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HICPMメールマガジン第593号(2015.01.13)

掲載日2015 年 1 月 13 日

HICPMメールマガジン第593号(2015.01.13)
みなさんこんにちは

今年は米国の住宅の理解のため、新年から住宅のデザインの問題を紹介しています。第1回(前回)は現在の米国のニューアーバニズムのデザインの基礎になっているものが「アワニーの原則」であることを紹介しました。今回は、その「アワニーの原則」を導きだすために、第2次世界大戦直後の「アーバ二ズム」(都市の郊外への中産階級向け低層高級住宅地スプロール開発)による問題を紹介します。

米国の住宅産業の礎:「レビットタウン」と「レビットハウス」
1940年代末から50年代にかけて、米国では第2次世界大戦中は社会全体が太平洋および大西洋を挟んだ大陸での戦争のため、住宅産業が終戦まで休眠させられていました。現在世界最大の規制窓メーカーであるアンダーセン社も窓の製作を止めて鉄砲の弾丸を入れる箱を制作していました。それが戦後、戦時中に住宅取得を押さえていて人たちと、戦後結婚して新しく住宅の取得を希望する需要により、一挙に新規住宅需要は爆発的に拡大しました。その大量需要に応える方法として都市郊外にハイウエーを利用して都市に通勤する低密度な緑豊かな環境の住宅が開発され、豊かな環境を求めて多くの人々は郊外住宅に居住をすることになりました。それを当時、「アーバ二ズム(都市化)」と呼びました。
アーバ二ズムによって開発された住宅は、「よい環境の住宅を国民の購買力の範囲(年収の3倍又は月収の30%の家賃又はローン返済額)で供給する方法」が求められました。このアーバ二ズムのニーズに取り組んだホームビルダーが、ウイリアムレビットです。ニュージャージー州で戦前から工務店を営んでいたレビットは、戦後の巨大な住宅需要を前に、「私が住宅供給のGM(ジェネラルモーターズ)になる」、と言って住宅地開発をOM(オペレーションマネジメント:生産工学)の流れ作業の方法で実施した住宅地の開発手法が、「レビットタウン」と呼ばれる方法でした。この方法は、住宅地全体を生産ラインにして、住宅を流れ作業で建設し、高い生産性を上げて住宅を生産する方法です。

住宅不動産と土地の住宅加工
土地と住宅を「一体不可分の不動産」と考える欧米の住宅不動産の考え方を、理論通り実践した方法が「レビットタウン」の建設方法です。そして、土地利用が住宅地と定められた土地を住宅による加工をする住宅のことを「レビットハウス」と呼んでいます。米国では日本以外の世界各国と同様に、住宅は土地と一体の「住宅不動産」とされ、日本のように土地と独立した不動産という考え方はしません。住宅は土地に定着して初めて住宅としての効用を発揮しますが、物理的な形をもった住宅であっても土地に定着していないモーバイルホームのようなシャーシーの上に組み立てられて設置現場まで運ばれる住宅は「動産」です。それらの「動産」も、土地に定着されて「不動産」の扱いを受けます。レビットタウンは、都市計画上基本計画(マスタープラン)で定められた土地利用計画に基づき土地を住宅加工することでつくられる土地と一体の住宅地(住居環境)で、レビットハウスは、土地を住居的土地利用に合せて住宅地を加工した住宅不動産です。住宅不動産としては、土地と一体にしか取引されません。

軸組み構造工法から平面版構造工法へ
「レビットハウス」はそれまでのバルーン工法(軸組み工法)ではなく、耐水性構造合板と製材(ディメンジョンランバー)を組み合わせて、平面版(ダイアフラム)を造り、現場の流れ作業に従って、平面版を組み合わせて建築物をつくる高次不整定構造の極めて構造安全性の高い建築物です。しかも、建設工事工程に従って、基礎の上に土台を取り付け、そこから1階の床版、1階の壁版、2階の床版、2階の壁版、屋根版というように、後戻りすることなくステップ・バイ・ステップで住宅を組み立てる「流れ作業を実現する工法(プラットフォーム工法)」で、土地不動産を住宅不動産に加工していくものです。この床版、壁版のいずれもが、「2インチ厚さの5種類の製材(ディメンジョンランバー)と4フィート×8フィートの耐水性構造合板とを標準化、規格化、単純化、共通化した材料寸法によってつくられ平面版(ダイアフラム)」です。そのため軸組み構造と同じ量の材料を使っても、造ることのできる空間の大きさも、でき上がる構造強さも軸組構造でつくる空間とは、全く別の構造的性質をもった空間として大きくて、荷重及び外力に対し強い構造を実現しました。

