メールマガジン

HICPMメールマガジン第588号(平成26年12月8日)

掲載日2014 年 12 月 8 日

HICPMメールマガジン第588号(2014.12.08)
みなさんこんにちは
日本・オランダ・アメリカの住宅比較
の第15回「米国の住宅地開発技術の展開」

日本の住宅5.「ニューアーバニズム」
サステイナブルハウスCM(コンストラクションマネジメント)の実践

サステイナブルハウスの4条件
1996年NPO法人住宅生産性研究会(HICPM)が創設され、全米ホームビルダー協会(NAHB)と相互友好協力協定を締結した。HICPMは、日本の住宅建築業者の体質を改善しようとNAHBの経験に学ぶことを決定した。NAHBに学ぶ経験とは、1960年代命運をかけて連邦政府住宅都市開発省(HUD)が進めた住宅生産工業化政策(OBT)と対決して、ホームビルダーの現場生産性を飛躍的に高めて見事現在のホームビルダー改質をつくり上げた経験である。NAHBの普及したCM(コンストラクションマネジメント)の技術移転と併せて実践プロジェクト「サステイナブルハウス」を、20世紀を終えるに先立って始めることにした。20世紀末を向え、カナダ住宅金融公社(CMHC)が「ホーム2、000」に取り組み、NAHBは「21世紀のタウンハウス」に取り組んでいた。いずれも住宅生産を徹底的な合理化を図り、次の4原則の下で取り組んでいた。
(1)    家計支出(年収の3倍以下、または所得の30%以下)で購入でき(アフォーダブル)、
(2)    住宅の資産価値が経年的に維持向上し住宅による資産形成ができ(バリュアブル)、
(3)    居住者のライフステージに対応して変化するライフスタイルに合った住宅(フレキシブル)を、
(4)    太陽光、雨水、緑樹のエコロジカルなシステムを使って安全・衛生に(グリーン)建設する。
この取り組みは実はHUDがOBTに取り組む以前に、ニュージャージー州のホームビルダーであったウイリアムレービットがNAHBと協力して、「レービットハウス(4×8合板を使用した2×4工法)」、「レービットタウン(郊外での住宅地開発を流れ作業で開発)として実施した技術開発の発展形である。そこでHICPMではランバー合板を現場で加工をしないで組み立てるレービットハウスの考え方を基本に、米国(NAHB)とカナダ(CMHC)が取り組んでいる技術革新の基本要素を整理し、CM技術を活用して、工務店が高生産性を実現するシステムを「サステイナブルハウス」として開発した。

CM(コンストラクションマネジメント)の効力
この4条件を取り入れたサステイナブルハウスは、4フィート構造モジュールを基本とし、間口と奥行を6モジュールと7モジュールの矩形平面とした半地階付き2階建て出窓付き切妻屋根の住宅(地下を除き延べ面積121㎡)で構成した。窓はシングルハング1種類(出窓も同じ窓の組み立て)、セントラルエアコン付き住宅とし、住宅前面間口一杯に奥行き8フィートのウッドデッキによるリビングポーチを設置した。その生産コストはCMの実践により既存の類似仕様住宅価格より20%以上切り下げ、1,000万円以下で供給する目標を立てた。結果的に、サステイナブルハウスを実施した工務店は、その設計の中に標準化、規格化、単純化、共通化のシステムが組み込まれていたため、その理屈通り実践することで生産性を高められた。その結果、サステイナブルハウスホームプランを使えばそれで生産性の結果が得られることになり、逆に、工務店にCMを学習する必要性を理解させる障害になった。
サステイナブルハウスは土地と一体となった環境づくりとしてサステイナブルコミュニティの実現を目標に名古屋木工機械展の併設事業としてサンピアホームの協力を得て、愛知県常滑で取り組んだ。その後、滋賀県浅井(岡島工務店)、茨城県牛久(ウイングホーム)で実施し散発的な開発であったが、予定通りのコストカットに成功をした。しかし、これ等の工務店ではサステイナブルハウスホームプランシステムを使ってCMの実践をする努力をしなかったため、工務店の体質改善を実現することにはならなかった。その実験的建設段階を経て、全国各地で創意工夫を凝らした開発が進行した。サステイナブルハウスの最も重要なことは生産段階におけるムリ、ムダ、ムラを省くためには、基本モジュールを基本材料である製材と合板寸法を取り入れることにし、材料の種類及び加工方法を単純化し、現場において図面を見て確認し納まりの原寸図を描いて指示するようなことはなくし、現場の職人が考えなく、休みなく仕事に専心できるようにしたことである。後は習熟効果を上げることで工務店体質は向上されるはずであった。ウイングホームの建設現場からの毎日の報告は、「現場でごみが発生しないこと」であった。それはサステイナブルハウスの設計が標準化、規格化、単純化、共通化が徹底していたためである。住宅の平面計画は居間、台所、食堂という社会的空間は仕切りを設けないオープンプランニングを徹底することで、エアコン効率も良い豊かな空間を演出するとともに、家族が社会的空間で過ごすことが楽しい空間とした。また、住宅の前面に設置されたリビングポーチは、アウトドアーリビングも楽しむとともに、簡単な応接機能を発揮する前庭のガーデニングと一体に優れた街並み景観を演出した。

