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HICPMメールマガジン第604号(2015.03.30)

掲載日2015 年 3 月 30 日

HICPMメールマガジン第604号(2015.03.30)
みなさんこんにちは

今日は東京は街中は花見客であふれるでしょう。皇居のお堀の周りは桜が満開です。


ホームビルダー研究会の会員たち

先週は姫路と神戸にホームビルダー研究会の定例勉強会に出掛けました。そこでは、ハイランドとセルビーハウスという2×4住宅の工務店を訪問見学し、その経営の仕方の説明を受けました。いずれも2×4住宅のデザインにこだわって優れた住宅を建設していました。セルビーハウスは古材を造作材に使って、居住者にやさしいインテリアを提供していました。一方、ハイランドは住宅建設事業をサステイナブルハウスから始め、そのデザイン開発の皮を打破し、自分の納得するデザインに挑戦していました。ハイランドの住宅デザインは、クラフツマン様式のデザインとしてはこなれていて、屋内外の空間構成とデザインの取り合わせにおいて、国内でハイランドを超える事例はないのではないかと思いました。
勿論、クラフツマン様式のデザインとしては多様なデザインがあり、その一部をハイランドが実施ししていますが、借り物のデザインではなく、自分で理解して自分の武器としてクラフツマンのデザインに取り組んでいるとことでは、完全に岩本さんが自分の思ったようにクラフツマンのデザインを支配しているように思えました。ハイランドの住宅は、住空間の構成とインテリア、エクステリアのデザインが一貫して調和していることで、米国で見る本場のデザインと同じ安心感で見ることができました。
会議場での住宅デザインの説明で、過去の作品をラッシュで見ることができました。そこではハイランドは小住宅に拘って取り組み、すべての住宅が建築主のニーズに柔軟に対応することで、よく見ると全ての住宅ごとに個性のあるきめ細かい取り組みが行われていました。しかし、ハイランドが造った住宅は、いずれも個性的で、同じ住宅ではないという意味では、その仕事は完全な注文住宅です。しかし、ハイランドの注文住宅は米国のNAHBの会長職であったピンカースさんの注文住宅同様、岩本さんご自身が好きなデザインに絞り込み、自分自身が楽しみながら自分の作品を作っているため、仕事をするにつれデザインの実践経験が重層され、非常にいい仕事になっていると感じさせられました。

仕事をして減る技能力と豊かになる技能力
以前、スタンダールの『赤と黒』という小説を読んでいましたら、優秀な青年が能力を使い果たしてしまうと、また「充電」して頑張る生活をしているのを見て、大きな仕事をするとその能力がすり減らされて大変だなと思いました。しかし、日本社会でも多くの人は仕事をするために、盛んに「充電」するといっています。しかし、私の人生経験ではそのような経験をしたことはありません。実はその逆で、仕事をする都度、知識が増え、技術能力は研ぎ澄まされて高くなっていると感じました。それは、自分の持っている知識技術は実践することで確かめられ、その可能性を高めることになるからです。
私は今回ハイランドの仕事を見ていて、自分のやりたい仕事に絞っている点で、私の人生と同じようにも思えました。岩本さんは新しい仕事をする都度、それまでの学んだ知識や技術を新しい仕事に読み替えて実践しているように見えます。岩本さんは新しい仕事にチャレンジする都度、知識や技術の応用範囲が広がっているように思えます。欧米の住宅を見ていますと、標準化、規格化、単純化、共通化をする前提の中で、ピンカースさんのようなホームビルダーは、自分の好きなデザインの歴史文化的な内容を深め、個性ある思い入れのある注文住宅づくりを建築主の支払い能力に合わせて行っています。

自動車作りにも共通する原理
カルロスゴーンが日産で行ったことも実は同じことだったのです。それはまず顧客に対してできるだけ少ない負担(安い価格)で優れた品質の車を提供するということが、顧客満足を与えることであるという原点に立ったのです。ゴーンは自動車生産に使う材料の種類を少なくし、基本的に車両制作に使う材料は車種の違いを越えて共通したのです。それは日産とルノーを比較してはっきり分かったことでした。使用する材料を半減することで生産性が向上し生産コストは激減しました。ゴーンが就任する前の日産ではまさに日本の工務店のように「差別化」により、使用する材料も工法も多種多様なものを使い、其れで生産コストが高くなっていました。それを、車の価値が高くなったと勘違いして高く販売したので、日産自動車は一層売れなくなっていったのです。「差別化」に取組み、生産性を悪化させ、価格は高くなっても顧客を引き付けようとして、結果は失敗したのです。現在の工務店を見る思いです。

