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HICPMメールマガジン第620(2015.07.13)

掲載日2015 年 7 月 13 日

HICPMメールマガジン第620号(2015.07.13)
皆さんこんにちは

今回から会員の一部の要望に応え、これからの小規模な住宅地経営に必要な知識と技術のお話をすることにしました。
「第1回:住宅地経営とは;これからのプロジェクト探し」
先日HICPMの会員の方がこれからの住宅地開発の件でご相談に来られました。昨年の中ごろも別の会員の方から同じような趣旨でご相談がありました。それは、「住宅購入者の住宅費負担能力が著しく低下しているが、その負担能力の範囲で比較的立地条件の良い所で経営的に納得できる開発としてどのような開発ができるか。」という質問です。
その条件としては、都市生活を享受できて、低い住居費負担で、都市的生活を提供できる住宅地開発は可能かという質問です。その事例として、「どのようなものが欧米には存在し、日本での参考になる情報を聞かせて欲しい。」というものでした。すると、私の頭の中では色々な事例が浮かんできて、それをどのように説明しようかという作業が頭の中で始まりました。

米国の現代の考え方:ニューアーバニズム
以前ケントランズ(米国メリーランド州)に行ったときに、そこでの不動産価格はどんどん上昇して、バブル崩壊の後など微塵も感じさせない状況にあったにもかかわらず、所得の中程度以下の人が、ケントランズの中で資産を持っている人たちの仲間で、楽しく生活していたことを思い出しました。
そのことを追っかけて行くと、「アメリカの現代の優れた住宅は、ミックストユースとミックストハウジングの考え方が徹底して進んでいること」が分かりました。
米国の金持ちには驚くほどの金持ちがいて、その階層は私にとっては、別世界の人です。その驚くようなお金持ち人も、ケントランズのような立派な住宅地にも住んでいます。しかし、その場合、そうでない人たちも自分のライフスタイルを卑下せず、肩身の無い思いをしなくても、楽しく生活することができるという所に面白さがあるように感じました。所得の高低はまさに違いであって、それ以外の生活の質を左右するものではないという考え方があるということです。
そのために重要なことは、その社会にとって必要とされる個性を尊重した生き方であるということです。
大邸宅をもっている人の中には、その住宅を維持管理することが負担になっている人もいます。大きな家の一部を賃貸してくれる人もそれを必要としている人もいます。家族が少なくて一緒に生活してくれないかと同居人を求めている人もいます。社会は同じライフステージ、同じライフスタイルの人たちで豊かな生活環境を造ることはできないことがこれまでの経験から導き出され、皆が豊かな生活を営める生活空間は、色々なライフステージにある色々な生活を求めている人が理解しあって生活するミックストハウジングであり、お互いの能力や知識・技術を職業として生かす空間を「兼用住宅」として一緒に保有するミックストユースであると米国社会では広く考えられてきています。その考え方をニュー―アーバ二ズムと言います。

ニューアーバニズムの生まれ育っている社会環境
地球上の先進工業国と発展途上国の所得が平準化する方向に向かっている社会です。所得の大きな伸びを期待できない社会です。一人の人が多くの仕事(複数の雇用機会を得て)を行うことで所得総額を増やそうとする社会です。無駄遣いをせず支出を抑えて、ローカルな生活を豊かにする方法を考えることで途が拓ける社会です。食費の支出を圧縮するためにヨーロッパでは、アグリカルチュラルアーバニズムが構想されました。アグリトピア、アグリトゥーリズム、グリーントゥーリズムが取り上げられるようになった時代背景を考える必要があります。つまり、土地と住宅を一体的に捉えて、どのように環境を構成するかを考えなければならない時代になっているのです。土地や建築物を取引することで金儲けを考えるのではなく、人びとの所得と生活環境の良循環を引き起こす考え方で取り組まれなければならない時代になっています。土地は取引の対象ではなく、豊かな生活を生み出す環境資本と考え、長い目で見たときのキャピタルゲイイン(資本価値の増殖)をもたらすものと考えることが必要です。
その意識としては、貴族社会の貴族の領地の経営、資本主義社会の健全な資本家の考え方になることだといえます。土地や株式を売り買いの利ザヤで儲けようとする生き方は、本来の株主や地主(貴族)の考え方ではなく、ブローカー(商人)の考え方です。
貴族や資本家の考え方は、資本を太らせ、大きな配当ができるような経営をすることです。そのために、優秀な経営者のもとには、高い労働生産性を上げる経営者を雇用して高い利益を上げる経営をすることが行われています。株、証券、土地取引により利益を得ようとする経営は、商業資本家が望んでいても、本来の産業資本家が望んでいる経営ではありません。産業資本家が望んでいる経営は、資本を活用し労働力によって生産をすることによって利潤を上げることを望み、優秀な経営を行う経営者を雇用します。
産業資本家としての役割は、自ら優秀な経営者になってもよいのですが、優秀な経営者を雇用してもよく、投資した資本ができるだけ大きな利益を上げることを目指します。その意味では貴族や地主の行動形態も基本的に同じです。所有する土地を使って最大の利益を上げるために自ら耕作してもよいし、他人に土地を賃貸借してもよいのです。英国の貴族はリースホールド(土地を定期借地させることで、その土地に適した利用をし、その土地利用に必要な施設を借地人に作らせて、借地期間満了時に無償でその施設を手に入れ)資産を作ったのです。

