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HICPMメールマガジン第666号(2016.06.06)

掲載日2016 年 6 月 6 日

HICPMメールマガジン第666号(2016.06.06)
皆さんこんにちは

今日は日本の住宅産業のこれからのことを考えてみたいと思います。
2006年に住宅建設計画法が廃止され、住生活基本法が施行され、住宅政策は行政主導から民間の住宅産業に主体が移されました。しかし、私が観察する限り、それは公営住宅、公団住宅、公庫住宅という政府施策住宅が財政金融上破綻して廃止され、それに代わって民間の住宅産業と住宅金融機関が中心となって、長期優良住宅という政府の住宅政策の下で住宅建設計画法時代と類似の建設、金融政策を実施しているもので、国民にはその政策の変化や利益は生まれていません。

政府は1976年以来一貫して「住宅産業のための住宅政策を行い、国民はその犠牲者(食い物)にさせられてきました。しかし、住宅を購入した国民は、住宅を購入することで国土交通所が公式に認めているとおり、「住宅を購入した人は50年以内にその住宅資産の半分を失う」ことにより、「住宅を所有することにより国民の貧困化が急速に進んでいるのです。その国民の不安は社会的に爆発(住宅所有者の破産とスラム化か、社会問題化)の寸前にあるように私には思われます。

欧米の住宅政策と日本の住宅政策との基本的な違いは以下の通りです。
1.    欧米の住宅政策:「人文科学」の考えに立った「ストックの住宅政策」

住宅を基本的人権の保護するものとし社会住宅として実施されるとともに、住宅という国民の所得に対し飛び抜けて高額な住宅は、住宅購入者にとって、「資本投資」の対象として住宅購入者の資産形成を確実にする政策が採られてきました。その基本となる考え方が次の3つの柱です。
(1)    等価交換販売
(2)    等価交換金融(モーゲージ)
(3)    「三種の神器」を用いた住宅地経営

2.    日本の住宅政策:「建設工学」の考えに立った「フローの住宅政策」
住宅建設計画法により実施された住宅政策が、ベトナム戦争の終焉に伴う米軍の兵站基地を維持するための軍需産業維持のための住宅政策から、その間、政府が育成した住宅産業に安定した産業需要を与えるとともに、日本の経済政策として、経済的波及効果の高い住宅に対する政府施策住宅という財政需要により日本経済を牽引する「ケインズ経済学に依った」産業政策としての住宅政策に転換した。そのために住宅建設計画法の住宅政策の3つの柱で構成されました。
(1)    高度成長による地価上昇を住宅に繁栄しない「建て替え・同居」政策
(2)    木造の取り壊しを容易にするために減価償却理論を用いた木造住宅の価値評価
(3)    「居住水準」を住宅政策目標にした行政が住宅需要を牽引し続ける政策

3.    経済政策としての日本の住宅政策
財政主導によりGDPを最大にする政府施策住宅は、基本的にスクラップ・アンド・ビルドにより、住宅産業のための住宅需要を創造することに置かれ、その住宅産業が供給する住宅を、最終購入者として消費者である国民が購入することができるよう、以下の3政策が採られました。住宅は、減価償却するスクラップ・アンド・ビルドする消費財であると考える住宅政策の考え方の上に、住宅に対する消費税を科することを正当化する理屈が構築され、実行に移され、現在に至っています。
(1)「賃貸住宅」から「持ち家」政策へ:住宅金融公庫が住宅政策の中心へ
(2)「先楽、後憂」政策へ:「ローン痛」を感じず、超長期の融資期間と元金後払いの「元利均等償還」
(3)建設業から「建設サービス業」へ:不等価交換販売と不等価交換金融
住宅に対する消費税問題は、住宅に対する不動産鑑定評価としての減価償却理論の適用と不可分一体の問題です。欧米では住宅は減価償却すると考えられておらず、消費税が住宅の取引に課せられることはあり得ません。

4.「住宅建設計画法」破綻後の「住生活基本法」
政府の住宅政策は、建設業法に違反して、住宅産業を「住宅建設業」から「住宅流通サービス業」へと産業分類に依らない扱いをしました。そのようにすることで、「住宅性能表示」制度及び瑕疵担保履行制度を住宅の営業販売における「差別化」を実行する「営業販売価格操作手段」として使うこととを住宅政策として正当化しました。
その上で政府は、「差別化」を広告・宣伝・営業・販売のセールストークとして利用することに要した費用の全てを、他の 流通サービス業の販売価格決定をするときの価格決定方法と同様に、販売価格として回収する独占価格を、正当な住宅価格設定方法として容認しました。
つまり、製造業と流通サービス業との経営構造の違いを無視し、近代経済学の「付加価値」理論の中に、労働によって製造現場で創造される価値「労働価値」と、流通サービスの過程で必要経費及びサービスをて供する人たちの労賃という「経費と利益」とを区別をしないで混ぜてしまいました。近代経済学では、製造業における「労働価値」も、流通サービス業における流通サービス業者の「経費と利益」も。同じ「付加価値」という用語として扱っています。
流通サービス業では、取引のチャンネル(経路)が増えるごとに「経費と利益」(「粗利」とも言う。)は膨張するため、流通サービス業の合理化は流通経路の省略によって行われます。製造業では聖労働価値の生まれる製造過程を省略できません。

