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HICPMメールマガジン第580号(2014年10月6日)

掲載日2014 年 10 月 6 日

HICPMメールマガジン(MM)第580号(2014年10月6日)

みなさんこんにちは、
オランダ・アメリカ・日本3国比較の「アメリカの住宅の第2回目」です

アメリカの住宅市場:新築住宅と既存住宅

リモデリングか、リフォームか
日本で住宅産業というと、一般的には、新設住宅産業のことを言う。最近、新築住宅を購入する国民の購買意欲が低下し始めたため、国土交通省が不動産流通と組み合わせて住宅のリフォームを持ち出した。日本の中古住宅市場を米国の既存住宅流通市場と比較したら、その市場規模は、20分のⅠ程度にしかならない。そこで、日本の関係者は米国の市場並みになると考えて、、中古住宅市場の成長の余地が大きいと考えた。日本では「中古市場」というのに対し、米国では「既存住宅市場」という。既存住宅市場は、住み手が代わるから、住宅は住み手の住生活要求に合わせて、「リモデリング」(直訳すれば「モデル変え:模様替え」)することが一般的である。洋服の下手直しも、米国では「リモデリング」である。それを日本では、行政改革〈アドミニストラティブ・ルフォーム〉や政治改革〈ポリティカル・リフォーム〉のように、「住宅リフォーム」(直訳すれば「住宅改革」)という。大雑把に見て、米国の年間の全住宅市場500万戸の内、新築市場はその5分の1の100万戸に対し、既存住宅市場がその5分の4の400万戸である。既存住宅市場の流通では、何らかのリモデリングが行われている。
新築住宅価格と既存住宅価格は基本的に同じである。敢えて言えば、既存住宅市場の住宅価格の方が高くなる。既存住宅は住む人が自分の住宅資産の価値を高めようと必死になって住宅地経営に関係しているから、住宅価格は市場価格を反映して売り手市場であれば上昇する。利便施設の誘致や商業業務施設の誘致も積極的に行われている。住み手の購買力の範囲で需給関係を反映して住宅価格は上昇する。どこの親でもそうであるように、学力を高めることで子どもはよい上級学校に入学できると考えて、子どもの幸せのために教育に熱心である。そのため、住宅地開発を行う場合にも子供の学校教育環境づくりには住宅地開発業者は一生懸命である。小規模な住宅地開発では既存の学校教育施設は開発内容を左右するとまで言われ、大規模な開発では優れた教育施設の建設に大きなエネルギーが割かれる。優れた諸施設が整備されることになると、生活の豊かさが高まり、多くの人が集まり、売り手市場を形成する。

就学期間に合わせた居住期間
第2次世界戦争後の米国では戦中住宅需要が戦争のため抑圧されていたため、戦後郊外にハイウエーを利用した住宅地開発が進められた。これ等の住宅は学校脅威完全な都市環境を備えた都市階蓮をすることはできなかったので、住宅需要層のライフステージに対応した住宅地として開発された。人びとのライフステージは結婚後、子供の成長と共に変化し、そのライフスタイルは育児に大きく左右されることになる。幼稚園児を持った世帯、小学校低学年、小学校高学年、中学校、高等学校の住宅地は、子供の成長により、育児時間とそれに合わせた両親の勤務環境が変化し、それに併せて変化する。学校の就学終了に合わせて住宅の住み替えが行われる。米国では住宅の住み替えを知る需要に合わせて7年統計があり、子どもの就学期に合わせた住宅の住み替えが社会現象として把握できるようになっている。
既存住宅地の場合は、優れた学校へ通学する学校区の居住するため、その学区への入居を希望する家族は、子供の入学年にその学校を卒業する子供の家族を調べリストアップして、子どもの卒業後の転宅可能な世帯に転居を勧め、その後に住宅の売却を進めることが一般的に行われている。そのため、住宅を高く売却しようと思うならば、その学区の学校教育内容を向上充実させ、多くの人がその学区に移り住みたいと思うような学校経営を支援することが必要である。学校も地域の要求に対応し、よい教師を採用し、高い教育費用を支出できるよう、地域からの寄付を求める。
ウォルトディズニーが開発したセレブレイション(フロリダ)の中央に建設されたセレブレイションスクールは小中学校一貫の教育体制を取り、その教育内容をモニタリングするとともに、教育効果が挙げられない教師の再教育を行うアカデミーが敷設されている公立学校である。しかし、そこでは必修部門以外の文化芸術系の選択授業を充実するために、住民から寄付を集め、優秀な教師を雇うことが行われていた。それに対し地域の裕福なコミュニテイが、全面的に寄付をバックアップしていた。それは長い目で見て自分の所有している住宅の資産価値を高め、より高額な価格で住宅を売却するためで、その実現のために学校の魅力を高めることに関し、学校区全体での共通の理解が形成できている。

