メールマガジン

メールマガジンだお561号(平成26年5月26日)

掲載日2014 年 5 月 26 日

MM561号(5月26日)
みなさんこんにちは

「オランダとベルギーの街並みと住宅」の学習研究報告,第4回として限られた家計費支出の範囲で豊かな(ディーセント)な空間をつくっている「オランダの社会住宅」を調査した報告をお送りいたします。

50年前の世界を見る思い
日本でも戦後の住宅政策は、今回オランダで調査した社会住宅と同じ考え方に則り、国民の住居費負担との関係で住宅政策を立案する消費者本位の政策がとられていました。政府が住宅難世帯の解消を実現するため、公営住宅、公団住宅、公庫住宅を政府施策住宅の3本柱に立て、戦後の住宅政策を始めました。そのときは現代のヨーロッパの住宅政策と共通した政策理念に立っていました。今回、オランダの社会住宅を実際に調査し、50年前にタイムスリップした懐かしさを感じました。しかし、現在の日本の住宅政策では、国民の住居費負担を住宅政策との関係で考える世界の工業先進国の住宅政策の共通した常識は消滅しています。代わって、如何にして住宅産業が営業販売の技術を使って安く作った目新しい住宅を国民に高額で高い利益を上げて売り抜け(「差別化」と呼ぶ詐欺手法)、高い企業利益を上げるかに政策の重点が移り落差を感じました。

ダイワハウス会長への旭日大叙勲と日本の住宅政策
オランダから帰国して、留守中にたまった新聞を斜め読みしていたら、ダイワハウス会長が巨額な利益を上げた経営手腕の優れた企業家として国から旭日大叙勲を与えられ表彰された記事が載っていました。ダイワハウスが巨額な利益を上げられた理由は、実際の販売価格の半分の価値しかない住宅をその2倍もの価格で販売し巨額の利益を上げたからで、儲かって当然です。販売できた直接的な理由は、金融機関がハウスメーカーの言うなりの販売価格に見合う融資を認めたから購入者の購買能力が生まれ販売できただけです。日本の住宅政策は消費者を騙し、住宅の価値を鑑定評価しないで、営業販売にかけた費用をすべて販売価格で回収し、その販売価格に銀行が住宅ローンを与えることを容認してきました。大手ハウスメーカーの住宅は、直接工事費が住宅販売価格の40%で、残りの60%は営業販売のための経費の回収に充てています。世界のモーゲージローンを行う住宅金融機関ならば、直接工事費である販売価格の40%にしか融資をしません。日本の住宅購入者はサラ金と同じクレジットローンで価値の半分しかない住宅をその価値を無視してローンを組まされ、買わされ、購入価格の半分の損を被り、その住宅を市場で処分する場合、半額でしか処分できません。住宅会社は巨額の利益を上げているのです。

国民本位の住宅政策か、住宅産業本位の住宅政策か
住宅購入者がローン返済をできなくなっても、住宅会社は売買契約の解除を認めず、金融機関も、欧米のように住宅を差押えてローン残高を相殺してくれません。日本では土地まで抑えても、ローン残高との相殺をしてくれません。政府は、銀行自体も価値を認めていない住宅にローンを与える住宅政策を護送船団方式により実施し、ハウスメーカーに巨額な儲けが得られるようにし、見返りに政治献金を受けてきました。まさに安倍内閣の住宅政策を象徴する受賞です。
日本のハウスメーカーの高額住宅を中古住宅で販売したときには、仮に入居していない住宅でも中古住宅として扱われ、住宅販売したハウスメーカーは販売価格で引き取ることはあり得ず、住宅金融機関もその住宅に融資をしません。それは価値が半分で営業販売経費を使ってしまった住宅は、住宅市場で初期販売価格での取引はできないないからです。世界の工業先進国の中で日本だけが住宅の価値をもとにしたモーゲージローンではありません。消費者に「詐欺と同じ方法」で低価値の住宅を高額で販売し、巨額の利益を上げ企業経営者を政府が表彰したのです。

