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HICPMメールマガジン第590号(2014.12.22)

掲載日2014 年 12 月 22 日

HICPM メールマガジン第第590号(平成26年12月22日)

皆 様こんにちは
オランダ、アメリカ日本3国住宅問題比較のまとめ(その2)

今回最終回は、日本の「フローの住宅政策」の欠陥と倣うべき欧米の「ストックの住宅政策」農地。これまでこだわってきた住宅の資産価値を評価する住宅不動産鑑定評価のシステムに関し、以下に日本と欧米の不動産鑑定評価に関する比較検討を紹介する。

アプレイザル(不動産鑑定評価)、エスクロー(不動産仲介資格確認)、MLS(不動産公開市場)
不動産取引を合理的に行うシステムとして米国では住宅不動産の価値を評価鑑定するアプレイザルと、不動産とその取引する人の権利関係を明確にするエスクロ―と、自由平等な公開不動産マーケットMLS(マーケット・リスト・サービス)が適正に機能していることである。日本政府は米国の既存住宅市場が新築住宅市場の4倍以上に大きいだけではなく、既存住宅価格が建築後上昇し続ける住宅の市場環境を羨ましく思い、その改善策を米国の不動産流通システムに倣うことによって実現できるのではないかという期待を持っている。そのことを検討するために米国の不動産流通システムを調べて見るとその基本に不動産鑑定評価制度(アプレイザル)と不動産資格確認仲介制度(エスクロ―)とMLS(マーケット・リスト・サービス)とがあることに注目する必要がある。この3つの制度は、自由主義資本主義社会で不動産取引を経済の原則通り行うための基本制度となっていることに気付かされる。不動産取引は住宅不動産の需要と供給との関係で決められるもので、それは住宅不動産の提供する効用と住宅不動産の価格によって左右される。不動産鑑定評価(アプレイザル)は不動産取引価格が不動産の需要と供給との関係で決められる市場原理に基づくもので、不動産資格確認仲介制度(エスクロー)は不動産の売り手と買い手の両者から等距離を置いて不動産仲介を行う業者で、不動産取引当事者と取引対象物件の資格確認を行い、MLS(マーケット・リスト・サービス)は既存住宅市場に出されている住宅不動産を全ての需要者が選択の対象にすることができる精度で、その3つの制度により、住宅不動産取引が自由で平等な市場取引が安心して行えるようにしている。

アプレイザル(不動産鑑定評価制度)
住宅不動産の価値は基本的に需要と供給との関係で決まる市場取引価格が、住宅の価値を表し、常時変動している。住宅不動産鑑定評価制度には、以下の3つの方法で不動産価格を見積もり又は比較衡量して、最終的には不動産鑑定評価者がその知識経験により総合的判断により定めることになる。わが国の不動産鑑定評価制度はその評価方式だけは米国の評価方式名称を採用しているが、その内容は似て非なるもので、当然、その評価結果も全く違ったものになっている。その基本的な違いは、欧米の場合は住宅不動産の効用は、米国では「ロケーション」ということばで、その住環境全体が経年的に熟成する効用を評価しているが、日本では利便性の評価が部分的に行われているだけで、米国では飛び抜けて重視されている防犯安全性の評価であるとか、居住者が「わが街」という帰属意識を感じる「街並み景観」と言った環境評価の視点が基本的に欠如している。繰り返しになるが、日本と欧米の住宅政策を分けているものは、住宅販売価格が経済学理論通り、住宅の価値の現象形態になっているか、それとも経済理論と違ったものであるかの相違である。そこで改めて欧米における不動産鑑定評価方法を日本の不動産鑑定評価法との比較で解説する。同じ言葉を使っていても、内容は全く違っている。・