区画整理地で実現したサステイナブルハウスによるTND開発
宮崎県宮崎市ではニッポ(旧日本土地舗装)が750宅地もの大きな都市区画整理事業「東宮花の森」を実施していたが、市街地から少し離れていて住宅の立ち上げは計画通り進まず困っていた。そこでニッポは、地元の意欲的な住宅会社に共同で住宅開発することが提案された。㈱アービスホーム(谷口社長)は、新しく住宅会社を起こし意欲的な仕事をしたいと考え、米国のような開発にチャレンジするべくHICPM会員になった。米国では1980年から各地でTND(伝統的近隣住区開発:トラディショナル・ネイバーフッド・ディベロッップメント)が取り組まれているので、それにチャレンジするHICPMの勧めに応じ、谷口社長は金丸常務とはHICPMが企画した米国のTND調査に参加し、米国南部のローランドのTNDを見学し、帰りの飛行機の中で手に入れたアーキテクチュラルガイドラインの翻訳を始め、帰国後本格的な計画に取り組むことになった。日本では土地と住宅とは別の不動産であるので、土地は土地区画整理事業でこま切れに切り刻まれている。敷地境界を越えてマスタープランを立案すれば優れた街並みができる実験は、HICPMがカナダのトレードワークスと協力して、米国のマスタープランドコミュニテイとしてのサブディビジョン開発で実践した滋賀県浅井で実証済みであった。欧米では住宅地のマスタープラン(都市開発)は3次元の建築計画にまで踏み込むものである。

そこで、米国のカンザスシテイのカントリークラブでJ・C・ニコラスが実施した「資産価値が増進する街づくり」の経験に倣い、HICPMとカナダのトレードワークスが協力してマスタープランとアーキテクチュラルガイドラインを作成した。前面道路から境界線から4mの壁面後退をし、道路に面してウッドデッキでつくられた「玄関があるリビングポーチ付き」のファサードが並び、セットバックした前庭には花木が植え込まれた街並み景観が計画された。そこに建設されるサステイナブルハウスの色彩計画(カラースキーム)は、トレードワークスからの提案で、住宅購入者がカラースキームで用意した色彩のどれを選択しても調和するアースカラーが提案された。グラチャと命名された約40戸で構成された一団の分譲地は、全体がマスタープランドコミュニティとして有機的な計画住tカウ地として編集され直された。住宅地に建設される住宅は、基本的にはサステイナブルハウス1種類である。同じ形の住宅で、そこに採用されている窓も1種類のシングルハングだけであるにもかかわらず、居住者の個性あるカラースキームとリビングポーチ、切妻屋根の入り勝手、ルーフスカート(小屋根)などのアクセサリーの形状オプションの選択により、多様な居住者ごとの個性が発揮された「わが家(アワーハウス)」でいて、その住宅地は通りごとに4mの壁面後退と、敷地を別に作られている住宅の窓が同じ形状・大きさであるため、その窓が街並みのリズムを作ることで、通りごとに個性的な「わが街(アワーストリート)」になり、全体で「わが町(アワ-ヴィレッジ)」と帰属意識の高い環境を形成している。

