メールマガジン

HICPMメールマガジン第636号(2015.11.09.)

掲載日2015 年 11 月 9 日

HICPMメールマガジン第636号(2015.11.09)
みなさんこんにちは

今日は日本と欧米の建設業経営の基本的違いについて考えてみることから始めます。
CM(コンストラクションマネジメント)として、「欧米で実施されていること」と、「日本の建設業経営として行われていること」との最大の違いは、欧米のCMでは、建設製造業としてホームビルダー経営を行う業務は、住宅を生産するための経営管理技術であるのに対して、日本では営業の仕事(建設する住宅の顧客探しから、請負契約まで)が制約中心になっていて、請負契約以後の工事施工のことに対しては、非常に関心が薄いことです。欧米の建設業が建設製造業である二に対し、日本における建設業経営の仕事は、住宅不動産営業販売、即ち、宅地建物取引業のようになっています。

そこで前回は、わが国の工務店が、建設業者(工務店)が広告・宣伝、営業・販売という商事業務から解放されて、欧米のような建設製造業になるためにするべき取り組みをお話しました。そのための鍵は、工務店が米国のホームビルダーのように、最低70%以上の顧客が「紹介客」として集められなければなりません。欧米のホームビルダーは戦前の日本の大工・工務店のように、顧客がその評判を聞いて、尊敬の念をもって仕事をお願いしに行きました。それに対し、現在の日本の大手ハウスメーカーから工務店の殆ど全てが広告・宣伝と営業販売活動により、逃げ惑う顧客を罠に追い込んでおら得るような方法で成約に追い込んでいます。なぜそのようなことになっているのでしょうか

「顧客から尊敬されて工事を依頼される業者」(欧米)と
「広告・宣伝と、営業マンを使い、顧客を駆りたて、無理やりに成約に追い込んでいる業者」(日本)

欧米のホームビルダーが高い紹介客を得て業務を行っている理由は、ホームビルダーの評判が、住宅購入者の評価をもとに、社会的にしっかりできているからです。その評判は、「工務店が造ってくれた住宅の資産価値が上昇するかどうか」で決められます。米国では合理的な不動産鑑定評価制度により住宅取引が安心してできる経営環境が欧米のホームビルダーの経営環境になっているからです。その背景には、次の2つの取引が法律を背景に合理的に機能しているからです。
(1)    米国の建設業法が「等価交換販売」工事請負契約制度に立脚していること
(2)    住宅金融(消費者向けの住宅購入者向け金融(モーゲージ)とホームビルダー向けの建設工事金融(コンストラクションローン)のいずれもが、「等価交換金融」として行われていること

ホームビルダーは「アメリカの建設業法」(コモンロー)により住宅の価値に見合った住宅販売価格を設定せざるを得なくなっています。日本ではアメリカの建設業法に倣うようにGHQの指導で、米国と同じ内容が、建設業法第20条に定められている通りの見積もりをするべきことが定められています。しかし、建設業行政は建設業法の条文通り行われていません。重層下請けによる粗利益を容認した「材工一式」の複合単価と、重層的な材料流通を前提にした「上代」(消費者購入価格)と「下代」(建設業者の購入価格)を前提にした工事見積もりを容認していることにあります。その上、国土交通省の住宅産業政策では、「差別化」と言って、住宅の販売価格に広告・宣伝、営業・販売に要した経費を回収することを、住宅の効用(デザイン、機能、性能)が高いことにより、経済的価値が高いと欺罔して、請負契約価格を契約する法律違反を禁止することをせず、むしろそれを助長してきました。

請負契約価格の欺罔の仕方(「差別化」)
住宅の請負価格は建設業法第20条に定める見積もりに依ることになっていますが、実際の請負契約では、住宅の価値に中に、広告・宣伝、営業・販売経費を潜り込ませて、販売価格の中に混ぜてその費用を回収しようとすることを住宅建設業者の正当な経済活動であると説明するため、国土交通省は建設業を、「建設サ―ビス業」とこれまでの建設業は建設製造業という産業分類と違った区分を持ち出しました。結果的に住宅の価値(建設業法第20条)と相違した住宅の価値の約2倍の販売価格を設定し販売している現状を、「サービス業に要した経費を販売価格で回収することは適法である」としてきました。しかし、建設業者は、建設業法に定められている業者であり、その見積価格を構成する要素は、建設業法第20条に定める通り、材料及び建設労務の数量と単価をもとに定めなければならないことになっていて、広告・宣伝、営業・販売に要する費用を、あたかも材料費と労務費であるかのように欺罔することによって行われてきました。明らかに欺罔した「複合単価」を用いた工事費見積もりは、民法および刑法上の詐欺に該当するものです。


