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HICPMメールマガジン第700号(2016.12.12)

掲載日2016 年 12 月 12 日

HICPMメールマガジン第700号(2016.12.12)
みなさんこんにちは

ネコパブリッシング刊「輸入住宅」は第15号となりました。HICPMの今年最後のセミナーでご参加の皆様に配布しました。(残念ながら手持ちの本はなくなってしまいました。)編集者が大変意欲的な方で、創刊当時から私のところにご相談にかられ、私も協力してきました。この雑誌では、輸入住宅を一貫してデザインに絞って扱ってこられたわけですが、私はそのデザインを、様式(スタイル)という観点で支援してきました。私は住宅・建築のデザインを欧米の住宅建築教育で実施してきたとおり、人びとの歴史・文化・生活という観点でデザインを受け止めるオーソドックスな見方を重視してきました。

輸入住宅

JETROでは輸入住宅を建材輸入という観点で取り組んできましたし、かつて住宅金融公庫は為替差益という物流利益という観点で取り組んできました。日本の住宅産業界は建設省と通産省の両省が取り組んだ輸入住宅はいずれも「物」の輸入でした。しかし国民が求めた輸入住宅は、欧米のデザインの魅力でしたが、欧米の住宅のように建設費自体が安くて優れた品質を「輸入住宅」に期待する人もありましたし、資産価値が増殖する住宅を希望する人もあります。これらの「輸入住宅」に対する取り組みは、関係省庁はその業務の観点であり、住宅産業界は自分の企業の営業という観点で取り組んできました。

国民の期待する輸入住宅
消費者としての国民は、『輸入住宅』という言葉に何を期待してきたのかという疑問を長く持ち続けてきました。この書籍が15号も継続できた理由は、やはり消費者の求めている「輸入住宅」に対し謙虚に取り組んできたからだと思います。いい情報をできるだけ安い価格で提供するという制約の中で、日本の工務店が実際に「輸入住宅」として取り組んできた事例を通して「輸入住宅」の情報を読者に提供するという難しい雑誌編集ですから、下手をすると業者の宣伝雑誌になってしまいます。しかし、実際に供給してきた「輸入住宅」には企業が消費者の求めている「輸入住宅」に迫ろうとする意欲があるということで、掲載された事例情報は、「輸入住宅」を知ろうとする人に一定の有効な情報を提供してきたと思います。

様式建築デザイン

私は創刊から、欧米の建築設計教育では様式建築を、その担っているデザインの歴史・文化・生活に根差した思想、との関係で紹介することで協力してきました。私のこの雑誌で果たしてきた役割は、私が翻訳出版してきたジョン・ミルンズ・ベーカー著「アメリカンハウススタイル」(井上書院)に記載していることをできるだけ忠実に「欧米のデザイン教育」という観点で欧米の建築様式(スタイル)紹介してきたものです。日本には明治維新に欧米先進国と江戸幕府が締結した「不平等条約」の改正を一刻も早く実施するため、欧米に追い付き追い越す政策をとってきました。


岩倉調査団

岩倉具視の欧米調査団報告にも現れているとおり、近代欧米先進国はルネサンス思想の元産業革命を進め、そこで得られた富の多くを住宅・建築・まちづくりに投下してきたことに驚き、日本の近代化を欧米近代先進国に後れを取らないように取り組むべきことを取り上げています。日本では首都東京はもとより欧米人の日本への玄関として開校した函館、横浜、長崎には西欧近代国家で積極的に建設されたルネサンス様式の赤レンガ建築が盛んに取り組まれました。

キリスト教禁制
西欧の植民地政策はミッション(宣教師)が戦況事業を進め、それを追って貿易と最後には順次支配という順に植民地支配政策を進めていることを知って、幕府の時代はもとより、明治維新政府も宗教(キリスト教に対しては当初より神経質でした。明治政府が北海道開拓の最前線に食糧増産を進める農学校を建設し、そこに米国から最初は米国政府の農務長官ケプロンを招聘したが、当時日本では時代に変革期でモラルも乱れていたことからケプロンの後任には、農学校の学生に倫理教育を徹底することを条件に、政府の要求を満足させる教育者として南北戦争の軍人を招聘した。ウイリアムクラークでした。

