メールマガジン

HICPMメールマガジン第547号(平成26年2月16日)

掲載日2014 年 2 月 17 日

みなさんこんにちは

関東以北は大雪に見舞われましたがいかがでしたでしょうか。オリンピックも葛西選手が頑張り大いに励まされました。高齢メダリストということでしたが、よく考えてみたら私の子供よりも若く、私が老人になっていました。

前回に引き続き「規制緩和の贋金づくり」を連載します。

アベノミックスで再登場の
都市計画法蹂躙の規制緩和代表事例「ラ・トゥアー・ダイカンヤマ」(その6)
―官僚支配による護送船団方式のからくり―MM547

「姉妹法関係」の蹂躙
東京渋谷鶯谷に建設された「ラ・トゥアー・ダイカンヤマ」は、敷地面積15、700㎡の土地に、6階建、地下2階の構造上、用途上、機能上1棟のマンション(建築面積7,000㎡、延べ面積50,000㎡)で、このマンションは構造耐力上、機能上、一般構造上、1棟の共同住宅です。しかし、10棟のマンションとして確認申請を行った理由は、建蔽率及び容積率が、法定都市計画に違反する計画の共同住宅の建設を意図し、確認申請上、建築面積及び延べ面積を実際より小さく操作する必要があったからです。その方法として、10棟で囲われた吹き抜け空間(アトリューム)を建築面積に算入しないようにし、この共同住宅全体を一階分地盤を切り下げて地階にし、地階部分を建築面積の算入から除外しました。

さらに、この敷地は第2種低層住居専用地域の都市計画が決定され、建築物の絶対高さとして12m.の高さ制限を受けます。この高さ制限を掻い潜るために実際の地盤面を地階に設定し、地階に住居があるとし、3.5メートル分平均地盤面を申請書上、引き下げ、さらに、小泉・竹中内閣の最大の規制緩和として作られた総合設計制度を活用し、建築物の高さを18m.以下にしました。そのことによって、共同住宅のすべてが新たに造成された地盤面上に造られ自然環境を享受できる住宅地としてつくることができています。

しかし、建築計画上は新しく切り下げた地盤面を「地盤面」とは呼ばず、建築物の地階であると表示し、その部分は、既存の地盤面に空堀を造ったかのように表示しています。そのため、この共同住宅の地階と表示された部分は、すべて地盤面上に造られているにもかかわらず、法律上の扱いとして地階とされ、通常の確認申請であれば建築物の高さ21メートルの地上7階建て、地下1階建ての建築物を、建築確認申請上、地上6階建て、地下2階、高さ18メートル弱の表示して指定確認検査機関に確認申請を行ない、確認されています。

ここで建築主住友不動産が渋谷区長の違法幇助を前提に日建設計と共謀して実施したことは、明らかな違反建築を都市計画法違法と建築基準法の「姉妹法の関係」を逆に悪用して、開発許可権と特定行政庁の建築基準法の認可権を濫用して実現させたものです。両法の適正な施行が行われていたら起こりえない事業です。

小泉・竹中内閣の規制緩和の目的は、法定都市計画として決められた容積率を、基本的にバブル経済崩壊前の高地価と、バブル経済崩壊後の下落地価の比率分以上緩和し、実質不良債権を規制緩和の「徳政令」を実施し、贋金づくりの不正利益を開発業者に不正供与したものです。その方法として考えられる限りの規制緩和の複合体を小泉内閣が国土交通省の官僚たちに命じて実施させた方法が、「ラ・トゥアー・ダイカンヤマ」で実施されています。

その最大の手口は都市計画法違反の開発許可申請及び建築基準法違反の建築確認申請を渋谷区長が開発業者と共謀して許認可したことです。最初は都市計画法と建築基準法との姉妹法の関係を分断したことです。姉妹法では、都市基盤整備をしないで建築工事を行うと、後日、都市に大きな負担がかかるので、開発許可を行うべき敷地では、その工事完了公告がなされていなければ建築工事は行わないとする都市計画法制定時の原則は蹂躙されました。

都市計画法第37条では、開発許可による工事が完了するまでの間は、開発許可に伴う現場事務所等の建築物を除き、予定建築物の建築は禁止することが定められ、建築基準法第6条ではそれを受けて開発許可の完了公告なしに確認申請はできないと定めています。しかし、この事業では、開発許可、確認申請、建築基準法第86条に一団地認定が同時に申請され、それらの許認可と並行して地盤調査の名目で開発行為が進められていったのです。

