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HICPMメールマガジン第549号(平成26年3月4日)

掲載日2014 年 3 月 3 日

HICPMメールマガジン第549号(平成26年3月3日)

みなさんこんにちは

三寒四温と昔から言われているように変動の激しい天気が続いています。お体を大切にしてください。さて今回も「規制緩和の贋金づくり」を連載いたします。

アベノミックスで再登場の
国民の権利を蹂躙する三権(司法・行政・立法)(その8)
―官僚支配による護送船団方式のからくり―MM549号

規制緩和に甘みに群がる政・官・業
マンション建て替え円滑化法(以下「円滑化法」という。)立法における各政党の本音と建前は、立法翌年から、「衣の下の鎧」を覗かせることになりました。マンション建て替えは建て替え事業者に巨額の利益をもたらすものであることは、政府(財務省、国土交通省、地方公共団体)、産業界(建設業者、不動産業界)、政治家(与野党共通)、金融業界にとって共通の理解で、その利益をいかに自分たちの利益として引き込むかが、政・官・業の綱引きの関心ともいえます。

建築後30~40年程度経過した既存の建て替え対象となっているマンションは、高度経済成長時代に既成市街地の縁辺部か郊外に建設され、基本的に公営、公団・公社等の公共機関建築した2DK(床面積45㎡程度)です。住宅は「太陽を最大限利用した冬至4時間日照時間」(隣棟間隔25m.以上)で、居住者の熱エネルギー費用負担を最小限化した鉄筋コンクリート造5階建て共同住宅団地として建設されました。

日本最大の多摩ニュータウンの日本住宅公団のアパートは、南面平行配置で標準設計による「1団地の住宅施設」として建設され、5階まで歩行で昇る共同住宅が建設されました。戦後、不燃都市の建設を目指して、鳩山内閣が日本で始めて住宅政策を政治課題として、鉄筋コンクリート造共同住宅を都市の勤労者のために建設する目標に向けて、大規模団地を開発しました。

この住宅を小泉・竹中規制緩和内閣の視点から見ると、巨額な潜在資源が埋蔵された「日本経済再生の鍵」に映ったのです。これらの住宅団地は、例外なく、都市化によって市街化区域の既成市街地となり、地価自体は建設当時の100倍程度に上昇している例も少なくありません。その実質的に利用されている容積率は50%以下で、規制緩和で法定容積率は既成市街地のマンション同様、200%以上の開発ができます。単純に建て替えをすれば4倍の容積を詰め込めます。

これまでの同じ土地に既存の住宅の延べ面積の4倍にできることは、その敷地が4倍になったと同じことになります。仮に、路線化評価による地価公示がされていても、既存のマンションは床面積の狭く恒久的な構造で、そこに年金生活の高齢者が取り残されていれば、家賃収益還元法により評価される地価は、周辺市街地地価とは遊離した安い地価です。

多摩ニュータウンにある建て替えが違法に強行された諏訪2丁目を例にとって考えてみると、経済的旨味がわかります。
円滑化法による建て替え事業の仕組みは強制権を都知事から認可された建て替え組合が実施することになってはいますが、実態は建て替え事業者の事業として、事業利益は全建て替え事業者・東京建物㈱に帰属するようにできています。

この事業では、諏訪2丁目住宅管理組合(以下「諏訪組合」という。)不動産鑑定制度のいい加減さを悪用し不動産研究所と共謀し、東京建物㈱を建て替え業者に選考するため、円滑化法に根拠のない違法な選考協議(コンペ)を行いました。マンション市場価格(1,500万円程度)であった土地を1戸あたり350万円減額査定し、浮かせたお金を各区分所有者に、500万円移転補償費にあてると説明し、建て替え業者に選考されました。選考後、東京建物㈱その約束を反故にし、640世帯分の合計32億円横領しました。

さらに、建て替えに応じない人には、既存住宅市場では1戸あたり、1,500万円程度で取引されていたマンションを、その取り壊し費用、規制緩和を受けた容積率一杯の開発を行いながら、不正形地形など根拠のない理由で1戸あたり350万円地価評価を下げ、1戸あたり取り壊し工事費約82万円を差し引き、建て替え事業に応じられない人に対して、1戸当り1、117万円で強制収用しました。マンションを強制的に取り上げられて追い出される人に、追い出したマンションを取り壊す費用まで負担させるという全く理不尽なことを、国土交通省、東京都、多摩市の監督かで実施しました。