社会住宅とシュワーベの法則
日本の戦後の住宅政策は住宅は国民の家計費支出の対応できる範囲の住居費で住宅は供給されなければならないという英国やオランダなど北欧工業先進国の住宅政策に倣って、公営住宅、公団住宅、公庫住宅という政府施策住宅の制度を始めました。そのときの適正住居費の考え方は、ドイツの統計学者シュワーベの理論を日本の現状に読み替えて公共住宅政策が策定されました。私が建設省住宅局に入省した一つの理由は、カールマルクスの『共産党宣言』(岩波文庫)やエンゲルスの『住宅問題』(岩波文庫)を読み、上野洋著『日本の住宅政策』,『北ヨーロッパの住宅上・下』、『建築学体系第1巻・住宅問題』(彰国社)、西山卯三著『日本の住宅問題』(岩波新書)を読んだことが直接のきっかけになっています。これらの住宅問題の書籍に書かれていたことは、建設省入省当時の住宅局の雰囲気を表していました。住宅政策は国民の住居費負担能力の範囲でいかにして適正な品質の住宅を供給するかでなければならないと考えていました。

住居費負担と住宅建設価格の関係
この原則は現在の欧米に共通している住宅政策の考え方です。住宅政策は国民の所得に比較して飛び抜けて高額な住宅費負担を国民の住居費負担の範囲の価格、家賃に引き下げて供給することが世界の常識になっています。住宅のような国民にとっての必需品を、その価値の2倍もの価格で販売し大儲けをし、購入した国民の資産を蝕んでいる大手住宅産業経営者に、国の最高の叙勲を与え、国民を貧困にすることを容認している住宅政策を実施している国が、民主国家であるはずはありません。住宅の価値を評価する方法を不動産鑑定評価といいます。その基本は、日本の場合、戦後のGHQによる占領下で米国の建設業法に倣って、建設業違法第20条に明記されています。すなわち、実際に使用した材料と労務の数量に、実際支払った単価を乗じて積算した直接工事費に、20%の平均粗利を加算した見積り額として評価されています。しかし、この規定は有名無実の規定にさせられています。そのうえ、日本では欧米と違い、民法で、土地と建築物は独立した不動産として扱われています。そのような扱いは社会科学的にありえないことです。住宅は土地に建てられて住宅としての効用を発揮するもので、土地に定着しない住宅は建材と同じです。住宅の価値は住宅不動産という住環境全体としての効用を手にするための費用です。土地建物一体の見積額を基本に市場の需給関係を反映して決められます。現在の日本のように土地建物を分離し、建物だけで価格操作が行われ、その操作価格を金融機関が支援することは自由市場原理に反しています。日本の住宅価格の決め方は世界の常識の全く通用しない決め方です。

社会住宅の国オランダ
英国のサッチャー首相が財政破たんを救済するために公営住宅政策を放棄しましたが、それに代わる政策として家賃補助政策を取り入れ、住宅政策の基本は、国民の適正住居費負担で住宅を供給する政策を基本的に踏襲しました。この家賃補助政策は、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグというベネルックス3国や、デンマーク、スウェーデン、ノルウエー、ドイツ、イタリア、フランスはもとより、北欧住宅先進国ではすでに実践されていたものに英国が倣ったものです。これらの家賃補助制度により国民の住水準を保障する住宅を総称して、ヨーロッパでは「社会住宅(ソーシャルハウジング)」と呼んでいます。それは国家が国民にとって適正(ディーセント)な品質の住宅を、入居者の所得の負担できる範囲で享受できるように家賃補助を行う政策です。そのため供給される住宅はすべて一定の品質(日本では考えられないような優れたデザイン、高機能、高品質)の住宅を、適正な家賃負担(所得の30%以内という驚くほど低い家賃負担)で供給しています。その結果、国民に豊かな生活を保障し、社会住宅は居住者を重い住居費負担から解放させ、家賃補助で軽減した家賃分だけの高い消費能力を国民が保持し、個人の家計での経済的余裕を個人消費に回すことで、国家経済を活性化させています。

