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HICPMメールマガジン第627号(2015.09.07)

掲載日2015 年 9 月 7 日

HICPMメールマガジン第627号(2015.09.06)
みなさんこんにちは

先週まで8回シリーズでリースホールド(定期借地権)による住宅地開発の理論を紹介しましたがご理解いただけたでしょうか。今回は、欧米で実施されているリースホールドに倣って日本で欧米と同じリースホールドの事業をするための理論を整理することにしました。

「リースホールドによるNCZ工法」
リースホールドとは

欧米は土地と住宅が一体不可分の不動産です。住宅自体はそれ単独では不動産にならず、住宅不動産は「土地を住宅加工した不動産」というように、「4段階の土地」を定義することができます。基本となるものは土地です。それを分かり易く理解するために土地には以下のような形があるということを理解することが必要です。
1.    素地(見造成地):宅地造成加工をしていない土地を指します。素地はそれ単独では使い物にはならず、その取りを利用するために必要な水の供給や道路のサービスなしには素地自体の意味も全く違ってきます。その意味では行政境界との関係が一つの大きな条件となります。

2.    土地利用計画が定められた土地:都市計画に依るか、または、民事契約(CC&Rs)によりその土地の利用方法が社会的に定められた土地です。素地のままであっても、そこに社会的に遵守すべき「土地利用計画」が定められているか、いないかによって、その土地の社会的な権利は全く違ったものになります。

3.    造成地:土地利用計画により定められた土地をその利用目的に沿って土地造成した土地です。今回説明する人口地盤「NCZ工法の築造後の土地」は、この段階の造成地になります。この土地は日本の都市計画法では開発行為が完了した土地になります。

4.    建て付地:土地利用計画に沿って住宅(建築物)が建てられた土地、即ち、「住宅不動産」を言います。上記1,2及び3は建付け地の前提条件として、考量されなければなりません。
リースホールドとは、土地をリース「賃貸借」契約により「借地」をする権利を言います。その借地は、英国だけではなく欧米の「リースホールド」では、上記1から4までのすべてが含まれます。リースホールドの賃貸料は上記1から4までの条件によって基本的に違います。

「リースホールド契約とその契約解除」による土地の権利
リースホールド契約は上記1から4によって以下のように違います。
1.素地の場合:英国のランドロードは、歴史的に、その領地を農業用に利用する特、荒蕪地を当初は、「5年間のリースホールド」期間で賃料を取っては開墾させ、耕作地として使えるとか、牧草地として利用できるようになると取り上げ、その後は自分に放置として農業利益を上げてきました。

2.土地利用計画が定められた土地の場合:産業革命が始まって工場が立地し、その工場労働者のための賃貸住宅需要が見込まれると、賃貸住宅(社宅)利用を条件にした土地をリースホールドで貸し、賃貸住宅経営者が賃貸住宅を建設し、借家経営を始めます。地主とは土地に関し、賃貸契約(リースホールド)期間20年で土地に「将来貴族が自分の財産として賃貸住宅として利用できる立派な社宅」をリース契約満了後、ランドロードが賃貸住宅経営を行うことになります。

3.造成地の場合:オランダなどで一般的に行われている方法である。土地そのものが海水面以下であるため運河を掘り、そこの土地を盛り上げて陸地を造って、その土地をリースホールドにするような場合、土地整備までの段階は土地所有者が行い、造成地をリースホールドさせることになります。その際、第1回目のリースホールドの条件で開発費用を回収するようにする。50年とか70年とかのリース期間が設定されています。
「NCZ工法の場合」は、「3の場合」に相当する造成工事に当ります。

4.建付け地の場合:レッチワースガーデン地底や戦後の英国のニュータウンのような場合で、「99年のリースホールド」で、土地を賃貸し(その実態は土地と住宅とを一体にした住宅不動産を賃貸し、)リーホールド期間満了をもってすべての住宅不動産が土地所有者に帰属することになります。(100年目からすべてがランドロードのものになります。)
住宅の所有者はその住宅に居住し続けることはできますが、その場合は、地主の所有する賃貸住宅の借家人として、それまでの自宅に、「賃貸住宅居住者」になります。

リースホールドの場合の住宅不動産は、基本的にリースホールダー(土地をリースで借りている賃借人)のものです。一方リースホールドの期間が満了した住宅は土地の所有者のものに住宅不動産の所有権そのものが移り、それまでのリースホールダーは、法律上、単なる借家人になります。その際、地主は高い賃貸住宅を始めることになります。

住宅地経営の重要性
サッチャー首相の時代に公営住宅の所有し、リースホールド経営していた地方公共団体の財政を改善するために、それまで「リースホールド経営をしていた公営住宅」を居住者に、払い下げることをすることで「フリーホールドの持家」に変わりましたが、同様のことがレッチワースやウェルウインガーデンシテイやハムステッドガーデンサバーブでも広く行われました。その結果、現在はガーデンシテイ、ガーデンサバーブ、ニュータウンの住宅は、リースホールドとフリーホールドが入り混じっており、全体の90%程度はフリーホールドになり、いずれの都市も、都市の熟成により、キャピタルゲインが得られる住宅不動産となっています。

そこにはもう一つの問題がありました。公営住宅の払下げを行ったとき、「中高所得の人たちの住宅は健全に経営された資産価値を順調に高めること」ができましたが、「貧困な人たちの住宅地の場合、住宅地の経営が健全に行われず、住宅地があれて衰退化する問題」が社会問題として発生しました。そこで、住宅地ごとにその住宅資産を「常時、健全に維持管理すること」で住む人の生活に着目し、それを健全に維持向上させる人文科学的は配慮が不可欠であるという認識に立ち返ることになりました。