スタンダールの『赤と黒』の話
スタンダールの「赤と黒」に出てくる青年の知識は、使い捨ての知識、借り物の知識だったため、使う目的に合せて使ったら、その知識はそのために使って終わりです。良い仕事をするためにはいつも新しい知識を仕入れないと需要に追いつけません。岩本さんはそれと違って、自分で使う材料も工法も意匠も自分で使いこなせるものに絞って使いますから、習熟効果が発揮されます。同じ物は使い込むことで設計・施工の熟練性を高め、良い仕事を早くすることができます。だから、繰り返し仕事をすることで、仕事には磨きがかかり、結果的にはよい仕事が安くできるのだと思います。そこで岩本さんに生産性に関し聞いてみました。「よい仕事の実現する」ことに偏って、現在のところ「生産性の向上」という「時間への関心」が厳しくなく、生産性は向上しきらないでいて、生産性向上によるコストカットの成果はまだ挙げられていないとのことでした。しかし、外から見ていて、岩本さんに関しては、「生産性」に対する意識付けを持って仕事に取り組むことでCMの成果を挙げることになると思いました。

小汐さんの英語力
以前ワシントン州で輸入建材を取り扱っていた小汐さんは、米国で長い生活をしていて英語がなかなか流暢に話せないだけではなく、英語自体があまり口から出ませんでした。それがあるとき突然英語が制kを切ったようにしゃべれるようになっていました。その理由は小汐さんにもよく分からないと言っていましたが、仕事に習熟し、取り扱っている建材がよく分かってくると仕事に関係する英語知識が蓄積され、突然あふれ出したそうです。過飽和になった砂糖水に、外部からショックを与えると、一瞬に氷砂糖に固まるように、「液体から個体へ」と「量から質」への変化が起きるのです。小汐さんの英語力は、きっとそれと同じように頭脳が英語漬けになっていて、「量から質」に転嫁したのだと思いました。
岩本さんのCM技術は現在の仕事の延長で、コストコントロールを無理、無駄、斑を徹底することで、突然変異が起きると私は確信しています。その理由は、岩本さんは住宅建設工事を行うときにすべての材料や工事費(労務費)の数量と単価をよく知っていて仕事を細部までお金によって見ることができているからです。下請けに材工一式でやってもらっているのもあるかとは思いますが、私が見る限り、コスト感覚はしっかりしていて、設計を最も重視していますがコスト意識はしっかりしていて、予算額の中で、どの材料をどのように使うかを判断をするとき、価格をしっかり見極めて仕事をやることがCMの前提です。岩本さんの仕事は、材料及び工法の選択のときの判断を見ていて設計・施工の全てに手抜きをせず、お金の使い方に細心の注意を払っているように感じられるからです。
お金で仕事を理解することは、実は、無理、無駄、斑を削減することに最も的確に理解することです。見積もりをするときの感覚(コストコントロール:原価管理)が徹底してくると、住宅購入者(建築主)の立場に立って、販売価格の引き下げる目標が設定されます。そのとき、その意識はすべての見積もり費目に働いて、全体としての目的を実現するために、小汐さんの英語のように、仕事全体にCM技術が一挙に連鎖的に適用できるようになるときが来ると思います。岩本さんの場合は、設計に軸足があり、見積りを設計にフィードバックしているから、その可能性が高いと考えています。

CMは建設現場でも効力を発揮する
CM(コンストラクションマネジメント)は、会社全体の経営管理システムであると同時の工事それぞれの工事管理業務です。生産管理全体の相互関係で成果を上げることができる経営技術ですから、全体の生産性を高める目標に合うように、すべての細分化された工事を実施することが必要です。
CM技術は設計図書が完了してからの業務ですが、設計内容が複雑で、生産図面である設計図書も複雑であれば、どれだけCM技術を改良しても成果は上がりません。設計図書が合理的にできていて工事が合理的にできるのです。同じ設計図書を使っても工事生産性も工事費も違います。設計内容は一つの工事全体を有機的に結びつけています。そのため、それらが相互作用を発揮すると氷砂糖が固まるように、「量から質へ」の変化を起こすことになります。私のハイランドに対するCMの期待はそんなに遠い先ではないと思っています。そのためには岩本さん自身が意識的にCMに取り組むことが必要です。
米国では請負契約が締結されて工事段階に入ってからのCMによって請負う価格より10~15%利益を高めることも行われている話を米国でホームビルダーから直接聞いたことがあります。その方法は段取りをよくすることと、材料を徹底的に使いまわしを行い、ごみを出さないこと(購入した材料はすべて使い尽くすこと)だと教えられました。そのためには、現場監督が設計内容に精通すると同時に、実際の工事を担当する下請け業者の仕事のやり方をよく知っていて、下請け業者が仕事のしやすいように現場を監督することだと教えられました。下請け工事に踏み込んでその職人の構成と職人の賃金を知ることがなければいけないとも言われています。現場を全てお金で理解する見方がないとコストコントロールを徹底することはできないからです。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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