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HICPMメールマガジン第682号(2016.10.03)

掲載日2016 年 10 月 3 日

HICPMメールマガジン第682号(2016.10.03)
みなさんこんにちは、10月になりました。

10月6日は、HICPMとグローバル研修企画が共催で「京都における近代建築と2×4住宅視察研修会」を、1泊2日で実施します。皆さんがご存じのとおり第2次世界大戦で京都は米軍の爆撃に見舞われなかったため、多くの歴史建築物が被災せず残っています。しかし、E・H・カーが『鬼と犬』(講談社)という日本の文化批判の中で、戦後の日本は戦火で守られた文化財を惜しげもなく再開発を行い、「京都タワー」や「京都駅ビル」の象徴されるような近代建築に変えてしまいました。海外から多数京都を訪問する観光客の中で、「京都タワー」や「京都駅ビル」を観光に来る人がいると思いますか。

灯台下暗し
最近になって日本の建築界や住宅産業界で歴史を考える風潮が生まれ、京都の町屋の対する欧米人からの評価を受けて、「灯台下暗し」で、京都の宝が、京都市民が粗末にしてきたものにあることに気付き始めるようになっています。このような状態になっている最大の原因は、日本に人文科学としての建築教育と建築研究を行うところがないということが指摘できます。京都大学には、西山 夘三や西川桂治のような歴史建築に理解のある研究者もいましたが、大学教育として建築を歴史文化を扱う人文科学という学問体系としての研究・教育が行われてきませんでしたので、日本の建築歴史文化を現代の人々のために生かすことはできないできました。

明治時代のルネサンス建築教育
明治の初めに英国からジョサイア・コンドルを招聘して。東京大学の建築家の教官として日本の近代化を欧米の近代国家に倣った都市景観をつくるために、ルネサンス教育を行ってきました。私もその教育に関心をもって、その後の日本の建築家によるルネサンス建築デザインを追っかけてみました。そこで分かったことは、日本はルネッサンス建築教育により、非常に短期に欧米のルネサンス建築に匹敵する建築物を設計する能力を身に着けるようになっていました。それを象徴するものを、現在中国の山東省大連の中山広場を取り囲む近代建築群から見ることができます。それは中国共産党政府のもとでも、中国の国威を示す「中国の国家資産」として中国経済の屋台骨である金融機関の建築物として重要に保護し使われています。このすべての建築物は、1904年日露戦争によって日本が取り戻した日清戦争で奪った山東半島の領地を日本ら奪還して、中国大陸の日本の進出拠点として開発したところです。

建築教育の大転換
このルネサンス建築は、すべて日本人建築科の設計により建築されたので、これを見ると明治政府のルネサンス建築教育の集中力には驚かされます。しかし、欧米の本家を上回るほどの建築設計技術が1923年の関東大震災を契機に凋落に一途をたどりました。現在、日本の大学や高等教育の建築学科でルネサンス建築教育は、建築歴史教育として行われても、建築設計できる能力を教える教師さえいないという状況で、設計教育は行われていません。そのようにになってしまった理由はどこにあったのでしょうか。直接的には東京大学建築科主任教授であった佐野利器教授が、「建築教育は耐震安全構造建築教育として行うべきで、意匠(デザイン)教育といった人命や財産に直接関係しないことを教育することはやめるべきだ」という議論を造家学会(現在の日本建築学会)にぶっつけ、建築教育を構造耐力を扱う欧米のシビルエンジニアリング(建設)教育に変えてしまったからです。

シビルエンジニアリングとしての建築構造学
日本ではすでに明治の初め首都官公庁計画をジョサイア・コンドルに依頼し、その計画が地味な計画であったので、岩倉具視欧米調査団に調査結果に従って、日本の近代国家のモデルは、「ビスマルクに率いられたプロシャ(その後のドイツ)に倣うべき」という結論が出されました。それをうけて、日本の高等教育機関では第2外国語でドイツ語を教える一方、ビスマルクの建築顧問であるベックマンとエンデを招聘して首都中心の官公庁計画を立案させ、その計画を実現するシビルエンジニアリングを教育する教育機関として、東京大学に土木工学科を設立した。「土木工学」という名称は、「シビルエンジニアリング」の意味を考えて中国の言葉から「土木」となずけられました。しかし、関東大震災後、建築学科の主任佐野利器教授が、東京大学物理学科の主任矜持長岡半太郎から物理の力学を学んで創設した建築構造学は、欧米の学問体系ではシビルエンジニアリングです。

