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HICPMメールマガジン第587号(2014年12月1日)

掲載日2014 年 12 月 1 日

HICPMメールマガジン第587号(2014.12.01)
みなさんこんにちは
日本・オランダ・アメリカの住宅比較
第14回「米国の住宅地開発技術の展開」
日本の住宅4.「ニューアーバニズム」
米国の住宅産業経験の技術移転
(1)「輸入住宅」政策の中で:SV(シアトル・バンクーバー)ビ
レッジとKIHF
プラザ合意と輸入住宅

円高ドル安の「プラザ合意」を受け、前川春雄日銀総裁が「輸入住宅」を提案し、それを受けて、河野住宅金融公庫総裁が建材の並行輸入から輸入住宅に住宅金融公庫融資を発展させ、最終的に神戸市住宅供給公社がSVヴィレッジの建設に取り組んだ。この取り組みの経緯を、今一度、整理することにする。
1980年代前半、米国は金融引締めを実施し金利は2桁に達し、世界中のマネーが米国へ集中し、ドル相場は高めに推移し、米国の輸出減少と輸入拡大をもたらした。高金利により民間投資は抑制され需給バランスが改善した。米国経済はインフレからの脱出には成功したが、莫大な貿易赤字と財政赤字が累積していった。インフレが沈静した後、米国では金融緩和が進行し景気回復で貿易赤字増大に拍車がかかり、金利低下により貿易赤字の米国通貨ドル相場は次第に不安定になった。こうした状況の下でドル危機の再発を恐れた先進国は協調的なドル安を図る合意をした。とりわけ、米国の対日貿易赤字が顕著であったので 、円高ドル安に誘導したのが『プラザ合意』である。発表の翌日の1日でドル・円レートは1ドル235円から約20円下落した。1年後にはドルの価値は150円台で取引され、やがて130円台に最終的には80円を切るまでになった。円は対ドルで3倍の価値になった。
1ドル150円換算で当時の日米の住宅価格を比較すると、同程度の仕様で2倍以上の価格差があった。
建材を米国の船積み価格(FOB)と、それを日本の港で陸揚げし通関手数料と国内輸送費用を加算し、建設現場に納品する価格(取扱い商社が20%の手数料を取った価格)を比較すると、1.5倍になっていた。仮に米国の住宅完成品を丸ごと輸入しても、計算上、米国での住宅価格の1.5倍で持ち込むことが出来る。当時、日本の高品質の住宅は、坪60万円で供給されていた。それ以上の住宅が米国では1ドル150円換算で、坪30万円で供給されていた。それならば、日本で坪60万円の住宅を米国の住宅を輸入すれば、米国での供給価格の1.5倍の坪45万円で供給できるはずである。

SVビレッジ(シアトル・バンクーバー・ビレッジ)
この基本的な考え方で取り組まれた神戸市住宅供給公社によるアメリカとカナダから、各13戸、合計26戸を米国とカナダの設計とそれぞれの国産建材を輸入してつくった輸入住宅がSVヴィレッジである。米国はマスタープランドコミュニテイとして全体建築計画を建築家が設計したのに対して、カナダはサブディビジョン(一敷地一建築物)を、「ホームプランシステム」をつかって建築したものである。いずれも、日本にとって新しい住宅地開発の方法で、社会的には「円高差益の還元」により、当時、日本で供給されている住宅と同じ物を、適正利潤を得て75%の価格で販売できると説明して住宅金融公庫が牽引したプロジェクトであった。そこで、全国からこのプロジェクトを見学に集まった住宅産業関係者は、通算50万人に上った。価格が最大の関心であったが、ここでつくられた住環境が小規模であったが、それまで日本にはなかった垢抜けのした街並み景観で、TV・雑誌等メディアで取り上げられた。その映像は、欧米の住宅文化を国内で手に入れられる「夢の実現」として話題性を高めた。
緩やかな斜面に、自然地形を生かしたクルドサックの道路に全面道路幅員相当のセットバックをした住宅配置は、落ち着きのあるまとまりのある空間を造っていて、現在見ても、優れた住宅地計画と評価されている。当時を現在振り返ってみると、米国、カナダ両国が競って力を入れ、それぞれの国でも誇る計画内容であった。住宅販売価格は計画通り引下げられなかったが、市場において高い需要に支持されるコンパクトな住宅地として計画され、高い競争で完売された。現在見ても、北米の高い住宅地計画技術が駆使されていて、米国、カナダにおける「資産形成を実現する住宅地」の事例を見せてくれる。