その資産評価は既存市場のマンション取引価格ではなく、マンション建て付け地価格を前提に、それを更地にした工事費分を減額したもので、実際の更地価格ではありません。その土地に規制緩和を取り入れ、既存のマンション容積の4倍に利用できるようにしたわけです。単純に考えて、1戸当たりの土地価格として、1戸あたり100㎡で1,500万円の土地は、4倍の6,000万円になります。従前の区分所有者に、従前同様の床面積のマンション(床面積50㎡、土地面積25㎡))は、高々2、000万円程度です。

従前の区分所有者に従前と同じ床面積のマンションを負担金ゼロの権利変換として与えても、建て替え事業者東京建物㈱は、1戸あたり4,000万円、開発全体で土地だけで256億円は儲けになります。マンション建て替えを求める理由は、規制緩和と一体となって巨額な再開発利益が得られためです。このような巨額な利益の分け前に預かろうとする政治、行政、金融、再開発関係者が、円滑化法の制定を急がせることになりました。

円滑化法の国会審議
円滑化法の国会審議を振り返ると、全ての政党が党利党略で動いただけで建て替えをされて生活基盤を奪われた貧困な高齢者のことを考えていなかったことがわかります。建て替えを強行されて困る人は、収入の途は年金だけの低所得生活者等で、既に住宅ローンし払い終えた人たちでした。これらの人たちは、豊かな自然環境が育ち、信頼できる人間関係も形成され、毎月7千円程度のわずかな団地管理費を納めるだけで安定した生活のできる「終の棲家」にしていました。

一方、建て替えを希望する区分所有者の多くはここには生活をせず、マンションを収益賃貸住宅として運用している人や、そのマンションを将来、子供等に相続することを予定者たちは、マンションを建て替えによって金儲けの手段と考えていました。個人財産の保障(憲法第29条)に妨害され、個人の利益追求のために他人を強制することはできませんでした。
このような住宅はこれから高齢化社会が拡大するとき、年金生活者に良負うな環境の住宅として望ましいものです。

しかし、マンション建て替えで大きな利益を望む人たちは、昭和58年建物区分所有法では、マンション自体の安全上危険である場合には、国民の生命財産が脅かされるという憲法第25条の理由を付け、危険性を取り除くための修繕または建て替えのいずれかを選択できることにし、経済的利益の拡大になる建て替えを行なう場合には、区分所有者の5分の4以上の賛成の「建て替え決議」をした場合には、憲法第29条第2項の公共性があるとする判断がなされました。

その大義名分をでっち上げるために、耐震性や鉄筋コンクリートの中性化を口実に既存住宅の安全性の理屈をつけ、建て替えを進めてきました。建築基準法第9条では、法律上危険であると特定行政庁が判断した場合には、建物の取り壊しを命じる規定があります。常識からすれば、第9条の条件とは凡そかけ離れたマンションに対し、建て替えの結論を正当化する理屈をつけるための耐震診断や鉄筋コンクリート中性化を理屈にした「危険性」評価が行われてきました。

いずれの危険性評価は建て替えを強行するための言い訳に過ぎないことは、関係者で知らない者はありませんが、建て替えをする政治・行政・社会経済の強い要請に押されて、耐震診断結果をめぐる裁判所での紛争では、裁判所自体に技術的判断能力が皆無に等しいため、基本的に危険性があると判断されて建て替えを容認することが行われてきました。

しかし、耐震偽装事件があり、各地に地震があっても、耐震診断の結果危険とされたマンションが倒壊した例はありません。代わりに倒壊したマンションの倒壊した科学的根拠を明らかにせず、御用学者たちは、推測をもとに、倒壊した建築物を、倒壊した結果論から耐震診断を正当化した調査報告が御用学者・研究者から多数出されています。倒壊した建築物の構造設計に立ち返って、その構造計算の欠陥を指摘した研究例はありません。私自身耐震被害を受けた現場を何度も調査したことがあります。阪神大震災でも新耐震設計法で作られた三宮にある大きなビルが倒壊し、そのちかくにある老朽マンションが無傷で残っている事例が沢山ありましたが、何故老朽ビルやマンションが無傷かという調査はありません。

