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HICPMメールマガジン第555号(平成26年4月14日)

掲載日2014 年 4 月 14 日

HICPMメールマガジン第555号(平成26年4月14日)
みなさんこんにちは

前回に引き続く荻浦ガーデンサバーブの総括をお送りすることにしました。今回は都市計画法と建築基準法がこの開発にどのように使われたかを中心に、開発許可と建築確認という許認可の行政手続きとの関係から、実際の行政事務として行なわれたことをお伝えすることにしました。

米国の住宅地経営に学ぶ「新しい住宅地環境形成手法」
―荻浦ガーデンサバーブと都市計画法と建築基準法―(その2)MM554

1.二つの都市計画事業としての住宅地経営技術
(1)「一敷地一建築物(サブディビジョンコントロール)」から「PUD(一団地住宅経営)」へ

ラドバーンで開発された資産形成を実現する住宅地経営の方法は、1950年、GHQの指導のもとでつくられた建築基準法が制定されたときに、その一部が都市計画法と建築基準法の中に、以下の二つの制度として導入されました。
(一)都市計画法と一体的に整備された「地域地区に関する土地利用」:(マスタープラン)に対応する建築基準法第3章規定及び:(アーキテクチュラルガイドライン)
(二)「一団地の住宅施設」:(マスタープラン)に対応する建築基準法第6章(雑則)第68条の規定及び建築基準法:(アーキテクチュラルガイドライン)
住宅地開発は、このいずれかの仕組みの選択をすることになりますが、いずれの選択の場合にも、街並み景観(環境)を整備する制度として、付加すべきハードのルール及びソフトのルールとして第4章建築協定建築協定(アーキテクチュラルガイドライン)が制度として使えるよう建築基準法は作られました。しかし、建築協定は建築基準法上の強制規定であるにも拘わらず、その運用上確認対象法令と扱わないなど、違法に、実質的に任意協定的に扱われてきました。

これらはいずれも米国の住宅地開発のベースとなっているCC&RSの内容です。ラドバーン計画において実践された方法は、このゾーニングコード(地域地区として定められたマスタープラン)と「一敷地、一建築物」の原則のもとで都市計画規制をアーキテクチュラルガイドラインにより受けるサブディビジョンコントロールの開発でした。その開発技法は、1960年代、米国で高地価に対し、「木造耐火建築物を可能にした2×4工法によるタウンハウス技術」と「優れたランドスケーピング技術」により、高密度な環境整備手法として開発されたPUD(プランド・ユニット・デベロップメント:一団地住宅経営)の技法により、「戸建住宅並の環境をアパート並の住居費負担で手に入れられる方法」として発展しました。

(2)都市計画施設としての一団地の住宅施設
1968年新都市計画法の制定に当っても、それまでの「一団地住宅施設」(都市計画法第11条第1項第8号)はそのまま踏襲されました。「一団地の住宅施設」は、都市計画施設として都市計画決定される公共性の高い施設であることから、土地収用法で収用権を付与している「一団地の住宅」と平仄を合わせ、都市計画法による強制権(公共性)を付与できる条件として、「50戸以上の住宅によって構成される一団地であること」が求められました。そして都市計画法で定められた「一団地の住宅施設」の都市計画決定をした場合には、土地の取得に関し公共性が認められ、強制権(収用)することができます。都市計画決定をした「一団地の住宅施設」に計画される建築基準法上の建築物に対するハードなルール(建築規制)は、建築基準法第6章雑則第68条で定められます。

(3)任意事業として実施できる「一団地の住宅」
一方、「50戸未満の一団地の住宅地経営を行う場合」には、その事業のための都市計画決定をすることができないし、その事業に公共性を付与することはできません。しかし、その場合の一団地の住宅経営を行う場合、強制権の裏付けは与えられませんが、つまり、都市計画法ではその住宅地経営に公共性を与えられませんが、事業実施を禁止するわけではなく、事業は建築基準法による任意事業として行うことになります。「戸数が50戸未満の一団地経営を実施する場合」は、住宅地全体を「用途上不可分の関係にある2以上の建築物がある一団地の土地」(建築基準法施行令第1条第