取引価格と家賃の根拠となる住宅不動産の価値評価
社会住宅は国家の家賃補助の対象になりますから、当然、その価格の適正さに対する国家の審査が入ってきます。一方、一般の民間市場で取引される住宅に対しても、金融機関はその住宅不動産評価を第3者機関で鑑定評価することを根拠に融資を行っています。住宅金融は基本的にモーゲージですから、市場で取引される価格を正確に評価する不動産鑑定評価が取引の条件になります。日本のように巨額な住宅営業販売経費を販売価格として回収する価格決定方式(価値と乖離した価格決定方式)を金融機関は認めません。それはローン返済事故が発生したとき、市場取引価格から乖離した価格では債権回収できないので、そのような販売経費回収を前提にした住宅ローンは認めません。オランダでは住宅ローンはモーゲージで、住宅不動産評価が土地住宅を不可分とした住環境評価を前提にした推定再建築価格とすることで、住宅価格が物価に連動する以上に上昇する経済環境をつくっています。日本では住宅や食品等の生活必需品にまで高い消費税がかけられていますが、欧米では食住に対する消費税は基本的に免除されています。今回、社会住宅の調査を目的にしたいたわけではありませんが、娘の手配で社会住宅を3件見学し、入居者とその家族の方から食事のご招待を受け、詳しいお話を聞くことができました。

社会住宅地の事例調査:アルファン・アン・デン・ライン
このライデン郊外の町ファン・アン・デン・ラインでは社会住宅(家賃補助)による公的援助を行っている住宅地を見学しました。ひとつの住宅棟は、目下単身居住者が居住している住宅と、もうひとつの住宅棟は、アシステッド・リビングの社会住宅でした。これも現在、高齢者が単身居住している住宅でした。そのうち、単身居住の一般住宅はメゾネットハウスとしてかなり高密度な開発をした中層共同住宅(マルティ・ファミリー・ハウス)でした。ワンベッドルーム住宅ですが、大きなグレートルーム(リビングダイニングルームにキッチンがついている)に、こじんまりしたベッドルームがついていました。天井高さが 3メートル程度あって、メゾネット形式の住宅であったので、住戸の両面の外気に面する開口部からの眺望は非常に良くできていました。
この住宅計画は、オランダのコートハウス形式の伝統的な2階建ての市街地住宅を2層に積み重ねた結果、4階建てのメゾネットハウスという共同住宅ができたものでした。
米国でも2階建てのタウンハウスを2層積み重ねてタウンハウスコンドミニアムがレイクランド(メリーランド州)に10年ほど前に登場していましたが、同様の高密度開発をしながら環境を向上させる取り組みです。メゾネットハウスを導入することで戸数密度を高めながら、専用住宅面積が大きく、共用部分面積が少なくできるほか、廊下がスキップなることで、1階おきに2面の外壁からの完全な眺望がとれる住宅が計画できます。その結果、各住宅からの眺望が大切にされろとともに、住宅からの眺望を含んだインテリアが豊かに演出されていました。