資産株主か、株屋(証券会社や株取引商人);地主と土地ブローカー
一方、商業資本も、資本自体の行動形態としては商業活動(取引)で取引利益を挙げることです。そのため、商業資本自体は産業資本同様の資本としての利潤を高めることを行いますが、そこでの商行為の関心は産業資本家とは違います。資本を所有し、それを活用することではありません。商品の取引だけではなく、金融商品の取引も含み、商取引利益だけに関心が向いているのです。土地や、株式、商品それ自体が育つことには、商業資本の関心がなく、専ら取引利益だけです。株主は、一般的に「資本家」と説明されますが、株主のなかにも資産として株を持ち、その株式が大きく育ち、大きな配当を出すことに関心を持つ資産株主がありそれが、本当の株主です。
一方、株式取引で利益を上げようとする株主は、保有する株式には関心が薄く、取引利益にしか関心がありません。その株式が優良株式か不良株式かには関心がなく、取引の利ザヤにしか関心がありません。手放したらその段階で株主でなくなります。それらの株主は本当な株主ではありません。土地に関しても土地取引会社(土地ブローカー)と土地所有者は、一見、土地を持っていることでは同じ土地所有者ですが、土地の取引利益を目的に土地を持っている人は、商人と同じで、仮の土地所有者です。
一方、本当の地主は土地を所有し、その土地経営によって利益を上げようとする人です。当然、そこで期待される利益の内容も、利益の大きさも違ってきますから、土地は同じには扱えません。取引で、「一過性の利益」を上げるブローカーに対し、土地を所有することで「継続的に土地から生み出す利益」に関心を持つ地主は、土地利用に重大な関心を持ち、それを自ら直接活用しても、しなくても、その土地利用による地代や、耕作利益や、経営利益が関心の持たれる所です。

住宅地経営の基本(借地と借家)
住宅は土地を加工して住宅不動産に造りますから、その基本は土地です。日本では民法で土地と切り離して住宅が不動産として取り扱われていますが、その扱いは社会科学的に間違っているため、多くの矛盾を生み出しています。その矛盾の一つを解決するため建物保護法があります。住宅地経営を考えるとき、素地の土地経営をするか、住宅を建設して住宅不動産経営をするかによって経営内容は違います。いずれの場合も、地主は土地を保有し続ける訳ですから、土地からの継続的な利益が期待できます。
一般に、地主は不動産経営の専門家ではありませんから、自ら直接、土地経営をするか、住宅不動産経営をするかを決定して、それぞれ専門業者と協力するか、専門業者に経営を委任することが必要になります。もちろん、自ら専門知識を学んで実施することも選択肢の中にあります。
今回はその基本的考え方を紹介することにしました。土地を利用することで地代を得ることになり、その地価に対する地代を運用利回りと言います。この場合、重要なことは、活用する土地全体に対する地代収入総額が重要で、一部の土地が高い地代で賃貸借させることだけでは、本当の利回りにはなりません。多くの地主は土地活用の誘いにあって、最終的に時代または住宅の賃貸料収入として確保できる総額を確認しないで、相続税対策という税負担の幻想に脅かされて大手ハウスメーカーの土地活用住宅地経営に乗せられています。不動産の賃貸利用は、その経営期間内にその不動産全体が熟成し、全体の利用効率が高くなくてはいけません。
借地持家の場合は、借地人は住宅が人質になっていますから逃げだすことはありません。それがリースホールドの基本の考え方です。英国の貴族が財産を築いた方法であり、エベネザーハワードが住宅による不動産経営の基本にした考え方です。持ち家の場合、好ましくない居住者を追い出すことはまた大変な仕事になります。借地人が土地から逃れないから地代の取はぐれがないという利益はありますが、厄病神が住みついた場合は、その逆になります。ハワードは「三種の神器」もよる住宅地経営を持ち込むことで、住宅地経営により成功する方法を提案し、世界の住宅地経営に大きな一石を投じたのでした。
一方、日本の土地活用としてアパート経営している人のほとんどは、「生簀に魚を買うのではなく、渡り鳥を駆っているのです。」渡り鳥(借家人)は何時でもよりよい環境を見て生簀を離れていきます。その結果、多くの地主は不良アパートを抱えて相続税対策どころか資産を利用できないゴミだめにしてしまっているのです。賃貸住宅を経営するならば、絶対空き家を作ることのない経営を行わなければいけません。それは家を貸すのではなく、そこで豊かな生活を提供することでなければいけません。住宅地経営は、賃貸住宅の場合も分譲住宅の場合も経営をしっかり行わないとうまくゆきません。
住宅地経営には、次の5者が関係します。土地所有者、開発業者、建設業者、住宅地経営者、住宅への居住者です。それらが住宅が建設されてから未来永劫に健全な関係で経営できるようなシステムをつくることが住宅地経営計画です。社会経済環境や生活文化的なすそ野の広い内容が住宅地経営に関係しますので仕事を始める前に、その関係する広がりをしっかり知っておかないと成功する事業はできません。
次回は土地の利用の仕方をご説明します。
(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷英世)



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