第1、原価方式(コスト・アプローチ)
欧米の住宅不動産鑑定評価法では、住宅不動産は土地に法定都市計画で定められた土地利用計画に従って住宅による土地の加工を行うものであるから、原価方式は土地、建築材料、建築労務等の住宅生産業務に要する費用を積み上げ、それに20%の粗利を加算した見積額で、既存住宅の場合「推定再建築費用」を言い、その不動産鑑定評価は新築住宅も既存住宅も基本的に同じである。
欧米では、住宅金融も建設金融も直接工事費を対象にしか行わないので、融資申請では材工分離の見積書の添付が条件である。欧米では、この見積書が設計図書に優先する。そのため、見積書は設計図書以上に重要視され、既存住宅価格を再評価するとき、基本的にその見積書の単価を改正すれば、現時点での住宅の価値を見積もれることになる。米国では住宅の通信販売を実施していた時代がある。そのときに住宅価格は基本的に減価と数量及び単価は公開で、労務単価は地場での調達単価として見込み額が示されるが、販売住宅価格には入れられていなかった。原価方式(コストアプローチ)の原点である。
一方、日本の住宅不動産鑑定評価法では、住宅は土地と切り離しては、住宅としての効用を発揮することができないにもかかわらず、住宅だけで不動産とされ評価されている。欧米ではモジュラホームやモーバイルホームの例にある通り、土地に定着されるまでは動産である。しかも、日本でも労賃は地方ごとに大きく違っているにもかかわらず、大手ハウスメーカーの住宅価格は労賃に無関係に価格設定がされている。一般の住宅の請負価格に関しても材工一式の複合単価で、実在しない材工一式の概算単価で計算した額で見積もられた価格が日本の原価方式の住宅価格である。
日本の「積算資料」や「建築物価」は、建設用者が建築主に請負契約で利益を確実にあげることのできる請負額を算定するための概算額計算のデーターベースであって、欧米の建設コストの積算・見積もりのデーターベースは存在していない。各建設業者も元請け業者、下請け業者の如何にかかわらず、自社が損をしない概算数量や単価のデーターベースがあっても、実際の工事違必要な厳密な資材と労務数量や単価のデーターベースを持っていない。CMを行っていないため原価管理ができていない。
また、中古住宅の不動産鑑定評価の場合には、減価償却理論が不動産鑑定評価理論として使われている。日本の不動産鑑定評価に採用されている減価償却理論は、材料の物理的劣化と同時に住宅の物理的劣化が進む、という社会科学的な合理性のない理論である。住宅に使われている材料は経年劣化するため、維持管理や修繕を行うことで住宅自体の効用は恒久的に維持されることになっている。そこでは実際に使用されている材料や技能とは無関係に効用は恒久的に維持されているにもかかわらず、減価償却理論は建築後の経過年数だけで住宅不動産価値が根拠なく減価償却するという評価が行われる。金融機関はその評価に当って実物を見ないでも建築時期が分かればそれで評価出来ると言い、これまでそれで評価が行われてきた。

第2、相対的販売額比較方式(レラティブ・セ―ルス・プライス・アプローチ)
欧米の住宅不動産鑑定評価法では、販売価格相対比較法は、市場で取引された住宅不動産の取引価格と住宅不動産の提供する効用とを相対的に比較衡量する方法である。住宅の提供する効用を住宅地と住宅の2段階に分け、それぞれについて、住宅の提供する、デザイン(審美性)、機能(利便性)、性能(安全・衛生性)の3効用を交換価値の理論により、住宅所有者にとっての住要求の重さ(ウエイト)付けを行う。その後、取引事例となる住宅の総合評点と価格と、これから評価しようとする住宅の総合評価と住宅不動産価格には相関関係があるという前提で、相対的比較衡量を行って住宅の価値を計測する。この評価をするために、住宅の効用を明らかにし、その評価をウエイト付けする技術を再確認することが必要となる。欧米にはこの考え方を支持する建材や労務の内容のデーターベースは複数のデーター会社から出版されている。
一方、日本の住宅不動産鑑定評価法では、土地と住宅とは分解され、土地は近傍類似額との相対評価で行い、住宅は減価償却理論を用いた残存価格とされる。しかし、マンションのように住宅不動産として土地と建築部分とを切り離して評価することがあまりにも非常識でできない住宅不動産に関しては、土地建物一体で、市場の取引事例を比較して鑑定評価されるが、都市計画上の用途地域、建蔽率、容積率など集団規定の区分と交通の利便性と学校教育施設、医療福祉施設、商業業務施設等の都市生活必要施設の利用可能性等である。建築物に関しては、床面積、部屋の構成、天井高さ、築年数、建築構造材料の種類、内外装仕上げ材料の種類、エレベータや冷暖房などの住宅設備、販売住宅の階の位置等である。それらの要素を不動産鑑定士が「恣意的」(社会科学的理論もなしに経験的に言われている評価)に判断して販売事例と関連付けて評価するもので経験に依存する評価制度である。

