メールマガジン

HICPMメールマガジン第596号(2015.02.17)

掲載日2015 年 1 月 16 日

HICPMメールマガジン第594号(2015.01.17)
皆さんこんにちは

来週はNAHB(全米ホームビルダー協会)のIBS(インターナショナルビルダーズショー)が開催され、GKK/HICPM研修ツアーで1週間留守にします。2月27日から出勤します。また、その後報告会を致しますので、そのときはご参加くださるようお願いします。

「米国のデザインのお話」:前回は米国に起こったアーバ二ズムが戦後の国民の住宅による夢の実現を叶えて行ったことを「レービットタウン」と「レービットハウス」との関係でご説明しました。そのアーバ二ズムには、急増した住宅需要に対応するフロー対策であったため、永住する住宅に対応することはできませんでした。そこで居住者の方が住宅に合せる住み替えが行われました。
もう一つの問題はセキュリティの問題です。

「ムーブアップ」への対応:住宅の資産価値増
アーバ二ズムによる住宅供給はフローの住宅政策でした。当面の住宅需要に対して高い満足を提供することで顧客を集めようとするものでした。しかし、子どもたちは毎年成長し、7年を区切りに幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学へと入学することになると家族の生活も変化するだけではなく、通学との関係で学校教育施設のない所では生活はできないため、移住することを余儀なくされます。しかし、それぞれのライフステージごとに対応した学校が造られ、高い満足を与える生活が計画されていました。そのため、新しい需要層が後を追い、その住宅を高い価格で販売できるようにすれば、新しい住環境に移住することができます。そこで、米国では子育てに合せて求められる生活需要に合わせた住宅地を開発することで住宅住み替えを円滑化することが住宅産業ビジネスとして取り組まれました。それを進めることができる鍵は、居住している7年間にどれだけ住宅の資産価値を挙げられるかということです。

「ホームアローン」の世界
アーバ二ズムにより中高所得の都市居住者が、これまで米国社会には存在しなかった低密度の優れた環境の住宅地に移住することになりました。その結果、都心からは郊外移住する経済的能力のない人だけを置き去りにしてアーバ二ズムが急速に進んだため、都心部には貧困者と犯罪者とが取り残され空洞化し、「ドーナツ化現象」と呼ばれる社会構造が生まれることになりました。低密度で対象とするライフステージが偏った勤労者階層で構成された新しい郊外社会は、マイホーム主義の核家族が中心で、高齢者などのように地域に中間に定住する人びとが著しく少ない時間的にも季節的にも「ゴーストタウン」を生み出すことになりました。長期休暇などで住宅を留守にするときはもとより、通常の生活においてもプライバシーを重視し、隣戸間の距離は大きく、近隣で留守の世話をするような密度で人々は生活をしていなかったため、「ホームアローン」の映画に見られるような現象が頻発するようになりました。その対策として生まれた防犯対策がスマートハウスであり、やがてはスマートハウスと併用してゲーティッドコミュニテイが開発されることになりました。しかし、問題はスマートハウスやゲーティッドコミュニテイの防犯効果ですが、その後、何度も実施された防犯調査の結果によれば、スマートハウスにしてもゲーティッドコミュニテイにしても、それを実施していないコミュニテイと比較して顕著な優位性は認められませんでした。その結果、スマートハウスの技術はその後、防犯対策としては顕著な効果は挙げられませんでした。スマートハウスは一応予防策になると考えられ、温熱環境管理の技術と一緒に利用され、また、ゲーティッドコミュニテイに関しては、そのコミュニテイの豪華さや格式を表現するうえで役に立っていると判断され、その後も利用は拡大されています。当時から「プライバシー」と言われた言葉は、個人の秘密を守ることでは現代と共通しているが、そのプライバシーを守る方法として、個人だけで「秘匿」する方法では、守りきれないことが分かってきました。そして最も有効な方法は、地縁共同体が集団でお互いのプライバシーを守ろうとお互いの個性を理解し、尊重し合うとき、結果的に外部の不当な侵入者を防ぐことで、プライバシーが守られることが分かってきました。