そのような嘘の上塗りの耐震診断で危険マンションをでっちあげ続けられなくなったことが円滑化法制定の基本的理由です。バブル崩壊後の経済的低迷を解消するため、規制緩和により容積率を拡大し、不良債権を良債権化することで経済的利益企業に与え、経済を復興することで国民の共通理解がえられると小泉・竹中内閣は考えました。憲法第25条を根拠にして「危険性を排除することに公共性がある」屁理屈に無駄な時間はかけられないと小泉・竹中内閣は考えました。

危険でもないマンションを耐震診断で危険であると誤魔化しをしないでも、建て替えに向けて合意形成が出来れば、マンション建て替えを実施できるようにしました。建て替え事業によって利益が上げられると分かった瞬間に、「取らぬ狸の皮算用」が機能し、挙党一致の支持が得られました。経済主義を前面に出し、景気浮揚、景気刺激そのものに政治的な正当性がある考えかたが新たに提起されたのです。マンション建て替えは大きな経済的利益を生むことは証明済みです。経済的利益を多数が受けるためなら、一部の反対者はそれに従うべきであるという論理に公共性があるとした過去になかった論理(マンション建て替えに向けての合意形成)を構築したのです。

与野党を含む全政党は、建て替え事業の対象者の絶対過半数を各党は支持者に取り込めることで、円滑化法に賛成することで、選挙における支持基盤を拡大できると考えました。最大の問題は、経済的利益を拡大できる人達に媚びる結果、「弱者切捨て」を容認する政党の政治的イメージを崩さないようにする方法を各党とも考えたのでした。そこで、円滑化法に賛成し多数のマンション居住者を支持者に組み入れた上で、各党とも弱者救済をアッピールしました。

国会審議は全政党が競って弱者保護を制度化するよう衆参両院で付帯決議し、結果的に強制権を付与する事業を円滑に施行するために驚くほど手厚い補助制度を連動させることにしました。制度上、弱者救済のために手厚い国庫補助金が交付できるようになっていますが、実体は建て替え事業者に巨額の利益をもたらし、政治家や官僚は建て替え事業で儲かったお金を自分の政党の利益に誘導するように計画されていました。建て替え事業が弱者支援を無視できず、利益追求を前提にする事業のために、規制緩和による利益の拡大や、国庫からの財政支出が、公共性の根拠としておこなわれました。

潤沢な国庫補助金を建て替え事業に提供することが弱者保護になると説明されましたが、実際は業者への利益供与でした。弱者保護を重視していた日本共産党、公明党、社民党などは区分所有者の80%以上が賛成する事業であるから団地居住者の多数者の利益を自党の支持に取り付けるため、挙党一致で円滑化法の制定に賛成をするとともに、潤沢な国庫補助金が建て替え事業に供与されることに賛成しました。その補助金は結果的に建て替え事業者に対する利益供与になりました。

憲法で定められた公共性のある事業
憲法第29条第1項は、私有財産の国家による保障をうたいました。第2項では、公共の利益のためには私有財産が犠牲になることもあると規定し、第3項では、私有財産を犠牲にする場合には、犠牲が生まれるときは、その損失補償を適正に実施せよとの規定です。円滑化法の場合、この憲法の理屈を適用しますと、第2項に対応する条文は円滑化法第4条基本方針で、そこでは区分所有者の合意形成の手続きを定めました。

その具体的な法律内容を国土交通省が法律の解釈を「マンション建て替えに向けての合意形成マニュアル」(以下「マニュアル」という。)を定めました。マニュアルにはマンションの建て替えを発意から工事に着工するまでを14の工程に分け、それぞれで行う事務手続きを定めました。その中で組合員全員を強制的に事業計画作成に参加させる第8工程終了後に行う「建て替え推進決議」と、第14工程の最終段階に行なう組合員全員を強制的に工事に踏み切る「建て替え決議」という2つの節目の決議に関しては5分の4以上の絶対多数決による決議を条件にしました。

