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HICPMメールマガジン第670号(2016.07.05)

掲載日2016 年 7 月 5 日

メールマガジン第670号(2016.07.04)

皆さんこんにちは

今回のEU問題は、野次馬根性で見ていると大変面白いと思います。

大政治家の関心事

かつて、EEC(ヨーロッパ経済機構)ドゴール大統領の時代、の議論が盛んであったとき、ドイツとフランスが一つの経済圏を形成すると第2次世界大戦の戦争当事国が一つになろうとしたのですから世界は驚きました。確かドゴール大統領は、「EECに英国は入れない」といっていたように記憶しています。その時、「政治家というものはどのような役割を担わなければならないか」、という議論も盛んに行われ、1日24時間のうち中国流にいえば「修身、治国、平天下」のためにどの程度の時間配分をしているのかということが話題になっていました。
自分の時間の使い方として、自分の利益、家族の利益、一族の利益、一族を含む郷土の利益、選挙区としての一族を含む地方の利益、民族の利益、国家の利益、自由主義または社会主義経済圏の利益、地球の利益というように自分の利益から、自分の利益の影響圏の広がりの利益を考える広がりの利益を考えるようになります。その時、ニクソンや田中角栄級の政治家は、90%以上の時間を自分の利益とそれに直接することしか考えないということを言われて驚きましたが、その後の人生の中で政治家を見ていて、「やっぱりそうだな」と納得したことを思い出します。日本の政治家には「田中角栄礼賛論」が出るほどのレベルしかありません。

しかし、ドゴール大統領は自分の持ち時間のうち、50%ぐらいは国家や地球のことを考えているということでした。そのとき議論されていたことは、「自分の利益とそれ以外の利益とを敵対する対立概念としてとらえるか」それとも、「、自分の利益の広がりと考えるか」によって、その政治行動は違ってくるといわれていました。
つまり、直接的な自分の利益ではないが、長い目で見て現在対立している利害関係に関しても、その利益追求を尊重することが自分にとっての利益と考えることができるかによって、政治家の行動は大きく違ったものになるというのです。利益を、短期でしか考えられないか、長期で考えることができるかが、本当の政治家の器であるというのがその議論の一つの結論でした。

EU残留派の利益とEU離脱派の利益という『2項対立』と毛沢東の『矛盾論実践論』

英国では、英国とEUとの関係を「2項対立」としてとらえ、国民選挙という形で結論を得ようとキャメロン首相は考えました。そして、「勝者なき戦い」と言われたように、選挙後の政治が組めないということで両者とも大失敗をしました。この問題は「2項対立」という形で決着がつけられない問題であることが、英国の政治家たちにわからなかったという意味で、歴史の批判を浴びることになります。

かつて、毛沢東は日本の中国侵略時代に、国民党と対立し、中国革命で取り組み、成功に導きました。毛沢東は、その理論を『矛盾論、実践論』としてまとめました。結果論的に物事を整理するうえでこの著作は優れた著作と言えます。毛沢東は今回のキャメロンのように「イラチを起こさず」、彼流にいえば、この時代の「主要矛盾は何か」を考え、多くの対立を乗り越えて中国人民にとっての未来を切り開こうとしたに違いありません。英国のEU残留か、離脱かという目先の対立を、その社会の主要矛盾と勘違いし、それを天下分け目の闘いに変えた政治は、あまりにも粗末というほかありません。
問題を「2項対立」にして対立点を明らかにしたことは事実ですが、将来の解決に向けての問題整理として、この「2項対立」の扱いは、間違った問題の整理でした。EU離脱や残留が、英国にとって直面した主要矛盾でなかったにもかかわらず、それを「主要矛盾」のようにし、その対立を国民投票にした結果、対立は分裂に向かっただけでした。
この問題は英国における対立する主要矛盾ではなかったのです。それを主要矛盾であるかのように政治問題化し、国民選挙に持ち込みました。しかし、国民選挙によって、問題解決をするために弁証法的な止揚(アウフヘーベン)することができず、英国全体が行動指針を見失ってしまったのです。毛沢東ならば、英国の政治家の幼稚さを見て、大人の政治家になる必要を説きそのためには、彼の著書『矛盾論実践論』を読むことを進めたに違いない。