KIHF(神戸・インターナショナル・ハウジング・フェアー)
神戸市はSVヴィレッジの評判を新しい事業に発展させようと、米国で毎年実施されている全米ホームビルダー協会(NAHB)が年次総会の開催に合わせて行っているIBS(インターナショナル・ビルダーズ・ショウ)に相当する事業を神戸市が開催することになった。そこで国内外の企業4社(三菱商事、大旺商事、エービーシー開発、グローバルリンク)が運営委員会を結成し、NAHBの支援を取り付け、NAHBのIBSを日本版の住宅産業の技術研修会と建材住設展示会に焼き直し、米国NAHBの住宅産業の参加を得て、KIHFを実施した。この展示会では神戸市内3カ所に、8棟11戸の戸建て住宅とタウンハウスのモデル住宅を建設し、それらの住宅との関連の輸入建材展示と、住宅設計施工に関する技術セミナーを通して、米国とカナダの住宅技術を紹介した。セミナーと建材展のテーマは「クラシックなデザイン様式を具備した現代的な雰囲気を備えた住宅」で、その住宅にふさわしい材料と工法のトータル技術を、実物の住宅と技術研修会で国内の住宅関係者に紹介した。この事業の目的は、米国とカナダで実践されている「資産価値を維持向上させる住宅」としてデザインの重要性を日本国内に紹介することであった。すべての戸建て住宅は、展示会終了後、「高級建売住宅」として売却された。

(2)サスティナブル・コミュニテイとサスティナブル・ハウス(日本版TND読み替え)
日本の住宅建築業を米国ンホームビルダーのように社会的に信頼が高く確実の適正利潤を得て地域に根を張っていくためには米国のホームビルダー経営に倣う必要があると考えた。そこで、米国のホームビルダーが経営体質を改善することに成功した経営技術を日本に技術移転をしなければと考えた。輸入住宅政策を採り組んだ中曽根内閣の経済企画庁長官であった近藤鉄雄議員が河本派の住宅政策を検討していた。米国のホームビルダー技術を国内に技術移転する方策として、近藤議員は、私達が準備していた住宅生産性研究会(HICPM)の設立に賛同し、参加し、理事長となって、CM(コンストラクションマネジメント)の技術を米国のNAHBと相互協力協定をベースに日本に技術移転する取り組みを行った。HICPMではNAHBのCM関係の基本テキスト(4冊)を翻訳するとともに、全国的なCMセミナーを実施した。それと並行して米国とカナダの住宅産業と住宅市場調査を実施し、消費者にとって資産形成を実現できる住宅(サスティナブルハウス)の条件を調査し、それをもとに日本版「サステイナブル・ハウス・ホーム・プラン・システム」として展開することにした。サステイナブルハウスは、当時の市場価格を20%程度切り下げる合理性を実現し、全国的に、約1,000戸建設された。
そして、「サステイナブルハウス」を「サステイナブルコミュニティ」として供給するために、米国東海岸で取り組まれ始めたTND(伝統的近隣住区開発:トラディショナル・ネイバーフッド・ディベロップメント)計画を調査した。国内でTNDの計画理念を小さな規模の住宅穿設事業ではあったが、TNDの目指している「居住者が帰属意識を持てる住宅地」(わが街)をTNDの設計理論(全面壁面後退、フロント・リビングポーチ)を取り入れ実現した。以下の2プロジェクトがその代表事例である。

事例1:東宮花の森:グラチア(宮崎、アービスホーム)
ニッポ(旧日本土地舗装)が宮崎市で開発した都市改造土地区画整理事業地で米国で始まったTND開発を取り入れて開発した意欲的な事業である。開発に先立って米国東海岸のチャールストン、アイオン、ニューポイント、ハーバーシャムなどTND開発を見学し、アーキテクチュラルガイドライン(建築設計指針)を参考にし、HICPMが開発した「サステイナブル・ハウス・ホームプラン」を使って、既に土地区画整理事業の開発が完了したニッポの開発地でTND開発を計画した。
この計画はHICPMとカナダのトレードワークスが協力し、TNDのアーキテクチュラル・ガイド・ライン(4mのセットバック、アースカラーのカラースキーム、リビングポーチ)を東宮東の森に読み替えて適用したものである。全体で40戸程度の住宅集団であるが、同じ道路でも住宅地の外では、対面する隣棟間隔6m:日本の住宅地に対し、住宅地の中では、隣棟間隔14メートル:米国の住宅地を形成し、「日本の住宅地」と「米国の住宅地」という質的に違った住環境を感じることのできる空間を形成した。その結果、この東宮花の森グラチアが開発されてこの開発地全体の環境イメージ評価が質的に変化し、この住宅地全体が売り手市場に転換した。道路を挟んで面する住宅が、それぞれのフロントヤードとリビングポーチの利用を、お互いの違いを個性として競争し合うことで交流と相乗効果が生まれ、TND開発が意図した地縁共同体の持つ「居住者相互の違いを尊重し合う街づくり」を実現した。

