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HICPMメールマガジン第617号(2015.06.22)

掲載日2015 年 6 月 22 日

HICPMメールマガジン第617号(2015.06.22)
皆さんこんにちは

今週末の6月27日、京都で工務店経営改善のセミナーを行います
2カ月くらい前にこのセミナーの実施が決定して、講師要請を受けてから約2カ月近くになりますが、当初はCMのお話をする機会が与えられたということで,大喜びをしていたのですが、これまでの経緯を考えると楽観を許さないことが分かり、参加者のことを考えて何度も講演内容を作り変えました。今回ほど内容を決めきれないことは、かつてありませんでした。HICPMを創設してから20年を終わろうとしているにもかかわらず、HICPMが創設以来、最もこだわってきた工務店の体質改善にとって必要なことが、基本的に日本の工務店に定着していないことを実感して、その後、5年近くも軌道に乗せようとしてもがいてきましたが、結局、はかばかしい成果が上げられませんでした。その打開策を発見しようとしている今回のセミナーで、20年の重さに耐えきれないのではないかとさえ感じてきました。しかし、できるだけのことをしようと考えています。」

戦後60年の間違った住宅政策
プラザ合意「1986年」直後の輸入住宅の嵐に、追い風を受けて小躍りした時期が過ぎ、その後、日本の工務店はこちらの心配とは無関係に、工務店経営の破綻という奈落の底に向かって流されていく状況をどうすることもできないで眺めているだけです。流されている工務店は、私の警告など全く耳に入らないようで、流れの中で魚の採れる位置取りで流れています。転覆した船も多く、先行きに希望をもって流されている人はいません。工務店の「破綻から繁栄に向かう途」もまだ残されているのですが、その救いの途は「狭き途」です。欧米の優れたホームビルダーが努力して切り開いてきた途を日本の工務店も実践する以外にないのです。それが建設業経営というこの約60年間に確立した経営技術を体得することでしかありません。現在日本の工務店が置かれている現状を理解するために、次に仮想問題を出します。この問題は現代に普通に存在する問題です。これまで工務店の方は、住宅産業者に立場で、自分本位でしか考えてきませんでしたが、住宅購入者の立場で考えることが求められています。

問題.1:1,000万円の価値の住宅を大手ハウスメーカーから2,500万円で購入することで、住宅購入者はどれだけ損をするでしょうか。

答え1.住宅を購入しないのと比較して、1,000万円の価値の住宅を手に入れる代わり、3400万円の損害を被ることになります。
不正が行われているときに、不正を行っている人たちとまじめに仕事を行っている人とが同じルールで競争して、まじめに仕事を行っている人が勝てる筈はありせん。同じ1千万円の住宅(直接工事費800万円)を1,000万円で販売している人には、200万円の利益があるのに対し、2,500万円で販売する人には、1,700万円の利益があります。金融機関は1,000万円の住宅ローンを出すよりも、2,500万円のローンを出したほうが2倍以上の利益(金利)が得られます。住宅を購入した人は同じ住宅を1,000万円で買うよりも2,500万円で買う方が、(2,500-800=)1,700万円住宅会社に対し損をしますが、じつは購入するに際し、住宅ローンを組む結果、その元利の損失は3、3,400万円近い損になります。それは住宅会社が取る1,700万円の粗利の他に住宅ローン会社にとられる金利の余分の販売額とほぼ同額の1,700万円が加算される結果です。

問題.2:1,000万円の価値の住宅を大手ハウスメーカーの70%程度の価格1,500万円で販売している工務店がいます。顧客に与えている損失はいくらになるでしょうか。