一号)として、全体を一敷地として扱うことになります。
この扱いは「一団地の官公庁施設」、多数の公社が一段地の土地に建設される学校、コテッジ型の旅館・ホテルのように敷地全体が一人の個人又は法人の経営管理下にある建築群の敷地の扱いと同じです。住宅地の場合、その一団の住宅の敷地が、住宅開発業者又はHOA(ホームオーナーズアソシエイション)により、継続的に全体を経営管理する条件が維持される限り、全体の建築物は一敷地にあるものとみなされます。しかし、住宅地開発後、経営管理が住宅所有者によってばらばらに行われるときは、住宅ごとに固有の敷地を定めなければなりません。

米国の住宅地開発は、基本的に住宅地経営をHOAが実施することにより維持向上させるため、PUDの例に見るとおり、住宅地全体が有機的な関係のある一団地として扱われます。しかし、HOAが存在せず、地方公共団体の都市計画行政で監督される地域もあり、そこでは「一敷地一建築物」(サブディビジョンコンとロール)の原則の下に、地方自治体の直接的な建築規制を受けます。

2.「荻浦ガーデンサバーブ」の「一敷地」としての土地利用計画
(1)50戸未満の「一団地住宅施設」

「荻浦ガーデンサバーブ」の開発は、総戸数18戸とコモンハウスで、総戸数が50戸未満であったので、都市計画法第11条第1項第8号に定める「一団地の住宅施設」には該当しませんでした。この開発地は居住者に高い生活満足を与えるよう、豊かな自然環境を住各地環境に取り入れて計画として開発し、環境管理をするものです。そこで住宅地計画にあたり全体を一敷地とした公園の中に住宅を含む生活環境を計画することにした。

18戸の住宅とコモンハウスを連続住宅(建築構造的には独立住宅が隣地境界線に接して建設)が公園を囲んで建築されました。住戸ごとにその専用敷地は区分され土地と住宅を単位に不動産登記法上の独立住宅として登記されています。この住宅地には居住者の豊かな住宅環境を健全に維持管理するためのコモンハウス(HOA事務所と集会所・ゲストハウスで構成される)が計画されました。この住宅地に生活する人たちがコモンハウスをもつことで、各住宅ではできない集会や保育など社会的営みや、来客の宿泊を受け入れることができます。

(2)「一敷地」としての住環境形成

住宅地の中央には中高木の多数植えられた公園がつくられ、そこには金魚やメダカが泳ぐ池と子供達が遊べ、催し物のできるウッドデッキのステージがあります。また、住宅地の北側には、鉄道を眺めることのできる散策路がウッドデッキでつくられ子供達の遊び場にもなっています。各住宅に1台分の駐車ができる共同駐車場が設けられ、そこには秋には紅葉するアメリカ楓の並木が作られ、駐車場の屋根には太陽発電施設が設けられています。

住宅地には、緊急車両を導入させる幅員6メートルの都市計画道路が計画されていますが、HOAの管理下にあって、平時は車両が進入しない公園として管理されています。公園の地下には、敷地に降雨した雨水を地下貯留施設「ためとっと」が造られ、平時は中水供給をしますが、緊急時の飲料水の供給源となります。また、クラインガルテン(菜園)などが住宅地全体の共同施設としてHOAにより経営されています。このような土地利用計画は、全体を一敷地とした土地利用計画によってしか可能にすることはできません。