オランダのアシステッドリビングの社会住宅
見学した住宅地全体は大きな社会住宅団地で、様々なニーズにこたえた社会住宅が経営されていました。先に見た単身居住者の一般住宅から少し離れたところに、その母親が住んでいる入居制限が55歳以上というアシステッドリビングの社会住宅を見学しました。訪問当日、単身で生活していた方の家族持ちの兄が母親を訪問して帰ろうとするときに出会いました。単身生活を含んで、それぞれの家族にはそれぞれ固有の生活がありますから、それぞれの生活を尊重して別の住宅で生活をしています。複数家族が一緒に生活する住宅の選択も、経済的にも、機能的にも、むしろ家族が助け合えて良い面もあります。しかし、オランダ人にとっては、不経済で、利便性は下がるかもしれないけれど、それぞれの家族または個人の主体的な独立性を維持した生活を尊重たいと考えています。お互いのライフスタイルを尊重しながら、お互いに提供できるサービスを持ち寄って、自分の主体的なライフスタイルを実現しようとしていました。支援をする側も支援をされる側も、お互いの生活を尊重して、無理をしないで助け合う生活を選んでいました。

住宅管理人と居住者が守る最低限の約束
このアシステッドリビングは高齢者の自立した生活を前提にし、パッシブリタイアメントコミュニティではなく、孤独死や不慮の事故が発生未然に防止する発見を目的に、日常生活を見守るものでした。そこにはNPO法人住宅協会による居住者の安全(生存)確認を、毎朝午前9時時点に見回るシステムになっていました。管理人が全住宅の玄関の表示を、住宅の外から確認するシステムです。居住者がその玄関の所定の場所にハートの形を一定時間掲示し、「元気であること」を表示し、確認するシステムは単純のようで、お互いの権利義務を明らかにした住宅生活管理システムとして、人々の生活を尊重した社会を育んでいます。「居住者の元気表示」が掲示されていない場合には、管理人がその住宅の中に強制的に立ち入ることができる管理システムです。居住者が意識して健康表示をする「最低限守る役割」として非常に良いシステムと思われました。

高齢者支援に対するオランダの住宅政策
そこでの生活は基本的に個人個人が自分の生活には責任を持つことを前提にしており、食事サービスなどは実施しない住宅経営です。給食のケータリングサービスを求めれば、その要求には応えますが、食堂での食事提供は行いません。その代わり、居住者がショッピングに出かけたりする生活必要行動に対しては、タクシーサービスを安価に実施できるようになっています。本人が家事などをすべて実施する前提での生活ですが、友人や家族の援助が必要な場合には、同行者にもそのタクシーサービスを利用することができるようになっています。そのタクシー代金は、バス利用するのとあまり変わらないほどの低料金で行われていました。居住者に主体的な意思を持って行動することを支援する制度は、居住者本位の優れた制度と思いました。デンマークにおける福祉の三原則、①持続性のある環境の尊重、②本人自身の残存能力の最大限の活用、③可能な選択肢の決定は自己責任で行うことの尊重は、オランダでも福祉の基本になっていました。

経済主義重視の日本の高齢者福祉住宅の対局のオランダの高齢者福祉住宅

日本では高齢になると生活の物理的支援を受ける高齢者福祉住宅を考えてしまいますが、オランダでは自分のライフスタイルとして家事を自分の生きがいとして、他人をもてなした、一緒に家事をし、人間相互の交流(コミュニケイション)を楽しむ生活が、人間の豊かな生活として尊重されていました。日本では公的な支援住宅に代表されているように、「援助する側にとって経済効率の良い支援」が重視されてきました。その代表的な原則は、家族による支援・扶養を国の支援の大前提にする考え方です。その延長線上に集約的な生活支援サービスが公的支援を受けて実施する政策が行われてきました。そのうえで、支援を与える住宅のサービス単価を最低にする効率性を前提にした住宅経営がされるため、個人的な特殊事情は軽視され、悪く言えば、高齢者福祉の「ブロイラー経営」が、利潤追求を容易にする高齢者福祉住宅政策として企業の経営の一つとして行われています。日本のサービス付き高齢者向け賃貸住宅制度はその典型的な事例です。
オランダの場合は、日本との全く対極にあるもので、個人の自由、選択を重視するため、援助効率は悪くなったり、全体の援助経営という視点では不経済になっているように見えるところもあります。しかし、オランダ人は物理的なサービス内容が結果的に低くなっても、個人の自由な生活を実現することが、サービスを受ける人にとってもっと大切なものと考えていました。

