設住宅はその後の雨で地盤が崩れて社会問題視されましたが、「応急仮設住宅」により、責任の追及はありませんでした。過去の例から一旦建設された仮設住宅は20年近くも使われてきた実績を無視して、その場限りの政治家のパフォーマンスと建設需要を作る業者の金儲けのため建設されてきました。お金が応急事業として支出されれば、それで復興事業の政策目的が達成されたというのが政治家と業者の考え方です。

「国民からの知恵を広く活用する」説明のもとに、元総理大臣の娘がコンサルタントと一緒に官僚と政治家の秘書を引き連れ、各省庁への配分予算の利用方法に「プロポーザル(提案)方式による事業」を提案し、御用学者たちを審査委員に加えた新規事業の公募が多数行われました。これらの提案制度は実施する前から提案制度に事業を持ち込んだ業者、コンサルタントなどによる実施者は内定されています。一般からの応募者が採用されることはなく、「出来レース」として公募前に実施者として決められていた業者が形式な審査に合格して事業を実施してきました。民主党政権時代には「これらの表向き国民の智恵を震災復興に活用する」名目で、多くのコンサルタントや業者が、全く素人の政治家と官僚に働きかけていました。権力を握っている政治家及びその秘書たちや官僚は自らの行使できる権力をその事業に必要な能力を同じと勘違いし、事業をつくり上げ、「財政資金を配分することで、仕事ができた」と考えていました。政治家は官僚と一緒になることで財政資金を配分し、その一部を政治資金として受注した業者から政治家にキックバックさせてきました。業者が補助金と事業利益を挙げ、その利益の一部を政治家に利益をもたらした官僚は有能な官僚として昇進しました。

東日本大震災後取り組まれた多くの事業は、配分された予算を消化することが出来ず、予算は不用額となり国庫に返還せざるを得なくなっています。現在、東日本大震災が襲った地域を訪問していますと、行政関係者の関心は一重に予算消化です。そこには被災住民のために何をしなければならないかという議論は相手にされず、配分された予算消化をいかに迅速にするか、だけが議論になっています。既定方針で進んでいる事業を現時点で改善できることが分かっていても、改善することにより、工期を延長させないことを重視する姿勢です。巨額のお金を使っても、成果が満足できなければ、当然改善工事を実施しなければなりません。しかし、復興事業の目的は復興事業の成果ではなく、事業予算を使うことに成ってしまっているのです。アベノミックスとは財政資金を市場に流し建設産業者が潤い、そこから政治資金が自民党に還流することに最大の力点が入っていて、財政資金がその行政目的どおりの成果を上げることには関心がないのです。

短期決戦で取り組まれているアベノミックス
小泉・竹中内閣で行われた都市再生のための規制緩和は、基本的になりふりを構わず不良債権を良債権化することでした。バブル経済で巨額な利益を得、巨額な債務を抱えてしまった大企業の債務を、規制緩和という「贋金つくり」によって決裁しました。その「贋金づくり」のしわ寄せは、それまで真面目に法定都市計画を守ってきた市民が、将来の大震火災が発生したときのリスクとしてかぶることになり、また、当面の都市環境の悪化として、国民は享受させられたのです。しかし、「不毛の20年」として実質的な不良債権を抱えていた不動産を抱えていた企業に対し、同じ土地面積の土地にそれまでの容積の4倍以上の容積空間を作り上げる規制緩和を行うことで、その債務を一挙に吹き飛ばしました。規制緩和政策を実施したことに関しては、不良債務者とその債権保有者である金融機関に対して容積活用で短期に巨額な利益をもたらしました。小泉・竹中内閣の規制緩和の時期に米国の住宅バブルで巨額の資金が生まれ、わが国に外資導入され、日本でもミニバブルと言われた経済活動が活発化し、各地で規制緩和を利用した開発が行われました。2003年から2008年までの5年間でしたが、その短期に大都市のスカイラインが大きく変貌したほどの高層建築が建設されました。

経済学者たちがこの間の経済成長はわが国が過去に経験したことがないほどの経済成長を記録したと説明しています。どのような統計によってその経済成長を説明するのかに関する説明資料を見ていませんが、東京を始め全国の大都市でこの間に、小泉・竹中内閣の規制緩和を受けて無数の超高層建築物が建てられた事実は、その事実を裏付けるものであり、超高層建築物が建築されなくても、規制緩和によって既存の地価は、高さと容積緩和を受けてそれまでの容積の最低4倍以上に拡大できたことは、つぎの不等式で示されます。
(バブル時代の高地価)×(バブル時代の法定都市計画による容積率)≦(規制緩和が行われたときの低い地価)×小泉・竹中内閣による法定都市計画による容積率)
この不等式は、規制緩和自体によってそれまでの都市での土地資産を保有していた人は、地価自体がバブル崩壊後低迷していても、不動産の総売り上げ資産価値はバブル経済時代と同じに上昇したことになります。この資産増は都市再開発や都市開発によって顕在化したものだけではなく、開発しない土地不動産に関しても、規制緩和分の価値が増大したわけですから、それだけ経済的利益(資産増)をもたらしたことになります。しかし、小泉・竹中内閣による規制緩和による総資産増は、帳簿上の不労資産増と再開発事業による潜在地価の顕在化とそれをきっかけとして、建設事業によって大きな資産形成がされましたが、その資産増の多くは、帳簿上の地価の4分の一の資産を容積率が4倍になって、帳簿並の架空の地価にまで回復した「不良資産の良資産化」に使われ、資産増分が国民経済に顕著に反映するものではありませんでした。そのため市場がこれまで経験したことがなかったほどの経済成長をしながら、国民はそれを感じませんでした。

アベノミックスに求められている施策は、第二の規制緩和、都市再生・規制緩和が話題になっています。小泉・竹中内閣は、その支持基盤である金融機関や不動産業に規制緩和による巨額の利益を供与することにより、自民党及びその所属議員の政治基盤を支える政治献金を生み出す土壌を十分耕すことができたはずです。これらの規制緩和による法定都市計画は具体的な開発事業と建築工事によって、具体的に実現することになります。自民党にとってはその政治的支持基盤の経済力を実質高めるもので、それはこれらの土地の開発において更なる規制緩和を行う行政処分により大きな資産価値増を可能にし、自民党に対する政治資金の財源を増やすことになっています。官僚は自民党政権が期待する規制緩和を行って、政治資金の下となる財源形成に大きな役割を果たすことで、官僚の利権を拡大する政府立法を進めてきたのです。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)



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