3.都市計画法第29条による開発行為と開発許可
(1)都市計画法制定当時の都市局と住宅局の合意事項

都市計画違法と建築基準法の関係は1968年新都市計画法が制定されたとき、その行政境界が決められました。新都市計画法は英国の都市計画法をモデルにしたため、その原案では建築基準法第3章を吸収する内容になっていました。そのため、建設省住宅局と都市局との間で厳しい折衝が繰り返され、結果的には、都市計画法では建築物そのものの規制に及ぶ事務は行わないことになりました。都市計画法案では、「建築物」の用語を、「予定建築物」に改め、都市計画法行政では予定建築物を建築する地盤の整備までを行い、開発行為の間、建築行為は禁止し(都市計画法第37条)、開発許可の完了以降に建築行政が建築規制を行うこと(建築基準法第6条、建築基準法施行令第9条第十二号)になりました。「荻浦ガーデンサバーブ」の都市計画法上の手続きは、新都市計画法制定時の建設省内での都市局と住宅局との合意に基づく法手続きどおりに実施しました。

(2)「荻浦ガーデンサバーブ」の開発許可
荻浦ガーデンサバーブの敷地には4つの長屋(正しくは連続住宅)が建築されますが、開発許可は全体を一敷地として整備をすることになり、4つの長屋ごとに固有の敷地があるわけではありません。開発許可の条件として都市計画道路を築造しますが、都市計画法上の道路とみなされる道路は敷地内に築造され、その実体はHOAの管理下に置かれる私道です。4つの長屋の敷地を開発行為の区画として決めることはありません。もともと全体が一の敷地であるものを4つの長屋ごとに分離して確認申請を行なうために敷地を定める必要もありません。18戸の分譲住宅には専用の敷地とその敷地境界線に接して建てられる戸建住宅があります。これらの固有の敷地を持つ戸建住宅は、「不動産登記法上の敷地」であって、「建築基準法上の敷地」ではありません。「建築基準法上の敷地は全体の一つの敷地」だけです。

4.NCZ工法による人工地盤を使った住宅地経営
(1)予定建築物を支持する「人工地盤」

荻浦ガーデンサバーブは敷地面積が2,700平方メートルあるため、都市計画法第29条による開発許可を受ける必要があります。この敷地は敷地の前面道路より北下がりの土地であるため、敷地全体を前面道路より高くし、開発に当たってこの土地から土地の般出入をしないような計画をすることで、土工事に要するコストを最小限にするとともに、予定建築物である長屋(木造連続住宅)を開発事業の完了後、手戻りなく連続的に建築工事として実施できるようにNCZ工法と命名した「人工地盤」を建設することにしました。

この人工地盤は予定建築物の土台を支持するための擁壁として造り、人工地盤の内部で擁壁に囲われた部分は、建築利用できる空間となるように計画しました。これは自動車専用道路の高架工作物の下部を建築利用する方法と同じ空間の有効利用の方法です。人工地盤内の建築物空間として造ることで、利用することのできる建築空間を増大し、予定建築物を建築する地盤を前面道路より高くすることができます。それだけでなく、敷地からの土地の搬出入をプラスマイナスゼロにすることができるように計画した。人工地盤は通常の荷重にたいし十分安全であるとともに、土地が自身で液状化し、地盤の支持力と摩擦力がゼロになったとき、アルキメデスの法則により荷重と浮力がバランスし、沈下も浮上もしないように計画され、X軸及びY軸に対称な人工地盤とすることで地盤の液状化がおきても、不当沈下の起きない計画にしました。

(2)人工地盤内部空間の建築利用
人工地盤内の空間の建築利用は、多様な入居者のライフステージの変化に伴い生活要求も変化すると考えられたので、生活要求に合わせた利用を自由に考えてもらえるようにしました。この場合の人工地盤内の建築利用は、上部に建築される予定建築物・長屋(連続住宅)の各戸と一体的に住宅として利用されよう計画されましたが、法律上はその部分はあくまで人工地盤内の建築利用であって、予定建築物とは別の「独立した工作物(人工地盤)中」の建築物です。
人工地盤内の空間を開発許可が完了後に建築物として利用するときには、その空間は建築空間になるため、建築基準法上の手続き(建築基準法第87条)をする必要がありますが、100平方未満の面積の空間の住宅利用は建築基準法上の手続き免除です。