NAHBのビルダー及びリモデラー教育
NAHBのリモデラー委員会の会長から米国におけるリモデラー業界の発展の歴史を聴いたことがある。彼の親はホームビルダーの下請け業者で、子どものころから厳しい下請け業者の仕事を見ていたので建設業者になる道は選ばず医学の道を選んだ。しかし、学生時代、学費や生活費を生み出すためにアルバイトをすることになった。子どもの頃に親の仕事を手伝った建設業の収入が高かったので建設業のアルバイトをして所得を挙げていた。しかし、暫くして考えてみると、自分には医学よりも建設業の方が合っている気がして、途中で進路を変更し建設業に進むことになった。大学卒業後、建設業は景気に恵まれて入社した企業はどんどん成長し、賃金は上がり、将来はバラ色に輝いて見えた。
そのとき、突然経済不況がやって来て、多くのビルダーは倒産に追い込まれた。彼も仕事を失い路頭に迷う所まで追い詰められた。そのとき、修繕(リペア―)の仕事を頼まれた。修繕は請負規模は小さいが、「探せば沢山ある緊急性の高い需要であること」が分かった。修繕工事は小さな仕事がほとんどであったが、放置できない緊急なものが多く、工種も多種多様で手間もかかるが、経験と専門性がなければできないものが多かった。生活を維持するため、「どんな工事も求められる工事は断らず取り組んだ」ところ、仕事が軌道に乗って行った。その内に景気も回復し、それに合わせてリモデリングの大きな仕事も増え、新築の仕事も取ることができた。しかし、リモデリングの仕事には歴史と文化が一体化していて面白いことに気付き、新築工事は請負わず、リモデリングに絞って続けることにした。
しかし、仕事が大変である割に利益は拡大せず、改善策を探していたところ、同業者から「君は全米ホームビルダー協会(NAHB)を知っているか。」と尋ねられた。それまでNAHBのことを知らなかったので、「知らない」と答えたら、「ともかく、NAHBを調べてみたら」と勧められた。調べて見たところ、色々な知識や技術が得られる業界団体であることが分かり入会し、必要な書籍を購入して勉強した。その結果、これまで分からないと思っていたところが体系的な知識として理解でき、仕事を大きく発展させることができた。
しかし、やがて再び壁に突き当たり、仕事が停滞した。その悩みを、かつてNAHBを紹介してくれた友達に話したところ、「NAHB会員の同業者に君の疑問をぶち付けてみたらどうか」とアドバイスを受けた。そこで同業者の会員に自分の疑問をぶち付けてみたところ、「君のテキストの読み方や理解に間違いがある」と言って、誤りを指摘してくれた。これまで自分で理解したつもりの所に誤りがあることが分かり、それを解消することで企業経営は飛躍的に向上した。
米国は多民族や多人種が集まって仕事をしている所である。そのため、仕事のシステムが標準化、規格化、単純化、共通化がしっかりできている。そのシステムを理解し実践することで関連業者はシステムに組み込まれ高い生産性を上げる仕事ができる。そのためには生産のシステムを正しく理解することが不可欠である。すべての仕事を自分で抱え込むのではなくて、自分の専門性を高め、協力者の専門性を理解し、相互に尊重し合い補い合うことで全体として大きい仕事を仕上げることができる社会である。そのために大切にしなければならないことは、仕事を発注し代金を支払う建築主のニーズを正しく理解することである。顧客の求めているものが如何なるもので、それに応えるには何をしなければならないかが理解できれば、その実現のために必要な力を持っている人を集めれば、仕事は立派にできる。