住宅地を捉える捉え方として、「人間の豊かな生活を支える恒久的に優れた環境として維持する」という人文科学的(ヒューマニティ―ズ)な考え方の下に、衰退しかけた住宅地には専門の住宅経営管理委員会(ステアリングコミティー)を設立させ、その運営費用を政府が補助することが始められました。
行政機関が運営助成をするステアリングコミティーを5年程度継続させることで、健全な住宅地経営を回復させることに成功しました。このような支援を行政として支援する理由は、地方公共団体の税収を維持するために必要なことと考えられているためです。

HICPMが欧米の「資産形成が実現する住宅地経営」として「三種の神器」が必要であることを提唱し、英米に倣うことを説明してきたが、それはその経験に倣うべきであるという考え方は、この欧米における資産価値の維持が必要という考え方を尊重したためです。

建築基準法・都市計画法
1968年現在のわが国の都市計画法が制定施行されましたが、その最初の都市計画法案は、英国の都市農村計画法の考え方を基本的に継承し、「住宅不動産」という土地と建築物を一体で扱う法律案でした。若し、都市計画法の原原案のとおりの法律が制定されたら、建築基準法第3章関係が都市計画法に吸収され、住宅局はその行政領域を都市行政に奪われることになったに違いありません。住宅局はその都市計画法に反対し、それまでの土木行政は都市計画法で行い、建築行政はそれまで通りの行政権限を尊重することで今の都市計画法が制定されました。

そこでの行政領域は、建築物を建設することは建築基準法の行政領域であるが、建築物を建築することが予定された土地の整備まで(開発行為)は都市計画法で行うことになりました。建築基準法では土地を扱うことはしないことになりましたが、建築物を建築することとの関係で、建築業者が建築行為と一体で行う建築行為は、開発行為ではないとみなす扱いが暗黙裡の都市局と住宅局との了解で行われることになりました。その結果、次の二つの開発行為が存在することになりました。

1.    都市計画法に基づく開発行為として行う土地の区画形質の変更「宅地造成工事」
2.    建築工事と一体に行う宅地造成工事

実際の都市計画法による開発行為のうち都市計画法による開発許可は、その開発規模が原則1000㎡(実際の行政では都市基盤性場に対する不安があったため、500㎡まで開発許可対処面積が引き下げられている)ですので、多くの建築工事の場合は建築工事と一体に土工事が建築行為として行われ、その部分が都市計画法に規定されている「開発行為」であることさえ忘れられています。

開発行為と「NCZ工法」
(株)大建が糸島市で実施した「荻浦ガーデンサバーブ」では、都市計画法の制定の経緯に遡って、都市計画法による開発許可において、「予定建築物」の地盤としての人工地盤を建設し、その後建築基準法により予定建築物の建築を行いました。

しかし、行政当局では、実際に建築基準法で行う建築行為の中に土工事として土地の地盤整備が行われていることから、都市計画の立法の経緯と現行法である都市計画法及び建築基準法の文理解釈ができず、予定建築物の地盤を「人工地盤として築造したNCZ工法」で建設したことが理解されず、2年近い時日を掛けて説明し、都市計画法に基づく開発許可として「人工地盤NCZ工法による地盤」が許可されました。

しかし、建築確認の段階で、予定建築物を建築する条件で建設した人工地盤を、都市計画法に基づく開発許可が下りているにもかかわらず、建築行政庁は、「鉄筋コンクリート造で造られた人工地盤部分は建築物であり、混構造の制限を受ける。」という不当な対応をしました。そのため、行政庁の不作為を受け2年近く振り回され、都市計画法の立法の経緯と現行都市計画法及び建築基準法胃の文理を説明し、やっと確認が下りた経緯があります。

現在、NCZ工法が技術的に合理的であるだけではなく経済的に大きな利益を生み出すことが理解され始め、「小さい規模の開発にNCZ工法を取り入れたい」という要望があります。開発許可を必要とする規模の場合には、都市計画法による開発許可申請においてNCZ工法を申請することになりますが、その規模以下の場合には、その審査が不要ということになります。

開発許可を要しない場合には、直接建築確認申請をすることになります。すると、これまでの行政対応を見る限り、建築確認に当り、「NCZ工法も建築行為の一体とみなされる」危険性が高くなり、その結果、本来地盤である人工地盤という工作物が建築物の階とみなされ、建築物の回数及び高さで、「予定建築物より1階分大きい建築物を見なされる恐れが生まれます。その結果、経済的に過大は負担を求められ、NCZ工法の利点が生かされなくなる恐れがあります。その場合の正解は、法律通りの手続き「本来建築物の地盤を建築基準法で確認審査の対象にすることはできない」を要求することになります。

しかし、建築行政が、確認事務ではなく、その地盤が「予定建築物を建築するために必要な耐力を有していること」の説明を要求することはあります。説明をしなければならない義務は建築基準法上ありませんが、説明をするようにした方が建築主に対しても必要なことと思います。

開発許可を要しない場合のNCZ工法の取り扱い
一般の建築工事の場合、その地盤の構造耐力は建築基準法での確認事務としては、地盤が適正に造られていることの確認を行うことになっているので、NCZの場合もその例に倣って、NCZを開発Hした(株)大建が「NCZ工法施工基準」を自主的に作成し。その工法を使用する人はその基準によって築造することとし、その検査や建築基準法上の確認として人工地盤耐力を確認する必要がある場合には、(株)大建が作成した技術基準及びそれに基づく施工が行われたことの確認をすればよいことになります。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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