メールマガジン

HICPMメールマガジン第621号(2015.07.23)

掲載日2015 年 7 月 23 日

HICPMメールマガジン第621号(2015.07.23)
皆さんこんにちは

急に夏らしくなってきました。
ホームビルダー研究会が富山であり遅れました。

第2回住宅地経営:基本的な技術・知識
千里ニュータウン開発の技術

私自身公共的な住宅地の開発、再開発は50年以上取り組んできましたが、実際に行ったものは、現在出掛けて見学して見ますと、恥ずかしい話、そのほとんどの開発が、すでに時代遅れのものばかりといってよいと思います。それでは何が問題だったのかと考えました。その疑問にもっとも分かり易い回答を与えてくれた事例が千里ニュータウンでした。千里ニュータウンは終戦前から内務省が戦後の住宅政策がどうあるべきかの調査を始めていました。その結果、英国からの情報として、世界大戦を勝利に導いたチャーチルを相手に、英国のヒットラーの爆撃で破壊された都市の復興こそ国民の要求と考えたアトリー労働党内閣が提案したエベネザー・ハワードによるガーデンシティによる都市開発を政策の看板に掲げたアトリー労働党内閣が勝利したことを知りました。そこで、日本の戦後の住宅政策はハワードのガーデンシティをニュータウン事業に読み替え、公営住宅を政策の基本として行うことを知りました。
そこで、まだ連合軍の占領下において公営住宅法を地方自治の考え方を盛り込んで、建設費補助の制度として準備し、主権在民の考え方の具体化かとして議員立法として立法しました。
それと並行して日本における住宅地開発としてはワードのガーデンシテイをモデルに英国のニュータウン公社が最初に取り組んだハーローニュータウンをモデルにした住宅地開発の取り組みが始まりました。新しい実験的な取り組みは、内務省時代から首都東京より関西の方がやり易いと考えられていましたから、大阪府企業局を創設し、そこで英国のハーローニュータウンに倣った事業を取組むことになりました。まず形から入るということで、ハーローニュータウンと類似地形で、同等の広さをもつ土地を千里丘陵に見つけ、そこでハーローニュータウンの道路パターンに倣った宅地造成計画を実施することになりました。

なぜ日本のニュータウンは失敗したのか
それから半世紀経過してロンドン郊外のハーローニュータウンと千里ニュータウンを比較したとき、そこには資産価値が増殖し続けるハーローニュータウンと、資産価値が下落し、スクラップ・アンド・ビルドを余儀なくされている千里ニュータウンという外見上も、そこに居住している人たちとっても、似ても似つかない全く両極端な住宅地ができていました。そこで、過去の開発した住宅がなぜ現在に命をもつことができないかということを考えてきました。この半世紀、英国も日本もその取り巻く環境は大きく変わり、その中で、ニュータウンが造られたわけですが、その当時、世界の最先端の開発した知識、技術は日本にも英国に倣って同じ技術が使われてきた訳ですし、欧米ではその当時の技術が現在も使われ、現在にも少しも古びていません。
なにしろ、欧米の例を挙げますと、エベネザー・ハワードが取り組んだ「明日へのガーデンシティ」の都市経営技術と都市開発計画の考え方は、基本的に現在も欧米の都市開発の基本になっています。ハワードの理論とニュータウン開発の技術は、その後世界に広がり、特に米国においてはJ・C・ニコルズによるラドバーン開発の技術に発展し、現在の住宅不動産を所有した人たちの資産形成を発展させてきました。私が欧米の住宅地の技術発展の歴史を調べて見ると、それは連続的に発展しており、ニュータウン計画、開発、建設、維持管理と連続的な技術としてその技術をフィードバックしながら使われています。ウォルトディズニーがセレブレイション開発を始めたとき、アイズナー社長は、社員たちに「ハワードの実現できなかった夢の実現」であることをはっきりさせ、ハワードのガーデンシティの理論の中から学ぶべきものを明確にしたことが伝えられているが、ハワードの都市開発の技術が欧米においてははっきりした学問体系となって関係者の共通した技術・知識になっていました。

日本で欧米の住宅地開発技術を学ぶテキスト
それに対して、日本においてはハワードのガーデンシティの技術が正しく理解されておらず、学校教育体系に載っていないからです。日本では都市工学科があっても、そこでは人文科学としての都市計画は存在していません。住宅・建築・都市を物づくりと考えていても、生活・歴史・文化の人文科学空間として取り上げておらず、都市経営という学問体系が存在していないことがあります。それは都市工学、建築工学、土木工学といわれる我が国の住宅、建築、都市に関する技術、知識、学問が「物づくり」という生産の技術に矮小化されていて、住宅、建築、都市で生活する人たちの生活を豊かにするという視点での対応がされてないため、造られた住宅、建築、都市は例外なく償却資産として衰退していくことになるのです。その考え方を理論化したものが減価償却理論です。
そこで、日本においても欧米と同様な住宅購入者にとってその資産形成となる住宅不動産を開発し、維持管理するためには、それを実現している欧米のシステムに学ぶ以外の途はありません。日本には欧米の街づくりを正しく説明したテキストもありません。HICPMのビルダーズマガジンではピーターカルソープの都市開発の理論やその多くの開発事例を紹介してきたほか、アメリカの住宅地開発などを単行本として出版してきました。NPO法人住宅生産性研究会が「資産形成のための住宅と住宅地づくり」(単行本)や、NAHB技術講座で紹介した「ビルディングコミュニテイ」(コミュニテイづくりの理論と技法)(ビルダーズマガジン第103号から166号)、NAHBのベストセラーテキスト)が最も要領よく必要技術を説明しています。今回のシリーズでは、それらの図書に掲載されているものの中で注目すべき内容について紹介するつもりです。