NAHBの基本的な考え方:顧客は紹介客100%の営業
NAHBのホームビルダーやリモデラーが取り組むべき住宅経営の話を、NAHBの「セールス・アンドマーケティング」のセミナーで聴講した。そのときの話とは次のようなものであった。
「ホームビルダーが手にできる粗利は請負契約額の20%である。残りの80%は直接工事費で、その部分はホームビルダーに対して金融機関はコンストラクションローンをしてくれるし、完成した住宅に対しては、住宅購入者がモーゲージを汲んで支払ってくれる。しかし、ホームビルダーが手に入れることになるマークアップ(粗利)として得られる請負工事費の20%は、融資額として金融機関はコンストラクションローンとして貸してくれない。同様に、住宅ローン(モーゲージ)としても融資してくれない。そこで、住宅購入者はその分は、頭金として自己負担しなければならない。ホームビルダーにとって自らの純利益を最大にするためには、粗利20%はできるだけ確保するようにしなければならない。そのためには、できるだけ直接工事費以外の経費をカットすることである。ホームビルダーにとって歯止めなく拡大する危険性のある経費は、広告・宣伝、営業・販売経費である。この広告・宣伝、営業・販売経費はホームビルダー経営を続ける限り付き纏う。これらの費用を縮小するのではなく、ゼロにしなければならない。その方法は、すべての住宅工事依頼は、紹介客として獲得することである。」

ホームビルダー:専門的知識を持つ業者
HICPMとNAHBとが1996年に相互友好協力協定を締結したことで、全米オームビルダー協会の元会長ピンカースさんが来日されHICPMでセミナーをされたり、米国でのHICPMが実施した日本の住宅産業者向けセミナーの講師もお願いした。ピンカースさんはカリフォルニア州が1990年代の初めに不動産危機を迎えたときのNAHBの会長で、年間30戸程度の注文住宅(カスタムハウス)を建設するホームビルダーである。そこでピンカースさんに単刀直入に「注文住宅では顧客の要求に振り回されて、大変ではないですか」と質問をしたところ、間髪入れないで次の答が返ってきた。「顧客は多くのニーズを持っていますが、住宅を造る専門家ではありません。顧客からは具体的な指示や注文も沢山あります。その中には私の設計提案とは違うようにして欲しいという要求もあります。しかし、私の知識経験を通して私が導き出した結論をお話ししますと、殆ど全て場合、私の説明を受け入れてくださった。その後、顧客は私とその仕事に尊敬の気持ちを持って受け入れてくれました。」と答えてから、「その前に一つ前提条件をお話ししなければなりません」と言って、次のようなお話をしてくれた。
「私はスーパーマンではありません。私は自分の能力できる仕事でも、自分の専門性を活かし自分から造りたいと願う住宅でなければ造りません。そのために自分の使う技術はいつも研鑽してきました。私の実施してきた仕事は、私の全身全霊をかけて造ってきた仕事ですから、成果物には責任を持っています。私の仕事については、受注に先立って、客によく調べてもらい、こんな仕事をしてほしいと願ってくれる人の仕事しかしないことにしてきました。多くに人から紹介され、依頼に来られる人に対しても、基本的に同じで、私の仕事をご覧になっていただいて納得して依頼される仕事以外は請負いません。」

建設した住宅はホームビルダーの広告版で建築主はホームビルダーの営業マン
実は全米ホームビルダー協会の営業販売のテキストの中に同じ話が記載されている。ホームビルダーは自分の専門分野を明確にし、その知識技術を高め、仕事に当たっては惜しみなくその知識技術を駆使しなければならない。ホームビルダーの受注する仕事の70%以上を紹介客で得られないとすれば、そのホームビルダーは正しい仕事をやっているとは言えない。ホームビルダーの建設した住宅は巨額な建設費を掛けたもので、ホームビルダーの能力を示すモデルホームでもある。顧客はそのモデルホームを見て感動した人は、仕事を依頼したくなる。モデルホームの建設に掛けた費用は広告宣伝費であると説明することも出来る筈である。また、建築主は、実際に建設された住宅に居住し、設計意図通りにできたことを確かめてくれる試験官である。居住者が自らの依頼に応えた住宅として満足していれば、その満足の気持ちを、友人や知人に話さないわけにはいかない。その意味ではホームビルダーの営業宣伝マン以上のホームビルダーの理解者である。建設した住宅というビルボード(広告版)も、この住宅に生活している居住者という営業宣伝マンも、ホームビルダーが費用を負担しないでその役割を果たしてくれているのである。ホームビルダーはこのような仕組みを使って巨額な広告宣伝営業費用を建築主の負担で行っている訳であるから、高い満足を与える住宅により、多くの紹介客が得られて当然である。