第3、収益資本還元法(レント・キャピタライズド・アプローチ)
欧米の不動産鑑定評価法では、収益資本還元法は住宅不動産を賃貸物件として賃貸住宅市場に出したとき、得られる賃貸料を、平均利回りで資本還元したときに得られる住宅の資本価値である。この不動産評価鑑定法は、客観性を持って賃貸不動産物件の賃貸額実績が安定した評価実施があることが前提で、事例を対象にして成り立っている制度である。アプレイザルにおいて開発当初の住宅地と開発が進行中の住宅と熟成段階に入った住宅とでは、計画効用と実効用との違いにより、同じ住宅地でも住宅地の熟成に伴い取引価格は向上することになる。資本家にとって投資対象物件が違っても、投資期待利益とリスク、投資期間等を比較考量して投資が行われるので、利回りは投資物件ごとに違い、変動するものである。利回りはその他の投資物件との比較で決められる。
一方、日本の住宅不動産鑑定評価法では、類似とされる住宅不動産物件の賃貸料金との比較をもとに資本還元して住宅不動産価格を決定する。資本還元計算をすることは欧米の用法と同じであるが、類似物件とされる不動産との相対性は極めて恣意的である。結果は、相対的に比較される住宅不動産の選択や、相対的類似背の確定方法が経験主義に立つもので、社会科学的合理性がない。一般に不動産鑑定評価は評価を依頼した依頼主の意向にあった評価をするもので、欧米に見られる売り手及び買い手の双方から空率の立場に立って行うものではない。ほとんどの場合、依頼主の求める不動産学に合うような理屈を後付でつけるもので、その評価法が科学的な理論の技術も存在せず信頼性は低い。しかし、地価が右肩上がりで推移していたときは、そのトレンド(傾向値)に沿っていたので、概ねの数値として受け入れられる範囲とされていたが、現在の評価は、恣意性が高すぎて、ほとんど信用性はない。

減価償却理論のお粗末
日本においては、「住宅生産近代化政策」によってプレハブ住宅を政府主導で展開したとき、すでに住宅統計上住宅過剰時代に入っていた。そこで政府はスクラップ・アンド・ビルド政策を採用し、基本的にプレハブ住宅の市場として、既存木造住宅の建て替えを「居住水準の向上」政策の柱に据えてその市場拡大を行った。そのとき、住宅を耐久消費財扱いとし、木造住宅に関してはその減価償却年数を20年と定めた。
減価償却は、企業の資本形成を支援するための会計法上の資産の会計法上及び税法上の扱いで、その償却年数が物理的な償却期限を表しているものではない。それであるにもかかわらず、わが国では、不動産鑑定評価をするとき、会計法または税法上の残存価値の評価を持ち込んだ。そして、プレハブ会社と政府(建設省、住宅金融公庫、地方自治体)が共通理解の下で、住宅が物理的に償却すると言い、既存住宅の価値は償却理論で計算した残存価値であると説明した。特に既存の木造住宅の残存価値を償却理論に基づいて計算した残存価値しかないと説明した。住宅の建て替えを居住者に勧め、多くの使える立派な木造住宅をプレハブ住宅に建て替えさせるために破壊してしまった。その時代から現在に至るまで、わが国の住宅政策は一貫して工業化住宅中心の建て替え住宅政策をその基本に据えてきた。
オランダ、アメリカ、日本の3カ国比較をすることを意識してオランダでもアメリカでも、その他のヨーロッパ諸国を訪問したときに不動産鑑定評価制度との関係で日本に置ける償却理論について意見を求めると、どの国の住宅関係者でもその質問自体に驚き、どうしてそのような償却理論が日本の国で通用するのかという質問が返ってきた。「日本において償却理論を住宅不動産評価に適用する根拠があるか。」という質問である。船大工が木造住宅を建設したバイキングの住んでいた国、英国や北ドイツには、建築後、500年を超す木造住宅が便益で生活に使われている。そこでは、日本人が法隆寺を誇りにするように500年経過した木造住宅が現役の住宅として使われ、木造住宅は適正な維持管理がなされている限り、老朽することはないという。それは建築構造材料の如何に拘わらず、すべての材料に言われていることで、日本のように構造別に耐用年数がアプリオリ(先験的)に決められていることはない。不動産評価理論として、どのような合理的な根拠があって不動産評価に減価償却理論を持ち込んでいるのか」また、「日本人は実際上、住宅が構造別に減価償却した経験でもしているのか、という疑問が、どこの国の人からも問い返される。