答え2.住宅を購入しないのと比較して、1,000万円の価値の住宅を手に入れる代わりに、2,100万円の損害を被ることになります。
優良、有力工務店と言われている地下で有力な工務店は、1,500万円の工事見積もりを顧客に出していますが、上代と下代の価格差や重層下請けの粗利を除くと、住宅購入者に渡す工事請負契約書の見積額は、複合単価を異に見積もったもので、末端の工事現場ベースで実際に支払いは800万円以下であるのが現状です。すると、住宅建設業者全体での粗利は、(1500-800=)700万円で、粗利率46%です。この住宅を購入した顧客は元住宅会社にとられる粗利「1500-800」=700万円と金融機関には1500万円の住宅に対する住宅ローンとなりますから、その支払わされる元利総額は1,500万円の2倍の3,000万円になります。実際の住宅の価値800万円だけの融資であったらその元利は1600万円が元利返済額ですから、(3000-1600=)1400万円が余分なローン支払いということになります。支払わされる合計で、700+1400=2、100万円の損失が住宅建設会社と金融機関によって住宅購入者にもたらされます。

仮想問題から導き出される結論
大手ハウスメーカーは広告宣伝・営業販売に要する費用として住宅販売価格の約60%を住宅販売価格かとして回収しています。大手ハウスメーカーほどではなくても、複合単価を使って、「粗利35%程度の粗利」を採っている工務店の場合、工務店の最終支払いベースで見ると粗利が46%近くなっています。実際は、政府の長期優良住宅政策に対応する費用(戸当たり100万円以上)や、広告宣伝や営業販売にどんどん使われていって、純益にはなっていませんが、非常に大きな経費負担になっています。しかし、もっと大きな問題は、その販売価格全体が住宅融資の対象となって、総額に対するローンの返済元利は、借入額のほぼ2倍になっているということです。工務店が手に入れる粗利とほぼ同額を金融機関が自動的に手に入れることに問題があるのです。工務店が住宅購入者の負担を軽減するためにお最も重要なことは、住宅ローンの借入金額を最小にする努力をすることです。それはとりもなおさず工事請負金額を圧縮することでもあるのです。
上記の例を簡単に説明すると、大手ハウスメーカーで販売価格2500万円の住宅を購入した顧客は、実際には1000万円相当の価値しかない住宅を手に入れ、3400万円近い利益を大手ハウスメーカーと住宅金融機関にとられているのです。地場の工務店は、ハウスメーカーの70%程度の価格1,500万円の住宅を販売してとき、顧客は1,000万円相当の価値しかない住宅を手に入れ、市00万円相当の利益を工務店と金融機関が手に入れるということになっています。

モーゲージローン国の場合の状況
欧米だけではなく、モーゲージローン国の場合、請負契約も住宅ローンも直接工事費分を住宅の価値としていますから、少なくともローンは直接工事費分にしか出されません。そのため、上の2例では、ローンは800万円だけです。それ以上の価格に対して住宅購入者が頭金を出して支払うほかありません。そのようなことは一般に不可能ですから、住宅会社が直接工事費通りに仕事をすることになります。中国などでは住宅取引は厳禁取引が中心で、ローンはあまりおこなわれていないということも聞かされていますが、バブルで住宅価格が膨らんでいけば、価値の伴わない分にローンが対応しないため、結果的に現金取引になっているということだと思います。少なくとも中国はモーゲージローンですから、ローンは直接工事費以上には出ていない筈です。その結果、住宅購入者には過大な融資が課せられないことになります。

「顧客の利益」と「工務店の利益」のどちらを優先するか
現在の日本の住宅政策も住宅産業政策もこの質問に対して、多恵前は住宅購入者であると答えながらも、実際に行っていることは住宅産業の利益であると言ってよいと思います。その政策は1976年住宅政策が「量から質の政策」に転換したときに、政府が行った政策は、住宅ローンの返済期間を世界一長期間に延長し、ローン痛を軽減し、生涯ローン漬けにして住宅を購入させた政策ではっきり示されたというべきです。その住宅政策をまだ続けていますが、国民がもはやその苦痛に耐えきれなくなって、それが住宅産業自体の土壌をすっかり痩せさせたことを認めざるを得なくなってきました。国民に販売価格相当の価値のない住宅を売りつける政策をこれ以上継続できなくなってきたため、政府の政策転換を迫られていることを感じ始めているのです。しかし、未だ昔の沈没船にしがみついている住宅産業人が多数います。それがHICPMの運動を妨害しているのです。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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