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掲載日2015 年 8 月 3 日

HICPMメールマガジン第623号(2015.08.03)
皆さんこんにちは

今年の夏の暑さは南洋並みになってきました。私は30年前のインドネシアでの生活を懐かしく感じ、今年は娘たちのお土産のバリバティックの素敵なシャツを着用して、画目蘭とケチャックのリズムを連想しながら、毎日の通勤を楽しんでいます。

リースホールドによる住宅地開発
前回までにリースホールド事業として街づくりを行うときの基本的な考え方は、「地主」の利益を基本に考えなければいけないということをお話ししました。それは日本で「地主さまの土地活用」と口先だけの「お為ごかし」でいう「地主さま」という地主を自分の利益拡大のために誘い込む詐欺師同然の口先だけの対応ではありません。
土地を所有している人の経済的利益を確実に高める方法でなければなりません。それを最も分かり易く説明している経営が、土地所有者が社会を支配してきた貴族社会の国「英国」の土地経営の方法です。貴族がその領地経営によって大きな資産を形成してきた経験を住宅地経営に読み替えて実施した人が、エベネザー・ハワードで、その住宅地経営理論が『明日へのガーデンシテイ』なのです。

リースホールドからフリーホールドによる住宅地経営
ハワードが『ガーデンシテイ』の住宅地経営理論を世に問うとともに、自らレッチワースガーデンシティとウェルウインガーデンシティで実践し、その成果が第2次世界大戦後英国政府の下でニュータウン政策として国を挙げて取り組まれました。
ハワードの提案は戦前から欧米では広く関心がもたれ、色々な形で取り組まれ、日本にも小林一三による阪急電鉄の郊外開発として始められ,東急電鉄の田園調布や小田急電鉄の成城学園、東部電鉄の常盤台などによる郊外住宅地開発として実践され、日本の代表的住宅地として実践されてきました。そのため、これ等の日本における田園都市開発をハワードのガーデンシティ理論と同じものとする間違った考え方が、日本では広く一般化し、ハワードが自らを都市の発明家と称して主張した都市経営のことは、基本的に忘れられているように思われます。
米国ではハワードの理論をそのまま実践した住宅地開発が少なからず取り組まれましたが、そのうちに、米国では「貴族」という土地所有者の資産形成ではなく、「住宅不動産」を購入した国民大衆の資産形成の方法に読み替える取り組みが行われました。「住宅不動産を所有することで所有する資産価値を高める」アメリカンドリームの実現です。
その方法がJ・C・ニコラスとチャーリーアッシャーの協力により、ラドーバーン(ニュージャージー州)におけるニューヨークシティコーポレイションの開発で実現したのです。
それは「三種の神器」(住民による自治団体による住宅地経営、マスタープランとアーキテクチュラルガイドライインというハードなルール、CC&RSという強制力を持つ民事契約というソフトなルール)による住宅地経営でした。

ニューアーバニズムというヒューマニティーズの思想
米国における住宅を取得することで個人資産を増殖するという「アメリカンドリーム」の実現は、米国の開拓期以来一貫して取り組まれてきました。ニューフロンティアと言われた米国の建国以来の都市開発、第2次世界大戦後のハイウエーと共に展開されたアーバ二ズムと呼ばれた郊外開発など全米の全ての地域で取り組まれてきました。しかし、「もの」としては立派であってもそこでの生活は荒れてしまったというプルーイットアイゴー団地のような事例も少なからず発生し、資産形成の進むことのできる住宅地開発は米国国民の彼岸となっていました。
その問題に対する大きな前進は1980年代に入って取り組まれたシーサイド(フロリダ)、ケントランズ(メリーランド)で実践されたTND(トラディショナル・ネイバーフッドディベロップメント)、ラグナーウエスト(カリフォルニア)やノースウエストランディング(ワシントン州)で取り組まれたサステイナブルコミュニテイ、ヴィレッジホーム(カリフォルニア)で実践されたスモールイズビューティフルの思想で取り組まれたエコロジカル開発であります。この3種類の取り組みはその後新しい都市開発の提唱者であり実践者が一緒になってまとめた合意「アワニーの原則」としてまとめられました。
その後のニューアーバニズムの思想として、セレブレイション(ディズニー)に代表される全米はおろか、英国のアーバンヴィレッジ運動として実践されたパウンドベリーに見られるよう世界に発信する住宅地開発の思想・理論となりました。
このニューアーバニズムの思想と理論は新開発、再開発、住宅地経営の基礎となっている考え方として、「HOPEⅥ」計画で取り組まれたハイポイント(ワシントン)で驚異的な成果を上げたことで、官民の境界なく共通に取り上げる場記考え方として広く全米高ではなく世界に広がっています。
その住宅地経営の考え方は欧米の住宅・建築・都市の学問領域の扱い方(ヒューマニティーズ)に立つもので、人びとがその環境に生活し続ける間、いつも高い満足を持続的に享受できる環境経営をするという考え方に立って営まれています。