日本のハウスメーカーは「差別化」と称して相隣と違ったデザインの住宅を敷地の北側に寄せて建築している街並みに連続して、グラチアの住宅地が隣り合わせに造られている。そこを歩くと、既存のハウスメーカーの住宅地はよく見る「日本の街並み」であるが、アービスホームのグラチアの街並みに入ると一挙に街並み空間が2倍以上に広がって「アメリカの街並み」を連想させる。それもそのはず、小林十三や五島慶太が田園調布を計画する前に米国を訪問したとき、米国の基準(前面道路幅員と同距離以上の壁面の後退)は贅沢と判断し、後退距離は前面道路幅員の半分に決められた。そのため対向する住宅壁面間距離は12mである。グラチアでは14メートルで田園調布より2mも広い。すべての住宅は道路にファサードを向け、この地に来た人たちを出迎える華やかさがある。さらに、北向き住宅は、南向き住宅より光を見ることで眺望が良いと人気が高い。街並み景観を魅力的にするため、リビングポーチには洗濯物や布団を干さないルールがある。美しい町は、人びとにとって憧れの街の条件である。

東宮花の森にグラチアが開発されてから、グラチアの住宅地が作り上げた街並み景観の魅力によって、東宮花の森で住宅地を造ればグラチアのような明るい感じの住宅が手に入ると考えて購入する人が増え、宅地全体の立ち上げが促進された。しかし、そこでアービス以外の住宅会社が造る住宅地は、マスタープランドコミュニティの技術が採り入れられていないため、これまでのハウスメーカーの住宅地と同じ物しか作ることができないできた。結果的にみると、アービスホームによって建てられたグラチアが、現在でも東宮花の森のハイライトになっている。グラチアに建設された住宅はすべて6モジュール×7モジュール、1モジュールは4フィートという単純な形態の住宅である。建築としてのエンベロップ(外殻)の総面積は同一ならば最小に近い住宅である。延べ面積は121㎡である。半地階に収納空間が造ることができるようになっている。それであるにもかかわらず、エンベロップに囲われた内部空間は自由に間仕切りができるだけではなく、オープンプランニングによって住宅内の視覚的な広さは非常に広い。グラチアの開発の最大のチャレンジはCMの実践による企業体質の改善であった。

当初サステイナブルハウスによる取り組みに対し、内部の検討結果、重体までの住宅と比較して特段に高い利益が出るものではないと批判的であったが、HICPMの指導を受け米国まで出かけ始めた住宅であるから、しばらく続けてみようと谷口社長が判断し、トレードワークスで作成したマスタープランとアーキテクチュラルガイドライインをもとに、住宅購入者のニーズに応えたオプション選択の結果、順調に営業が進み、計画通りの住宅生産が実施された。街並みの形がはっきりするにつれグラチアは話題となり多くの人が関心を持つことになった。その都市が暮れようとしたとき、下請け業者が酒をもって谷口社長の所に「来年もよろしく」と挨拶に来てくれた。谷口社長は例年は下請けを回ってお酒を配っていたのに何がこのように変わったのだろうと思い、帳簿の整理検討を行った。そこで驚いたことは、当初5%程度の利益しか上げられないと考えていたサステイナブルハウスは30%を超す利益を上げる結果になっていた。それだけではなく下請けの賃金を調べて診ると、これまでの賃金の3倍程度になっていた。その理由は、当初は一戸の住宅を建設するのに3か月半近くかかっていた工事が、最終的には一戸当たり一カ月を切って建設できていた。同じ設計図面を使って工事をした標準化、規格化、単純化、共通化を徹底した設計図書を使うため、職人の習熟効果が生まれ、仕事のスピードが3倍以上の向上したのである。これはアービスホームがCMを実践したわけではなかったが、サステイナブルハウスが生産性を高める設計になっていたため、結果としてCMを実践しようという積極的努力をしなくてその効果が表れたのである。同じ設計図書を使って50戸近くの工事を引きも切らずに建設できたからできたことであるが、CMを正しく実践すれば、50戸纏まらなくても少ない戸数でも高い生産性を実現することが出来る筈である。アービスの場合はサステイナブルハウスを継続的に建設できた結果、建設業経営管理(CM)という技術をもたなくても、仕事に追われて同じ結果が生まれたわけである。

