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HICPMメールマガジン第683号(2016.10.11)

掲載日2016 年 10 月 11 日

メールマガジン第683号(2016.10.11)
みなさんこんにちは

グローバル研修企画・HICPM共催国内研修会
先週10月8日グローバル研修企画とHICPM共催に国内研修会(京都におけるレンガ建築と2×4住宅視察研修会)が開催されました。HICPMの会員LIV(波多野賢社長)の全面的なご協力で、2×4工法木造5階建て耐火建築物の本社屋の見学と併せて、本社会議室を使った研修会を行いました。また、本社屋の建設前に完成されていた本社屋と「目と鼻の先の距離」にある2×4工法レンガ外壁の戸建て住宅団地(8戸)と京都駅前にある京都市経営の「京都の町屋住宅展示場」(LIV社のモデルホームを含む3軒)を見学しました。改めて、LIV社の積極的な協力に感謝するとともに、LIVの取り組みと社長以下職員の前向きの姿勢を見ることができ、良い研修になりました。
第2日目は同志社大学のレンガ建築、大谷大学の擬洋風建築、ボーリスの設計したスパニッシュコロニアル住宅の見学と併せてHICPM副理事長竹山さんの10年ほど前に設計した面白いは設計をした個人住宅を見学しました。明治の初めに日本全体が国を挙げて取り組んだ欧米に尊敬される国づくりとして取り組んだ近代化政策の中で、新島襄の同志社大学とそれを支援して米国から寄付を寄せてくれたミッション支援活動の結果建てられた同志社大学は、NHKTV連載ドラマでも高い視聴者があったものですが、実際の現物に足を踏み入れると、明治維新の意気込みが伝わってきます。今回のデザイン研修の一つの目的が果たせたと思っています。大谷大学は、仏教建築にルネサンスのデザインを取り入れたもので、それは擬洋風と呼ばれる「正規の洋風建築設計に寄らず、優秀な建設職人が自ら感動した洋風建築デザインを、自らの感動をその高い技能で実現したもの」で、それを見る人には建設に携わった職人の感動が伝わってきます。明治村にある近代建築の中には擬洋風の建築がたくさんあります。

今回の研修目的
今回の国内研修は、当初、共済事業者の間で、以下の3つの目標を掲げて取り組まれました。
第1.    住宅購入者を不幸にしない「住居費支払い能力に見合った合理的な住宅」の実現
第2.    「住宅により資産形成を実現できる」何時までも魅力のあるレンガデザイン住宅
第3.    住宅産業関係者に必要な建築設計(様式建築デザイン)と、設計能力向上の仕方

第1の研修
私が現在多摩ニュータウンで四半世紀生活をしていて感じることは「夜逃げ心理」に苦しめられている日本の住宅団地の居住者の苦しみの原因は、「不等価交換販売」と「不等価交換金融」によるものです。住宅購入時に予定していた所得の伸びが全く期待できない上、住宅のローン返済と固定資産税負担がバランスしなくなり、住宅を手放さざるを得なくなったとき、その価格は半額以下であるにも拘らず、ローン残債は70%残り、清算しても20%のローン残債が残っています。ローン返済できず、それを自己責任と言われ、居住し続けられないことを恥ずかしく感じ、「夜逃げ心理」でマンションから退去しています。その現象が多摩ニュータウンでは増大しています。そのような目で郊外住宅を見ると、そこでも同じ現象が起きており、日本全体が「住宅を所有することで生活が苦しくなり、住宅を手放さざるを得なくなっている」ことがはっきりしてきました。
このようなことが起きないようにするためには、米国で2008年リーマンショックが発生して住宅ローン破産が発生したときFHA(連邦住宅庁)が「新しく住宅を取得するための100のQ&A](HICPMで翻訳・解説を刊行¥1,500)という冊子を全米に配布して、支払い能力に見合ったローンを組むことを協力し進め、金融機関もそれに足並みを揃えて取り組みました。その結果、2015年には破産の整理も終わり、米国の住宅バブルの傷跡は癒え、米国では住宅産業が再び米国経済の牽引者となり、国民は住宅を取得することで資産形成のできる社会に戻ってきました。今回の研修では、日本と北米の住宅価格比較を参加者に聞いてもらおうと思って、カナダの領事館の方に2×4工法住宅の日米価格比較の現状説明をお願いする計画でしたが、担当者が本国に出張していたため、その計画は実現できませんでした。今回は2×4工法で耐火建築物のLIV本社屋の見学とレンガ外壁の2×4工法戸建て住宅を見学することで当初の計画にお代わるものを見学してもらいました。
私が2×4工法を日本に導入する仕事をしていた約半世紀前、日米の住宅価格は日本が北米の2倍以上でした。2000年にHICPMが「サステイナブルハウス」に取り組んだ時にも、日米住宅価格は約2倍の開きがありました。それを埋めるための輸入住宅の取り組みも、日本では米国のCMを学んで、無理、無駄、斑を省く努力をせず、高額でも利益を上げる方法として輸入住宅が取り組まれ、日本の住宅価格は北米の2倍以上である状態は改善されていません。政府が不等価交換販売と不等価交換金融を正当な取引と認めているため、その状況が改善されないでいます。

