メールマガジン

メールマガジン第635号(2015.11.02)

掲載日2015 年 11 月 2 日

HICPMメールマガジン第635号(2015.10.02)
皆さんこんにちは。
急に秋も深まりいかがお過ごしでしょうか。

CM講座の再開
GKK・HICPM海外研修が続き、本メールマガジンで腰を入れて書き起こし始めていた「CM講座」が、少しぶれてきていますので、今回から立て直しをすることにしました。10月に実施した2つの欧米への研修ツアーを通して、改めて日本の工務店はCMを勉強する機会を奪われていることを何とか改善しなければと再認識したところです。二つのツアーで私が改めて再確認できたことは、欧米ではホームビルダーにとって日本における広告・宣伝、営業・販売という業務が大きなウエートをもっていないことです。そこで今回はなぜ欧米のホームビルダーにとって広告・宣伝、営業・販売の業務が軽く住んでいる工務店経営を実現するために、欧米では、なぜそのように広告宣伝、営業販売に費用をかけないでホームビルダー経営ができているかという理由をご説明することから始めます。

「既存住宅」中心の住宅市場
欧米の住宅マーケットをマクロに見ると、毎年の総取引住宅数の中で、新築住宅は10%程度です。新築住宅比率の高い米国においてもせいぜい20%です。圧倒的多数を占める住宅は既存住宅(イグジスティングハウス)と呼ばれる住宅で、日本では中古(ユーストハウス)と呼ばれているものと考えられていますが、実は既存住宅(イグジスティングハウス)とよばれているものと、中古空宅(ユースドハウス)と呼ばれているものとは似ていて基本的に性格の違ったものであることを知っておく必要があります。「既存住宅」は居住者に高い満足を与え、市場で需要の対象になり続けているのに対し、「中古住宅」は失望を与え続けていて、魅力を失っているのです。

欧米の住宅は基本的に居住者の生活要求に合う形で住宅の維持管理修繕を繰り返し、常時、現在の居住者の生活に高い満足を与えるように維持管理している住宅です。言い換えると、現在の生活に対して高い満足を与えることの出来る住宅と言う意味で、「既存住宅」(イグジスティングハウス)と呼ばれ、新築住宅と競合して住宅市場で取引されています。欧米では、決して「新築住宅」が「既存住宅」に対して市場取引において有利とは限りません。「既存住宅(イグジスティングハウス)」に居住し、居住者が高い満足し、社会的にそこでの生活を羨ましい生活であると示すことで、需要の対処になっている。

住宅市場はこの既存住宅によってリードされることになります。ホームビルダーの信用は、これまで建設した住宅と、その住宅に住んでいる人たちの評判によって左右されることになります。住宅を所有している人は、自分の住宅がその所得の3倍以上の費用をかけた資産であるわけですから、いつもその資産価値で市場で取引されることを願い、いつでも購入価格以上で売却できるように、考え、既存住宅が新しい住宅と同じマーケットで競争できるように、住宅市場で取引の対象となるように維持管理します。住宅所有者の意識とホームビルダーの建設した住宅に対する思いが一緒になっています。

既存住宅市場で購入価格以上にどれだけ高く販売され、住宅所有者に資産形成にどれだけ貢献したかホームビルダーの信用拡大になっています。ホームビルダーがどれだけ資産形成を実現する住宅を供給しているかが、その住宅販売の最大の武器になっているのです。「私の会社の住宅は年間8%以上の資産価値増を実現し、それを約束できる仕事をしてきた」(メリーランドの「ホームビルダ-100」にランクされた会社)では、そこの会社の開発計画を見てウエイティングリストが作られている。)

「広告・宣伝、営業・販売」負担がなくて済む「ホームビルダー」経営
全米ホームビルダー協会(NAHB)は、かねてから、ホームビルダーは広告・宣伝、営業・販売にお金を使わず、ホームビルダーの建設した住宅がホームビルダーの「ビルボード(広告宣伝板)であり、住宅の購入者が、ホームビルダーの営業マンとなるようにしなければならないと言い、ホームビルダーの顧客の7-%以上を紹介客として確保できなければ、その経営は間違っていると言ってきました。

もう一度欧米の社会を考えてみてください。住宅を購入した人にとって、その住宅が購入者の生活要求を満足することができる状態に維持管理されることは必要なことです。その居住者の生活要求は年々変化し、特に子供名ある過程では子供の成長に合わせて家族全体の生活も7年ごとに大きく変化することが知られています。そのことは7年ごとに住み替えをするか、住宅のリモデリングをするかという必要が生まれ、それに的確に応えない限り居住者の満足は得られないことになります。