地域地区(都市計画法第8条)で定める法定都市計画を具体化する建築基準法第3章規定(集団規定)の適用と、一団地の住宅施設(都市計画法第11条第1項第8号)を具体化する建築基準法第6章雑則第86条の適用とは、基本的に別の都市計画実現の方法で、両者を同じ開発事業で適用することは、法律論上も不可能なことです。

この開発では「一敷地、一建築物の原則」で開発する敷地が、「一団地の住宅施設」の都市計画決定なしで第86条が適用され、その後、再び総合設計制度という建築基準法第59条の2(「一敷地一建築物の原則」の規定)が、小泉・竹中内閣の規制緩和の利益を受けるため、「一団地を違法に一敷地と読み替えて」適用され、建築物の高さ及び容積を増大することを可能にしました。しかし、この法律上不可能なことが、この事業では当然のことのように行われ、行政事件訴訟において司法はその法適用の仕方が違法であるという指摘に対し、何の反応さえしませんでした。

原告が訴訟費用を支払い、行政処分の違法をその法律上の根拠を明確にして訴えているのにも拘わらず、裁判官はその訴えに法律を根拠にした否定もしないで、行政庁の処分を追認しているだけの判決です。これは憲法第30条に定める国民の裁判を受ける権利を蹂躙するものです。

都市計画法で定めている開発許可
都市計画法第29条では、東京都23区の特別区では開発許可権者になれる者は限定列挙されていて、東京都知事しか開発許可権限を行使出来ない規定になっています。しかし、青島幸男都政時代から都市計画法に違反して特別区長が違法に開発許可権限を行使して来ました。開発許可制度は、予定建築物を建築するための敷地の整備(土地利用)を許可する憲法第29条に定める私有財産の保障に関する個人の財産権を左右する基本法です。

そのような責任の重い権限ですから認可権者を都市計画法で限定列挙し、それ以外の者は行ってはならないと定めています。それを青島都政は、地方自治法第252条の17の2を根拠に特別区に都知事が行う事務の一部を行わせることができる条文を条例を定めました。しかし、何を勘違いしたのか、その条例で定めることの出来ない内容、即ち、都知事に都市計画法で与えられた権限を特別区長に委譲できる権限とした違法な施行細則を定めたのです。

言い換えれば、都知事の監督下で特別区が行うことができるとした自治法の規定を、都知事が特別区長の権限委譲ができる条文と曲げて実施したのです。渋谷区長は都市計画法の開発許可権限と建築基準法の特定行政庁の権限とを一手に得たため、姉妹法の関係など無視し、法律の条文を無視し、最終的に都市計画法の権限と建築基準法に属する権限はすべて自分の好きなように実施できると勘違いしたとしか思えません。

しかもその証拠として、この開発許可申請には予定建築物が10棟の共同住宅であるならば、都市計画法では建築物そのものを審査しませんが、都市施設との関連で予定建築物として計画された10棟の共同住宅を収容するための接道義務を果たした10の敷地があり、建築基準法第3章の規定を満足する開発許可が必要になります。

しかし、開発許可申請には予定建築物が明記されていなく、都市計画法第33条に定める開発許可の基準である法定都市計画に適合していません。それなのに渋谷区長による開発許可が成され、開発許可どおりの工事完成物が存在していないにも拘わらず、建築工事の完了検査が先に終了した後、開発許可の工事完了公告が出されたのです。

この建築物が所期の用途、機能を発揮するためには、つまり、現在実際に利用されているとおりの共同住宅としての機能・構造であるためには、この建築物の共同部分の玄関ホール等強度受付と10棟の共同住宅に到達できる廊下が必要です。これらの共同住宅の基本部分は、指定確認検査機関による10棟の共同住宅部分の工事完了検査が終了後、無届の増築工事として実施されました。

建前上、特定行政庁としての渋谷区は、指定確認検査機関が10棟の共同住宅として確認申請が出された工事に対し、10棟の共同住宅に対する指定確認検査機関の工事検査済み証の交付することに拘ったため、確認申請通りの工事検査済み証の交付を行わせることにしたのです。それでは所期のマンションは完成しません。そこで建築主である住友不動産は、その後の工事として共同住宅の共同部分の工事が建築主の一方的指示で、無届工事として実施されたのです。

この開発事業では、最初から小泉・竹中内閣が行った規制緩和を最大限生かした計画をつくることを前提に、一見、適法な建築物を造る体裁をつくって、適法な開発と建築を実施するような演出をした計画でした。開発許可の基本である敷地の地盤面を土地の区画形質を変更して、全ての共同住宅に日常空間として利用できる地盤面を造りながら、区画形質の変更を行っていないかのような虚偽の開発計画を作成しました。