戦時技術の平和的利用
第2次世界大戦中、米国は太平洋と大西洋の両面で戦争を実施していました。その戦争を勝利に導くためには物資輸送が最も大きな役割を担っていました。このプラットフォーム工法に利用された耐水性構造用合板は、戦時中の軍事物資を戦場に輸送する「ロジスティックスの要(かなめ)」としての仮設道路づくりに使われた材料でした。船舶、武器及び仮設道路用鉄板としていた鉄材が払底したため、鉄板に代わって合板が使われました。その最大の要件は耐水性と言うことでレジン糊な開発を見て実現されました。この合板によって連合軍は戦争に勝てたと言われるくらい合板は重要なロジスティックス(兵站)の役割を果たしました。しかし、終戦とともに消費先を失った合板は価格も下落していたとき、レビットは当初は「ブレースドバルーン工法」に使われていた板材の斜め張の代用品として合板を使い始めたのですが、やがて、この4×8フィート合板を基本構造モジュールにした住宅を開発し、極めて高い生産性を実現する工法を開発することになりました。その工法はそれ以前のバルーン工法と比較して半額のコストでできるほど高い生産性を実現することになり、一般工法になりました。

火災に弱い構造から火災に強い構造へ
それまでのバルーンフレーム構造は、通し柱構造ですから、2階建ての住宅では壁の中の空間が1,2階貫通しており、火災に弱い構造でした。シアトル、シカゴでは、2×4工法の住宅が原因になって大都市火災が起きました。そこで2×4工法は火災に弱い構造として都心の防火地域(ファイアーゾーニング)では建築禁止される事態になっていました。しかし、プラットフォーム工法により、通し柱による縦空間が各階の床で切られることにより、火災に強い構造に変わりました。その後、1958年カナダがセントローレンス川で実施した市街地火災実験(セントローレンスバーンズ)の結果で、プラットフォーム工法の平面版に4分の3インチ厚さの石膏ボードで内装被覆を行い、又は、板材でT&G(実加工)した床を作った防火区画(ファイアーコンパートメント)のつくられた住宅は耐火性能を有することが証明され、カナダの建築法規に耐火構造として採用され、やがて米国の建築基準(1973年法)に取り上げられます。その結果、防火地域は廃止され、代わって、防火区画が義務付けられることになりました。この技術がその後、米国ではタウンハウス技術を急成長させることになりました。

米国の住宅産業を改変した耐水性構造合板

「レビットハウス」は、全米ホームビルダー協会(NAHB)と、戦時中政府の指示で鉄板の代用品として開発した合板の開発を行った米国農務省(USDA)森林研究所(フォレストラボラトリー)が、協力して開発した住宅生産工法でした。平面版(ダイアフラム)による非常に高い構造耐力を持つ住宅が、非常に安い価格で供給できることになったため、米国におけるハイウエー開発と一体的に開発された「レビットタウン」は、非常に優れた環境の住宅を極めて合理的な価格で販売されました。そのため、「レービットタウン」は、豊かな住環境を提供する「ニューアーバニズム」と評価されて全米各地に燎原の火のように全米に広がっていきました。その住宅は費用対効率の最大化を狙ったために、ライフステージを同じにする人たちを対象にする学校・教育施設の充実した住宅地を供給しました。そして、子供の成長に合せ、7年を単位とする住み替え「ムーブアップ」が住宅地経営の鍵となっていました。
(次回に続く)
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)



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