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HICPMメールマガジンぢ665号(2016.04.25)

掲載日2016 年 4 月 25 日

HICPMメールマガジン第665号(2016.04.25)
みなさんこんにちは

今月から、「株式会社リヴ」(社長 波多野賢さん)の方でHICPMがこれまで欧米から学んできたことを社員の皆様に聞いてもらう塾(戸谷塾)を開設してくださいまして、私としてはHICPM開設21年かけて日本にこれまで技術移転できていなかったCM(コンストラクションマネジメント)を何とか根を下ろす機会にできないかということで、その機会を与えてもらったことを感謝し、この機会を活かそうと思っています。並行して東京の事務所でも、前野さんの協力を得て、HICPMとしての活動を考えておりまして。そのことについて今日のメールで皆様にお話しすることにしました。

大工工務店問題の取り組みの始まり
私がHICPMを創設して以来拘ってきたことは、1970年代の初めにカナダ政府から日本政府のカナダの2×4工法とカナダの林産物資の輸出を目的に、カナダの木造住宅産業調査の政府間招待を受けたときに始ります。カナダを約1カ月調査して回り、2×4工法こそ日本にとっての福音と思いました。
私自身はそれ以前に住宅局建築指導課で建築士班長として、日本の建築技術者と技能者の行政に関与したときにこの問題との取り組みは始ります。日本には、戦後、住宅を担ってきた有能な職人が育たない風土ができ、プレハブ住宅が日本の住宅政策の基本になっていくことを、「これではいけない」と研究会を開催し、その対応策を考えて取り組みを始めた矢先にカナダを見る機会を与えられました。

国(建設省)の政策
私が1960年代半ば、住宅局で建築指導課長補佐として、業務上私に与えられた国の方針は、「日本で建設業労働者を養成することは不可能であるから、技術者が生産システムをつくり、単純な技能を低賃金労働者に「多能工」と言う形で担わせたら良いと言い、それを労働所の職業訓練で行わせ、建設省は生産技術を近代化することで、熟練工なしで住宅生産をする方にすることだと言われました。半世紀たって、日本は当時の国の方針通りになっています。江戸時代からの大工、棟梁、左官は、過去の遺物で、住宅局の住宅生産近代化政策では相手にするべきものではないとされていました。私自身最初は量産公営住宅の小型コンクリート版と、フラッシュドアを基本にした内装パネルでインテリアをつくる住宅を、全国都道府県職員に教育する仕事の図面配りと東京街道団地での現場建て上げの研修を担当して後、建築指導課で建築士の業務の指導と建設技能者を扱う労働省との関係窓口を担当しました。建設省ではそれまでの体躯を技術者にすると言って、建築士法を改正し、大工を試験なして2級建築士にし、その資格を与えることで大工を技術者にしたつもりで住宅産業政策を行ったつもりになっていました。

ライオンズクラブの研究会
通産省の内田元亨が中央公論に『住宅産業論(昭和42年)』に米国のHUD(住宅都市開発省)が住宅生産を工場化したOBT(オペレーショングレークスル―)を紹介し、日本も住宅生産は米国のように工場生産になると国の考え方を表明し、それを受けて通産省に住宅産業課が、建設省に住宅生産課が誕生しました。その住宅局の初代住宅生産課長金子勇次郎がこの政策に大きな疑問を抱き、私に勉強会をしようと誘ってくれました。その構成メンバーは日本の住宅設計では最右翼の受精建築家浜口美穂、陸士から戦後工務店経営者になった河瀬元雄、海兵から東京大学に入り工務店経営を始めた杉崎智雄、職業訓練校を開いていた渡辺富六、材木と大工の過程に居て海軍経験のあった山口登、その他数人の地場で信用の厚い篠原工務店社長など関係者と、私が住宅局としては大工工務店、建築技術行政のトップであるということで、参加し、毎月1回ライオンズクラブに集まって日本の木造住宅の現状と将来の問題を現場からの視点で検討しました。

全建総連との意見交換
当時、政府は建設労働者問題は、全建総連の唐沢書記長が建築審が解や住宅対策審議会の労働者代表で参加していたので、私は唐沢書記長とその部下紺野技術部長から技能者団体の意向を聴取するように努めていました。そのとき驚かされた話は、工業生産分野では若年労働者は、「金の卵、銀の卵」と言って引き抜きあいをしていた時代でしたが、建設業界には若手は集まらず、中高年労働者が非常に惨めな賃金で働かされていました。建設業は大いに潤っていたにもかかわらず、「末端の職人は生活のため2本打つべき釘を1本に出もしない限り飯が食えない」という話でした。いろいろ事情を聴くうちに日本の建設業の重層下請け構造はやくざの社会と変わらない「奴隷にされていた」ことを見せつけられ、そこには建設行政も労働行政の入ることができない状態になっていることを教えられました。

