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HICPMメールマガジン第550号(平成26年3月10日)

掲載日2014 年 3 月 10 日

HICPMメールマガジン第550号(平成26年3月10日)

みなさんこんにちは

ロシアのウクライナへの侵攻、マレーシア航空の失踪、この情報を聴いた人にとってどうしようもない事件が相次いでいます。私がここで連載してきた「規制緩和の贋金づくり」は、日本の経済的停滞を解消する都市再生事業として取り組まれ、不良債権の良債権かに大きく寄与し、日本で市場経験しなかったと言われる経済的利益を上げたと経済統計は説明してきました。その陰で多くの国民は今回のウクライナ問題やマレーシア問題同様、贋金を掴ませられて苦しいおもいをしてきました。

アベノミックスで再登場の
行政権の濫用の開発行政の本質(その9)
―官僚支配による護送船団方式のからくり―MM550号

都市計画法と建築基準法の「姉妹法」の関係
都市計画法と建築基準法という2法の「姉妹法の関係」で都市計各行政が行われている国は、近代都市計画制度で都市計画を実施している国は、日本以外にはありません。そこでまず都市計画法と建築基準法の関係について説明します。日本の都市計画法は、英国の都市計画法(アーバン・アンド・ルーラル・プランニング・アクト)に倣って作られました。

英国では、都市計画法とは別に、建築物の安全、衛生規制を行う法律としてビルディング・コードがあります。同様にドイツでは都市計画法のことをバオ・ゲゼッツと言います。それとは別に、バオ・オルドヌングという建築基準法があります。米国やカナダでは、都市計画法をゾーニング・コードといい、建築物の安全衛生を監督する法律をビルディングコードといいます。このように見ていくと日本も欧米と同じように都市計画法と建築基準法という2つの法律があると勘違いしがちです。しかし、法律の構成としては都市計画法のみで建築の形態規制ができるか、出来ないかで全く違います。

世界中の都市計画法は都市全体の環境を作るために都市計画(都市のマスタープラン)を定め、それを実現する開発計画の策定とその実現を誘導し規制します。マスタープランで定めた都市空間を実現するために、都市施設と建築設計指針として建築物の配置計画と形態、用途、都市景観に関する空間計画などを都市計画法だけで決めます。

建築物は都市環境の一部を構成するため、建築物は土地という都市環境の一部に吸収されます。日本の民法が定めているように土地と建築物はそれぞれ独立した不動産ではなく、土地と一体不可分な不動産として扱われます。都市計画法では建築物は土地に立ってその効用を果たせるよう、建築物の敷地に必要な都市施設の整備を行います。そこで、欧米の都市計画法では、日本の建築基準法第3章(集団規定の規定)がすべて都市計画法の中に記載(規定)されています。

一方、欧米の建築基準法では、日本の建築基準法第2章のことしか規制の対象にしていません。米国のビルディングコードも、ドイツのバオオルドヌングも、英国のビルディングコードも、基本的にすべて同じです。欧米の建築基準法は日本で建築基準法とは違って、日本の建築基準法第3章(集団規定)は存在せず、都市計画法と独立して、建築物の一般構造、構造耐力、防耐火、避難、エネルギーなどを定め、専ら日本の建築基準法の第2章(単体規定)によってできています。

建築基準法の施行は、都市計画において建築の位置、形態等、基本的な都市環境との関係が決定した後で、そこに建築する建築物の性能条件を審査するもので、建築主事(ビルディングオフィッシャル)が、日本のような「法令との照合確認」とは違い、「計画の実施許可」を出します。日本では市街地建築物法(建築基準法の前身)の時代に警察行政として建築行政が行われ権力の濫用が見られたため、戦後の民主化の中で、建築行政は行政権の濫用にならないよう、規制のできる建築行政機関ではなく、建築取締りを行う建築主事が許可ではなく、建築計画内容の技術的照合確認をするだけになりました。現実の日本の建築行政では、法律の記述から乖離した取り締まり行政が建築確認事務の中で行われています。