二重帳簿を容認するな

欧米でも略算として便宜的に使われていますが、正式な請負契約や住宅融資契約では認められません。
日本で使われている「材工一式」の複合単価は、欧米でも略算法としては平方フィート当たり単価や平方メートル当たり単価として使われていますが、日本のハウスメーカーや工務店が使っている広告・宣伝・営業・販売経費を材料費や労務費に潜り込ませ(隠蔽)した複合単価は欧米にはありません。また、重層的な材料流通を前提にした「上代」(消費者購入価格)と「下代」(建設業者の購入価格)を前提にした工事見積もり単価も欧米には存在しません。現在日本ではハウスメーカーや工務店の粗利が30%程度と言われていますが、それは複合単価を基にして見積もったうえでの加算粗利で、複合単価に隠蔽されている粗利を表に出すと大手ハウスメーカーの場合60%が粗利で、工務店の場合も35-40%近くになります。

国土交通省の体質の問題(ダーティハンド)
日本では政府の公共事業が「複合単価」を用いて工事費を欺罔して、重層下請け工事で書く請負段階で実際に工事をしなくても伝票が経由するだけで手数料(粗利)が落ちるようになっていて、その粗利が建設業協会を介して天下り人件費や政治献金など政官業で分配されてきました。このような公共事業を行っている国土交通省が建設業用を所管しているため、建設業法の適正な施行ができていません。これは単に建設業法の適正な施行ができていないというだけではなく、住宅政策において、長期優良住宅や住宅瑕疵担保履行法等の行政において行政機関が色々な理由を付けて品質の格付け、審査確認のために無数の手数料を徴収する関門を設け、そこで結果的に行政OBを雇用するための経費が見積価格の中に組み込まれることになっています。その累積額は手数料だけではなく、許認可や手続きのために住宅建設業者が架ける費用は請負金額の3%に上る場合もあります。

政府が公共事業で行ってきた「欺罔」を住宅政策にも展開
欧米と日本の住宅価格を比較してみると、明らかにおかしなことは、欧米では法令に適合した材料工法を満足させる仕事はホームビルダーがその技術力によって満足するようにしているのに対し、日本ではそこに官僚が外郭団体などの関門を作って妨害し、全く審査責任を取らないで審査通行料だけを抜き取ることが行われています。その公共事業と同じ仕組みが政府の住宅政策において同じように重層構造で抜き取った粗利を政・財・官で分配することが行われています。長期優良住宅その他政府が住宅の品質評価や、瑕疵担保履行保証などを含む行政手続きや、重層下請けで加算される経費は、すべて複合単価にその費用は潜り込まされ、消費者の負担を高くしています。政府の外郭団体(試験研究機関や認定機関)に行わせ多額の費用を請負工事価格に潜り込ませていることはもとより、建設業者が材料業者から「下代」といって安く購入していながら、「上代」といって、あたかも高い材料価格であるように見積もることは、欺罔であって、刑法上も民法上も詐欺に当たり、すべて建設業法違反です。いずれも建設業法第20条の見積もり内訳に算入することができない費用ばかりであり、住宅の販売価格を高くすることに影響しています。ダーティハンドの国土交通省が住宅産業界に公正な行政が行えないため、消費者に大きな不正による住宅費負担が押し着せられています。

金融機関による不正な住宅政策への便乗
住宅建設業者の設定した工事請負価格を正当であると見なして住宅金融機関が住宅金融を行うために、消費者は、住宅の価値の2倍以上の価格の住宅金融を受け、結果的には借入金額に対応した金利の支払いを義務付けられることになります。その結果、住宅購入者は欧米の住宅購入と比較すれば、販売と住宅金融との2面で2倍以上の負担を押し着せられることになります。欧米の住宅金融と比較すると、原因が住宅建設会社の工事請負金額にあると言っても、住宅の価値の2倍の価格に対する融資ですから、2倍の金融利益を受けることになります。欧米でも見られるとおり、消費者の住宅購買力は住宅金融の大きさで決められます。もし、欧米の金融機関と同じモーゲージを行えば、住宅の価値の2倍の金融はできず、住宅販売価格も融資の範囲に引き下げられることになります。

消費者に及ぶ損失
この住宅販売価格と融資額の大きな欺罔により、消費者が大きな損失を被るだけではなく、工務店自身が生産価格に対し厳しい住宅生産管理を行わず、結果的の住宅生産における原価管理(コストコントロール)が全く疎かにされることになります。住宅の生産原価と販売価格の管理がおろそかにされることは、基本的に住宅生産自治が合理的に行われないということになります。日本においてCM(建設業経営管理)が産業界に根を張ることができない理由は、建設現場で原価管理の必要が認められていなく、住宅生産原価と乖離させて「差別化」により住宅販売価格を自由に操作できるため、住宅生産管理によるコスト管理の必要性が認められていないからです。つまり、日本では工務店にとって住宅の清算だけではなく販売に賭けた費用をすべて回収できるならば、CMを実施する必要がなくなっているのです。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



コメント投稿




powerd by デジコム