メールマガジン

HICPMメールマガジン第676号’2016.08.22)

掲載日2016 年 8 月 22 日

HICPM メールマガジン第676号(2016.08.22)

皆 さんこんにちは

日 本チームのメダルラッシュを可能にした背景
リオのオリンピックが終わりました。想像もしない41個ほどのメダルラッシュで日本中が驚き喜んでいます。メ ダルを採った人にはそれに見合う努力があり、運に恵まれていたともいえますが、メダルを採れなかった人たちにも、取った人に負けぬくらい の努力と感動させられる努力の物語があったことを、TVを通して聞かされました。ジャマイカの3冠を取った100mオリンピック3連覇のボルトを驚かせた400m男子リレーは、リレーメンバーの4人の最高の個人記録の合算以 上の記録が、バトンリレーの加速時間を縮小することで実現できるというリレーの面白さを見せてくれました。それは、体操競技団体、新体操 団体やシンクロナイズドスイミングの団体競技と同様、訓練により誤差のない動作が採れるかどうかということで、訓練によりミスのない習熟 効果の重要性を教えてくれるものでした。

成 功を必然化させる成功事例に倣う「システムの構築」
私はオリンピックのTV観 戦をしながら、かつてHICPMとして「サステイナブルハウス」により工務店の経営改善に取り組んでいたときのことを思い出していまし た。宮崎県のアービスホーム(谷口社長)がHICPMの指導を受け入れて、米国に調査に行き米国の美しい住宅地造りを高い生産性の実現し ていることを見て感動し、帰りの飛行機で、米国で手に入れたマスタープランとアーキテクチュラルガイドライインの翻訳を始め、それを帰国 後、「花の森」で実施しました。紆余曲折がありましたが、米国で実施できていることには必然性があることを固く信じ、社員も下請け業者も 一体に纏め、サステイナブルハウスの生産性向上と美しい街づくりに取り組みました。基本設計は、HICPMとカナダのトレードワークスで 行い、アービスホームが実施設計を行ったものでした。この事業では、当初1戸の住宅を建設するために4か月近くかけていた工期を、1年後 には1戸を建設するために1か月未満でそれを可能にし、高い利潤を手に入れることができていました。しかも、現在みても美しい街並み景観 がつくられていました。

経 験のない工務店で実現できた奇跡
その実例は、現在でも宮崎市に出掛ければ、いつでもご覧になれます。アービスホームには社長を支える職員がい て、常務が設計経験を持つ社長の片腕となって事業の技術面をサポートしましたが、現在アービスホームの「花の森」の開発をご覧になれば、 日本で最高の計画技術が行使されたことを見ることができるので、ごらんになれば、どのような専門家集団が事業を担ったのかと考える人も多 いと思います。優秀な技術者を雇用したのではなく、社員全員が一丸となって米国の技術を学び、HICPMでまとめた「サステイナブルハウス・ホームプランシステム」で明らかにした米国カナダの共通基本技術を実践し たことにあるのです。この事業を10年以上経過した今でもすごい事業と評価できる理由は、社長が米国の最新のニューアーバニズムを信じ、 社員の持てる能力をその方向にベクトルとしてそろえたことで実現できたのです。HICPMは米国の優れた住宅技術を自分の能力に合わせて 駆使できるような「サステイナブルハウス」により環境をつくることを支援してきました。「実現できる」という確信を社長自身が持ち、社員 共通の理解にしたことが職員の総合力が「火事場のバカ力」を発揮した理由で、事業を成功させるうえで重要なことでした。

同じような取り組みは、福岡県糸島で(株)大建が実施した「荻浦ガーデンサバーブ」でも経験することができま した。会社としての総合力は、社員一人一人の技術や能力がまだ十分育っていなくても、主要な優秀な技術者を外部から大量な導入(アウト ソーシング)しなくても、社員中心で同じ方向に向けて結集することで大きな成果を発揮することができるのです。

