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掲載日2015 年 8 月 17 日

HICPMメールマガジン第625号(2012.08.17)
皆さんこんにちは

リースホールドによる住宅地開発の取り組み方を7月13日から5回連載してきましたが、今回は少し視点を変えてマクロな事業費という経済的視点から検討することにしました。
非常に残念なことですが、日本では建設工事費の信頼できるデータはありません。それは基本的に金融がクレジットで、モーゲージではないからです。金融機関は等価交換金融を行われず、巨額の金融担保を押さえて、貸し込めるだけ貸し込むという『ベニスの商人』顔負けの金融をしているため原価(コスト)データーがないからです。言い換えれば、融資額は融資対象物の価値を表していないということで、消費者は住宅メーカーの言いなりの価格をもって、それを住宅の価値と信じ込まされてきているのです。
そのようなわけで金融機関の不正な「不等価交換金融」が暴露しないように工事費原価はどこにも公表されていません。欧米では原価公開が原則です。日本では、請負価格であっても、公共事業であっても、そこに表示されている工事費は欧米で言う「原価(コスト)」ではなく「販売価格(プライス)」です。

1.リースホールド事業の人工地盤コスト
HICPMがこれまで提案してきたリースホールド事業では、日本の高地価をできる限り顕在化させないようにし、住宅購入者が地価に苦しめられないように、リースホールドによる土地の高密度開発を進めるように勧めてきました。その最も基本的な方法が開発行為としての「人工地盤」の採用です。
米国で進められているニューアーバニズムによる「ミックストユース」や、「ミックストハウジング」を実施する上で、その空間利用として人工地盤上と人工地盤下に分化するとその対応が合理的にできます。欧米では開発計画という概念の中に日本の開発行為と建築行為とが一体の不動産の開発行為となって扱われています。
特に日本では、都市計画法で定義する「開発行為」と建築基準法で定義する「建築行為」が法律上区分されています。そこでは、予定建築物を建築する地盤までは都市計画法の法域の「開発行為」となり、それ以降は建築基準法息の「建築行為」になります。つまり、人工地盤迄は都市計画法の「開発行為」で行い、それ以降は、建築基準法による「建築行為」で行うという仕訳が都市計画法と建築基準法の立法時点の考え方になります。しかし、多くの開発事業では、「複合建築」と呼んで、間築行為の中で都市計画法上の開発行為を一体的に行うことが行われてきました。
しかし、(株)大建の「荻浦ガーデンサバーブ」では都市計画法立法時の都市局と住宅局の申し合わせの原則に立ち、予定建築物を建築するまでの人工地盤を作るまでの行為は「開発行為」を行い、その人工地盤の完成後、即ち開発行為による完了公告がなされて以後、人工地盤上に予定建築物を建築行為として建築しました。
人工地盤は法律上「予定建築物を築造するための地盤の整備」となりますから、予定建築物との関係で必要な支持構造を造るまでが人工地盤による「開発行為」になります。人工地盤であるからと言って、人工地盤は、鉄筋コンクリート造のスラブを作らなければならないわけではありません。開発行為でつくる人工地盤は、予定建築物を支持することのできる擁壁で差し支えありません。
高速道路や鉄道の高架下の空間が自由に使われていますが、この場合の高架工作物は人工地盤です。人工地盤の下の空間はこの高架下の空間と同様に考えればよいのです。高架工作物を人工地盤と言うことになります。人工地盤は予定建築物を支持する人工的につくった地盤という意味で、それ以上の定義はありません。
一方、別の言い方をすれば、人工地盤内の空間は、それを建築空間に利用することもできる訳です。その場合、鉄道のガード下の空間のように建築利用することも出来ますが、その場合には、高架工作物内の建築物としてのそこで建築する建築物に対しては、建築確認が必要になります。
人工地盤は、単に、予定建築物を支持するとともに、工作物内の空間を建築空間利用するためだけの気密断熱構造とするためには、土地の条件により差異はありますが、建築物の用途に見合った構造とすることが必要になりますが、建築的利用をする空間として造るための構造耐力的に耐え、気密・断熱構造として造るためには、5万円/㎡あれば、工事費としては、足ります。
予定建築物として2階建てのタウンハウスを計画するならば、1戸当たりの建築面積は50㎡用意すれば十分ですから、1戸分のタウンハウスに必要な人工地盤の築造費は、250万円程度で、約50㎡の半地階空間を利用いすることができます。その半地階空間は、ミックストユース(兼用施設や塀用施設)や、ミックストハウジング(賃貸住宅や、スタジオのような住宅)の空間となります。これらの空間は住宅所有者の所得を生み出す空間に使うことになります。
開発行為は一般に土木工事業者が担当します。土木工事業者は建築工事業者に比較して合理的な工事を実施するためコストは一般的に同じ鉄筋コンクリート工事でも土木工事の方が、全く同じ工事内容を請け負わせた場合でも、安く造ることができます。

