メールマガジン

HICPMメールマガジン第647号(2016.02.01)

掲載日2016 年 2 月 1 日

HICPMメールマガジン第648号(2016.02.01)
皆さんこんにちは
「工務店経営改善」についてのお話をします

技術と理論
私の疑問「日本人は、何故欧米の技術を学ばないのか」を提起します。なぜこのような疑問を抱くようになったかの理由は、日本の住宅・建築・都市の関係業務に携わっている人たちに、欧米の住宅・建築・都市の技術や理論を受け容れようとしない土壌ができていることに気付いたからです。「大学は高等専門機関で学んだ技術や理論以外は日本社会では必要ではない」と考えているように思われるからです。

私は学生時代に建築学を学んでから、今年で約60年になります。その間、日本の建築技術者としての一級建築士資格も都市計画と地域計画部門の技術士資格も取得し、建築行政を国や地方公共団体で担当し、大学でも不動産学の教鞭を取り、大学で学んだ技術や知識でその業務を行ってきました。日本で仕事をする限り、学校で学んだ知識、技術、理論で問題解決は出来なくても、大体事足りていました。

問題は、その知識・技術・理論で社会(国民)の求めている要求に応えることができたかというと、そうではありませんでした。そこで日本以外の国で日本で解決できない問題をどのような対応をしているかと思って海外の文献を読み、実際に海外に出かけて見ると、よく言われているように「日本の常識は世界の非常識」であり、「世界の常識は日本の非常識」であることが多くあることが解かりました。

しかし、1995年からNPO法人住宅生産性研究会は、全米ホームビルダー協会(NAHB)と相互友好協力協定を締結し、技術移転を受けた前後から、米国やカナダ、英国やドイツの建築学や都市計画学、建設業経営学を勉強し、それらが日本の建築学や都市計画学と基本的に違った学問であることが解かりました。何のために学校教育で建築学や都市計画学や建設業経営学を学ぶのでしょうか。欧米の学問は、主権在民の国ですから、国民の利益を考えた学問になっていることが解かりました。

住宅問題の基本
私自身、1960年代に日米安全保障条約改正反対に社会全体が盛り上っていた学生時代、社会主義理論を勉強し、その中で英国の住宅問題をフリードリッヒ・エンゲルスの著書で学んだのがきっかけで住宅政策を実施する仕事がしたいと考え、建設省住宅局に入り、公営住宅やスラム改良の問題を担当しました。戦後の建設省住宅局は、既に戦前の内務省時代に英国が労働党政権の下でハワードのガーデンシテイと公営住宅を基本に戦後の住宅政策を始めていたことを知り、その準備をしていました。

私が入省した当時、建設省住宅局には、英国政府の「ハウジングマニュアル」を住宅局職員が翻訳し日本建築学会で出版した『住宅建設要覧』がロッカーに一杯在庫されていて、技術的にわからないことは要覧を読んで調べろと言われていました。その時代に学んだイギリスの住宅政策の基本は、「国民の基本的人権として適正な品質の住宅を、国民の適正な家計費支出の範囲で提供すること」であることが、「住宅政策として譲れない基本」として、すべての制度と考え方に貫徹していました。

私は学生時代に読んだエンゲルスの著書で学んだことが建設省の住宅政策として実際に行うことができたことで、毎日充実した官僚生活を送っていました。しかし、それは初めの数年で住宅政策自身が国民のためではなく、米軍の兵站基地とされた日本では、旧軍需産業の復興をするために、その産業労働者向け住宅を供給することが住宅政策の目的でした。公営住宅、公団住宅、公社住宅は、一見、住宅政策としては、英国と同様な国家の社会住宅政策のような体裁を取っていましたが、政府施策住宅の中心は、旧軍需産業の復興で社宅に入ることの出来なかった下請け企業や、関連産業や、日本の社会全体の裾野産業に働く労働者のための住宅を供給するものとして実施されていました。

住宅政策は、「重厚長大産業」と呼ばれるようになった「旧軍需産業」の成長を推進する産業労働者向け住宅と特定分譲住宅を基本に、全体の住宅政策が構成されていて、その政策の課題は、「戸数の充足」に置かていました。それが「戸数主義」と言われるものでした。英国をはじめヨーロッパの住宅政策との違いは年々拡大し、日本の住宅政策は欧米とは異質な方向に向かっていることが解かりました。

公営住宅制度が作られたとき「シュワーベの家賃負担の理論」を住宅政策の基本とすべきことが住宅局でも議論されましたが、その議論はその後日本の住宅政策で風化して、今では跡形もなくなっています。欧米の社会住宅は現在においてもシュワーベの住居費負担の考え方が全ての欧米諸国の社会住宅の基本として生きています。その考え方は、住宅単体の問題だけではなく、住宅地開発においても、低所得者向け住宅を居住者相互の負担調整『クロスサブシディ―』の政策によって行っています。

