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HICPMメールマガジン第657号(2016.03.28)

掲載日2016 年 3 月 28 日

HICPMメールマガジン第657号(2016.03.28)
皆さんこんにちは

新築住宅居住者が「夜逃げ」同然の退去を余儀なくされている
先週末東京立川で建築士事務所関係者の方に私が書いた『フローの住宅、ストックの住宅』(井上書院)についてお話をする機会がありました。その中で私が現在取りまとめ中の日本の住宅政策として1976年の住宅建設計画法以来の日本の住宅政策に端を発する「怖ーい話」をお話ししました。このお話は、先日、数か月後になるビルダーズマガジンの原稿としてまとめたものです。「日本の持ち家住宅で起きている夜逃げ心理」についてです。私がかねてから疑問に思っていたことをこの10年くらいかけて、私自身が生活している多摩ニュータウンだけではなく、多くの住宅地の情報を集めて検証した結果です。
切っ掛けになったのは、平成25年国土交通省が公表した「中古住宅の流通改善ラウンドテーブル報告書」の中に、日本の住宅購入者の全てが、住宅を購入後50年以内に購入した住宅資産の50%以上を失うことが明記されていたことでした。この報告書の内容は住宅関係者の間では、常識のような話で、今更、指摘されるまでもないと多くの人は考えていました。しかし、私はその現象が身の回りでどのような形で起こっているかという視点で調査し、考えてみました。その結論が小見出しのような現象が起きていることでした。

「歓送という扱いを望まぬ」退去者と、「歓送会をする気持ちになれない」居住者
住宅団地では居住者の過程の事情で入退去は日常茶飯事です。新しく一緒に生活する人を迎える歓迎会や、退去される方との長い共同生活をお別れするという歓送会は日本社会の儀礼として昔から行われてきました。しかし、現在団地では、歓迎会は行われていますが、歓送会が行われないことが私の団地でも四半世紀に及んでいます。退去される方が歓送会を望んでいないだけではなく、居住者も退去者に対し「御気の毒で」乾燥する気持ちになれないというのがその実情です。結論から言えば、退去者も居住者も退去を望んでいないにもかかわらず、結果的に退去を押し付けられているということです。
その背景には、政府の住宅政策どおりに持家を購入した人に建設後10年くらいして大きな変化が起きて、購入した住宅の継続居住を希望しながら、それが叶わないということです。しかし、退去者は結構多数いるのにもかかわらず、退去者は全てバラバラにされ、個々の世帯ごとの個人的問題のようにされ、自分の選んだ住宅に住み続けられないということを、「自己責任」と感じさせられているために、退去をしなければならないように追い詰められたことを、退去者は「恥ずかしい」と感じ、他人に気取られないように退去をしているのです。当然一緒に生活していた人達は、退去者の気持ちを汲んで、なるべく知らなかったふりをするようにしています。

政府施策住宅の転換期
これらの現象が発生している住宅は、無数にあると言ってよいと思います。政府が住宅政策として国民に明らかにした住宅政策として政府施策住宅として供給されたマンションや戸建て住宅で、一般的に供給されてきた新築住宅には、毎年70万世帯もの入居者が、幸せな家族の成長を期待して、家族の成長に大きな夢を膨らませてきました。街開きのときや新築への引っ越しのときには、町は明るい希望に満ちた顔で満ち溢れています。それらの住宅は新築住宅として購入したときにはその販売価格は年収の安くて5倍、通常6-8倍で、10倍を超える住宅もあります。この住宅政策が始まったのは1976年住宅建設計画法が始まった第3期五か年計画からでした。
この前年にベトナム戦勝が終戦となり、日本が米軍の兵站基地として軍需物資の生産をする必要がなくなった年です。日本の軍需産業もその状況に対応して、軍需物資の生産から平和産業に軸足を移動させていた時代です。日本は高度経済成長を続け、国民の所得は倍増し、経済成長でインフレは進み、ローンは実質目減りをしていました。軍需産業用の社宅(産業労働者住宅や特定分譲住宅)の建設は中止され、軍需産業関連の政府施策賃貸住宅供給も急減しました。
それに代わって政府が育成してきた住宅産業育成のための住宅政策が、国民を直接需要者とする「居住水準」の向上政策として実施されることになりました。政府の住宅政策は、建て替え住宅を基本に据え、地価の影響を最小限にして床面積の大きな住宅を供給する持家政策が政策の中心になった時代です。そのときの採られた政策が、「住宅床面積を大きくして住宅価格が高くなっても、その全額を住宅金融公庫の融資対象にし、そのローンの元利返済は、元金の支払いを後回しにする元利均等償還とし、かつ、そのローン期間を35年と世界最長にする政策」が採られたことです。
当時の所得の上昇と物価に上昇によって、「賃貸住宅並みの住居費負担で持ち家が持てた」ため、この政策は、その後の日本のバブル経済を発展させる原動力になり、この住宅政策に疑いを持つ人は皆無でした。1976年からバブル経済が崩壊した1990年ごろに住宅を購入した人たち農地初期の住宅購入者は、その経済環境の中で、何とか磨り抜けられた人もいますが、バブル崩壊後に住宅を購入した人たちは、今回ここで取り上げている「夜逃げ」心理で退去を余儀なくされています。