100年定借武笠ガーデン
埼玉県の浦和で地主の相続対策の相談に乗っていた税理士大熊さんは、100年の定期借地制度を利用した住宅地開発をスライスレンガの外装を利用して実施していた。現地を見学し住宅地計画的にも、レンガ住宅のデザイン的にも改善の余地が大きいことを説明し、リースホールドの住宅地開発を最初に提案したエベネザーハワードによるレッチワース・ガーデンシティを訪問してはどうかとお勧めし、HICPM・GKKの海外研修ツアーで現地を見てもらい、これからの開発をマスタープランドコミュニテイの開発技法とサステイナブルハウスを使ってレンガデザインによる100年定期借地権事業を行うことに方針決定をしてもらった。そこでHICPMはカナダのトレードワークスと協力してマスタープランとアーキテクチュラルガイドラインを作成することにした。この計画では作成した計画の実施において、当初埼玉県が開発許可の関係で開発道路の関係で道路移管を強要する等不適切な指導もあり、叉的借地権住宅に対する金融機関の不当な融資制限などに妨害され、HICPM・トレードワーク提案の設計通り実施できない状況に置かれたため、その成果を使わないで埼玉県の指導による事業をするということで計画の変更で事業が開始された。(業務成果を使用しなければ業務費用の支払いも免除できるとの誤解もあったようである。)しかし、事実上トレードワークの業務成果を活用し、トレードワークスへの支払いを行い、武笠ガーデンは実施された。

この計画では電柱と電線が街並み景観を崩すことで、地下埋設を考えたが、東京電力による事業は費用が著しく高くなるので、電線は敷地の背後に通し、電柱は敷地の背後に全面道路から後退して管理用の空間を設けて建てることにした。その結果、街並み景観(ストリートスケープ)から電柱は姿を消し、すっきりさせることができた。事業は、事業主がトレードワークスの作成したマスタープランを参考にして、素人の判断で勝手に計画されたため、建物後退距離もばらばらであり、曲線道路も埼玉県の指導で計画通り出来ず、断続的な直線を繋いだ曲線で、その道路に適当の張付ける形で住宅が建てられた。そのため、この計画は、トレードワークスで作成した設計を参考にして素人が実施計画を取りまとめたものです。この計画では敷地の中心にあった地主の自宅が白アリ被害に遭って壊さざるを得なくなり、また、この開発地全体をHOAによる住宅地経営をせず、調子相続の形を取りながら相続する調子以外の家族の相続権を残していたため、相続権を有する家族の金融事故により、この中心部分の土地を売却することになり、当初の全体の環境重視の住宅地経営計画は大きく崩れることになった。

長期優良住宅計画(四日市:泊山崎ガーデンテラス、横浜:ガーデンヒルズ)
国土交通省が超長期優良住宅という政策を始め、そこで街づくりの提案を認定する施ウドが始まって、1戸当たり200万円の補助金を交付することになった。HICPMの会員の中で工藤建設〈横浜〉とアサヒグローがる(四日市)がこのプロジェクトに挑戦したいので指導を要請してきた。早速この計画に米国の「持ち家による資産形成を実現する住宅地経営」の最初の挑戦として行われたラドバーン開発(ニュージャージー州)の計画の原点に立ち返って「三種の神器」による住宅地経営を提案した。

