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HICPMメールマガジン第644号(2016.01.05)

掲載日2016 年 1 月 5 日

HICPMメールマガジン第644号(2016,01.05)
新年、明けましておめでとうございます。

日本の住宅・建築・都市がどのように変わっていくのでしょうか。年末の日経新聞のトップ記事マンション建て替え円滑化法(以下「円滑化法」という。)に関係するニュースを長野の小布施に出掛けてそこのホテルで見て驚きました。今回はその背景を含む問題の解説をします。

マンション建て替えの法律論
あなたの満足して生活しているマンションで、同じマンションに居住し、建て替えを行うことによって潜在地価を顕在化して建て替え事業で金儲けをしようとした場合、建て替えを希望する人がマンション建て替えを行おうとすれば、全員を巻き込まなければできません。建て替えの利益のために強制的にマンション建て替えに反対する人を強制することは、憲法第29条で禁止しています。

都市再生事業とマンション建て替え
小泉・竹中内閣は、1,000兆円超えの国債を抱え、バブル崩壊後の不良債権を抱えた企業の多くは、法人税を支払えず、職員を常勤者から臨時雇用に変え、やっと企業経営を続けている状況を改善する方法として徳政令(聖域なく構造改革)を発したのです。それが「贋土地づくり」の都市再生事業でした。国家は一銭の財政支出を行わないで、バブル崩壊で地価が下落した割合の逆数相当の容積率を与えることで、バブル最盛時の土地価格をつくり、企業の損失を棒引きしたのです。その結果、東日本大震災が起きた2008年を含む6年間で日本経済は総計15%の成長を記録し、不良政権に悩む企業は担税能力を持つ企業に体質が改善されました。増大させた容積率に相当する土地整備を行わないで土地利用が拡大されたため、交通の重体、学校の教室不足など社会問題が発生しました。首都大震災が指摘されている今、東京大震災が起きれば阪神大震災で経験した悪夢の再来が危惧されています。

「公共性」とは
都市計画は100年の計とも言われ、法定都市計画は計画高権によって国家がその実現を担保することで計画通り実現されるもので、その法定都市計画を変更することは憲法第29条第3項で禁止され、既存の法定都市計画を変更する場合はその変更によって損失を被る者には国家賠償をすることが定められています。都市再生事業はこの憲法規定に違反して行われたものです。
マンション建て替え円滑化法は法定都市計画の変更と併せて、潜在している地価をマンション建て替え事業で顕在化して、地下に眠っていた地価を掘り起こして金儲けをしようという法律です。憲法29条では基本的に個人の利益のために他人の私有財産を侵害してはいけないと規定されていますが、それに優先する規定が憲法に置かれています。それが憲法第29条第2項で定めた「公共性」です。

捏造された危険性
公共性とは公共の利益を増進する性格のことで、マンションの場合、昭和58年にマンション自体が自身に遭遇する等猶予のできない状態が発生した場合、それを建築基準法の視点で言うならば、第9条に基づき、行政機関が取り壊しをしなければならない緊急性があるときは、その取り壊しに公共性をもたせようということで建物区分所有法を改正し、強制的な建て替えを行える途を開きました。
そこを突破口としてマンション建て替えを来ない潜在地価を顕在化し金もうけをしようという要求に応え、国土交通省は耐震診断と鉄筋コンクリート構造の劣化診断方法を作成しました。このいずれの診断も、建築物の健康診断であって、危険である可能性を診断することはできても、危険性を断定できるものではありませんでした。そのため、これ等の診断書によって建築物の危険を主張する建て替え事業には疑問が投げかけられ、裁判ではその診断を巡って御用学者が跋扈し、「白を黒」という議論がなされ、裁判所はマンション建て替えは国家の方針であることと、国が定めた安全診断で「危険」と判定されたものは、それを打ち消すことができないと言い、長い裁判の結果は、全て診断書どおり危険と判決され建て替え事業が行われました。

徳政令と贋土地づくり
小泉竹中内閣では、バブル崩壊後の小出しの財政金融政策で1,000兆円超の国債を発行し、それが税収で返済できず、赤字国債を発行するなど、国債総額は増大し、財政金融政策で国際問題を解決することはできないことが明らかに成りました。その結果持ち出された政策が企業の借金棒引き政策で、企業自身の担税能力を高めることが第一優先とされました。要するに企業の赤字経営の下になっている不良債権を棒引きする「贋金」ならぬ「贋土地」政策が都市再生事業として行われたのです。国家にとっての「公共性」とは赤字を削減することを政策の十分条件と定めたのです。そのための公共性に必要条件を都市再生事業で行ったのです。それは都市関連法制の改正であり、マンション建て替え円滑化法の制定です。マンション建て替え円滑化法では、それまでマンションの危険性という緊急性を「公共性」としていたが、それを円滑化法では、これまで「公共性」の理屈をマンション診断による危険性の捏造気行ってきたが、そのいかがわしい欺罔作業を廃棄し、本音を表に出したらどうかという理法でした。要するに平たい言葉で言えば、マンション建て替えを行うことで経済的利益を求める合意を権利者の5分の4以上の賛成で得られたならば、それを「公共性」の要件(必要条件)とするという憲法第29条第2項では読めない憲法違反の解釈です。しかし、それでは県法第29条第1項の例外条件と仕切れないと考えたため、円滑化法には第4条基本方針という条文を設け、そこでは「関係権利者の合意形成」を定めました。