人工地盤内の空間利用は、専用自動車道路や高架鉄道の高架工作物内にある建築物利用の例によることになります。つまり、人工地盤という都市計画構造物内の空間の建築利用です。ただし、不動産登記法上、個別に分譲を受ける住宅ごとの敷地は、明確にし、共有地に関してはHOAの管理下に置かれることになりました。

当初、福岡県では、「人工地盤内の空間と予定建築物が一体の住宅として利用されるのであれば、建築用途となった構造物全体が建築物になる」という見解を示した。そのような理解であれば、人工地盤自体が建築物になり、開発行為では造れないことになります。人工地盤を築造してからその内部空間を建築利用にしたら、その段階で「人工地盤が建築物になる」という福岡県の考え方は、鉄道や専用自動車道に高架工作物の下の建築利用をしたら、「高架工作物全体が建築物になる」ということになり、法律上の解釈としては不合理です。そのため、福岡県は、㈱大建の法解釈に従って開発許可をせざるをえませんでした。

(3)人工地盤以外の開発許可に必要な開発計画
都市計画上の配慮として緊急車両がその緊急活動を行えるようにという都市計画行政からの指導を㈱大建は受け入れ、敷地内部の幅員6メートルの道路を緊急車両が進入し、活動するように計画しましたが、平時には緊急車両が進入することがないので、この都市計画道路は建設時には㈱大建が管理者となり、入居が始まって以降は、「HOAが道路管理者となり、道路を車の進入禁止の公園としてする」ことにしました。そのため、道路及び公園に関する都市計画法第32条協議は開発事業者と道路管理者が同一人であるため、不要となりました。

下水に関しては、当初雨水及び汚水をこの敷地の中で全て再利用する事も検討しましたが、技術的に解決しきるための準備期間がなく、結果的に雨水は再利用循環を図りましたが、汚水・雑排水に関しては公共下水道に依存し、管理者との協議をしました。

(4)宅地と敷地
敷地全体が一敷地であるため、開発計画では長屋(連続住宅)ごとの敷地区画を造る必要はありませんでした。連続住宅の専用敷地は、NCZ工法で造られた人工地盤として造られています。人工地盤上に建築される住宅は、不動産登記法上の「占有敷地付き独立住宅」として登記することになっていますが、この専用住宅の敷地は、不動産登記法上の敷地であって、建築基準法上の敷地ではありません。建築基準法上の敷地は2700平方メートル全体が一の敷地です。

5.敷地内に降った雨水の貯留貯水池「ためとっと」
わが国はアジアモンスーン地域にあるため、水は無限に供給される資源のように勘違いしていますが、世界的に見ると水は限られた資源で、全ての生物にとって、生命を維持する上の不可欠の限られた資源です。将来に向けて水資源を有効に利用することができるように,敷地内に降った雨水を敷地内に貯留し、緊急時に使用できるようにするとともに、平時においては地下の恒温性(13-15度摂氏)の環境を利用して、それを熱交換することで、空気調和に利用することができます。

この地下貯留施設は、九州大学との共同研究で開発されたもので、礫の間隙に雨水を貯留するものです。この礫の間には活性汚泥菌が生息するようになり、貯留された雨水をエコロジカルなメカニズムで浄水化することができています。その結果、「ためとっと」を築造して3年経過し、その間の貯留水の観測の結果、水質は浄水以上に優れた性質を持った水になっていることが判明しました。当然この水をそのまま飲料水として利用することも可能ですが、水質に不安があれば煮沸して利用すれば問題はありません。常時の利用としては、中水利用としてトイレの洗浄水や植物に与える水とされていますが、水質を確かめて飲料水とすることも可能です。

(NPO法人住宅生産生研究会 理事長 戸谷 英世)



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