見学したアシステッドリビングの住宅計画
このアシスティッドリビングの住宅は、2つの住棟がペアーになってひとつのコミュニティ空間を造っていました。住棟間に10メートル以上の隣棟間隔の空間を、屋根部分を開閉できる全天候型の屋内空間として造り、広い屋内空間は、屋外空間のデザインで造られています。このように計画することで、視覚的には屋外空間のような開放的空間でありながら、屋内空間と同じ温湿度空気環境管理のできる空間として造っていました。
対面する住棟は片側廊下ですが、そこから対面する向かいの住棟には、スカイウエイが2住戸毎に先端が枝分かれして分離した構造の行き止まりの幅員2メートルの橋梁形式の取り付けとなっています。各住宅の前にアルコーブ型のホールを設け独立性を高め、相互が尊重しあえるように造られていました。それが大きな空間の3階までの各階に造られていることで、その空間全体にダイナミックなデザインを演出していました。屋上部分には避難用のスカイウエィが造られ、安全避難の配慮がしっかりできていました。また、廊下(スカイウエー)でつながれる基本となる住棟の向かい合う住宅も、対向する棟の住宅の玄関相互が対面しないようにするとともに、スカイウエーの突き当りには、もう一方の住棟の玄関を造らないように計画されていました。いずれもお金をかけないで、住む人の生活を快適にする配慮をした計画です。

社会住宅でのコモンスペース
この住宅はすべてリビング・ダイニング・キッチンを1室にしたグレートルームとワンベッドルームで構成されていました。住宅としては居住者の見回りを重視する管理部門と居住者のアクティブなライフスタイルを活性化されるためのコモンスペースがつくられていました。そこでは居住者の玉突きをし、歌をうたい、楽器を演奏し、用意された図書で読書をし、会食やパーテイをし、各種活動ができるように計画されていました。居住者が自由に集まる空間をつくることで、居住者が相互にあまり交流することを意識しなくても、居住者の出会いの機会を高めるようになっていました。私たち外来者に対しても、この広場で立ち話をしていた2人の居住者が関心を持って、いたずらっぽく、私の乗っていた車椅子の色を見て、フェラーリの色だからと言って、「フェラーリの乗り心地はどうか」といっていた冗談で話しかけてきてきました。その明るい雰囲気には驚かされました。初対面の人に心を開き冗談で話しかけることのできるのは、住み心地がよいためです。ここの居住者の平均年齢はどんどん高くなり、最若年者が70歳代とのことでした。

オランダの社会住宅と住宅により資産形成を考える持家
見学した住宅は、国から家賃補助を受けてNPO法人による住宅協会に経営されている社会住宅です。オランダでは社会住宅は居住者の一つのライフスタイルの選択という視点でされているようです。社会住宅居住者に対する社会的な差別意識は存在せず、また社会住宅の経営には非営利経営ということに決まっているのです。これはオランダだけではなくヨーロッパ中、基本的に同じです。住宅費負担はオランダにおいても世界の先進工業国同様、持ち家の場合でも、賃貸住宅の場合でも、個人の家計費支出にとって重い負担です。
オランダでは個人の人権を国家が守るために、住宅の品質として、個人が選択できる住宅は、経済的負担能力に対応するものではありません。居住者の生活要求を満足させる国家としての保障する住宅品質を提供する住宅政策を行っています。その住宅を持家という形式で個人財産として持つ選択もあります。その人たちはその住宅資産を維持管理するため住宅ローン返済に加えて修繕積立金、住宅地の経営管理費用の負担などのために大きな負担をします。しかし、そのためにかけた費用は、自分自身の住宅資産形成になると考え、将来の生活のための資産を守るという考え方で住宅地経営に関心を持ち、住宅のメインテナンスに頑張っています。その持ち家を所有する考え方は、米国の住宅所有の考え方と基本的に同じ資産形成の考え方です。

