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HICPMメールマガジン第668号(2016.06.20)

掲載日2016 年 6 月 20 日

HICPMメールマガジン第668号(2016.06.20)
皆さんこんにちは

日本の江戸中期の木構造
日本の伝統建築について、先日HICPMの監事で、日本の木造建築の勉強をされた経験のある近畿能力開発促進センターの田島さんと意見を交換する機会がありました。明治時代、木子棟斎が明治23年に出版した『巧道助術新録』が明らかにした『規矩術』のことが話題になり、夜まで愉快な議論ができました。実は、一昨年田島さんのお誘いで、九州の伝統木造に取り組んだおられる方と技術交流をする機会があり、田の字プランの日本木造と追っ掛け大栓継の木組みを再評価しようという話で、大いに話が盛り上がったことを思い出しました。江戸時代元禄の木造は最も合理化が進んで、全国的に施工技術の標準化、規格化、単純化、共通化が進み、建築職人が全国どこにでも出かけて、高い生産性を実現した時代でした。飛騨の匠と言われた左甚五郎が日光造営に参加したのも、そのような時代背景があったのでした。そのころ言われた言葉が「段取8分に仕事2分」という生産性向上のCM理論の一般化です。

地場の工務店と米国のホームビルダー
現在の日本の地場の工務店は、江戸時代の木構造の技術も伝統も何も継承しないでいて、「木造建築をつくることが、日本の伝統を継承すること」と言わぬばかりに、木造建築で仕事をとるために伝統木造を口にします。私は江戸時代の大工棟梁と言われた技術者が、『規矩術』を駆使して、高い木工技術の建築物を建てたことに驚きを感じていますが、その基本には、職人がよい労賃を得るために生産性の向上を実現するために『規矩術』を駆使したことです。大工・棟梁が、板図一枚で大きな建築物を設計し、工事できた背景には、標準化、企画課、単純化、共通化が行われており、段取り(施工計画)に力を入れて、施工時間を高い生産性によって実施したことで、大きな賃金を得て、社会から尊敬を受けていました。そのような日本の伝統的な地域で尊敬されていた大工・工務店、棟梁と、現在の米国やカナダで見るホームビルダーとは、同じ職能と考えられることができます。

伝統の大工工務店と違う現代の工務店
先日ある工務店が地場に根を張って木造建築で個人住宅を建築しているという話を聞き、昔の工務店のような仕事をしているのかと思ったら、小規模建築なのに、半年の工期が必要であるとか、その工事費は坪60-70-万円はかかるといっているという話を聞き、失望しました。どうしてそのような話になるのか私には全く理解できません。これらの工務店はハウスメーカーのことをいろいろ批判しますが、自分の行っている仕事がそのような状態で、どんな顔をしてそんな批判ができるのかという気がします。
工務店にとって最も大切なことは、建築主の家計支出に大きなしわ寄せをしないで、建築主の求める効用を持った住宅供給できるかという問題です。特に1990年のバブル経済崩壊後の日本では国家全体がデフレスパイラルに巻き込まれ、特に住宅に関しては、政府が言っているように、「国民は例外なく、住宅を取得することで貧困にさせられている」という事実を仕事において払拭することがなければならないはずです。

住宅を持つ目的と住宅をつくる目的
それは言うまでもなく、建築主が幸せになるためであって、住宅産業関係者が金儲けをするためや自分の好きな設計や工事をするためではありません。住宅を取得しようとする人は、住宅を取得することで幸せが膨らまなくてはなりません。住宅を取得することで貧困になることではいけません。しかし、日本の現状は、国民は住宅を持つことで例外なく貧困にさせられているのです。その一方、住宅産業は住宅を供給することでお金儲けをやっているのです。工務店経営と言いながら、世界の住宅建設業者が学習している建設業経営管理の技術を学ぼうとしていません。
工務店経営に必要な技術は、請負契約の管理の3原則と言われる1.お金の管理、2.品質の管理、3.工期・工程の管理の3要素の管理です。その管理技術(成否管理、品質管理、工程管理)能力なくてどのように工務店経営をするつもりでしょうか。

現在の多くの工務店が行っていること
ホームページを作り、エリマキトカゲのように対外的に目立つ営業宣伝をすることは製造業者として工務店経営をすることとは、客引きをしているだけのことで工務店のするべき建設業経営とは直接何の関係もないことです。しかし、日本の工務店の多くは非常に貧しい建築技術を改善しようとしないで、政府の木材振興策にこたえて木造建築を建築することが、日本の伝統木造技術を伝承する重要な仕事を行っているのだから、その仕事を行って人並みの賃金や利益を上げて当然という主張をしています。
木造住宅の設計技術も、施工技術も、何も学ばないで、仕事を下請け業者に分配することを工務店の仕事と勘違いしているようです。
工務店経営としては、まともな仕事をしないで、手配師のようなしごとをしていて金儲けだけは、国土交通省が言うように「建設サービス業として、顧客の求める使い走りのサービスを提供している」ことで、「顧客満足優先の業務を行っている」ともっともらし理屈を語って手に入れようとしているのです。実際の木工事に不可欠な技術である『規矩術』など全く知らず、その技術があることすら知らないで日本の木造建築の専門家と言ってはばからないのです。

米国やカナダのホームビルダー・カーペンター
同じ設計図書を使って作った住宅の価格が日本では米国やカナダの2倍になっていることをおかしいと感じない日本の住宅政策に大きな狂いがあるのです。私はもう一度1970年代の2×4工法をオープンした時の原点に立ち返って、住宅のコストを検討することをしなければいけないと思っています。日本の2×4工法は、米国やかなでrの2×4工法と設計から施工のすべてにおいて違っているのです。それを理解することなしに、日本の2×4工法の改善の道は開けないと思っています。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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