そこで、都市計画法の開発許可と建築基準法の確認の関係は、欧米の都市計画法が一本の法律で行っていることを日本では都市計画法と建築基準法の2つの法律で行うため交通整理が行われました。「建築物」を都市計画法では「予定建築物」と扱い、都市計画法では建築基準法で扱う「建築物」が建築できるよう「予定建築物の敷地の整備」までを扱うことにしました。都市計画法で扱う「予定建築物の敷地の整備」が建築基準法第3章で定める形態規制や用途規制の大枠に適合していることや、予定建築物が建築される地盤(人工地盤を含む)のことは開発許可の基準として審査します。

建築物自体の具体的な技術的な審査は都市計画法では行わず、都市計画法は「予定建築物の敷地」を対象にした都市計画法との関係分野を審査してから、建築基準法行政として建築の確認をします。建築物は都市計画で開発された敷地の上に、都市計画法で許可された形態、用途、機能を有する建築物として建築することは、都市計画法の許可内容が規制の対象にされます。しかし、建築物が安全、衛生等が適正であることは、建築基準法や消防法等関連建築確認対象法令で扱います。米国やカナダではファイアーコードがあり、そこで建築基準法第2章の防火、耐火、避難の規制をしています。

建築確認と開発許可との関係
1968年都市計画法が制定された経緯は、都市化が高度成長経済の影響で急速に進み、都市施設の未整備なところに建築物が建築され、都市の将来が都市施設の未整備な建築により都市のスラム化が危惧されたからです。その対策として、市街化区域と市街化調整区域の線引きと開発許可制度が、英国の都市計画法の計画許可に倣って作られました。そして、都市計画法による開発許可を行ってからでなければ建築行為をしてはならないことが都市計画法第29条、第37条及び建築基準法第6条(建築基準法施行邸第9条)で両法律の役割の境界と行政事務の順序が明文化されました。

日本の行政では都市計画法は土木行政と考え、建築基準法は建築行政と区分してきました。この都市計画法と建築基準法の行政上の区分は、土木工学と建築工学との区分をそのまま反映するとともに、建設業法上の土木工事業と建築工事業を区別するものになっていました。その背景にある土木工学と建築工学とを別の技術体系と扱うことは、構造学理論から鉄筋コンクリート造や鉄骨造の構造解析や施工技術に及んでいます。構造理論や施工理論まで土木工学と建築工学とは別の学問体系として扱い、土木と建築の鉄筋コンクリートが、全く違った技術体系で扱われているのです。

土木工学と建築工学の技術の違いは、実際の土木工事と建築工事を行う建設業者の仕事を別のものにしたため、土木工事と建築工事は分離して行うことが一般的になっていました。そこで開発許可関係の仕事は土木の仕事、建築確認の仕事は敷地の細造成から基礎工事を建築工事一体として行うことになりました。そのため、土木工事では土工事で地盤を平滑にする粗造成工事までを行い、その後、建築工事で一旦造成した地盤を掘削しなおして、基礎工事から地階工事を行うことが一般的に行われてきました。そこで建築工事で人工地盤を含む工事全体を行うため登場した建築物が複合建築です。

しかし、この方法は一旦土工事で地盤面を造って(開発許可による工事完了公告)から建築工事を始めるため、粗造成が無駄になるため、開発許可による工事段階で建築工事を並行的に始められないかという要請が経済団体連合会から毎年のように要望されてきました。人工地盤を造り、そのうえに予定建築物を作り、人工地盤内の空間を建築物に利用する取り組みも散発的に実施されてきましたが、土木と建築の対立があってなかなかうまく進みませんでした。

福岡県糸島市で㈱大建が取り組んだNCZ工法
この工法は、この問題に真正面から取り組んだものでした。NCZ工法によって造られる人工地盤は基本的に予定建築物の敷地の問題ですから、都市画法の開発許可に係る問題です。都市計画法制定時の都市局と住宅局の合意に基づき、人工地盤を都市計画法で実施した問題に建築基準法の行政が割り込むことはできません。予定建築物のための人工地盤の構造耐力の問題は、都市計画法で扱う地盤の問題です。人工地盤を都市計画法の領域として築造するまでは、土木工事としてつくった地盤(敷地)の上に、予定建築物を建築することですから、人工地盤を含む敷地造成までが、都市計画法の問題で、それ以降(開発許可後)の建築物を人工地盤上に建築する問題が建築基準法の問題になります。