クラークの日本での扱い
彼は熱心なプロテスタントで、キリスト教の倫理観で日本政府の期待する高い倫理観を持った学生を教育する自信をもって着任し、日本政府行委した規則で縛る方法をすべて廃棄して「Be Gentleman」という言葉を教え、キリスト教精神を学生にたたき込みましだ。明治政府はキリスト教教育をするなとクラークに命じたましが、クラークは「契約通り倫理観の高い学生を育てる」ためには、キリスト教教育は不可欠であるといい、結局クラークは10カ月で日本を去ることになりました。日本を去るに合ったって「Be Ambitious]といった話が現在にまで伝えられている。

和魂洋才教育
日本は大和魂を持っている民族で、日本の近代化は大和魂によってつくらなければならないと考えましたが、技術は欧米列強が進んでいるので、その力(洋才)は学ばなければいけないと考えました。その結果、住宅・建築・都市という欧米では歴史・文化・生活という宗教・思想を含んだ人文科学(ヒューマニティ-ズ)に関して、宗教と思想を取り除いて、「物づくり」の学問(シビルエンジニアリング)として教育しました。日本の大学での建築デザイン教育は、欧米では人文科学として宗教や思想を表現するものとして、形(フォルム)、装飾(オーナメント)装飾(ディテール)の教育をしました。そして、日本の建築教育としてはデザインの種類(バリエーション)として形、装飾、詳細を教育しました。

意匠・構造論争
欧米の建築様式を形のバリエーションの技術として学んだ日本人は、現在、大連の中山広場を囲むルネサンス建築デザインの設計を、欧米人に匹敵する高い技術で実現することができるまでになりましたが、デザインを支える歴史文化思想を学ぶことがありませんでした。そのため、そのデザインに対する思想的なこだわりはありませんでした。関東大震災で多くの建築物が倒壊し、ルネサンス湯式で建設した近代建築も多数倒壊したことを見て、東京大学建築学科主任教授佐野利器は、「意匠が重要か、構造安全が重要か」という踏み絵を作成し、造家学界の提起し、それまでの建築教育であったデザイン(意匠)教育を構造安全教育ン転換させてしまいました。

思想のない建築教育
その結果、日本の建築教育は工学教育になり、デザイン教育は放棄された。そのような意匠教育は、宗教・歴史・文化を背景にした人文科学教育とされなかったため、それまでの近代建築デザイン教育を受けた建築家たちも、そのデザインを守る上での「こだわり」や「志」を持っていませんでした。建築デザインは建築主の「わが家」に対する拘りのもてる者でなければ「わが家」として拘ることはできません。住宅購入者は「わが家」と拘りの持てる住宅を望んでいます。自分の宝と思えるデザインが「わが家」意匠です。欧米では、人びとが拘りの持てるデザインが、定式化してクラシック様式(スタイル:デザインの定石)として現代に伝わっています。

フォレストヒルズガーデンズ
「輸入住宅」という雑誌で、私は一貫して色あせないデザインは様式を踏まえたデザインであり、様式をしっかり学習して設計力を高めないと「資産形成のできるいつまでも色あせない住宅デザインをつくることはできません。と欧米の建築設計教育で行われていることをこの雑誌で繰り返してきました。この第15号では、エベネザーハワードが実現したガーデンシティに影響された米国初めての「ガーデンシティ」をラッセル・セージ財団が「フォレストヒルズガーデン」として開発してきました。この住宅地で生活していたC・A・ペリーは、「優れた資産価値の維持向上できる住宅地の計画基準」を近隣住区(ネイバーフッド・ユニット)としてまとめ、その成果は英国が1944年からニュータウン開発を始めた計画論に取り入れられました。
資産価値を増殖できる住宅地経営技術

フォレストヒルズガーデンを昨年訪問し、非常に感激したので、今年グローバル研修企画のNAHB・IBSの際の訪問住宅地に取り入れてもらいましたが、ツアー参加者の事前資料として、また、ツアーに参加できなかった人にもご紹介しようと「輸入住宅」第15号の関連記事を掲載してもらいました。ハワードの「ガーデンシテイ」も「フォレストヒルズガーデンズ」も基本的に、住宅を所有した人たちの住宅投資に対する資産形成を実現する経営事例と考えると、現在みることのできる住宅が大きな資産形成(キャピタルゲイン)した成果とみることができます。
{NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世}



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