そして、「建て替え推進決議」を行った場合、建て替え事業に必要な設計図書及び権利調整に関する費用の3分の2を「優良建築物等整備事業補助金」(以下、「優良補助金」という。)として国庫補助金が供与されることになります。そして、最終の「建て替え決議」を行った場合には、建て替え事業組合に対し強制的な事業執行権とともに、建て替え事業に必要な土地整備に対しても補助金が供与されることになります。この円滑化法による建て替え事業は強制事業でこれまでの公共事業並みの手厚い補助金が供与されるものになっていました。

諏訪2丁目事例(日本最大級の建て替え事業)
この事業は現在住宅局長である井上俊之が優良補助金を交付担当住環境整備室長でした。この事業で巨額な補助金を受けた建て替え事業計画及び建て替え事業を担当する業者は、その受けた利益の一部を官僚の指示により、政治家に献金として提供することになります。円滑化法制定に力を働かせた国会議員を族議員と言い、そこには暗黙裡の了解の下にこの事業で補助金を受けて利益を得た企業は、族議員や政党に政治資金規正法に適合する形で政治献金をすることになります。
官僚はその予算規模を拡大することで政治家に対する支配権を強化します。井上俊之とその上司であった和泉洋人は円滑化法が施行されたときの室長と局長で、現在、住宅局長と内閣総理大臣補佐官の地位にあります。

井上俊之は全国で最大規模の諏訪2丁目住宅管理組合(以下諏訪組合」という。)は日本最大の多摩ニュータウンにある日本最大のマンション建て替え事業を実施することが円滑化法による事業を展開する機動力になると考えたようです。その事業をそれまで政府の住宅政策と足並みをそろえて住宅事業を実施してきた旭化成ホームズ㈱が、近年、江戸川アパートの建て替え事業を成功し、NHK・TV番組で放映されたころを評価し、井上室長は諏訪組合の建て替えコンサルタントとして使い、違法な建て替え事業の推進を図ってきました。

井上俊之は東京都及び多摩市長に対し、事業執行を急がせ、「マニュアルは単なる指針に過ぎないので、それに厳密に従わなくてもいい」と言い、マニュアルに記載された「建て替え推進決議」という名の総会決議が添付されていたら、マニュアルに定められた手続きを経なくても、優良補助金を公布する、と東京都及び多摩市に指示し、旭化成ホームズ㈱を諏訪組合のコンサルタントとして違法な建て替え補助金申請を担当させました。

その補助金を受けて作成された建て替え事業計画に対し、40%の組合員が反対し、その後、切り崩しをしても30%以上の反対が残りました。そこで諏訪組合は、国庫補助金を受けて作成した建て替え事業計画は反故にし、円滑化法に規定のない建て替え業者選考競技(コンペ)を実施しました。そのとき、国庫補助金適正化法違反で告発されていた旭化成ホームズ㈱と多摩市長は事業から撤退又は市長再選を断念し、建て替え事業が円滑に東京建物㈱の禅譲されました。

事業禅譲のために、東京建物に対し「1世帯当たり500万円の移転補償費」を全区分所有者に供与する提案をさせました。その500万円の原資のうち350万円は、既存の土地評価を、不動産研究所を使って不当に減額させ生み出したものでした。それを知らない組合員は、東京建物㈱を建て替え業者に先行した。円滑化法上、合意形成として作成された建て替え事業計画に基づく建て替え決議」なしに、建て替え業者を決定することはあり得ません。東京建物㈱は建て替え業者に選考されると、「リーマンショックで経営悪化したから500万円の移転補償金は支給できない、それを要求するなら立業者から撤退する」と言い、結局32億円を取り上げてしまいました。

組合員が混乱に乗じ、諏訪組合は昭和58年建物区分所有法の規定に基づく「建て替え決議」を実施し、その決議を根拠に円滑化法第9条による強制建て替え事業組合認可を得ました。円滑化法の制定に伴う関連改正さで「建て替え決議」の用語の定義自体が「マニュアル」で定めた建て替え事業計画を前提にした「建て替え決議」に変更されました。諏訪組合の行った「建て替え決議」の根拠法・昭和58年建物区分所有法は廃棄され、諏訪組合の決議時点には存在しません。

(BPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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