人工地盤を含む敷地の上に建築物を建てるとき、都市計画法で人工地盤が鉄筋コンクリート造で築造されます。人工地盤が予定建築物の基礎と同じ機能を担っているから、人工地盤部分を建築物の基礎とみなし、混構造扱いをすることは法律上ありえないことです。現行建築基準法施行令の構造を見れば明らかなように、「一建築物一構造」の法律体系において、建築基準法上は混構造を受け入れる体系にはなっていません。木構造に鉄筋コンクリート増の高基礎を使った場合だけ特殊扱いをしています。その延長線上で土地利用の高密度化の要求により地下の鉄筋コンクリート構造部分の大きい建築物が登場するようになると、鉄筋コンクリート造とその上に築造される木造や鉄骨造を混構造とした扱いが作られました。

混構造登場以前までは、建築基準法では岩盤のような硬い地盤に建築された木造建築は地震に対し安全とされてきました。その考え方の延長線上で、鉄筋コンクリート造の上部に建築された木造は、安全地盤上の建築物と見做されてきました。その後、鉄筋コンクリート造工作物上に建築された木造は地盤のゆれに対し、硬い構造部分が高い位置にある木構造部分を振り回すので、地盤面から高い位置にある木構造部分は地震動に対し危険性が高まる混構造理論が登場しました。つまり、建築基準法制定時には、鉄筋コンクリート造の地盤や地階部分は木造にとって安全条件であったものが、混構造理論により、鉄筋コンクリート造で木造を支持することで、木造は構造的に危険性が高くなったという摩訶不思議な主張です。

米国の地震地帯で2×4構造で~2階を鉄筋コンクリートで造る建築では、上階に造られる木造部分は構造的に安全な工作物に支持されているとされ、鉄筋コンクリート造部分が木造部分を振り回すとはしていません。鉄筋コンクリート造部分で木造部分を支持する構造は、木造部分に対し地盤として機能していると考えることが妥当です。混構造は構造計算の遊びに過ぎず、木構造との比較で、地盤と一体的に動くと考えられる鉄筋コンクリート部分の下部構造を、木構造部分を振り回す木構造にとって危険な構造とする混構造理論は、「日本の常識であっても、世界の非常識」です。

下衆の勘繰りを行う建築行政
NCZ工法のように、都市計画法の立法の経緯と法律条文に照らして都市計画法上の地盤として造られた人工地盤に対して、都市計画法上の工作物として扱うことは当然です。しかし、建築行政は都市計画法で築造した人工地盤に対して、その人工地盤部分を建築物の地下部分とみなし、建築基準法で始めた混構造の取り扱いをしようとしてきました。この都市計画法の開発許可により造られた人工地盤に対して、建築行政が建築確認に際して、その人工地盤が建築基準法で扱う混構造の基準に適合していることを確かめる屋上屋の安全確認をする要求をしてきました。建築基準法が都市計画法において許可の対象にしたことに対して、後から建築基準法の法域であるということはできません。

NCZ工法に関する福岡県の行政上の扱いに関し、申請者である㈱大建の申請に対し、開発許可権者である福岡県の審査担当者が建築職であったことから、開発許可でこの問題を取り扱いに関し、建築基準法を施行する特定行政庁の意見に影響されて許可を渋っていましたが、都市計画法に適合した申請であったため許可を行いました。その後、建築基準法による確認申請が出されましたが、特定行政庁である福岡県知事は指定確認検査機関に対し確認を妨害したので、福岡県の建築主事が確認申請をしました。建築主事は建築基準法上の根拠を明らかにすることなく、NCZによる構造安全性が今構造の基準に適合していないことを理由に確認を遅らせることを行い、最後までNCZ工法を、特定行政庁が考える「事実上、建築基準法の行政指導の範疇に入る指導を強要してきました。

この事例に見られるように、都市計画行政と建築行政とが重なる場合には、行政官の縄張りにより開発業者は工期が長くなることを嫌って、開発許可手続自体を廃止し、または、省略するよう、経済団体連合会は毎年のように開発許可工事段階での建築控除を実施できるように要求してきました。しかし、この制度は、都市計画の基本にかかわる問題であったために建設省時代には、業界の要請に応じることができませんでした。しかし、小泉・竹中内閣の規制緩和により、事実上開発許可行政は大幅の後退し、建築物の扱いは建築基準法の大幅に緩和されることで建築行政は業者と癒着した恣意的な行政となり、法律に基づくNCZのような開発は、建築行政により不当に妨害され、非常にやり難くなっています。