米国の常識:高い専門知識の研鑽と自己研鑽
ワシントン州政府が実施している「アメリカ住宅建材セミナー」に全米規模でリモデリングを実施しているネイル・ケリー・カンパニーのトムケリー社長が、地域を越えて企業規模を拡大する方法を説明してくれた。それは地域の文化に貢献している映画館の改修工事をリモデラーのドネーションで行おうという企画である。大きな企業でもお金がどこかから湧いて来るわけではない。彼が考えた方法は、住宅のリモデリングを検討している人がネイル・ケリー・カンパニーに相談してくれたら、1件につき100ドル映画館の改修工事にドネイションする方法である。この企画は、父親の代から多数のリモデリング事業を成功裏に進めてきた実積を社会的に知らせることである。どのようなリモデリングのニーズにも、正しく答えることができた実績と自信があった。しかし、社会は必ずしもネイル・ケリー・カンパニーを知っているわけではない。この企画は地域の文化を育てる文化事業でもある。
そのキャンペーンを知って多くの人は文化事業を支援したく思うだけではなく、この機会にネイル・ケリー・カンパニーの考えを知り、関心を持ち、そこからリモデリング契約への途が進めば。一件100ドルの文化事業へのドネイションは十分回収できる。つまり、このような取り組みを可能にする前提として、「これまで顧客中心の信頼ある仕事を行ってきた実績と自信があってできること」である。このやり方は単純な客集めではない。日本の業者が政府の指導を受けて行っている「差別化」(他社の仕事や一般的に行われている仕事と違う仕事を、優秀な仕事として宣伝)戦略や、「手離れのよい仕事」(顧客からの責任追及を回避し、逃げ切る)という無責任な仕事をしている業者にできる仕事ではない。

共感を感じる米国の住宅産業
企業の経営目的は利潤追求である。米国の住宅産業を見ていると同じ利潤を上げるなら、合理的な方法で大きな利潤を上げようとしている。米国の住宅と日本の住宅の価格比較をすると、同じ品質の仕事で、大体、日本の住宅価格の方が2倍以上高額になっている。そこで日本で最も住宅生産性が高いと誇っている大手ハウスメーカーと米国の一般の住宅を比較してみると、驚くべきことに、その施工生産性は同じ水準で、生産コストはほとんど同じである。しかし、日本のハウスメーカーは米国のホームビルダーの2倍も高い販売価格で販売している。日本の中小零細住宅会社の住宅価格は、大手ハウスメーカーやホームビルダーに比べ高い生産コストになり、その販売価格も高くなっている。その理由は、米国のホームビルダーは全米として標準化、規格化、単純化、共通化が進んでいるため、非常の合理的な生産が行えて「高い生産性」を上げているためである。一方、日本の大手のハウスメーカーは企業としての固有のモデュールと建築納まり(ディテール)を持ち、そこで使用される材料の全てがそのシステムに則ってつくられるため、米国同様の高い生産性を上げることができる。
しかし、日本の中小零細な住宅建設業者はそれができず、生産性があげられない。大手ハウスメーカーは現場の工事生産性は米国並みに高い生産性を誇っている。しかし、顧客をそのシステムに引きずり込んで、顧客が望んでいないものを売りつけるために、「差別化」の洗脳教育に時間と費用を掛け、あたかも顧客が求めていると思わせるため膨大は費用が掛っている。洗脳に掛けたTVの広告宣伝費から営業マンの営業販売活動に掛けた費用を回収する必要があるため、住宅販売価格が高くなっている。
日本政府が行っている住宅性能表示を米国人はおかしいという。性能表示されたことが消費者にニーズに応えていることになっていない。極めつけは、構造耐力や住宅の温熱環境の選択できる複数基準である。片方が適正ならば、もう一つは過剰性能であるし、一方が適当であればもう一つは欠陥基準になるからである。米国の住宅産業は人びとに必要な最低基準は決めるため、地域環境や土地特性により違う基準は作成するが、同じ地域に複数の基準をつくることはしない。そのようにして決められた技術を採用し、歴史文化的に人々が守り育ててきた帰属意識を持てる土地に根を張ったバナキュラーなデザインの住宅を開発してきた。それらの住宅は時代を超えて人びとが住み替えて行っても愛される住宅であるようデザイン開発され、消費者の家計支出に見合う住宅を供給しようと生産性の向上に努めてきた。