2.予定建築物のコスト
人工地盤上に建築される住宅(タウンハウス:アタッチドハウス:独立住宅が隣地境界線に接して建築され、それぞれが独立した外壁を持っているが、外壁の化粧をする必要はない)は、基礎が不要になるとともに隣接する外壁の化粧をする必要がないため、コストは大きくカットでき、住宅の品質として高気密・高断熱構造でペアーガラスを使用し、AC設備が完備していても、8万円/㎡あれば十分建築することはできます。住宅の延べ面積が100㎡であっても800万円あれば、魅力的なファサードを備えた住宅を十分建設はできます。現在の日本の建築見積は、「材工一式」となっていますが、実際は、広告・宣伝、営業・販売等の建設サービス業経費を回収する単価となっているために高額な単価になっています。建設業法に記載してある通りの材料費と労務費の原価であれば、延べ面積100平方メートルのタウンハウスであれば、500万円程度でもできる筈です。そこで建具や住宅設備などにも十分の費用を掛けるとした場合には、800万円程度になることも考えられます。
そのために必要なことは、CM(コンストラクションマネジメント)をしっかり行い、CC(コストコントロール)をすることが条件になります。CCをしっかり行うためにはTQM(トータル・クオリティ・マネジメント)とCPM・CPN(スケジューリング)がしっかり行われなければなりません。
設計の標準化、規格化、単純化、共通化を徹底して行い、ムリ、ムダ、ムラを排除しない限り、期待通りのコストカットはできません。
このような努力をすることで、予定建築物のコストはこれまで一般に見積もられている工事費の半額程度に引き下げられます。そのコストで工事を実施するためには、下請けに丸投げするのではなく、見積もったとおりの工事の仕方で実施することが条件となります。当然、建築の設計では、設計図面は「生産図面」として工事人の工事の行い方を考えた図面としなければなりません。使用材料を最小にするとともに工事期間(職人の拘束時間)を最小にするような工夫がされていなければなりません。それは普通の欧米の設計で行われていることで、現在の日本の下請け丸投げの仕事の仕方が異常で、工事費が高くなっているだけです。
欧米の場合の工事費の見積もりは、日本の約半額でできています。それは米国社会での工事実績も基にした見積で、重層下請けはなく、安全率を見込むなどの加算を行わず、各工事ごとのムリ、ムダ、ムラが省かれているためです。また直接工事費(材料費と労務費)分に対してしか、モーゲージ(住宅ローン)もコンストラクションローン(建設業金融)も融資を行いません。そのため工事業者はムリ、ムダ、ムラを省いて、使用材料を節約し、職人の無駄な拘束をしないようにし、工事費をできるだけ切り下げる努力をします。

3.「リースホールド導入の参考例」
最近日本の戦後の住宅産業史を調査研究し、面白いことに築かされました。それは、ベトナム戦争が終わった1976年、日本の米軍の兵站基地として軍需物資供給の必要性が急減し、軍需産業向け政府施策住宅、住宅金融公庫による産業労働者向け住宅及び日本住宅公団による特定分譲住宅の供給が不要になった結果の大きな構造的変動です。ベトナム戦争の終結は、日本の米軍の兵站基地として拡大してきた軍需産業生産の終焉を意味するものでした。それは軍需産業の拡大に合せた公庫、公団による産業労働者向け住宅及び企業社宅に入居できなかった労働者のために地方公共団体や公社が供給する集合住宅需要の終焉を意味するものでもあり、政府施策住宅は大きな転換点を迎えることになりました。それが住宅政策として「量から質へ」と言われた政策で、その内容は法人による賃貸住宅供給から個人向け住宅への転換、即ち、賃貸住宅から持ち家住宅への転換でした。
土地負担が著しく困難な時代に、一般個人向け住宅として採られた政策は、建て替え中心の住宅政策への転換でした。土地代の比率が大きすぎる日本に於いて個人住宅に依存する住宅政策を実施するためには、土地を購入しなくてもよい住宅政策に転換せざるを得なかったのです。政府は国民が土地代の負担をしないで住宅を建築できる方法として、「3世代同居住宅」や2世帯住宅」の建設を推奨しました。それと同時に持ち出された政策が既存住宅を壊しても惜しくないとするために木造耐用年数を20年とする減価償却理論の導入でした。減価償却理論は既存住宅を惜し気もなく取り壊すことができるようにする理論でもあったわけです。そして、政府が育成したハウスメーカーのための需要創出をするとともに、土地購入費なしでの住宅供給をするためでした。現代、土地は有り余っているが、高値硬直し、国民に土地を購入する余裕がなくなっている。その取り組みとしては、土地を購入しないで住宅を建設する方位法です。それが「土地を購入しない、地価負担を回避するという現代におけるリースホールドを導入する対応策と同じ経済的時代背景となっているのです。
(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷 英世)



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