シーア派とスンニ派の対立に似た土木と建築
日本では東京大学の土木と建築という2つのシビルエンジニアリングが、あたかもイスラム教のシーア派とスンニ派との対立のように、その後もシビルエンジニアリングの対立として構造設計技術、構造計算技術、鉄骨や鉄筋コンクリートといった構造材料技術に「橋のない河」の分裂を現代にまで引きずっています。建築は人文科学である劇教育を高額教育として、歴史文化を研究、教育するべき役割を投げ捨てることができた理由は、明治時代の西欧からの技術の受け入れを「和魂洋才」という枠組みの中で受け入れてきたことにあります。ジョサイア・コンドルの建築教育はヒューマニテイ(人文科学」としてのデザイン教育でしたたが、それを受け入れた辰野金吾以下の日本の建築教育関係者は、建築の形態や意図して欧米のルネサンスデザインの建築設計ができることが目的となり、合理主義を取り入れた近代国家のバックボーンとなる精神としてルネサンスの精神を学ぶことは在りませんでした。

今回の建築デザイン研修の目的
今回京都でHICPMとグローバル研修企画で行う国内研修は、明治時代に日本が見落としていたルネサンス建築とルネサンス建築の精神とはいかなるものかを研修してもらうことにある。現在日本の住宅産業はその住宅デザインを単なる形や装飾として扱い、デザインこそ住宅を購入しようとしている人の住宅購入の決定的条件であることを、まったく失念していることを修正しなければと考えているからです。住宅の効用は、住宅の品質の構成要素であるデザイン、機能、性能の3要素です。そのうちの機能と性能とはその時代の文明的要求に対応するもので、住宅全体としてほぼ同じです。その証明は住宅展示場に行けば分かるとおりである。顧客がどの住宅にするかはデザインを置いてないからです。

住宅購入者の購入の意思決定
住宅を購入する意思決定は、その住宅が「好きか、嫌いか」、言い換えれば、住宅購入者にとって、「わが家」と感じることのできるアイデンティティを具備している住宅か、どうかということである。住宅を購入する人には、それぞれ先祖からの文化や個人として生活の中で経験し、見聞した歴史文化によって形成された個性と照らし合わせて、親近感を感じ、帰属意識を感じるものを選ぶことになります。
しかし、日本ではそのようなデザイン環境もデザイン研修も行われていないため、流行歌を歌うように、その時代風潮を表現したデザイン(シンプルモダンとかライトにあやかったプレーリー、コンテンポラリー)の住宅が大量宣伝と『差別化』宣伝によって販売されてきました。その結果、建築後5年以上経過した住宅や住宅地は、流行の去ったうらぶれた色褪せた住宅であり、住宅地を形成しています。

住宅は償却資産ではなく生活の老朽するこののない「場」
日本の中古住宅が顧客にとって魅力がない最大の理由は、現在日本で供給されている住宅は政府が「償却資産」で経年劣化する政府の扱いと符合するものです。欧米の住宅は「物」としての住宅ではなく、生活する人の「場」としての住宅で、住宅はそこに住む人にとっていつも最上の空間であることを期待するとともに、そのような維持管理を行っています。当然第3者から見ても、人びとが大切に住んでいる住宅は、魅力的な需要の対象となるものであるよう、住宅の居住者は第3者から見てうらやましい生活を送っている「場」として維持管理することになります。欧米の住宅に対する考え方は、住んでいる人にとっていつも豊かな生活を行えるように適正な維持管理と必要な修繕を行う「場」なのです。衰退していく住宅に人々が住みたいと思うことはありません。

住宅の資産価値増殖に不可欠な住宅地経営
社会的に人々が『住みたい』と願う住宅を取得しようと思ったら、その土地を購入し、その上にある住宅と同じものを建設する以外に方法はありません。そうすれば、欧米における住宅不動産評価の基本的な考え方(不動産鑑定評価方法)である。土地も建材も労賃も物価とともに上昇するから、住宅の取引価格は、その住宅が適正に維持管理され社会的に需要の対象であり続ければ、その価値は物価上昇率以上に上昇することになります。その住宅は、住んでいる人が構成する環境と一体不可分なものであるから、住宅地に関しては「3種の神器」(ハードなルールとソフトなルールとHOAという自治統治組織)によって健全に管理することが必要になります。

忘れてはならない住宅購入者の支払い能力に見合った住宅の供給
今回の国内研修では、住宅及び住宅地のデザインという物を、住宅を購入する人たちの意思決定や、住宅を保有する人の資産形成との関係でいかに考えるべきかというお話をすることになる。そのデザインの問題と同等以上に重要な問題は住宅価格の問題である。日本に2×4工法が導入されて40年以上経過している。しかし、日本の2×4工法は米国太カナダの2×4工法とは基本的に別な構造計画でつくられているため、費用対効果の悪い住宅になっている。そこで今回の研修会では日本の2×4工法が現在話題になっている日本のCLTや木造耐火建築同様、欧米とは全く別な不合理な建築工法となっていることを具体的に明らかにし、参加者の司式を喚起したいと考えている。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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