ガーデンヒルズ(横浜:工藤建設)
このうち、ガーデンヒルズ(横浜)ではプリンスチャールズが、英国の未来像〈ビジョン・オブ・ブリテイン)の中で、周囲の環境が崩れても住宅地として守ることができる最小規模の開発として「コモングリーンを囲んだ6戸の住宅地」と言うテ-マに合っているということで、6戸3棟のデュプレックスで計画しています。6戸の住宅はサステイナブルハウスの件が得方を基本に同じ形態の住宅を間に収納部分を挟んだ2戸1棟の型式です。工藤建設は地下空間付き住宅をその商品企画の基本に据えています。この地下部分を含み、全体を「用途上不可分な一団の敷地」として開発許可で行う計画、工藤建設の意向で否定され、不正常な敷地延長の集合体として、すべて建築確認として行われた。
「6戸の住宅に囲まれた共有緑地は、それを囲う6戸の住宅に豊かな広さと樹木の緑を取り入れた中庭はプリンス・チャールズの指摘通りのまとまりのある住宅地を形成している。この住宅建設も、CMの合理性を発揮できれば、高い生産性を上げて高い利益を上げることができた筈であるが、日本の建設サービス業として下請けの丸投げとして実施させたため、せっかくの大きな工事費利益を上がることができなかった。このプロジェクトではラドバーン開発のCC&RS(カベナント・コンディションズ・アンド・レイストリクションズ)を下敷きにした「三種の神器」をHICPMで用意したが、結果的には提案趣旨が理解されないまま経営されたようである。

泊山崎ガーデンテラス(四日市市:アサヒグローバル株式会社)
敷地面積が3,800㎡の敷地に18戸の住宅を建設するものであるが、その中央に18戸の前庭に水が流れる親水公園を取り込んだ約800㎡の中央公園が造られている。四日市の郊外の農家と農地が散在する地域に開発された住宅地であるので、景観的にも周囲となじみやすくするように、灰色ペンキ塗りサイディングの外壁でつくられた建築群(塊)として計画され、その中心に親水公園があって、それを囲う形で赤煉瓦外壁の戸建て住宅が取り囲む形でつくられている。中央公園を囲む道路と敷地の間には白のフェンスが取り囲み、花木の植えられた前庭の背後にレンガの住宅が立っている。住宅地の周囲には水路が並走する幅員4mの市道と幅員6mの開発道路が取り囲んでいる。ロンドンのリージェンシーパークとは比較にはできないが、小公園を中央公園の周りに配置して全体で多様性を統一させている公園としているイメージを住宅地のデザインに取り入れたものである。18戸の全ての住宅のウッドデッキでつくられたリビングポーチから中央の親水公園が眺められ、そこが接客のできるカフェーとして機能する。この泊山崎ガーデンテラスは、外部からやって来た人が足を踏み込んだ瞬間から驚きの空間である。実際完成したこの住宅地のことを、周辺地域の住民は、この住宅地に対し街全体として形成する環境を、公園邸宅街としてそのすぐれた異次元の空間を認めている。この住宅地はラドバーンの持ち家による資産形成を実現する「3種の神器」のシステムをHICPMとして提案し、導入できたが、事業経営者がその提案を理解できず、「手離れの良い事業」として、住宅地経営を放棄してしまった。

ニューアーバニスム
現代の米国における住宅により資産形成を持続的に行う街づくりは、TND,サステイナブルコミュニティ、エコロジカルな街造りの成果を「アワニーの原則」としてまとめ、それをニューアーバニズムとして広く新開発、再開発に展開している。そこで、HICPMではここに紹介した途中や、最終的に挫折した住宅地開発の問題を軌道修正して、米国で最も一般的になっている取り組みとなっているニューアーバニズムを日本で採り入れた事例が「荻浦ガーデンサバーブ」である。

(荻浦ガーデンサバーブ)(㈱大建:福岡県糸島市)
この計画では事業主である㈱大建(松尾社長)が、英国のハムステッドガーデンサバーブを訪問しその歴史を知り、現在の環境を見て、それに倣った住宅地経営を行う考え方をもった。住宅による資産形成というアイデアは自らを「都市経営の発明家」と称したエベネザー・ハワードの『明日へのガーデンシティ』の思想に忠実に取り組み、そこにその発展形として1920年代にフライブルクで喫視されたハワードの影響を受けたガーデンシティを見、その後米国で発展した「三種の神器」による多くの街づくりと、最新のニューアーバ二ズムの考え方の原点になったシーサイド(最初のTND開発)や、スラムを再生したハイポイント(HOPE計画)を見学して、最初はレンガの街を計画する予定であった。しかし、NAHBの街づくりのテキストを学習する中で、その土地の持っている歴史文化性を発展させることの重要性を考え、現在の瓦屋根と外壁白壁の連続住宅地に計画を変更することになった。開発地周囲は130年を超す瓦と白壁の豊かな農家住宅が立ち並んでいる地域である。その既存の環境と相乗効果を発揮できることで、地域に受け入れられるものを建設することが取り組まれた。敷地に降った雨水は地下に貯留し再利用するとともに、ニューアーバニズムの基本コンセプトであるミックストハウジング(多様なライフステージの人たちが住み集まる)とミックストユース(多様な職業や用途を兼用又は併存できる)住宅を取り入れることにした。フランク・ロイド・ライトが「街づくりは民主主義の実現」であると指摘したとおり、都市には多種多様な人々がそれぞれの特性の違いを尊重し、活かして生活
する街であると言っているように、ニューアーバニズムの上記2つのコンセプトは、荻浦ガーデンサバーブの基本コンセプトになっている。