レーニンが教えてくれた『歴史的必然と英雄の果たす役割』

ドゴールやアデナウワーのような政治家にはそれぞれしっかりした歴史観があり、彼らが現在生きていたら、今回の英国の選択をさせなかったと思います。そして彼らは、英国の政治家にレーニンの著作『歴史的必然と英雄の果たす役割』を読むように勧めたに違いないと思いました。私自身英国のEU問題に対する体たらくを見て、レーニンが描いた『歴史的必然と英雄の果たす役割』を思い出し、英国に必要なものはサッチャー首相のような英雄ではないかと思っていました。

トルストイが『戦争と平和』の中であの物語に登場したナポレオンやクトーゾフ、アンドレボルコンスキーなどがヨーロッパの歴史をつくったと感じたかもしれないが、歴史が過ぎてしまえば、ナポレオンがいなくてもクトーゾフがいなくても、すべて神が描いたストーリーを必死になって演じただけで、彼らでなくても、結果的に「歴史的必然」と説明された役回りを役者として演じただけであると書いてあります。

このトルストイの運命論に対して、ロシア革命を成功に導いたレーニンは、先の論文で『歴史的必然の中で英雄の果たす役割』をレーニンが進めたロシア革命の経験の上にこの論文を書いています。私がレーニンの著作を読んだきっかけは、ジョン・リード著『世界を揺るがした十日間』を読んで、ロシア革命の血沸き肉躍る物語に感動したからでした。この著者ジョン・リードは、第一次世界大戦中のヨーロッパでロシア革命の始まりを聞き、1917年にロシアへ向かいました。彼は自身の体験やウラジーミル・レーニンへのインタビューなどをロシア革命のルポルタージュとしてまとめ、『世界を揺るがした十日間』を刊行しました。レーニンの先の論文は、リードのこのロシア革命史を読むことで具体性をもって説得力を持った説明として迫ってきます。

非人道的な権力主義者スターリン、二股膏薬のようなケレンスキー、極左から極右までの魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈するロマノフ王朝崩壊時の混乱したロシアにおいて、レーニンは労働者の理想の国家を合意形成により、ボルシェビキーが力を蓄え、政治力を使ってロシアを訂正を倒し労働者による革命に導きました。ロシア革命におけるレーニンの生き方を客観的に描いた本がォンリードの著作で、この本こそ、私の大学時代の生き方を決め、人生の羅針盤となった本でした。ロシア革命を描いたジョン・リードの「世界を揺るがした10日間」には、後にレーニン夫妻(ウラジーミル・レーニンとナデジダ・クルプスカヤ)が序文を寄せ、「世界の労働者達に無条件で推薦する」と賞賛しました。この2冊の書籍は、現在も私の中で生きています。

私の大学時代はマルクス、レーニン、エンゲルスの著作の学習にその多くの時間を割くことになりました。その時学んだ弁償理論や労働価値説という『資本論』で駆使された経済理論が、働く人たちの幸せを実現しなければいかないという私の人生を方向づけた「志」となり、現在までの私の住宅問題との取り組みの基本的な知識となってきました。
建設省時代私を「赤だ」と非難したり、人事上、東京大学卒業生の官僚から組織的な差別を受け、また多くの官僚仲間から、私の思想信条を理由に、人事上の差別を受けました。私は日本共産党に限らず、共産主義を標榜する共産主義者は、ソ連や中国の共産党員同様、国民を犠牲に自らの利益を不当に拡大する人たちであることを見てきましたから、彼らをまともな共産主義者とは思っていませんし、彼らに与しようとは思いません。
しかし、私はマルクス、レーニン、エンゲルスの生き方は、学生時代の感受性の高い時代に感動させられた時とと変わらず、その理論も生き方も、昔の儘の尊敬の念をもって見習おうと思っています。こんなこともあってEU問題に絡んでレーニンを紹介してみました。

(NPO法人住宅生産性研究会理事長戸谷英世)



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