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HICPMメールマガジン第631号(2015.10.05)

掲載日2015 年 10 月 3 日

HICPMメールマガジン第631号(2015.10.05)
皆さんこんにちは

CM(コンストラクションマネジメント:建設業経営管理技術)のはじめに当たって、住宅のデザインに関し、先週に続き、基本的な問題整理をすることにしました。10月5日からヨーロッパの近代建築の原点となっているベルギー・オランダのルネサンス建築の研修に出掛けますので、そこで研修することの関係の日本の建築教育のゆがみをお話しすることにしました。

欧米とは基本的に違う建築教育の目的
日本芸術大学の教授でもあった吉村順三のように日本の伝統建築を研究し、その上に現代社会の問題を解決するのと違って、東京大学を筆頭に工学学部建築工学科では、人文科学教育として住宅・建築に居住者が帰属意識の持てるデザイン(意匠)を行う教育は消滅し、言い換えると、民族の伝統建築の歴史・文化・生活の基礎を教えないで、構造安全性を実現する技術を中心にした工学教育になって行きました。建築歴史だけは明治以来の建築教育の伝統として残されましたが、そこでは博物学的に、又は、意匠教育として建築様式を時代の特徴として教えることがあっても、建築物を民族の歴史文化を担う生活空間という視点で、建築様式を使用する材料と工法との関係で、民族のデザインアイデンティティとして学ぶことはありませんでした。その結果、建築歴史文化教育と乖離した意匠教育が行われることがあっても、それを人びとの帰属意識を持てる生きた建築設計、施工から遊離したものになってしまいました。そのため、建築デザイン教育は、歴史上の様式問題(物知りクイズ)として学ばれるだけで、民族の住まいのデザインというアイデンティティを表現し、人びとが帰属意識を感じさせる意匠教育というように教えられることはありませんでした。意匠は建築家の感性で恣意的に決めることができるかのような勘違いの教育が、例えば、「辰野式」と名付けたルネッサンス建築様式が登場することになっていました。歴史文化に基礎を置かなければならない様式が、有名建築家の恣意で捜索できることは、人文科学としては基本的にありえないことなのです。

機能主義建築デザインの風靡
特に戦後の建築は、世界的に機能主義建築が世界中の建築を指導したため、日本では欧米の装飾型の歴史建築のアンチテーゼ(対立概念)として、それを弁償的にて否定するデザインとして、装飾を切り落とす取り組みが始まり、その後、新しくジンテーゼ(止揚された概念)として機能主義建築装飾をそぎ落す「モダニズム建築」して始まりました。その後、建築デザインの中心に建築機能を重視する「形態は機能に従う」(ルイス・サリバン)の言葉だけが切り離されて、日本の建築教育に取り入れられました。欧米の機能主義建築デザインには、洋式建築を単純に否定するものではなく、過剰の装飾を除外しながら歴史文化や地域の特性を建築物のデザインに取り入れることが行われてきました。フランク・ロイド・ライトのプレーリー様式は、歴史建築様式の過剰な装飾を排除する一方、その立地する土地の歴史文化とその住宅に居住する人々の個性を豊かなに取り入れた建築様式として展開されました。ライトの開発したライティアンとは、ライトの「建築の4原則」に象徴される内容を具体化した土地の個性と止揚する材料と工法により、住宅を所有する人の嗜好を大切にする建築として展開されました。

世界の機能主義デザインと日本の機能主義デザイン
機能主義様式は、ミース・ファン・デル・ローエやル・コルビジエのインターナショナル様式の建築デザインに見られるように、機能的に優れた建築は、土地や住む人の個性を超越して多くの人に受け入れられるということで、機能合理主義を追及する道を進み、やがてデザインの民族への帰属性を失って、社会的なデザインの担い手を失って、それを社会的受け容れるこだわりを失って破綻することになります。ミース・ファン・デル・ローエも、ル・コルビジエも、やがてインターナショナル様式から離脱します。しかし、日本では歴史建築に対する対立概念としてインターナショナル(国際)様式が前衛建築家によって受け容れる取り組みが行われましたが、国民大衆から受け取られませんでした。それに対して「機能主義」は、合理主義のデザインであるから普遍性を持ち、「絶対的に従うべきデザインだ」と考えらました。しかし、機能の評価が人ごとに変わり、不可知論に流れ、恣意的な「機能評価」は、機能に流れ、文化性を失い、脱線に歯止めが利かず、設計者や、建築主が機能的に優れていると受け容れるものであれば、誰もそれを批判することはできないとされ、有名建築家が流行を創作し、それが機能主義による流行デザインが社会全体を風靡することになりました。結局、不可知論に流れて機能主義デザインはそれにこだわりを持って支持する人がいないことになり、流行デザインとなっても、既存住宅の取引の基本となるデザイン的こだわりを失うことになって衰退することになりました。
(続きは次週以降のメールマガジンで行います。
(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷英世)



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