メールマガジン

HICPMメールマガジン第598号(2015.02.09)

掲載日2015 年 2 月 9 日

HICPMメールマガジン第598号(2015.02.09)
みなさんこんにちは

今回もNAHB・IBSに関することをお話しします。
今年のIBS

米国のホームビルダーの80%近くがNAHBの会員と言われていますが、その多くがIBSに参加しています。その目的は4つあります。NAHBは地方ごとのホームビルダー協会の連合会ですので、その会員は州単位であることもあれば市町村単位である場合もあり、いずれの会は法人です。その連合会の総会が毎年1回開催されるのです。その総会及び関連役員会(1)に合せて技術経営研修会(2)と建築材料工法等の展示会(3)が行われています。それに合せて新しい時代の需要に対応したデザイン傾向、材料、工法を取り入れたモデルホーム(4)の展示を行います。基本的に米国の住宅産業の直面している問題に対応しているため、その実施している内容を理解していないとよく分かりません。
今年のNAHBは、米国の住宅バブル崩壊によるローン破綻による不良債券及びそれに準じる住宅の整理がほぼ終わり、これまでその関連で既存住宅の市場価格が新築住宅市場に比較して割安であった環境が消滅し、新築住宅市場が大きく成長始めたときに開催されました。そのため、新築市場を主たるターゲットとしているIBSは展示会として元気を回復しただけではなく、不良債権の債務を削減するためにバブル崩壊から7年間に住宅自体の資産価値を高めるための住宅の住み替えとリモデリングが取り組まれた結果、バスとキッチン関連産業が急拡大し、既にKBISとして独自の展示会を実施していたものが数年前よりIBSと同時開催され、参加者は両展示会に同時参加できることになっています。

リモデリングと新築市場
米国ではどの住宅も「家族の団欒」と「接客」と言う社会的営みを重視し、その営みを生活を豊かに行えることが豊かさの大きな評価になっています。住宅の設計において「ハブ(キッチン)アンドスポーク(住宅の全てに機能)」の考え方で計画をすると説明され、キッチンを如何に豊かに演出するかは家庭の団欒にとっても接客にとっても重要で、その主人公である主婦の最大の関心になっています。そのため新築住宅はもとより既存住宅市場においてキッチンが最も大きな評価点になっています。
また、住宅の中での中心は夫婦であり、夫婦が住生活の中でストレスを開放するリゾート空間はバスルームです。子どもたちはシャワーで体を流すだけで良いが、夫婦にとってはバスの意味が全く違っています。そのため夫婦専用のマスターバスはリゾート感覚でつくることが家庭にとって特別に重要です。
その結果、バスとキッチンに関する主婦の目は特別重く、その時代感覚を取り入れた新築やリモデリングは住宅取引の鍵にもなっています。そのことを反映してリモデリング投資のうち、キッチン及びバスに投下した費用は、住宅の販売価格として、その投資額の2倍程度になっていおり、既存住宅市場取引でキッチンとバスのリモデリングが重要なことは、これまでの調査でも明らかになっています。
日本では家庭に客を招くという習慣は失われ、夫婦はいずれも家の外で人と交わり、温泉に出かけ、住宅は子供中心で、夫婦は子供の奴隷になっているライフスタイルの現代の日本では、米国の住宅産業で取り組んでいる過程を大切にすることは、日本の住宅産業にとって全く無関心になっています。

橋口信介の『アメリカや物語』
大正時代日本にクラフツマン様式の2×4工法のバンガロウを米国から輸入した橋口信介は、日本の住生活改善運動とともに輸入住宅に取り組み日本の大都市の郊外住宅に大きな革命を実現しました。私は日米住宅を半世紀以上に亘って調査研究し、かつての輸入住宅ブームでは、目先の円高差益の活用と人目を付くデザインで米国の住宅が住宅産業の金もうけの手段として採り入れられましたが、日本国民が求めている物は、家族を大切にし、社会との交流をする戦前まで存在していた豊かな生活を営める住宅を、家計支出の範囲で取得できる現在米国人が享受している住宅と同様な品質のものを供給して欲しいと望んでいることではないでしょうか、その意味では橋口信介が「住生活改善運動」として2×4工法住宅を導入したと同じ米国に学ぶ取り組みが、現在日本の工務店に求められています。

以下前回の続きとして住宅のデザインの説明を行う。
ノースウエストランディングの開発のコンセプト:アフォーダブルハウジング

ピーターカルソープによるノースウエストランディングの開発は、「アフォーダブルハウジング」(居住者の家計支出に見合った年収の3倍以内の価格の住宅)というコンセプトの住宅を供給できることを目標に掲げられました。デュポン自体がこの地から消滅して雇用機会自体が減少し、この地に隣接する軍施設が最大の雇用機会という状態でした。そこで新たに開発を始めるためには爆薬製造工場の解体から始める必要がありました。そこで火薬製造工場の解体廃棄物をコンクリートブロック用骨材とし、建材として製造する工場労働者も新規供給住宅の入居対象者とされ、ブロック製造工場の労賃もローン返済の一部に加える住宅需要者も対象とする住宅が供給されました。この都市開発もサスティナブルコミュニティの開発計画のコンセプトに賛同し、IT企業インテルやワシントン州保険会社が最初に立地を決め、その後、州政府の支援も得て全米から優秀な企業立地が進められています。

住宅による資産形成が実現できる展望の形成
開発計画の中で最も重要視されたことは、計画が最初のスタートダッシュを成功裏に進めることができることと、それに続く計画が良循環を形成して発展できることでした。良循環とは、初期入居した人が満足し、それを見て次期入居者がそれに続こうと考え、人口の定住に合せ都市施設、利便施設、学校教育施設の整備が進み、売り手市場が維持され販売価格が上昇し、この地に住宅を持つことで住宅の値上がりは進み、売却益が期待できる(資本利益が高まる)と皆が考えるようになることです。住宅の資産価値を高めることは、日本の住宅産業が巨額な広告・宣伝費と営業販外経費を使い、住宅の実際の価値の2・5倍もの高い価格で販売することではありません。住宅の価値は住宅市場の需要と供給によって決められることで、住宅を販売する住宅会社が価格操作して決めることではありません。

日本の政府及び住宅産業は、大手ハウスメーカーを筆頭に高い販売価格で住宅を売り抜けることを「付加価値を付けること」と説明し、その「付加価値」を付けることを住宅の資産価値を付けることのような間違った説明をしてきました。そこで日本政府や大手ハウスメーカーの言っている「付加価値」とは、住宅会社の広告宣伝と営業経費のことで住宅自体の価値が高まっているわけではありません。日本の住宅を購入した人が、その住宅を住宅市場で販売しようとしたとき、「付加価値」を失った住宅価格でしか売れません。日本で中古住宅と言ったときそれは処女性を失った住宅であると説明されていますが、まさに政府や住宅会社が「付加価値」と言われているものが処女性をさしているのです。
(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷 英世)



コメント投稿




powerd by デジコム