それは建築物の高さと容積率をごまかすための方便として、1階部分を地階と開発許可申請書上、虚偽の記載をしたことです。そのうえ、建築確認申請と同時に敷地内道路を敷地面積算入するために建築基準保第86条に基づく「一の敷地とみなすこと等による制限の緩和」の認可申請が出されました。この第86条の認可申請は、都市計画法第11条第1項第8号に基づく都市計画決定が行われた場合にしか適用できません。

「一団地の住宅施設」の都市計画決定を受けていない敷地に特定行政庁である渋谷区長から「姉妹法の関係」を蹂躙して、違法に認可が出されています。このことによって「一敷地一建築物の原則」の適用される建築基準法第3章規定で計画しなければならない道路をすべて敷地として計算することで、道路車線制限はなくなり、容積の拡大を図りました。

建築物の高さと容積率

当然のように10棟の共同住宅として確認申請された敷地と建築物の関係は建築基準法第3章の規定に、敷地の接道義務、建蔽率、容積率、建築物の高さのいずれを見ても適合していません。それを第86条の一団地認定を受けた場合の取り扱いを違法に渋谷区長がしたことで、一団地の扱いとされましたが、それは渋谷区長が違法に一団地の扱いをしただけで、「一敷地一建築物の原則」が適用されることになったわけではありません。

しかし、渋谷区長は「一団地」の扱いを受けるようにしたことで、それを「一敷地」として扱うことができるようになったようにみなし、「一敷地、一建築物」の第3章規定である建築基準法第59条の2を根拠に、小泉・竹中内閣の規制緩和の目玉である「総合設計制度」による緩和を適用したのです。一敷地と一団地とは法律上まったく違い、第3章規定は一団地には適用できません。

この第3章規定は都市全体のマスタープラン(法定都市計画)を実現するために、地域地区(マスタープラン)の指定された敷地に対しては、そこで定められた建築設計指針(建築基準法第3章規定)が適用され、第59条の2を根拠とする総合設計制度が適用される場合も、その敷地と隣接敷地を一体の敷地とみなして、地域地区の規制を適用しても、マスタープランを基本的に崩すことにはならないとされています。

しかし、総合設計制度は「一敷地一建築物の原則」を蹂躙して、特定の敷地に対して法定都市計画を逸脱した規制緩和を認めるものです。総合設計制度で供与できる規制緩和の範囲は、隣接地との容積率や建蔽率を授受しあえる範囲でなければならないことは、姉妹法の関係として当然なことです。

しかし、小泉・竹中内閣が考えたことは、都市計画としてどのような都市空間を造ろうとすることへの配慮は全くありません。彼等の考えた規制緩和の目的は、不良債権を良債権にするために、同じ敷地面積にできるだけ大きな容積を盛り込むことにしかありませんでした。

容積だけを詰め込もうとしても、建築物の高さ制限があれば、そこに詰め込める容積には限界があります。敷地一杯の建築物を建てれば、平屋で容積100%、それ以上階数の数値の100倍の容積率(2階で200%、3階で300%、4階で400%等々)では、壁面からの採光を取ることはできません。しかし、階数の数値の50倍程度以下の容積率であれば、壁面から十分な採光と眺望を確保できます。

建築物の高さ制限は、本来社会的に共通に利用できる空間を、土地の所有者にはいた独占的に利用させる限界を決めるもので、都市計画決定することによって許容されるものです。小泉・竹中内閣は規制緩和の目玉として、大きな土地所有者には建物の絶対高さの制限を撤廃しました。

これは都市空間を大土地所有者がその利益追求のために私的利用を許すもので、半社会的な規制緩和というほかありません。光、空気、雨などの自然現象も、野鳥や虫などの野生生物が自由に活動し、人びとが眺望や景観として感じることのできる森羅万象は、都市居住者の共有財産で、特定の人が排他独占的に専有すべきものではありません。

貧富の差がなく都市で人びとが居住の自由を得るために、近代都市計画では高い地価の都市でも低層専用住居地域(戸建住宅)と中高層専用住居(共同住宅)地域を都市計画で定めることで、人びとは家計支出の範囲で住居を求めることができるようになっています。日本で戸建住宅と共同住宅の区別を行っていないため混乱が起こっています。ラ・トゥアー・ダイカンヤマでは、本来の戸建て住宅地に高層共同住宅を高密度に持ち込むことで、交通発生量を高め、平時の都市機能に混乱を持ち込むだけではなく、東京に大震火災が発生したときの危険を持ち込むことになっているのです。

(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷 英世)



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