事例2:武笠ガーデン(さいたま市、ロッキー住宅)
さいたま市で取り組まれた武笠ガーデンは、地元の土地所有者の資産運用事業として大熊税理士が取り組んできたブリック(レンガ)化粧住宅による100年定借事業を、住宅購入者にとって資産形成の実現する住宅にするために、宮崎のアービスホームの東宮宮の森を、さらに前進するプロジェクトとして、HICPMとカナダのトレードワークスによる作業を下敷きにして実施したTNDプロジェクトである。このプロジェクトに当たっては、それまでロッキー住宅が建設してきた住宅がレンガデザイン住宅ではなく、スライスレンガ張りぼて住宅になっていたことを修正するため、大熊税理士及びロッキー住宅の社長以下にレンガ住宅のデザインを学習するため、英国のレッチワースガーデンシティなど本物のレンガ住宅を見学し、レンガ住宅の街並み景観を理解し、既存計画のレンガデザインを方向転換してもらう事業としてレンガデザインの原点回帰をした事業である。その計画はレンガデザインを多数採用している米国のTNDプロジェクトを見学し、HICPMとトレードワークスの間でアーキテクチュラルガイドラインを取りまとめ、それを参考にしてロッキー住宅としてまとめた。この計画ではストリートスケープの鍵として電柱を敷地の奥に入れ、住棟間空地を使って電柱の管理ができるようにした。
道路計画に関して道路の管理を公共管理に移管することを強要され実施した。その後の計画では、道路を管理移管しないで良い環境形成を実現している。この住宅地経営では法人土地所有と「三種の神器」を徹底せず、その結果、個人土地所有者の相続人の事故と借地人組合の法人化ができていなかった。これ等の問題がその後の住宅地経営を混乱に追いやることになった。住宅が資産形成を実現するためには、住宅地経営自体が確実に実施されなければならない。この住宅地のようにリースホールド〈定期借地権付き〉の場合、土地所有者が法人でなければ安定できないことは、ハワードが指摘している通りである。自然人は死亡する。地主が死亡した場合、借地人の権利を安定させることは難しい。しかし、法人であれば死亡事故はない。また、住宅地の健全な健全管理にはハードなルールとソフトなルールにより、その実行を担保するためには、強制権の執行ができる仕組みが必要である。紳士協定はルールを実現する担保がないという意味で環境担保にはならない。この住宅地はその問題を学ぶ教材となっている。

(3)長期優良住宅(コモングリーンをもつコートハウスデザイン)
政府が長期優良住宅政策を実施するために、街並みづくりの事業提案を募集した。最初その制度を始めたときは超長期優良住宅という名称で、その提案に対し政府は外郭団体所属業者または木材関係団体会員以外は、受け付けても審査対象にしないという扱いをした。そのため、ここに紹介する2事例とも採択されなかった。それは護送船団だけで国家の利益(補助金の配分)を山分けするもので不当な審査で間違っていると批判し、まともな再審査を要求していた。それに対し国土交通省は新しく「長期優良住宅モデル」という制度を発足させ、その第1回応募に再審査を取扱い、審査採択されたものである。その審査に審査員として立ち会い、その後、住宅生産課長は、「私はそんな経緯は知らなかったが、審査したときこの2つのプロジェクトは光っていたので文句なしに選考した」と言っていた。以下の2つの住宅地は、いずれも最初米国のラドバーン開発の「3種の神器」を参考に計画が作られた。しかし、その後、計画趣旨が理解されず、日本の一般開発地のように、任意性の強いバラバラな管理になっている。