住宅不動産と資産とみる見方
オランダでもアメリカでも住宅は購入した価格より確実に資産価値を高めている資産と考えられている。その考えに全く逆行する日本人の考え方から、住宅はどうして資産になるのか、と質問すると、異口同音に、住宅は生活に不可欠な資産として、人々が大切に守り、それを取得するために人々が長い期間を掛けてローン返済を行って獲得したから、支払った代金に利息をかけた分だけの価値がなければならない、という回答が返ってきた。それに付け加えて、私たち家族がこの住宅に生活し、変化してゆくライフステージごとの生活要求に応え育って行く資産であるという。それは優良株式同様、住宅地に居住する世帯が増加するに伴い、住宅地内の諸施設が充実し、住宅地で享受できる環境アメニティは高まり、この住宅地への居住希望者は多くなり、その需要と供給の関係を反映して住宅価格は、確実に上昇する。また、人びとが家族の成長に合わせてインテリアを変え、植栽やガーデニングを楽しみ、その生活を羨んで多くの人がこの住宅に移住したいと望んでくれる。住宅の資産価値は固定的なものではなく、住宅の取引市場を反映する。物としてつくられた住宅が、生活の器として重要であることに変わらないが、住宅地に居住している人びとによりつくられるコミュニテイの自治により人間環境を強め住みやすさと安全性を増進することになる。
アメリカの1960年代の初期に造られたアクティブ・リタイアメント・コミュニテイ「サンシテイオリジナル」には、「木や鉄やコンクリートで住宅を作るが、人びとがコミュニティをつくる」という言葉が書かれている。「10人10色」という言葉があるが、居住者は一人ひとり独特の個性を持っていて、同じではない。オランダでもアメリカでも個人主義が発達した国では、居住者を同じ雛形に入れるのではなく、それぞれの違いを尊重して相互にその優秀な能力を発揮するようにすれば、お互いの欠けている部分を活かして、全体として大きな総合力を発揮する住宅地に育てることができる。フランク・ロイド・ライトが「建築の4原則」で、住宅地を造る仕事は「民主主義の実現」であると言っているが、それは米国の住宅地開発に共通する指導理念になっている。民主主義を実現する基本原則は、「お互いの違い」を尊重し合って、自分のできることは率先して皆の利益のために行うことである。その様にしてつくられた住宅地には、多くの人びとが住みやすい環境として集まってくる。その結果、売り手市場を構成する住宅地が形成され、住宅取引価格は上昇し続けることになる。同じ住宅に住んでいても、個人個人の違いを尊重し合う住宅地は、住みやすい住宅地として取引価格は上昇し続けることになる。

資産ではなく負債増大になる日本の住宅
オランダやアメリカの住宅に対してその真逆の方向を向いている住宅が、日本の住宅である。日本の住宅は住宅の価値の2倍以上の販売価格になっている。その理由は住宅供給業を住宅建設サービス業と産業分類し、住宅建設に必要な直接費用以外の広告・宣伝、営業・販売に係る巨額の経費を販売価格として回収する価格になっているからである。住宅販売価格が住宅の価値を表していると勘違いさせられて消費者は住宅を購入させられている。しかし、販売価格に含まされている広告・宣伝、営業・販売経費は、住宅売却の過程で消滅する経費であるから、中古住宅販売には使ってしまった広告・宣伝、営業・販売費用は、中古住宅販売価格に加算することはできない。新築住宅の販売のために掛けられる費用が新築住宅の処女性であるという説明もある。一旦、売りに出された住宅は、そこで処女性を失ったから、中古住宅になる。
その上、日本の住宅販売は、基本的に「差別化」と「売り逃げ」という言葉で説明される通り、相隣の住宅と違うようなデザインで設計されることを優れた住宅と「差別」して造られたため、すべての住宅が対立反目し合った関係でつくられている。その上、居住者相互も住宅建設の過程で「差別化」と言って周辺の住宅を見下げる「優越感を感じられる」住宅と教え込まれて購入してきた訳であるから、居住者相互間にも差別者としてのわだかまりがある。住宅が建て込んでも人間関係も疎遠となり、相手と没交渉である生活を「プライバシーの高い住環境」と騙されて購入させられる住みづらい住宅地である。そこには隙を狙って犯罪者が入りやすい空間になっている。住民間に反目や対立がある住宅地は、外部からの賊が侵入し易く、住みづらい住宅地になる。当然、住宅市場では需給関係を反映して価格は下落し、その結果、只でさえ資産価値が販売価格の半分程度の住宅が、経年するにつれ、さらに減額し、「住宅を保有することで資産価値を失って行く。