NCZ工法は予定建築物の地盤を整備する技術ですから、都市計画法で言う開発行為をすることには、法律上、何の疑義もありません。しかし、都市計画法第29条による開発許可は、予定建築物の敷地面積が500平方メートルを超える場合に行うべきことを義務付けており、それ以下の開発行為には開発許可は不要です。その場合には、NCZ工法が都市計画法に基づく土木の構造基準に適合するように設計施工されていればよいことになります。また、もし人工地盤内に建築空間を造るときには、地下工作物内の建築物という扱いを受けることになり、容積率のカウントは不要になります。建築行政はその行政は自らの監督が行われない所には不正が起こるような下衆の勘繰りをしますが、それは許されません。

東京都が業者の言いなりの開発許可制度骨抜き(違反幇助)を実施
小泉・竹中内閣による規制緩和に基づく東京都の開発許可においては、以下のような二つの都市計画法蹂躙が白昼公然と実施されるようになりました。一つは「制限解除」という名前で、都市計画法第37条のただし書きを、法律の立法趣旨と全く逆の解釈を持ち込んで、開発許可工事期間中に建築工事を始めたことです。第37条但し書きは、開発許可に必要な工事現場の事務所や材料置き場様建築など、開発許可実施上必要区可決な物は開発許可権者の許可を受けて建築できることを定めた規定です。それを東京都では第37条の規定に違反して、予定建築物の建築に対して許可をするようにしてしまったのです。都市計画法立法時の建設省内の住宅局と都市局の合意である「都市施設の整備がされてから出なければ建築行為を行わせない」という約束の基づき制定された両法の関係条文違反の公然たる蹂躙です。

もう一つは、都市計画法で最も重視している開発行為の監督に関して、都市計画法ではその対象となっている開発行為に誤りがないよう、都市計画法第12条で、開発行為の法律上の定義を「区画形質の変更」であると規定しています。しかし、東京都は「開発の手引き」という解説書を作成し、そこで「開発許可の定義」を違法な内容に解説し直し、開発許可を行わないで建築工事を実施できるようにしました。開発許可は予定建築物の敷地が500平方メートル以上のときは、法定都市計画及び都市施設、並びに都市環境と調和すること(開発許可の基準)を調べ、許可をすることを定めたものです。東京都の「開発許可の手引き」は、地盤面を1m.以上伐りまたは盛ると定義し、開発許可を不要としたのです。つまり、都市計画法制定以前と同様に開発許可なしで建築工事を行い、建築工事としての地盤面を造るようになったことです。

都市計画法が制定できた時代背景には、都市のインフラが未整備な状態で建築行為が進行し、都市施設、社会福祉施設、学校教育施設が追いつかず、市民に「都市生活に欠陥のある住宅を供給する」ので、それを未然に防ぐことが都市計画法の目的の中心に置かれていました。小泉竹中内閣で規制緩和の都市再生事業が行われ、大都市のスカイラインが短期に変わってしまうほど膨大な量の超高層マンション、商業・業務ビルが建設されました。その結果、都市計画法が規制した学校教育施設の容量をはるかに超過したマンションの供給により義務教育の学校の教室が不足し、教育委員会は急遽仮設の学校を建設しなければならなくなりました。同様なことは開発許可基準違反の道路は渋滞問題を惹き起こし、都市の大震時の緊急車両の通行を不可能にする危険を拡大することになっています。

小泉・竹中内閣が行った規制緩和は、都市計画法と建築基準法の姉妹法の関係をぶち壊し、既存の土木と建築の利権に沿って縄張りごとに工事をやりやすくしたもので、都市計画法と建築基準法が相互に有機的な関係をもって都市整備をする仕組みを破壊するものでした、その結果適法な工事を合理的に行おうとしたNCZ工法が大きなしわ寄せを受けることになったのです。「ムリを通すことで道理が引っ込まされた」日本の政治行政の縮図なのです。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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