メールマガジン

HICPMメールマガジン第604号(2015.03.23)

掲載日2015 年 3 月 23 日

HICPMメールマガジン第604号(2015.03.22)
皆さんこんにちは

3月19,20日、福岡県の(株)大建を訪問し同社の経営している「花桃の樹林が満開」で大きな金魚が池で泳いでいる「荻浦ガーデンサバーブ」を訪問し、その「桃源郷」の成長の状況を見てきました。
荻浦ガーデンサバーブは、私の考えていた以上にはるかに立派に成長していましたが、その取り巻く環境も変化していました。荻浦ガーデンサバーブは、日本で最初の実際に正しく欧米の住宅地経営を学んで「三種の神器」による経営を実践している唯一の住宅地開発です。入居者の利益を中心に考えている国内で最も優れた住宅地の一つといってよいと思います。開発事業を始めてから4年目を迎え全18戸が入居し、4月には創立第2回目のHOA総会の開催準備が進められていました。
メールマガジンで紹介してきた「住宅のデザインシリーズ」の背景にある考え方を実践した事例です。

日本で米国の住宅地経営に倣った住宅地が期待通り成長していることもあって、今回の誌上セミナー「住宅のデザインシリーズ」では、これまでのまとめとなるものを荻浦ガーデンサバーブの訪問で確認したことからお話しします。最初にお話ししなければならないことを、以下に列挙します

第1.「荻浦ガーデンサバーブ」に掛けた開発事業の大きな目標と実践
(1)    このプロジェクトは「住宅を購入することで、購入者が資産形成をすることができること」
(2)    住宅事業者が「この事業で適正な利潤を上げ、資産形成ができ、経営的な利益を上げること」
以上の目標を実現するために、NAHBの「コミュニティディ・ベロップメント(住宅地開発技法)」のテキストに従ったニューアーバニズムの考え方に基づいた開発を行い、エベネザーハワードが『明日へのガーデンシテイ』に明らかにしている「リースホールドによる住宅地経営」とJ・C・ニコルズ、チャーリー・アッシャーが「ラドバーン開発」で実施した「3種の神器」(HOA,ハードなルール、ソフトなルールCC&RS)による住宅地経営を実施することでした。
そのため、この事業は、「ニューアーバニズムの理論」、『明日へのガーデンシテイ』及び「ラドバーンの開発」の住宅地経営、の経営をこの地区に読み替えた計画し、建設し、経営してきました。

第2.住宅全戸に入居を実現するまでに足かけ4年
この事業開始から4年間、行政の専門知識不足、㈱大建のCM能力不足、住宅需要層を絞り込んだ事業展開の不十分さ、コンサルタント・HICPMの力不足もあり、長い時間がかかってしまいました。開発時点から社会的に話題のあるプロジェクトとしてTV他ジャーナリズムで何度も取り上げられてきたため、発売完売か、高競争率の入居者選考で苦労すると思っていた予想とは逆に、建設後即売却できず、空き家状態が一部の住宅で長期間継続しました。しかし、入居をされなかったが、この住宅に関心を持たれる方は非常に多く、何度も訪問され長期間かけて決定された方もおられました。100年定借(リースホールド)、地下空間付き住宅、NCZ工法、雨水地下貯留、太陽光発電など欧米の先進技術が採り入れられていたうえ、「三種の神器」による資産価値が向上し続ける住宅地経営という日本では例がないことも、警戒されすぐ埋まらなかった理由になったようです。しかし、この4年間町は熟成し居住者はこの生活に満足し、生活者にとって満足のできる環境に育っています。そのため、他の住宅を選択され、今になってあのとき購入しておけばよかったという話もありました。結果論から言えば、「もっと腰を落ち着けた販売も可能」という見方もあります。荻浦ガーデンサバーブで供給した住宅は欧米並みの上記、第1(1)のような住宅にむけて、(株)大建の皆さんが試行錯誤を繰り返して取り組むことで、日本にも居住者からの評価が得られる「資産形成ができる」住宅地を育てる能力とノウハウを積み上げてきました。厳しい環境から逃げず取り組むことで、㈱大建は力を蓄えてきました。

第3.住宅地を訪問する都度、成長が見える住宅
日本では住宅も住宅地も、「物造り」として取り組み、完成時が一番よくできていて、それから年をとって衰退して行きます。政府が口癖のように言う減価償却理論の都市経営です。しかし、荻浦ガーデンサバーブでは、入居者の生活要求に合わせて、常に、住宅地を住み易く改良を加えてきました。そのため、私の目には、訪問する都度環境は改善されていきます。居住者にとって住み易い住宅地は、訪問しても解りますが、そのような住宅地には住みたい気持ちが起きます。実は、ニューアーバニズムによる住宅地経営は、住宅所有者が自治団体を結成し、「3種の神器」により、住宅地の生活として定めたハードとソフトのルールに従い、居住者がそれぞれ創意工夫を凝らし、それぞれの家族の間で豊かな生活を考えます。それは住宅単体でできるものではなく住宅地として取り組まなければできません。