オランダの社会住宅というカテゴリーの住宅
一方、現時点での家計費支出の中で、国が考える適正(ディーセント)な品質は、住宅を享受するためには賃貸住宅の選択しかありません。国は適正住居費負担を世帯ごとの条件により、また提供されている社会住宅の家賃と対応させて計算し、その必要と認められる空間との対応で不足する部分は家賃補助を行っています。その応能家賃の基準は、常に社会的に吟味されています。当然そこでは家族の条件に見合って必要とされる住宅の規模と経済家賃がありますから、家賃補助額は個別に厳しく計算され、ぜいたくな部分に対しては家賃補助の対象から除外されます。
その意味ではその家族の生活実態と所得は完全に国で把握されることになります。社会住宅には家賃補助として税金が入りますから、少なくとも社会住宅を選択する人は国民の税金からの助成を受けるため、その所得は国では完全に把握することは当然と考えられています。日本でも納税の背番号制が俎上に乗っていますが、税金との関係で国民の所得が国家によって把握されなければならないことは、国家経営上当然の帰結です。社会住宅居住者は持ち家所有者の税金を家賃補助として使い過ぎてはいないかという社会的批判は管理強いとも言われます。

米国と似ていて違うオランダの住宅経営
オランダでの住宅では、持ち家の場合には、所有者たちが住宅を所有する目的と意識は、個人の資産形成の考えが基本となっていて、その考え方は、米国と基本的に同じです。しかし、社会住宅を含む賃貸住宅では、賃貸住宅経営で利益を追求するという考え方は存在しないという社会です。賃貸住宅の入居者は、オランダでも米国ほどではありませんが、家賃の支払いは居住者にとっては持ち家のように個人の財産形成にはなりませんから、単なる生活必要経費の支出でしかありません。そのため「家賃はお金をどぶ(溝)に捨てると同じである」と米国人のようには言いませんが、「生活必要経費」の支出と考えています。賃貸住宅の借家人は、住宅に縛られることなく自由に移動しますから、その経営は極めて資本主義的な市場原理が働き、賃貸住宅経営によって利潤を上げるという考え方は生まれません。社会住宅であるため、入居者の経済条件に合わせて家賃補助が行われています。居住者は基本的に生活が守られているため、ここに生活できるようになった人は、経済的な不安がなく、高い安心が得られているようでした。

個人の生活を一番に大切にする住宅の選択
特に高齢者になった場合、健康不安と経済的不安を解消することがいかに重要であるかということを、この社会住宅は教えてくれているようでした。そこの居住者に対して、「健康上の支援を受けることのできるナーシングホームに移動したらどうか」という家族の勧めに対して、その勧めに従えば、「自分で好きな料理をし、友達を喜ばせることのできる楽しみを奪われてしまう」と悲しんだそうでした。「私は自分で自分の生活をしていきたい」と、支援を受けないで、自分らしい主体性を持った生活を選択しました。その結果、「食事をはじめ、友達や家族を自宅でおもてなししたい」と自分のこれまでの独立した生活を維持する生活を持続できているという話を聞きました。
住宅政策は一人一人の生活において、物理的な支援をすればよいのではなく、自由な生活の選択ができる可能性を保障することであることをこの事例は教えてくれていると思います。その視点で見ると、政府が高齢者をブロイラーにする政策を高福祉住宅政策として国庫補助金を湯水のごとく使い、高齢者にサービス漬けにし、高齢者への福祉を口実にした金儲けを行い、住宅福祉産業を潤しているサービス付き高齢者賃貸住宅(サ・高・賃)の経営と比較し、「個人の生活を尊重する住宅政策」を持っているオランダをうらやましく思いました。

次回は「ライデンの庶民の生活を住宅」という視点から紹介することにします。
(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷 英世)



コメント投稿




powerd by デジコム