サステイナブルハウスの4つの条件
2000年を迎えるに当たって、HICPMは日本カナダ、アメリカの住宅を比較研究して回ったことがある。そのときの最大の関心は、日本の住宅は国民が購入後必ずその資産価値は下落し、長い目で見ると国民は住宅を保有することで貧困になっていく事実である。それに対し、アメリカとカナダでは、その逆で、国民は住宅を取得することで資産を形成し、長い目で見ると個人だけではなく地方公共団体の財政基盤を高め、金融機関の信用力を高め、住宅を取得している人の購買力他向上している。その条件のことは、米国の不動産鑑定評価(アプレイザル)のシステムの中にすべて書かれていることが分かった。不動産関係評価の基本は住宅地環境と住宅環境の2段階になっている。まず、住宅地自体が優れた環境として計画され、経営管理されていることである。その方法を米国やカナダの不動産関係者は、「ロケーション」という言葉で一括りにしてしまう。しかし、よく調べて見るとロケーションのデザイン、機能、性能が優れた内容でつくられ、計画されたとおりに優れた管理運営されていることであった。それらの条件を大前提に、住宅を購入する人たちの購買能力に見合った価格で住環境も住宅もつくられている。調査で分かった米国のサステイナブルな住宅の条件は、以下の4条件であった。アフォーダブル(家計費支出に適合すること)、バリュアブル(住宅の社会的価値が維持向上すること)、フレキシブル(居住者のライフステージに対応したライフスタイルに柔軟に対応できること)、グリーン(健康で安全衛生は性能を有する環境であること)。

アフォーダブル(家計費支出に適合すること)
住宅価格は、顧客が適正な家計負担で購入できることである。住宅は年収の3倍以下の価格で購入できるか、月収の30%以下の家賃で供給されることである。住宅に入居した結果、ローン返済や家賃支払いのために家計費が狂わされてはならない。アフォーダブルな条件は、米国社会では住宅を考える以前の条件として、住宅政策だけではなく住宅金融や住宅産業の全てが考えている。その条件は、実は住宅地の開発密度を考えることであり、開発密度に合わせた住宅地の環境計画とランドスケーピングを行うことである。すでに1960年代の米国では、経済成長に伴う地価の高騰に対し、「アパート並みの価格で戸建て住宅並みの環境を」という命題に応え、タウンハウスが開発された時代背景がある。環境を守りながら高密度開発をするためには、「1団地の住宅施設」の環境開発計画の考え方を導入することがなければ、アフォーダブルな住宅供給は不可能である。

バリュアブル(住宅の社会的価値が維持向上すること)
住宅の価値は住宅地として優れたランドスケーピングがなされ、管理されている中に建てられた住宅が、「クラシックなデザインを持っていること」である。米国の金融機関はモーゲージを得て融資を行う。そのため、住宅ローン残高を融資期間の内の何時の時点ででも、住宅を売却して回収できるための条件として、住宅市場で高い需要に支持される条件がクラシック様式のデザインであることである。その条件は実際の市場取引に裏打ちされて、多くに人びとの支持をえたデザインとして受け容れられている。1934年FHA(連邦住宅庁)がモーゲージの債務保証を始めたときの採択した条件でもある。

フレキシブル(居住者のライフステージに対応したライフスタイルに柔軟に対応できること)
居住者が同じであっても、人びとは年ごとに成長し老齢化するため、そのライフスタイルも変化せざるを得ない。住む人が変化しても、その住宅が居住者の生活要求に応え続けることのできる住宅としての機能を有する住宅としてつくらなければならない。ユニバーサルデザイン、または、バリアーフリーの考え方が住宅の設計に提案されている。この考え方は住宅で生活する人だけではなく、その住宅を訪れる人にとってもそこの空間を楽しめるものでなければならない考え方である。

グリーン(健康で安全衛生は性能を有する環境であること)
この内容はセイフティ、セキュリティー、ヘルシー、などの安全衛生要求を、エコロジカルなシステムで実現することである。そのためには、太陽エネルギーの利用、地下の恒温性の利用、緑の炭酸同化作用や微生物による水質浄化の自然システム、水の蒸散効果、断熱、遮熱、耐震、制震等の自然のシステムを利用した技術の活用である。最近では「医食同源」の考え方を住宅開発に採り入れ、都心の住宅のバルコニーでのサラダ菜やトマトのプランター栽培まで住宅として計画するようになっている。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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