サ ステイナブルハウスを成功に導いてアービスホーム
当時「サステイナブルハウス」に多くの人が取り組みましたが、アービスホームのように成功したケースは、ま ず、社長自身が確信をもって、信頼して米国のシステムを受け入れようとし、職員全員を巻き込んで計画内容を学習し、会社全体が確信をもっ て同じ目的に邁進したことが事業成功の条件でした。米国のシステムとして構築されているものを日本の工務店の能力に合わせて消化しやすい ように加工した計画の原理原則と理論をまとめたツールがHICPMの用意した「サステイナブルハウス」システムでした。このシステムは私 が2×4工法の導入とともに、日本の工務店に技術移転するために米国とカナダの2×4工法の技術の歴史と技術の実際を調査研究し、 NAHBの開発したCM技術を使ってシステム化したものを、HICPMの副理事長の成瀬さんがHICPMホームプランに纏めてくれたこと で実現しました。「サステイナブルハウス」は、HICPMのまとめた「サステイナブルハウスホームプランシステム」の作成に最初から関係して人たちが、その後のサステ イナブルハウスを育ててくれました。ハイランド(岩本社長)は、2000年にサステイナブルハウスのシステム作りから関係され、その考え 方を基本的に踏襲して住宅建設に取り組んでこられました。

確 信を植え付ける必然性のあるシステム
HICPMとしてはコストカットを20%以上実現できるという確信を持ち、その建材輸入と現場施工でCM技術 による見積を行い、その見積もりにあった工事をするような支援を、米国で建材取扱う諸語とをやっていたHICPM会員の小汐さんの協力 で、サステイナブルホームシステムを進めることができました。成瀬さん小汐さんを相次いで失って、サステなブルハウスは期待された大事業 に成長させることはできませんでしたが、その後もHICPMの会員の努力で埼玉県のロッキーホームによる「武笠ガーデン」や、四日市のア サヒグローバルによる「泊山崎ガーデンテラス」、横浜の工藤建設による「ガーデンヒルズ」の住宅地開発や、福岡県の(株)大建が実施した 「荻浦ガーデンサバーブ」はいずれも購入者の支払い能力を考慮し、経年して成長する住宅地の形成を実現する立派な事業となっています。

このいずれの計画もCMの 実践というところにまで迫ることができず、いずれも成長途上プロジェクトであると考えています。生かし、そのすべての計画は経験や技術力 として決してとびぬけた能力を持っている工務店ではなかったのですが、社員の持てる力を社長が「北米の住宅地開発」に向けて集中して技術 開発をすることで可能になりました。

プ ロジェクトリーダーの「事業への確信」と「リーダーシップ」
私は当時も、現在もこれらの事業とその担当者たちの関係を見て、全てプロジェクトリーダーがその事業の成功 を、自ら米国の事例を見て確信し、社員や関係業者に正しい方向付けを行って、当初の椋表を実現したことにあると思います。その到達目標と して、これらの事業に共通していることは、米国のニューアーバニズムによって造られた住宅地に対する憧れや信頼があったことをまず挙げな ければなりません。そこには今回のリオ・オリンピックの日本チームの成功の鍵である「成功への確信」をもったリーダーシップがありまし た。HICPMが米国とカナダの住宅産業取り纏めてきた「サステイナブルハウス」の基本の理解が不可欠になっていました。2000年に 「サステイナブルハウス」が雑誌(日経アーキテクチュア―)で取り上げられ、全国の多くの工務店はサステイナブルハウスをこっそり実施し ようと「サステイナブルホームプラン」を非合法でコピーをして使って、サステイナブルハウスを建設し真下。そのためサステイナブルハウス の違法コピーが出回り、コピーされた設計図書を使って、サステイナブルハウスと「似て非なる」たくさんの住宅が建設されました。当然サス テイナブルハウスで取り入れた「4原則」の利益は得られたため、それを建設したから、サステイナブルハウスの技術を理解したと勘違いしま した。彼らにとってそれ以上の利益を上がる方法は健在の安値購入で、サステイナブルハウスが提唱していた生産性向上は全く考慮されません でした。それらの建材の安値購入に走った人は途中ですべてサステイナブルハウスの取り組みを挫折してしました。