かつて、HICPMがサステイナブルハウスを開発したときの基本4要件(アフォーダブル、バリュアブル、フレキシブル、グリーン)の中で最も実現が困難であるとされるアフォーダブル(年収の3倍以内の住宅価格)を実現するため、㈱大建自身が全体の都市を保有し、100年のリースホールドによる住宅地経営を行うことにした。それは土地所有者㈱大建が自らの資産形成に責任を持つことで住宅地経営をするハワードのガーデンシティの理想を実現するためである。それは日本の適借地権事業のような30%保証金を取ることはせず、住宅購入者に土地取得費負担ゼロで住宅を購入できるようにするためである。しかも、米国の「戸建て住宅並みの住環境を共同住宅並みの価格の住宅」として60年代に供給され始めたタウンハウス(庭付き独立住宅が隣地境界線に接して建築され、各住宅の上下に他人の権利が重ならない住宅)を優れたランドプランニングで高密度で供給する方法を採用した。この方法は欧米の市街地住宅で共通に取られている方法で、構造壁が隣地境界線に接して建てられるため、(1)化粧外壁が不要になり、(2)住宅の外壁を介した熱の流出入のエンベロップ(外殻)を最小にし、(3)住戸間に管理の行き届かない隙間をある歯並びの悪い街並み景観を止め、(4)防耐火性火及び遮音性が高い住戸環境を造り、(5)隣棟間なら吹き出す隙間風による通行者への不快感をなくし、(6)都市火災の原因となる市街地火災の拡大路をなくし、(7)盗賊やストーカーなどの犯罪者が隠れることのできる空間をなくし、犯罪が起きることのない資産価値を毀損しない住宅地をつくる方法である。

荻浦ガーデンサバーブは、販売後明確になったことは、糸島氏にあることとその立地が福岡市との交通機関の関係で、JRの列車本数や駅からの徒歩時間と徒歩環境の関係で、通勤上少し不便であることが入居の選択を困難にしている。しかし、その条件は今後改善されるだけではなく、この住宅地に生活して得られる生活環境の良さが経年的に向上することを考えて、長期的に考えてよいと考え、米国が住宅バブル崩壊期に実施した賃貸分譲(一定年間賃貸住宅にし、その後、分譲住宅として購入者に対しては、珍地機関の家賃中減価償却費分の頭金換算をする)を導入して、当面の入居者を増加し、目下9割(16戸)が入居している。㈱大建の住宅経営としても、住宅購入者の資産形成を実現する住宅地経営として、投資額に対する運営利回りは2%を上回っており、手離れのしない住宅経営を継続する事業としては、まずまずの成果を上げている。この㈱大建による住宅地経営は、計画段階から現在の住宅地経営として取り組むべき、耐震、耐地盤液状の人工地盤、雨水の地下貯留と再利用と熱利用、太陽光発電、家庭菜園、金魚とメダカの住む池、さくら、金木犀、アメリカフウ等多数の四季を彩り、野鳥場飛来する植栽、屋外のウッドデッキの舞台、ゲストルームと託児のできる滑り台のある集会所をもったコモンハウス、自宅にアパートを併設したり、各市教室を開設できる受託などの多くの居住者のニーズにチャレンジし、TV,雑誌、新聞などのメディア取材が相次いだだけではなく、それは未だに継続している。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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