第4.街全体が公園(ハワードの考え方)
『明日へのガーデンシテイ』は近代都市計画の方向付けを示したと言われるジョルジュ・オースマンがナポレオン3世の下で命じられた道路造りを都市公園づくりにしてしまいました。「近代都市は公園都市」として造るようにしたことが、その後の欧米の都市を公園都市として造ることのきっかけとなりました。『明日へのガーデンシテイ』に対するハワードの思いも、日本で名付けられた「田園都市」ではなく、近代の街造りは「公園都市」として造らなければいけないと考えて、『明日への公園都市』と名付けたのです。この考え方が荻浦ガーデンサバーブの街づくりの考え方でもあります。
荻浦ガーデンサバーブでは、今は「花桃」の真っ盛りで、桃源郷となっていました。残念なことは、その隣接地に、隣地に迷惑をかけても自分の土地を最大限に利用する「内部矛盾の外部化」の代表的開発がスウェーデンハウスによって行われています。花桃通りの帯道に沿って外壁が敷地一杯に建てられ、花桃を愛でる気持ちを持たない開発となっていました。荻浦が-デンサバーブでは太陽光発電を行うことで利益を挙げるため敷地の南側に太陽光発電用パネルを設置しましたが、その前面にスウェーデンハウスは太陽光発電住宅を建て日陰を作り、発電施設は利用不可能になり発電収入はなくなりました。
荻浦ガーデンサバーブの開発では、敷地の北側に庭付きの農家がありまして、その敷地の南側にお庭がありました。今回のスウェーデンハウスのように住宅を建てたなら既存の農家のお庭は日陰になったに違いありません。しかし、荻浦ガーデンサバーブでは北側の住宅に面して400㎡の大きな庭を計画しました。隣り合う庭によって樹林が構成され『ガーデンシテイ』が形成されることになりました。
荻浦ガーデンサバーブには春夏秋冬のすべての季節に季節を感じる花木が咲き、季節の訪れを感じさせてくれます。公園の真ん中の池にはたくさんの金魚やメダカが住んでいます。水回りにはこの地に、かつてたくさん植えられていた水仙を植えようと計画中でした。この地の歴史を居住者に伝承していきたいという『コミュニティディベロップメント』のテキストに学んだ(株)大建の住宅地経営の考え方です。(株)大建の住宅地経営は欧米と同じ人文科学(ヒューマニティーズ)に立った住宅地系です。

第5.資産価値が確実に上昇する住宅で構成されている街
荻浦ガーデンサバーブに立っている住宅はアタッチドハウス(連続住宅)ですが、その住宅の上下に他人の権利はない独立住宅です。しかし、人々の生活は住宅の中だけで完結するのではなく、住宅地全体を利用して行われます。アメリカ風の並木のある駐車場と公園空間で約1000㎡あり、鉄道線路に沿って100平方メートル程度のボードウオークがあります。住宅地内の散策路とコモンハウスを含めると、実質的に公園空間は1300㎡以上あります。この専用住宅を購入した人であれば、自らの住宅と合わせて、1300㎡の公園空間を直接利用でき、住宅内部からの眺望景観として利用できるわけで、すから、分譲地に延べ面積として同じ150㎡の戸建て住宅を購入した場合と比較したら、荻浦の住宅地がはるかに豊かであることはお分かりになるはずです。
今でもこの住宅地を取得したい人は、ここで手に入れようとするものを実際に必要な費用を掛けないとつくることはできないわけですから、この住宅は現時点でこの住宅地を建設したときにかかる費用として計算されます。それを推定再建築費と言います。この住宅は建設後すでに4年経過していますから、その物価上昇分は当然高くなるはずです。その上、(株)大建が居住者の生活要求に応えて改善した部分はそれだけ価値が増進している筈です。欧米ではそのような考え方で既存住宅の価格が決められ取引されています。同じことは荻浦ガーデンサバーブでは間違いなく実現できるのです。

日本では政府が住宅建設業は住宅サービス業であると言って、営業販売に掛けた費用や、建設工事において重層下請けで行いそこでかけた累積粗利をすべて販売価格で回収することを容認してきました。実際の住宅の価値を、大手のハウスメーカーの場合の2.5倍も高い販売価格をつけてきました。その高い販売価格に対応したローンを金融機関が行って来たため、その金利は必要なローンの2.5倍になっています。それらのサービス経費は、実際の住宅の価値にとりついて販売価格を高くしていますが住宅自体の価値を高めているわけではありません。そのため、それらの住宅を市場で売却するときには、その経費分の価格は下落しないわけにはいきません。
荻浦ガーデンサバーブの住宅は大手ハウスメーカーの住宅とは違って、中古住宅にはならず、既存住宅市場では、推定再建築費として計算された価格で取引されることになります。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長)



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