「住 宅コストカット」の途:「CMによる生産性向上」か、「資材の安価な購入」か
サステなブルハウスをHICPMの指導を尊重して実施した工務店の多くは、「オープンプランニング」と「エン ベロップを最小限にする」設計の考え方を理解し、サステイナブルハウスと同じような住宅を建設できるようになりましたが、「CMによって 生産性を向上させる」という目的に向けての努力をせず、資材の仕入れによるコストカットにはした工務店の多くは、悉く挫折してしまいまし た。資金力の弱い工務店は商社の与信管理に縛られ、商社を介しての資材を安く購入する流通業の工務店の軸足が移って、建設業としての生産 性向上に向けての努力をしなくなったため、結果的にサステイナブルハウスホームプランシステムは米国やカナダのように発展することはでき なくなってしまいました。欧米では資金力の弱いホームビルダーのために建設金融(コンストラクションローン)が行われているため、時間管 理を行うようになっていて、CMが実施できるようになっているのです。サステイナブルハウスが挑戦したコストカットは生産性の向上で実現する もので、資材の購入で安くするものではありません。そのため、資材の購入によりコストカットをしようとした工務店は、サステイナブルハウ スシステムから脱落していきました。

ラ イトのユーソニアン住宅の考え方
フランク・ロイド・ライトが20世紀の半ば、ユーソニアンハウスで取り組んだことは、サステイナブルハウス同 様、住生活はライフステージの変化とともに変化し、その住要求もまた変化するという前提の上に、多様なライフスタイルの変化に対しフレキ シブルに対応できる重役計画の考え方をコンセプトとして明確にし、標準化、規格化、単純化、共通化を図ることでコストを最小限にして、住 む人の生活要求に柔軟に対応することのできる住宅を提供しました。それは、現在の日本のハウスメーカーや工務店が「顧客満足の実現」と 言って、「顧客の言いなり」に迎合した住宅設計とは全く逆のものです。かつて私が『アメリカの住宅生産』(住まいの図書館)で紹介したと おり、住宅には「ハブ&スポーク」というように空間の中心とそこから派生する設計のヒエラルキー(序列)があり、それを崩しては居住者の フレキシブルの生活に対応する住宅は造れません。

ハ ブ&スポーク
米国の住宅設計の考え方(ハブ&スポーク)は、詳しくは『アメリ カの住宅生産』に記述しましたのでご覧いただきたいと思いますが、簡単に紹介しますと、住宅には次の2つのハブがあります。

(1)  家庭の中心である夫婦の生活の拠点(マスタースイーツ):子供や老親は扶養や用語の対象であっても家庭の中心 ではありません。

(2)  家族は、すべて食事をし,団欒をするため、台所、食堂、居間という空間は、社会的な活動空間は家庭の中の中心 となる空間です。

この2つの中心となる空間と住宅内の全ての空間とはハブ&スポー クの関係で計画されていなくてはいけないという設計論です。ライトはそれを「おたまじゃくしの頭と尻尾の関係」に模式化して説明し、「ハ ブ」空間を「リクリエイション空間(一般に米国では「グレートルーム」という)」といい、家族の個室は、「おたまじゃくし」の尻尾に譬え た空間に「スポーク」空間として計画しています。

扶養されている子供の部屋は、狭くてもよく、2段ベッドや3段 ベッドを使って個室空間は最小限化し、その代わり、「できるだけ大きく計画したリクリエイションルームで、家族がそれぞれ干渉しあわなく てそれぞれの望む生活をするようにする方がよい」と言っている。このライトのユーソニアン住宅の考え方は、輸入住宅として日本に入ってき た「オープンプランニング」の考え方と同じもので、米国の資産形成を可能にしている住宅計画です。

設 計のプライオリティ
限られた予算の中で顧客の要求にフレキシブルに対応できるために は、建設コストを最小限にして、「靴に足を合わせるような「固定的な生活」を営む住宅を供給するのではなく、「顧客の創意工夫を生かし て、創造的な生活」を営むことができるように、最良の生活の場を作るようにする「居住者の創意工夫を生かせる住宅設計」が求められていま す。そのためには、基本的に住宅は造り込むことはせず、生活に合せて創意工夫を取り入れられるようにせよという考え方がライトの考え方で す。そのためにはホームビルダーとして、工務店として供給する住宅の設計のプライオリティ(優先順位)を設定し、そのプライオリティを構 成するコンセプトをはっきりさせ、そのコンセプトを受け入れる者以外は顧客としないとするような確固とした経営方針が求められています。 「顧客満足」や時代の感覚といった素人が騒ぐ毀誉褒貶に振り回されず、住宅産業を育ててきた歴史文化を踏まえ、そこで定められたコンセプ トに対する技術に裏付けられた確信こそ、優れた工務店経営の基本とされるべきものであることを、今回のオリンピックを見て「他山の石」と して考えさせられることになりました。

(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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