住宅価格の問題
国民の所得が低い段階では賃貸住宅が住宅政策の基本にならざるを得ませんが、所得が向上するとともに持ち家が住宅政策の基本になってきました。賃貸住宅にするか、分譲住宅にするかは、家賃とするか、分譲住宅のローン負担にするか、という方法の違いです。その住居費負担の境界は、賃貸住宅の「家賃を含む管理費負担」と、持ち家となったときの「ローン返済の問題の処理の仕方」で連続的に扱えることがだんだん明確になってきました。米国が住宅バブルで経済的に大きな危機に襲われたとき、米国では「賃貸分譲」という制度を持ち込み、大きな成果を上げています。

英国政府が戦後住宅政策のモデルとして取り上げたレッチワースガーデンシテイが、英国でニュータウン政策に採り入れられたことはよく知られていることです。そのニュータウンに供給された公営住宅が、サッチャー首相の時代に英国政府は財政危機に襲われたとき、公営住宅を払い下げしました。そのとき多くの人たちは公営住宅制度がなくなることは、「国家が住宅政策に責任をもたなくなることではないか」と反対しました。しかし、結果はハワードが開発したレッチワースガーデンシテイも、この時代を機にリースホールドからフリーホールドに転換し、リースホールドの住宅を購入した人びとの「住宅による資産形成」に大きく寄与しました。

既に1928年、米国が世界で最も景気が好調であったと言われたときに、ニューヨークシティコーポレイションは、それまでのリースホールドによる住宅地経営を、フリーホールドによる住宅地経営に転換し、「住宅を取得することにより国民が資産形成すること」を可能にする制度を確立しました。J・Cニコラスとチャーリー・アッシャーとがラドバーンで始めた持家による資産形成のできる住宅地形成の技術が、その後の米国の住宅地開発の基本となり、国民に大きな福音をもたらしました。

等価交換販売と等価交換金融
米国は自由主義と資本主義を国是とする国です。そこでは米国が新生日本の基本に据えようとした主権在民の国家の基本法として持ちこんだ日本国憲法第14条にも明記されている通り、「公平の原則」が置かれています。自由主義を放置すれば弱肉強食の社会になります。富める人も貧しい人も自由な経済活動を保障されることが自由主義国家として守るべきことですが、そこには弱肉強食と言った価値観は許されません。同様に取引を欺罔する詐欺行為や欺瞞による住宅の独占価格販売は認めることができません。その基本的な法律の根拠が私有財産の保障を定めた憲法第29条と並んで憲法第14条です。

住宅の取引は請負契約として定めることが建設業法で定められています。この建設業法は1950年GHQが米国の慣習法としての建設業法を日本の成文法化したものです。そこで住宅の価値を計測することが必要で、それを建設業法では「見積もり」として規定しています。米国の不動産鑑定評価制度における住宅の価値評価は建設業法で定めている見積もりと同じです。そこでは住宅を建設するために使われる材料と労務の数量とそれぞれの単価を明らか(原価公開)にして見積もることを定めています。

米国の住宅不動産の住宅取引契約でつかわれる見積書は、等価交換販売を裏付ける材工分離積算をしたものしか有効と見なされませんし、住宅建設をするさいの金融機関による建設先取特権(融資担保)と交換する建設金融(コンストラクションローン)も、住宅を担保に行う住宅金融(モーゲージローン)も、基本的に等価交換金融しか認められず、融資を受けるときには、工事費の見積を「材工分離積算」によって提示することがなければ融資は行われません。

日本の住宅を現在のやり方で米国の建設金融や住宅ローンを受けようとした場合、米国の金融機関は等価交換金融ですから、建設先取特権も住宅の担保も、それぞれ、そこに造られた建築物が担保とすることに限定されますが、融資額も建設先取特権と住宅不動産の価値以上には行われません。日本のハウスメーカーが現在建設している住宅であれば、その融資額は高々、請負工事額としてハウスメーカーが要求する額の40%しか融資されません。その請負契約は、ハウスメーカーの設定して販売価格自体が「独占価格」で、不正と見なされ、その請負契約は禁止されます。当然住宅金融も実行できません。

工務店の経営技術改善
日本の工務店が使っている技術は、中古住宅になれば安くした売却することができない住宅を建設している技術で、住宅購入者の利益を中心に置いていない技術です。住宅を購入する人がいて成り立っている工務店経営者が、住宅を購入している人の本当利益の増進を考えないということはあってはならないことです。少なくとも日本の工務店はそのような理解とともにCM技術を学ぶべきです。

今年度はCM技術をもう一度原点に立ち返って工務店が勉強するようにしてくださることを願うとともに、HICPMとしてはCMを勉強できる環境をつくり、CMを学ぼうとする人たちのHICPMセミナーを含め、会員の学習支援をするようにしていきたいと思っています。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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