事例1:泊山崎ガーデンテラス(四日市市、アサヒグローバル)
「ビルダーズマガジンが読者に選ばした米国の20世紀の住宅に貢献した「100人の偉人」の第4位に選ばれたJ・C・ニコㇽズは資産価値が維持向上する住宅地開発を行ったとされ、フリーホールドによる「三種の神器」(ハードなルールとソフトなルールとHOAによる住宅地経営)をチャールズ・アッシャーと一緒になって開発し、1928年のラドバーン開発によりそれを実現した。その後、米国の住宅地開発を軌道に乗せることになった。そのニコㇽズの資産価値を維持向上させる住宅地では、道路からの住宅の建築を前面の建築壁面から後退〈セットバック〉させ、街並み景観を美しく形成するためのアーキテクチュラル・ガイド・ラインと並んで住宅地内に公園を形成する重要性を指摘している。
オランダの街並み景観で一般的に採用されている高密度開発をしながら豊かな住環境の実現する方法は、住宅地内に採用する公園の豊かさによって実現される。大きな公園を1戸当たりの公園面積を最小にして実現する方法は、コートハウスのような囲い庭である。小さくて豊かさを実現している住宅にとっての豊かさを演出する「坪庭」に相当する住宅地の中の囲い庭がコモングリーン〈共有緑地〉としてのコート(中庭)である。英国のプリンス・チャールズが、「コモングリーンを6戸の住宅で囲んで作られた住環境は、その外部の環境が破壊されても、6戸の住環境は守られる」と言っている。
泊山崎ガーデンテラスでは、18戸の住宅の前庭が、リージェンシーパーク(英国ロンドン)のように大きな公園の周りに小公園を囲むように造らせ、全体を魅力ある公園とする方法を採用した。その公園計画を採用することで、各住宅のフロントヤード(前庭)と住宅地全体で共有する共有緑地(親水性のコモングリーン)を一体的に計画し、18戸の住宅地に800㎡の公園をつくることを可能にした。
この住宅地が四日市市郊外の環境の中で馴染むようにするために、地域に面した外壁は下見板にペンキ塗りとし、外部から住宅に囲まれたコートに足を踏み入れると、赤レンガの住宅が緑豊かなコートを囲み白いフェンスで美しい田園都市の雰囲気を演出している。この住宅地は建設後居住者の高い帰属意識により、前庭は個性豊かな管理がなされている。この住宅地はデベロッパーの経営者が交代し、当初の計画意図が引き継がれず、HOAによる住宅地経営が廃止され、中央のコートの親水公園がレンガ舗装の公園に変更される等、住宅地経営は中止されたが、当初の計画意図は居住者によって生かされている。

事例2:ガーデンヒル〈横浜市、工藤建設〉
横浜市は地価が非常に高い所であるため、この開発は100年定期借地による持ち家計画として計画された。横浜には明治維新以来、外国人が多数居住し、横浜市民も海外に居住し、又は海外居住した人も多いことから、英国のガーデンシティやガーデンサバーブの空間を「わが街」「わが家」と考える人たちを対象に計画された。特にこの計画に当たっては、計画しているときアーバンビレッジ運動を牽引している英国皇太子チャールズが書いた「ビジョン・オブ・ブリティン」(英国の未来像)の中で、優れた住環境として守られる最小限の単位として「コモングリーンを囲んだ6戸で構成される住宅地」に関する記述があり、それまでHICPMの会員(サンピアホーム、高杉建設、アービスホーム、ロッキーホーム)で、「向こう3軒両隣」の住宅地を住宅の全面壁面後退をしっかり行うことで、非常に分かり易い安定した街並み空間を造っていた事例もあり、自信を持って本計画をまとめることが出来た。
この計画では経済性を重視し、標準化、規格化、単純化共通化を図り、基本的に同じ平面形の住宅を6戸繰り返して使うことで、高い生産性が実現できることになっている。住宅は収納部分等を介して2戸づつが繋がったデュプレックスハウスになっているが、独立住宅が壁を接して建てられるアタッチドハウスと同じ計画理論に依っている。この住宅は2×4工法の外壁化粧としてスライスレンガを張り付けたものであるが、本物のレンガ積をした場合にレンガを積んだときの積み姿になるようにレンガ張りが行われている。当然のことではあるが、レンガ住宅で一般的に行われている同じ形で、大きさの1種類の縦長窓(シングルハング・ウインドウ)を全住宅に使うことで、住宅地全体に強いリズムが生まれ、動かない静的(スタティック)な建築物でありながら、動的(ダイナミックな)感覚が生まれている。同じ形態の住宅であっても、その構成が変化に富んでいるため、全ての住宅の景観はすべて違っている。