第2の研修
住宅の価値は、住宅市場での需要と供給との関係で決められる住宅の市場価格です。日本の新築住宅価格は、広告・宣伝、営業・販売に掛けた費用を建設業法第20条で定めている直接工事費であると欺罔し、サービス経費を販売価格で回収し、憲法第14条及び建設業法第20条に違反するものです。巨額の広告宣伝費と営業販売経費というサービス経費を掛けて販売しつくす販売価格のことを経済学的には「独占価格」と言います。「独占価格」は住宅建設業者が売り切るためのサービス経費を回収する価格ですから、その価格で住宅を売り切りますが、住宅を購入した人がその住宅を販売しようとしても、その販売経費は自分が購入した住宅の販売経費として使ってしまった住宅ですから、既存住宅にはそのサービス経費を使って販売することはできず、その分、安くしか販売できません。ハウスメーカーの場合、直接工事費は販売価格の40%で、サービス経費を含む粗利は60%ですから、中古住宅の販売価格は購入時価格の半額が良い所です。
ハウスメーカーはその住宅を「差別化」と言って他の住宅と違うことをその住宅の優秀性(価値があること)と騙して住宅を販売してきました。その結果、デザインはその「差別化」の手段として使われ、人々を引き付ける流行のデザインが「差別化」のデザインとして使われてきました。流行のデザイン(差別化のデザイン)は短い期間で見飽きられ、誰も振り返らなくなります、ハウスメーカーが販売してきた住宅は例外なく「差別化」のデザインで、短期間に色あせてしまいます。
今回は明治時代に日本が取り組んだ欧米のルネサンス様式の建築デザインを見てもらうことにしました。多分、そのデザインが現在においても存在感を持っていることに参加者はお気づきになられたと思います。デザインは人々の担ってきた歴史文化を精神、形、装飾、詳細として具体化したもので、それぞれ特色を持っています。正しく歴史文化の特色を担ったデザインは何時までも色あせず、目先だけ真似た「なんちゃってデザイン」は短期間で馬脚を現します。それを見てもらうことにしました。

第3の研修
日本の大学や高等建築専門機関で欧米の建築学科で行われている建築設計教育は基本的に行われていません。その理由は日本の明治以来の建築教育の間違いにあります。明治維新は欧米列強に侮られない国家づくりをするために、当時欧米の建築及び都市建設のデザインの中心に置かれていたルネサンスデザインを日本の都市や主要建築に適用するための設計者を育成するために、ジョサイア・コンドルを英国から招聘し、建築設計教育を始めました。辰野金吾の人生にその全てが表されている通り、徹底的に正確に欧米のルネサンス建築教育を行い、その成果は現在中国大連市の中山広場を取り巻く日本人建築家による近代建築群に見ることができます。日誌戦争、日露戦争を経て日本国に取り入れた大陸の日本国領土の中心都市(首都)として大連が建設されたのです。「和魂洋才」という日本の明治維新の政策どおり、ルネサンス建築様式のディテールまで「洋の技術」として正確に学び実施する力を付けましたが、ルネサンスの魂は学ぶ気持ちはありませんでした。
しかし、関東大震災で洋風建築も多数倒壊し、東京大学建築学科主任佐野利器教授は、それまでの洋風洋式建築は国民の財産も人命を守ることはできなかったと結論付け、自ら東京大学理学部物理学科長岡半太郎教授から物理学の手ほどきを受け、それから「建築構造力学」の体系をまとめます。そして、造家学会(日本建築学会の前身)に対し、建築教育は「意匠教育」であるべきか、それとも「構造安全教育」であるべきかの「2者択一」の選択を迫り、ついにジョサイアコンドルの指導を受けた辰野金吾以来の行なってきたデザイン教育を放棄させ、構造耐力中心の工学教育に代えてしまいました。その際、建築歴史教育は形だけ残しましたが、建築歴史教育は設計教育ではなく、誰もそれを尊重しなくなっていきました。その結果、建築デザイン教育は建築学科の教育からは所滅し、デザインの担っている時代精神といった欧米の建築教育で重視されていたものは、当初から「和魂洋才」と言って軽視された上。関東大震災後は無視されてしまいました。
その結果、洋式建築として教育されて北形態、装飾、建築詳細はもとより、建築設計そのものがどういうために行われるかを教育できる教師(教授や研究者)がなくなってしまいました。建築設計を欧米に倣った形に作り上げるためには、人文科学としての建築教育に立ち返ることが必要で、日本の工学としての建築教育でそれを望むことはできません。それは建築のデザインを重要と考える人々の努力によってしか育てることはできません。日本の有名建築家は商業デザイン同様流行を追っかけるデザインしかできず、それは使い捨てのデザインでしかありません。今回の研修にはHICPM副理事長竹山さんもご参加くださり、京都大学をはじめ日本の大学の建築設計教育に貧困さについて解説がありました。

理論と実践
国民の世帯年収の3倍以下の販売価格で、資産価値が経年するとともに向上することのできる住宅の供給は、日本以外の先進工業国では当然のこととして行っています。その産業活動を支えている商業取引と住宅金融において等価交換販売と等価交換金融を行うことを疎かにして、不正利益を上げるハウスメーカーや金融機関中心の住宅政策で国民が豊かになることはできません。住宅産業界では当然のように行われている「上代価格と下代価格」という詐欺商売は、住宅建材や住宅施次の販売において諸飛車が100万円支払っているものをハウスメーカーは20万円で仕入れ、その他の住宅業者は30万円から80万円の間で少しでも安く購入して、消費者には100万円で販売しています。工務店やハウスメーカ-は住宅製造業者ですから、そこで流通経費を奪うことには、正当性がありません。上代と下代という2重価格の操作は工事費にお欺罔であり、刑法上及び民法上にお詐欺に当たります。法治国で法律に違反したことを政府が住宅政策として推進している国は、「国家ぐるみの詐欺国家」と言われても仕方ありません。建材や住宅設備メーカーが下代で建設業者に販売し、ハウスメーカーが上代で見積もる2重価格を政府は容認しています。欧米並みの住宅産業体質を作らない限り国民は浮かばれません。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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