住宅ローン破産が拡大する住宅地
現在日本では平均像として、所得がピークに上り詰める少し前の30歳代半ばの世帯が年収の6倍以上の住宅ローンを35年の住宅ローンを借りて住宅を購入する。終身雇用制はもはや過去のもので、企業自身の寿命も短くなっている。雇用期間が短縮される傾向にあって、仮に住宅購入後10年間で子会社や関連企業に転職した人たちは、一般的に所得の向上は見込めず、一方子供の教育など支出はピークに向かい生活は苦しくなる。その最大の原因は住宅ローンの重さである。家族の疾病、企業倒産、リストラなど予測できない事故は一定の割合で発生する。するとローン返済が不能になり、そのとき住宅を手放す選択が浮き上がってくる。住宅地は類似した年代の人が住んでいる場合、居住者とともに子供たちは大人になり、学童がいない住宅地に代わり、学校が閉鎖され、ショッピングセンターもその構成が居住者層に合った形で変化していく。住宅地は居住者のライフステージに合わなくなり、次第に住みづらい住宅地になっている。売却しようと考える住宅は同年代の世帯の需要にしか対応することはできない。同年代は売り手であっても買い手ではない。同世代以外の世帯にとっては、そのニーズに応えられないため、当然、売却価格はその住宅の価値である販売額の半額が上限で、そこからどこまで下がるかわからない。
住宅ローンは20年以上残っていることは元利均等償還であるとすると元金は3分の1も減っていない。住宅の売却価格が仮に購入時の3分の1で売れたとしても、その売却額相当の債務が残ることになる。金融機関は生命保険を使うことを強く教唆してくる。かつてバブル経済が崩壊したときには生命保険を使う人が予想を超え、ついに生命保険会社が何社も倒産した。その苦い経験から、現在は自己破産を行うことで、債務を免除する道を選ぶ者が多くなっている。そこで現在は、選択される方法は、住宅ローン借受人が積極的に自己破産を申請し、債務の苦痛から解放されようとする人が増えている。それは金融機関が、「天にはいた唾」が自らに返ってくることを意味している。その原因はそもそも日本の住宅価格が、販売のために巨額な費用を使って販売し、その費用をあたかも住宅の価値が高まったかのように、その価値以上の販売価格で売却し、その購入のために金融機関が住宅の価値の2倍もの融資を行い貸金業としての利益を便乗して奪ったことに原因がある。因果応報である。その元を質せば、そのような住宅政策を正当として実施してきた国の住宅政策と金融政策に問題がある。このような問題は日本にしか起きていないことを日本の政府及び住宅関係者は謙虚に考えるべきである。

オランダ、アメリカ、日本の3国比較を終わるに当たって
この調査研究をしてきた筆者として、住宅不動産を造り取引を行うフローのプロセスで遮二無二利益を上げることを「是」とする日本の住宅政策と住宅産業と比較して、最終的に住宅を取得する消費者に資産形成できる住宅を消費者の購買力の範囲で供給しようとするストック重視の欧米との比較は、あまりにも両極端であって、通常の比較をすることは不可能である。実際にオランダをはじめヨーロッパの国を見ると、経済指標における所得な日本と同じかそれ以下であるにもかかわらず、国民の生活内容は明らかにはるかに豊かである。その理由は住宅費負担が比較にならないほど少ないことにある。社会全体で見た場合、住宅流通の80%地度が既存住宅取引に依っていることは、住宅投資をあまりしなくてもよいということであるから、その分の費用が住宅費以外に振り向けられていることである。
ストック重視の住宅政策はリモデリング事業を必要とし、そのために建設業の担い手として建設業の職人の重要性を認識し、建設業の現場生産性を高めるCM(コンストラクションマネジメント)を徹底している。日本が欧米に学ぶということの基本は、消費者の利益を如何に重視するかということに尽きる。短期的、長期的に国民の住居費負担を最小にすることに向けて官民が一体になって住宅政策、住宅産業政策を進めることである。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)

以上。



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