世界との比較での大数観察比較
グローバライゼイションの波をかぶって、先進工業国と発展途上国との賃金水準は、発展途上国の教育水準の向上を反映して、その労賃は地球規模で平準化の方向に向かっています。そのため、欧米でも、世帯主の所得で家族の生活が建てられる例は少なくなってきており、住宅価格でもかつては、「世帯主の年間所得の3倍」という住宅購入価格の上限は、現在では、「世帯の合算所得の3倍」と読み替えられています。そして、その住宅ローンは働き盛りの勤労者としての適正労賃が得られる15-20年(35歳から55歳)の勤労年代に支払えることが、普通の住宅ローンのあり方と考えられてきました。
この欧米の常識と比較して日本で行ってきた住宅政策は、賃金が上昇し続けるという前提で35年間の住宅ローンという制度として始まりました。30歳代で住宅を取得したら65歳まで住宅ローンを支払うことになります。
現在の日本のこれまでの終身雇用制度は略廃止状態で、35歳から40歳で割愛人事の対象になったり、昇給停止という賃金体系に組み込まれるため、ローン締結時に賃金の上昇を見込むことは不可能になっており、年収の6倍を超える住宅は35年の超長期ローンでは返済不可能であることは明らかです。住宅ローンは適正な労賃が得られる50歳以前に返済するようにしないと、その後の人生をローンによって縛られることになります。人生をローン返済のための人生にしてしまうことになってしまいます。政府は2世代ローンを計画するなど、国民のためではなく、住宅産業のための住宅政策を住宅建設計画法で実施してきたことをもう一度、歴史的事実として認識する必要があります。

HICPMが繰り返し訴えてきた基本
HICPMは創設以来、住宅産業は住宅購入者の負担という枠組みを尊重し、「世帯年収の3倍以内の住宅価格で適正な品質の住宅を供給する必要があることを欧米の社会に倣って実施すべきことを訴えてきました。その取り組みとして、住宅購入者の家計支出の範囲で適正な品質の住宅を、住宅購入者の投資(資産形成)として実現する方法を欧米の知識、経験を通して技術移転をしてきました。一般的な情報提供だけではなく、具体的なコンサルタントやそれより踏み込んだ指導を行ってきました。
しかし、多くの工務店の方々は、ハウスメーカーが行ってきたことを真似れば、ハウスメーカーのような大きな利益が挙げられると考え、間違った住宅及び住宅地計画は施工を取組んできました。HICPMがお勧めする欧米の住宅産業が取り組んでいるニューアーバニズムの計画や住宅地経営はもとより、住宅及び住宅地の建設に当たって欧米では普通に行っている建設業経営管理(CM:コンストラクションマネジメント)の技術を使うことも取り組まれてきませんでした。
先週末のセミナーでも、参加者の方の中には多くの人が、「CM研究会のメンバーだ」と言いますので、CMの知識を訪ねたのですが、日本で言われているCMで、欧米のCM学とは全く無関係なもので、会に帰属しているだけでCMを実践している訳ではないことが解かりました。日本で行われている住宅産業に関係する知識、技術、技能は、全て科学的な体系としてではなく、こけおどしの知識でしかないことばかりであることを思い知らされたところです。建築士法、建築基準法、建設業法、都市計画法などの話を住宅産業関係者がよく口にしますが、その知識は非常に薄弱です。法律自体を読んだこともないというレベルの専門業者、専門技術者ばかりです。その再教育を行うにも、住宅・建築・都市行政の教育を行う人もいなければ、その行政自体が非常に貧しいため、日本の住宅・建築・都市の業務の改善は見通しが立たないのではないかと思いました。

CMの実践
私は工務店の皆さんが住宅をお建てに成ろうとしている顧客の支払い能料の範囲で、高い満足を与え、資産形成の出来る住宅を供給するとともに、納得いく利益をアガ、職人たちに満足ゆく賃金を支払うことができる経営を行わなければいけないと思っています。私はそのような住宅建設業経営を実践しているアメリカやカナダのホームビルダーに倣ってCM(コンストラクションマネジメント)の知識と技術を学んでもらいたいと思い、そのための支援をおしまい積りでいます。
CMという言葉だけはこの産業界で広く知られていますが、CMが工務店にとって不可欠な知識であることがほとんど知られていません。欧米では、ホームビルダーになろうとする人たちの基礎学問です。HICPMでも今年、成るべく早い機会にCMセミナーを開催したいと思っていますが、ご関心のおありの方は個人的な説明も致しますので個人授業をお受けになられることをお勧めします。1回3時間程度で3000円で個人授業を実施しようと考えていますので、予めご予約されておいで下さい。受講者の質問に合わせた教育と致します。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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