「土地」と土地を纏める
住宅不動産は土地を土地利用計画に合せて加工したもので、住宅地形成の基本です。住宅、建築、都市を考えるときに土地なしにはいずれも考えることはできません。住宅不動産、建築不動産いずれも土地を加工して結果であり、住宅や建築部分は土地なしで考えることはできません。フランクロイドライトは「建築の4原則」の第1に「土地を尊重せよ」を挙げ、土地自身の担っている歴史文化を尊重すべきことを指摘しています。街づくり計画の始まりは、その街づくりを行おうとする土地の歴史文化性という個性を尊重すべきことを指摘しています。
最小限の住宅地環境はどの地度の規模の土地が必要であるかという疑問に対して、欧米では経験的に1エーカー(4000㎡)という規模が必要と言われてきました。その後、1つの住宅としてはハーフエーカー(2000㎡)、クオーターエーカー(1000㎡)の土地面積と言われてきましたが、周辺環境に対し守られる住宅地開発(CID:コモン・インタレスト・ディベロップメント)の最小限規模は、中心にコモングリーンを囲む6戸の住宅)でハーフエーカーと言われています。カリフォルニアの大きな住宅の場合2戸以上で環境がつくられるとしていますが、フロリダでのNAHB/IBS のモデルホームでは3戸でCIDを造っていました。
優れた住環境として造り管理することをしない限り、住環境は形成されないし守られません。
欧米の現代の考え方は、優れた住環境として開発され維持管理される所に建てられた建物以外は、資産形成を実現することはできません。現実に2000㎡以上の土地であっても、日本の宅地開発(開発行為)のように、小さな土地に分割され、それぞれの土地ごとに管理すれば、結果的に優れた環境を造ることも維持管理することも出来ません。米国では土地購入者は例外なく資産価値が高まる住宅不動産を持ちたいと願っています。その場合するべきことは、2000㎡以上の土地で最初に優れた環境を造り管理するルールを造り、住宅地管理する民事契約の体制を造ることが最も現実的な法違法です。それがCC&RS(カベナント・コンディションズ・アンド・リストリクションズ)です。そのコンディションズとリストリクションズ(ハードなルールとソフトなルール)に抵触した場合には、イエローカードとレッドカード(ペナルティと建築先取特権)を差し押さえることにより、環境が担保されます。

住宅地の環境計画を立案する単位
米国のCIDの考え方は、ハーフエーカーは環境形成の運命協同体です。この開発単位ごとに基本計画(マスタープラン)を計画し、そのマスタープランに従って住宅地の建て上げをすることが最も優れた環境形成になるということに関する合意形成を図ることがここの土地にとっても最も資産形成上優れた方法であることに関し合意形成することが重要です。土地所有と建築加工との関係が複雑にならないように、土地はできるだけ1人の法人所有にするようにします。複数の土地所有者の上に建築加工することは事務作業が複雑になるためできるだけ避けないといけません。
マスタープランに基づく土地の加工(住宅の建設)のために「アーキテクチュラルガイドライン:建築設計指針」を定め、それに従うことが環境形成上重要です。そこで開発地全体の土地利用をより固く縛る方法として、住環境を守る運命共同体で土地を合筆するか、CC&RSの契約を締結するか、又はそれを単位に、共同化やコーポ、土地管理法人に現物出資などにより土地を一つにまとめます。その目的は、纏められた土地を単位に共通し合える利用計画を立てるためです。ドイツのBプラン(地区詳細計画)のように地区計画制度を使って1つの土地としてまとめる方法もあります。「地区計画」や「一団地の住宅施設」の都市計画決定ができれば、計画高権に利計画実現は担保されます。地方自治法第260条の2(地縁団体)の規定を使うことで共有地の団体管理を行い課税免除の方法もあります。節税のため、土地の売買を避けます。その方法を以下に整理します。
(1)    既存の土地所有者のまま、土地を合筆する。
(2)    土地管理会社(土地所有者)を創設し、現物出資し、合筆する。
(3)    地区計画により土地利用を詳細に決定する。
ドイツのフライブルクで実施していたように地区詳細計画とコーポラティブとの対応をさせることに共同建築を誘発させることができる。利用することができる土地がまとまったら、その土地の特性調査と、この土地に住まわせることになる居住者の計画を行います。この件に関しては「ストーリー」と「ヴィジョニング」と言われる作業になります。次回説明する。
(NPO法人住宅生産性研究会理事長戸谷英世)



コメント投稿




powerd by デジコム