NAHB刊『ビルディングコミュニテイ』(コミュニティづくりの理論と技法)
ニューアーバニズムの考え方に基づいてNAHBが出版した『ビルディングコミュニテイ』(HICPMのNAHB技術講座:「コミュニティづくりの理論と技法」)という本があります。以前、NAHB刊『ランドディベロップメント』というハードな都市開発の技法の出版が広く読まれていました。この新刊は、その内容を飛躍的に人文科学的視点でつくり直した出版でこの分野でのベストセラーと言われた書籍でした。HICPMではその内容を会員に紹介しようと翻訳作業を行い、上述のビルダーズマガジン第103号から163号まで60回連載しました。お蔭で私は大変勉強得ることになりました。
住宅地開発をするためには、開発のコンセプトを明確にしなければならないことが詳しく説明された後に、その住宅地開発の具体化の方法が説明されていました。
コミュニテイは土地の上に形成されるものですから、土地そのものを過去(有史以前)から現在までの歴史を紐解いてよく知らなければならないことが説明されていました。
その上で、そこに居住してもらおうとする人たちの生活を規定する人々の人文科学的な属性、生活上の要素、生活要求を明らかにし、開発する土地とそこに居住することになる人とで織りなす「ストーリー」をしっかり作らなければならないことを明らかにしていました。そして、そのストーリーに対応することのできるヴィジョニング(空間の歴史文化的なイメージ)をしっかり作るべき重要性を説明したものでした。
HICPMがこれまで指導助言してきた住宅地開発は、いずれもこのテキストに従って行われてきたもので、三重県のアサヒグローバル㈱による泊山崎ガーデンテラス、横浜市工藤建設㈱のガーデンヒルはその一例です。福岡県糸島市の㈱大建による「荻浦ガーデンサバーブ」は、それまでの計画で実現できなかったところを解決し、モデルとすべきニューアーバニズムの事例調査を行い、その計画は米国のニューアーバニズムに迫るものでした。そこで重視したことは、物づくりとして住宅地を完成することを目的とする段階から、そこで生活を始めた居住者たちが年を追って豊かな生活を育て上げ、いつも高い満足を得られる努力をするとともに、多くの人たちが憧れる生活環境を造り、発展させることを目指したものでした。人びとの生活はその社会経済と深く関係し合っていることから、その大きな時代の流れを考えて、住む人たちの所得と生活を考えて、開発地の条件に合わせて、生活環境を改善し続ける実践がニューアーバニズムの街づくりでした。
そこで今回は現段階でニューアーバ二ズムの考え方で住宅地経営を具体化する際、土地経営者が考えなければならない住宅地経営の内容を明らかにすることにした。

土地経営者の考えなければならないこと
土地所有者は住宅地経営が大きな利益を上げることができないと豊かな配当を手に入れられないことを理解していなければなりません。そのためには、現在から未来に向けての経済社会の動向をしっかりしていなければなりません。先進工業国と発展途上国の所得は、長い目で見て平準化する方向に向かっています。平たい(平易な)言葉でいえば、所得の向上は大きくは望めないだけではなく下降するかもしれないのです。
個人の所得が下がっても、家族全体の所得が高まるようにするためには、共働きや、サイドワークのような正規の職業以外の方法で収入を上げることが必要となります。そのための作業場やホームオフイスなど住宅を兼用住宅(ミックストユース)として使えることや、多種多様な世代の人が生活し、お互いの力を利用し合える住まい方(ミックストハウジング)が必要になります。ローカルマネーのような考え方を取り入れることも重要です。
支出を抑えるためには健康を維持するためにフィットネスなどのスポーツを行える空間が必要ですし、お互いの情報を交換できるクラブハウス(コモンハウス)も必要です。出来ればクラインが流転など日常生活で使う屋サイン時給も考える職住一体の環境づくりを考える必要があります。
住宅地を現在だけではなく将来に向けて豊かに営むことができる住宅地として造り経営することが、売り手市場を維持することのできる住宅地経営なのです。そのようにして売り手市場を維持できる住宅地経営を行うことが土地経営者も住宅地経営者と同様に考えなければならないことです。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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