(4)ニューアーバニズム
国民が住宅を取得することで資産形成を実現することは、日本では想像もできないことかもしれないが、欧米では当たり前のことである。それを実現している欧米の必然的条件を調査研究して分かったことは、住宅を取得することで資産形成が進む住宅のための住宅地経営をしていることが判明した。すでに英国では、エベネザーハワードがレッチワース・ガーデン・シテイにおいてそれを実現し、J・C・ニコㇽズが米国でそれをリースホールドによる住宅地経営によって実現していた。米国では1928年ニュージャージー州ラドバーンで二コㇽズがチャーリー・アッシャーとともにフリーホールドでそれを実現し、それが現在の米国の一般的な住宅地経営になっている。地価の高い日本で地価負担を住宅購入者の負担にしないで、住宅購入者の資産形成を実現する方法として、㈱大建は英国のレッチワース・ガーデンシテイ、ハムステッド・ガーデンサバーブ、ドイツのフライブルクのガーデンシテイを見学し、将来のキャピタルゲイインは住宅購入者に渡すことを考え取り組んだが、事業が荻浦ガーデンサバーブである。

荻浦ガーデンサバーブ(福岡市。大建)
この計画では日本の1968年の都市計画法制定時の建設省内での都市局と住宅局の合意を活かし、予定建築物の支持地盤を開発行為として開発許可によって築造した。そのうえに、1950年建築基準法制定時に米国のゾーニングコードとユニフォームビルディングコードを参考にして都市計画法が関連改正され、50戸以上の場合、「1団地の住宅施設」及びそれに対応する建築基準法第86条のマスタープランドコミュニテイの規定が造られた。しかし、住宅戸数50戸未満の開発に対しては建築基準法施行令第2条第1号敷地(用途上不可分の建築物で構成される一段の敷地)の規定を使って、敷地面積2,700平方メートルの住宅地にアタッチドハウス(連続住宅)18戸+コモンハウスを開発した。この開発地に隣接して歴史のある農村集落があり、瓦屋根と白壁の集落の雰囲気と調和するように、この開発でも瓦屋根と白壁のデザインを基調に取りまとめられた。環境計画としては、中国で生まれた風と水のエネルギーを住宅地計画に取り入れた「四神相応の風水理論」を住宅の配置計画に取り入れた。
この開発では、米国が1960年代戸建て住宅の住環境をアパート並みの住宅価格で供給したタウンハウスプロジェクトの経験を活かして、人工地盤を設け、その上にタウンハウスを計画することで、高密度でゆとりのある住宅地を開発した。歩車道を完全に分離したラドバーンの計画理論をこの地に読み替えて、中央に400㎡のコート(中庭)と500㎡の駐車場を計画した敷地内の降雨雨水を地下貯留するエコロジカルな環境を計画した。計画のコンセプトとしては多様なライフステージの世帯が集住するミックストハウジングと、職住機能が混在するミックストユースという米国のニューアーバニズムのコンセプトを取り入れて、犯罪の起きない資産価値が維持向上される住宅地として計画された。
この計画実現上で最もエネルギーを払ったことは、居住者の家計支出の範囲で購入できる住宅とするためにコストを切り下げることである。リースホールドと高密度開発にすることで地価負担は限界まで下げた。建築物計画では、アタッチドハウスをエンベロップ(外殻)面積を最小にすることで、建築コストを引き下げることを行った。住宅価格は1戸2,000万円強まで引き下げることができたが、それでも住宅取得ができない人に対しては、賃貸分譲(1定期間賃貸住宅として居住し、その後、賃貸住宅として支払った家賃の内減価償却分を頭金と見なして分譲住宅とする)方式を導入するほか、1戸当たり155㎡ある住宅を貸間付き住宅、貸住宅併存住宅都市、賃料収入が得られる住宅とすることにより、住居費負担の軽減を図る方法も検討している。いずれもニューアーバニズムの基本コンセプトを具体化することで街の活性化を図っている。この住宅は地縁共同体として居住者相互がその家族の属性の違いを尊重し合って、居住者がそれぞれの特性を生かしながら、強調してコミュニテイを守ることで、外部からの賊が侵入することを防止することで高いセキュリテイを実現している。
荻浦ガーデンサバーブはフリーホールドによる住宅による資産形成を最初に取り組んだラドバーンの「三種の神器」による住宅地経営を福岡市糸島荻浦の条件に読み替えて実施したものである。この3種に神器はマスタープラン(基本計画)とアーキテクチュラルガイドライン(建築設計指針)と住宅地経営管理協会が、CC&RS(イエローカード:罰金、とレッドカード:強制退去、を行使できる強制力を付与した民事契約約款)で担保する自治体としてつくられている。規模は小さいが欧米の資産形成を実現している住宅地経営を本格的に実践したわが国最初の事例である。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)

psHICPMのメールマガジンのナンバリングに間違いがありました。11月2日メールマガジン583号は584号の、11月17日の595号は586号のそれぞれ間違いでした。お詫びし訂正いたします。



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