住宅の資産価値を守るためのセキュリティとの闘い
米国人にとって住宅は年収の3倍以上もする最大の資産で、それはいざというとき、人びとの生活を守る財産と考えていますから、その資産価値の維持は住宅の持ち主の最大の関心です。米国では犯罪に巻き込まれやすい住宅の市場価格は下落するため、防犯には昔から関心が高く、IT技術を使った防犯技術は第2次戦争直後から住宅地開発に取り込まれてきました。日本でも、最近、盛んにスマートハウス(利口な住宅)計画やゲーティッド・コミュニテイ(守衛に守られた住宅地)が、住宅の「差別化」戦略として盛んに売り出されていますが、住宅自体が償却資産扱いをされているため、住宅を資産と考える扱いが米国社会とは基本的に違います。米国ではスマートハウスの取り組みは60年以上前から実践されてきた計画であり、ゲ―ティッド・コミュニティも一般化して、すでに40年経過しています。日本におけるスマートハウスやゲーティッド・コミュニティは、犯罪予防効果があるに違いない程度の曖昧な認識を前提にして、住宅の販売価格を引き上げられる「差別化」の販売戦略としての理解で採用されています。しかし、日本でも自分の所有している住宅の資産価値が維持向上することを望まぬ人はおらず、その技法は米国のように住宅地の経営により実現できなる経験は日本にも役立てられるはずです。

TND(トラディショナル・ネイバーフッド・ディベロップメント:伝統的近隣住区開発)
1970年代末になってセキュリティの高い住宅地づくりは、米国社会にとって猶予することができない問題であることが認識され、頭で考えるのではなく、実際にセキュリティの高い住宅地を調査することになりました。その先頭に立った人がDPZ(アンドレス・ドゥアーニーとエリザベス・プラター・ザイバーグ)でした。DPZは米国の東から南部にかけて、これまで開発された住宅地の中でセキュリティが高い住宅地を調査し、その理由を調査研究しました。その結果判明したことは、セキュリティが高い住宅地は、いずれ1930年以前に建設され住みやすい評価の高い住宅地であったということでした。それは1920年にT型フォードが国民の足になる以前の徒歩でつくられた住宅地であった。お互いの顔が分かりお互いを意識し合う関係のある街であることが分かりました。アーバ二ズムの時代にプライバシーと考えられていた関係が間違っていたことを発見するものでもありました。プライバシーは他人との関係を切り無関心になることではなく、相手を知ってその守ってほしいと考える秘密を守ること、言い換えればお互いの人格を守って尊重し合うことであることが再認識されることになりました。住宅地で生活する人々が互いに理解し合っている所には賊が入りにくくなりセキュリティが高まることが分かったのでした。それは地縁共同体が維持していた計画としてTND(伝統的近隣住区開発)と名付けられました。

ニューアーバニズム
「アワニーの原則」は、(1)米国東部で生まれたTNDの考え方と、(2)都市計画は生活の豊かさを持続的に享受するサステイナブルコミュニテイの考え方と、(3)自然のエコロジカルな環境を生かす考え方を取りまとめた人たちが、それぞれの実践経験を基に、その計画理論を「ニューアーバニズム」という概念としてまとめ、以後「ニューアーバニズム」運動として、「アワニーの原則」で確認したことを展開することになりました。
この「ニューアーバニズム」という用語は、戦後の米国でハイウエーの開発と一緒に全米で取り組まれた新しい時代に適応する都市生活として郊外住宅地開発によって満たされる都市生活を、当時「アーバ二ズム」と呼んでいたことに対応する形で造語されました。新しい社会ニーズに応える都市生活として「ニューアーバニズム」という言葉がつくられ、使われることになりました。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)



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