「住宅建築業の手引き」
ライオンズクラブの勉強会を進めて行くうちに、「工務店」と言う言葉自体が腐った企業というイメージであるということになり、工務店ではなく新しい住宅建築業の未来の展望を造ろうということになり、参加者の自主出版の形で議論した結果を「住宅建築業の手引き」(井上書院)でまとめ19版も重ねた隠れたベストセラーになりました。しかし、その後、私が米国のCM(コンストラクションマネジメント)に出会ったとき、「住宅建築業の手引き」としてまとめたものは、CM教育の入門にもならない幼稚ものであることを知り、日本の建設業経営技術の低さを感じました。私はCM技術を建設業界に普及することが消費者の住宅生産に必要であるだけではなく、工務店や大工職人に必要だと思いました。

「こーむてん」
かつてJETROの理事をやっておられた佐々木宏さんが輸入住宅の取り組みが始まったその10年後、「こーむてん」と言う雑誌を発行され、米国から2×4工法の大工3人を日本に連れてくるプロジェクトにも関係し、私ともいろいろ意見を交換する間でした。その佐々木さんは「工務店」と言う汚れてしまった名前を、その内容を変えることで昔の栄光を取り戻し、米国のホームビルダーと同じものにしようと考えておられました。私はカナダに2×4工法の調査に出かけ、カナダの国民が住宅で幸せになっているのも、ホームビルダーが経営が守られているのも大工、ドライウォーラーが工場労働者より高い賃金を得ている理由は、2×4工法の高い生産性に依っていると考え、2×4工法の国内でのオープン化に取り組みました。その取り組みの中で佐々木さんと意見交換をよくしました。

職人の顔が見える設計図書
カナダの2×4工法の導入を果たした後、私は海外(インドネシア)に3年出かけ、そこで社会開発事業に取り組んだのですが、そこでオーストラリア人やニュージランド人と建築生産のことを話し合う機会を得、設計図書と見積りの違いを聴き、日本がどうも異常であると感じさせられていました、帰国後官僚を辞め、民間企業で輸入住宅・輸入建材の仕事をし、HICPMを創設して米国のホームビルダーの業務を見るうちに、日本の建築・住宅が基本的なことで間違っていると感じさせられました。それは物をつくるとき、建築材料と職人の技能力が住宅を造る上で不可欠であるのにもかかわらず、欧米では明示されているそれらの情報が、日本の設計図書にはそれが記載されていないということでした。

最初のLIVの「戸谷塾」の話
私はHICPM創設以来、CMを何とか国内で定着させることができないと「工務店経営も職人の生活も、消費者の財産もボロボロになっていく」という強い恐怖感を抱いてきました。それを打破するためにはアメリカやカナダのホームビルダーやカーペンターが働いている環境をつくらなければと考えて、
LIVの「戸谷塾」の職人向けの講座では、私が米国やかなでの設計図書で知ったことをお話ししました。その内容は、工事を担当する職人のことが米国やカナダの設計図書には書いてあり、欧米ではそれは工事請負契約書の重要資料にされており、「見積もり書」に中に記載してあることを説明しました。欧米人にとって住宅を造るために、そこに使い材料と職人を特定することは当たり前のことですから、欧米人にそんな話をしても誰も驚きません。しかし、LIVの講座で私の話を聞いてくれた人たちは私の話に大変好感を寄せてくれました。私は「これだ」と思いました。職人が設計図書の中で自分でなければ出来ない工事を発見し、それを実際の工事をするために「見積もり書」において、「各工事をするために、何時間その工事のために拘束される」と記載されています。当然、ホームビルダーのデイリーログ(日報)の中にはその実績が記載されます。建築工事は職人が作るという顔の見える内容として設計図書が造られ、その実績が日報で記録されるという仕事をすることで仕事に誇りが持てるのです。

「材工一式」見積もりの不正
かつて日本が高度成長をひた走りに走っていたとき、全建総連の今野部長が建設現場の労働者が如何に厳しい搾取を受けていたかという話は、日本の建設業には、「職人が物を作っているにもかかわらず、それが設計図書に見えなくされています。搾取されても、それが分からなく隠蔽され、見積もりと、その実績としての働いた記録(日報)が存在しないようにされています。建設業経営は、不正な建設業の犯罪行為を隠蔽していることを思い知らされた気がします。「材工一式」見積もりは、重層下請けの都度やせ細っていき、職人はサービス労働か「面坪いくら」と言った職人の仕事を入札で落とすと言ったことで、労働者の価値(賃金)を全く表に出さないで、仕事を押し付けることが行われているのです。
日本の設計者は、その設計業務の中で材料と労務を特定することができないのです。
欧米に人に「設計とはどのような業務ですか」と聞けば、「それはディフィニション(特定すること)だ」と学校でも建設関係者の間でもいいます。材料と労務がなくては工事ができないのに、住宅生産で不可欠は使用する在業と技能者の労務を特定しない設計が設計図書としてありうるはずはないのです。

真面な設計図書がなければ職人に皺が寄せられる
私はこれまでの半世紀日米の違いを見てきました。消費者が住宅を購入することで資産形成ができ、職人が仕事に誇りを持ち、ホームビルダーが地域で尊敬されている欧米の2×4工法の技術を使ったコンストラクションマネジメントの実践こそ、これからの日本の工務店経営に光を与えるものと思い、今年はその運動に邁進していく予定です。 (NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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