5.政府の住宅政策の実際
政府は、「消費者保護を住宅政策の目的」と説明し、以下の行政事務を事実上義務化して、認定評価に必要は事務経費と手数料とを徴収します。その業務は住宅関係行政OBの雇用機会を拡大し、関係業者を集め、政府の外郭団体をつくり、政・官・産(政治家、官僚、住宅産業)の護送船団の利益を中心に考えた住宅政策を実施するものです。「消費者保護を看板に掲げた住宅政策」は、基本的に自由主義社会における自由競争経済社会では不要なものです。日本で行われている現在の住宅政策は、歪んだ計画経済として社会主義国で広く行われてきた政策と同じもので、結果的に住宅販売価格を高額にし、住宅購入者の住宅負担を過大にしてきました。
(1)    建築確認事務の複雑化(審査義務項目の拡大)
(2)    住宅金融支援機構(フラット35適合証明)
(3)    長期優良住宅
(4)    住宅性能評価
(5)    低炭素建築物
これ等の行政事務及びそれに準じた事務手続きを行うために必要とされる事務作業と申請事務に要する認可手数料を合算すると、300万円近い住宅販売価格の引き上げになります。 

6.住生活基本法時代の住宅政策の基本
このような政府の住宅政策を可能にしている基本は、1976年に始まった住宅産業の経営基盤を政府施策住宅による財政支出で牽引する住宅建設計画法時代に設定させられた住宅政策を、次の2つの政策として基本的に継承しているものです。
(1)    不等価交換販売:独占販売価格による住宅販売
(2)    不等価交換金融による住宅金融:融資額の約3倍もの不等価交換金融担保
わが国の民法第87条では、住宅を土地と独立した不動産であると法律上の定義を行う一方で、都市計画法に基づいて決定された法定都市計画を、国家が責任を持って計画高権の裏図毛のある公共性の高い計画であると憲法第29条第3項で定められていながら、小泉・竹中内閣時代に実施した「聖域なき構造改革」において都市再生事業という不良債権により企業経営が破綻に追い込まれた企業救済のための徳政令とも言うべき「贋がな(土地)づくり」に利用されてきました。
そこで行ったことは、建築物は恒久的に保護育成されるべき不動産ではなく、スクラップ・アンド・ビルドの対象とされるべき償却資産であることを政府として明らかにしたことでもあります。住宅や建築物は民法の記載に拘わらず、その実際の法的地位は動産であると認めています。
欧米と基本的に違うことは、欧米では土地と独立して効用を果たす住宅・建築物は存在しないので、土地に定着していないモーバイルホームのような住宅は、工場で生産され、建設現場に輸送される間は動産という扱いを受けることです。

7.都市計画施設として定められた法定都市計画に基づく建築物
日本では、住宅は不動産であると法律上扱いながら、その都市計画上の扱いは動産でしかありません。日本では都市計画教育を物づくりとして施設都市計画が中心で行われ、欧米のような人文科学としての都市計画は根づいていません。明治時代ジョサイア・コンドルやヴィルヘルム・ベックマンという建築家(人文科学)が設計した東京都市計画を実践に移す技術者(シビルエンジニア)の養成校として東京大学に開設された学部が土木工学部でした。シビルエンジニアリングの日本語名として決まられた用語が土木でした。東京大学都市工学部、建築工学部、土木工学部や東京工業大学社会工学部、京都大学建築工学部など、日本では住宅・建築・都市境域研究は、工学部としてしか研究・学習されてきませんでした。
都市計画という100年の都市計画を愚直につくり上げる仕事が都市計画行政で、欧米の都市が歴史を越えて熟成し続けている理由は、法定都市計画を国家が実現させているからです。都市に作られた土地利用計画に適合した建築物は、人々がその建築物を大切に維持管理し、必要な改良と修繕を繰り返していく限り、建築物は都市施設の一部として時代とともに熟成し、半永久的に利用されていきます。そこには減価償却という考え方が入り込む余地はなく、時代とともに資産価値を高め続けることになります。 
(NPO法人住宅生産性研究会理事長 戸谷 英世)



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