円滑化法とマニュアル
円滑化法に第4条の条文を置くだけでは国民を説得させきれないと考えた政府は、第4条の法律解釈を具体的な行政手続きとして国土交通省の作成させることを国会が政府に命じさせ、それを「マンション建て替えに向けての合意経営のためのマニュアル」(以下「マニュアル」という。)として定め、そのマニュアルは法律そのものの解説として判例や、英米法の慣習法同様の法律として遵守を義務付けた。マニュアルで定めた2つの重大な決議「建て替え推進決議」と「建て替え決議」はそれぞれ国庫補助金申請条件及び建て替え事業を強制事業として行う建て替え事業組合の認可条件である。このような国民の税金や国民の権利を左右する決議の根拠となるマニュアルは、それ自体が法律でなければならない。
しかし、マンション建て替え事業で実績を上げることを命じられた国土交通省は、「マニュアルは単なる指針であって厳密に遵守する必要はない」と言い、マニュアルで定めた手続きを省略し、許認可に必要な書類は欺罔することで整え、完全に国家指導の詐欺事業として諏訪2丁目住宅管理組合に建て替え事業を実施させた。この国家による不正な行政処分はその後、不利益を受けた住民により行政事件訴訟として争われたが、悉く住民敗訴に終わり、代わって、行政の詐欺横領が正当化された。その現実ほど「聖域なき構造改革」の本質を表しているものはない。日本の「聖域」とは、日本国憲法しかなく、その聖域を蹂躙して実施する規制緩和こそ、小泉・竹中内閣による規制緩和の本質だったのである。

統治行政論
憲法違反の立法、法律違反の行政が、1000兆円超に悩むデフレ経済からの脱却をするために、国民と企業の富の分配を定めた日本国憲法を蹂躙して行うという国の政治が決定しているとき、司法が立法及び行政を糺す能力をもつはずはない。丁度、私の学生時代の1959年、砂川事件裁判が東京地裁(裁判長伊達秋雄)で、日米安全保障条約は憲法に違反するから、日米安全保障条約に基づく刑事特別措置法を根拠にした検察庁の訴えは無効であるとした。この判決を受けて検察庁は飛躍上告を行い、最高裁判所は日米安全保障条約は日本国憲法で裁くことができても裁く必要はない(統治行政論)とすることにより、刑事特別訴訟法に基づく処分は安全保障条約を根拠にする行政法上有効とされた。それ以降、日本国憲法と日米安全保障条約は矛盾する関係を憲法の拡大解釈で辻褄を無理に合わせてきた。
「聖域なき構造改革」の大きさは1000兆円超の国債残高の下での国家運営の厳しい条件の中で憲法蹂躙やむなしの判断がなされたのである。

安倍内閣の求める富国強兵論
安倍内閣が行った円滑化法改正は、立法当時のマニュアルで定めた2つの決議の絶対過半数「5分の4以上の賛成」を4分の3以上にさらなる緩和を行うというものでる。企業(建て替え事業者)の経済的利益を図るためであるならば、それをどこまでも進めることで、企業の担税能力を高め、行財政主導の産軍共同体による国家運営をしようとしているのである。物価を年2%上昇させる政策も実質上の国債の実質原価方策である。増税でしか減らすことの出来ない国債をなくしないことには、「自由な財政出動による政治はできない」という考え方が安倍内閣の考え方である。 

最近の世相
最近は第2次世界大戦関係の歴史が盛んに情報として飛び交っている。その背景に戦争経験を風化させようとする政治(安保法制)に不安をもって、もう一度戦争経験を振り返ろうという世相が生まれているためと思われてならない。私もそのような社会風潮の流れに流されて、昨年は、山崎豊子の「二つの祖国」を読み、今年の正月は山田洋二の「母と暮らせば」を見て、第2次世界大戦の戦争に悲劇を再度小説と映画で経験した。集団的自衛権を拡大させていこうとする安倍内閣の安保法制と突き合わせ、財政力を拡大することで軍国主義の拡大が果たせるという過去の経験を見て、戦争体験は風化させてはならない問題と改めて感じました。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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