住宅の価格は個人の家計収入の中に占める割合はダントツに高く、その負担を少なくすることが人々の生活にゆとりをもたせ、豊かにすることであることを国民はしています。そのため、彼らは、自分の住宅が、常氏「既存住宅市場」において適正な取引価格で取引されることを望み、それが実現できるように住宅を維持管理修繕してきました。彼らは住宅に対する維持管理や修繕に対する費用をかけることを「住宅投資」という言葉で説明しています。欧米では新築住宅購入も既存住宅のリモデリングも、「住宅投資」という概念で受け取られています。

欧米の住宅不動産に対する評価はアプレイザル(不動産鑑定評価制度)によって行われてきましたが、そのアプレイザルは、「既存住宅」が住宅市場で取引される需給関係を反映した価格として評価してきました。その不動産鑑定評価制度は、コスト・アプローチ(原価方式)レラティブ・セールス・ライス・アプローチ(相対販売価格比較方式)及び収益資本還元方式(プロフィット・キャピタライズド・アプローチ)によって行われます。

経済学では、「土台(経済活動)が上部構造(制度)を規定し、上部構造が土台を規制する」と言われていますが、その通りに、欧米の社会では、実体住宅不動産取引の経済を反映する形で不動産鑑定評価制度が生まれるとともに、実体の住宅不動産は、住宅所有者の住宅資産価値を高めたいと願う住宅所有者の行動として、不動産鑑定評価制度に対応する形で住宅の維持管理、修繕は行われてきました。その結果、不°プサン鑑定評価制度に適合した住宅経営管理が行われてきました。

日本の住宅産業の構造変化
昔の日本では、現在の欧米と同じように、住宅をつくるとき、決して将来の生活のことまで確定させて住宅を造りこまないで、当面の生活要求を満足させる住宅を造り、それ以降は生活要求に合わせて住宅を改良し続けることが行われてきました。そのために、わが国では平屋で造った住宅に「御神楽」と言って、「平屋の上に2階部分の増築をする」ことや、とりあえず倉庫や蚕部屋と作っておいた空間を、住宅空間に造り替える(模様替え)ことが普通に行われていました。

住宅とは個人の所得と比較して非常に高価なものであるため、その「生活要求に合う最小限の空間を造り、それに生活要求に合せて増改築を繰り返す」という方法が一般的でした。しかし、政府が住宅産業政策としてハウスメーカーを育成し、それに併せて高額な住宅を長期住宅金融と結び付けて売却する新しい住宅販売方式が国の政策として採用され、それまでの住宅産業が根底から変更させられることになったのです。ハウスメーカーは住宅購入者の将来の家族構成の変化まで、すべて事前に読み込んだお仕着せの「夢の住宅」を計画し、それを生涯かけて支払う住宅ローンで消費者に購入させてきました。

しかし、実際の住宅購入者の生活は、ハウスメーカーのお仕着せの住宅に収まることはなく、入居間もない時期から破綻し、居住者の生活要求とのかい離を都市とともに拡大し、愛着の持てない住宅になっていきます。当然、居住者自身が満足できない住宅に対し、社会は関心をもたなくなるため、その住宅は中古住宅(ユーストハウス)となる訳です。そのため、居住者の生活要求に応えることの出来ない「中古住宅」は、住宅市場で新築時の購入価格では取引されることはありません。

その原因のもう一つの原因が、新築住宅価格自体が、その価格設定において、住宅の価値と同額以上の広告・宣伝、営業・販売経費を回収するような高額な住宅価格設定が行われていることがあります。日本では新築住宅購入した人が、再度住宅購入市場に現れることは例外的にしかありません。その理由は政府が高額な住宅を販売できるように世界最長の融資期間の住宅ローンを認め、その住宅会社の潜在的な競争相手になるその住宅会社が建設した住宅に対しては住宅ローンを与えないことにしてきたことにあります。ハウスメーカーによる「差別化」戦略による高価格販売は出来なくても、中古住宅に対して規制融資ができれば、中古市場での流通は可能になります。

つまり、住宅購入者が、その購入した住宅を生涯手放さずに持ち続ける住宅政策を造って来たからです。住宅価格自体が、住宅の架か地ではなく、その2倍以上の販売価格で購入されていることも、「損出しをしたくない」とする住宅購入者の心理に働いて、「中古住宅」市場に自らの住宅を出すことを躊躇させることになっています。日本の中古住宅市場が世界のどの国と比較しても一ケタ以上少ない理由はそこにあります。それは新築住宅が貧しいということでもありますが、政府も住宅産業も、日本の新築住宅は世界に肩を並べられると本気で口にしています。
(以下次回に続く)
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)



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