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HICPMメールマガジン第705号(2017.01.23)

掲載日2017 年 1 月 23 日

HICPMメールマガジン第705号(2017,01,23)
みなさんこんにちは
連日米国の新大統領、トランプ大統領のニュースがいっぱいです。

私達HICPMは1月6日から15日までオランド{フロリダ州}で開催された全米ホームビルダー協会(NAHB)のIBS(インターナショナルビルダーズショー)に参加し、私は2日間会場に出掛けましたが、ショーの中にドナルド・トランプにおかげを見ることはできませんでした。米国でもホテルのTVやメディアでは連日トランプ次期大統領のニュースが一杯であったことは日本のニュースで紹介されているとおりです。私の関心は住宅産業政策とトランプ次期大統領の政策の関係でしたが、明確な政策変更を示唆するものは、会場には見つけられませんでした。

安倍内閣との共通性
「アメリカNO.1」を訴えて、共和党大統領でありながら、現存の力を拡大し米国の経済力と政府の財政力を高め、大きな政府をつくる政策には、安倍内閣の政策を見る思いです。これは世界全体が経済不況に向かう中で競って国力を高める政策で、第2次世界大戦前のドイツや日本の姿が2重写しになります。トランプ大統領が進める経済移民制限や米国内企業の国外転出制限は、米国内の雇用機会の拡大政策で、労働者の利益を拡大する政策と説明され、衰退した産業を抱えた米国内の経済を守る貧困階層むけ政策と説明し、それが米国大統領勝利のトランプ支持票田になったと解説されています。
就任あいさつでは、「米国第一主義」によって米国経済が強化され、民主党政権時代に経済不況の悲哀を味あわされていた衰退産業に働く労働者に経済的成長の幻想を与えたのです。安倍内閣の政策も、基本的に同じで、多くの国民に働く機会を与えると言いながら、その辿り着くところは、所得税総額を拡大し税収総額の増大を図り、それを法人税減税により企業利益の拡大し、自らに対する政治献金拡大させる政策です。新聞にも大きく報道されたとおり、軍需産業からの安倍内閣への政治献金が急拡大している点も共通しています。軍需産業は基本的に国民の税金で賄われている産業ですから、安倍内閣は国民の税金を、軍需産業を経由する政治献金として自らの懐に合法的にキックバックしています。

NAHB・IBSから見えた米国の住宅産業
HICPMが1995年に創設され、今年2017年で22年目を迎えますが、HICPMでは、昨年を除く毎年、米国の住宅産業の状態を「他山の石」として研究の対象にしてきました。2007年の住宅バブル崩壊までは、米国の住宅産業は好調な成長を遂げ、日本国内も「アメリカの住宅産業に学び」、急成長のおこぼれやヒントの「摘み食い」ができないかと、日本の住宅産業は米国に出掛け、当時のNAHB・IBSは、どの会場にも日本人住宅産業関係者で満ちていました。2008年のリーマンショックで米国経済が後退し、NAHB・IBSの中心的事業の一つであるTNAH(ザ・ニュー・アメリカン・ホーム)の実物建設はできず、CG展示で終わったこともありました。その時点から日本の住宅産業関係者は米国に出掛けること急減してしまいました。

米国に起こった住宅バブルの崩壊
しかし、その後の米国の住宅政策は、FHAが『新しく住宅を購入される人のための100のQ&A』(HICPMで翻訳刊行)で具体的に対応策を示したことを国民に訴えて、「具体的な住宅購入者の購買能力は、住宅購入者の返済能力を考えて住宅購入をしなければいけない」と国民の住宅購買能力の算定方法まで具体的に示しました。米国における住宅破産の最大の原因は、既存住宅価格が高騰し、その純資産(エクイテイ:住宅の市場価格からローン残高を差し引いた額)を担保にローンを組んで新規の住宅を購入し、その住宅の純資産で更なる住宅を購入することが行われました。私も当時米国で「お金を持たないで次々に住宅を購入する方法を見て驚きましたが、理論的にはエクイテイの急拡大で住宅を購入することは経済的に可能でした。しかし、その購入した住宅のローンの支払いができず、住宅を手放そうとしてもそれもできず、破産が連鎖していきました。

住宅バブルからの住宅産業復興
今年で米国の住宅バブル崩壊から10年目になります。バブルが崩壊した傷跡は現在の住宅産業界から見付けることは難しいと思います。その間、倒産した企業や個人破産をした人たちも沢山いたには違いありません。非常に厳しい言い方をすると住宅バブルの崩壊で大きな損失を抱えた企業も個人も健全な企業経営をしていた者には影響をせず、欲に目がくらんだ放漫経営を行い、個人的な投機利益を求めた人には大きな損が襲い掛かったのです。バブル崩壊が起こったとき米国の住宅専門家が、私に以下のような説明をしてくれました。米国でこのバブルの急拡大と急崩壊の過程に関係しなかった大多数の国民は、その住宅にもその生活にも殆ど影響をうけなかった。住宅バブルは、リーマンブラザーズのような大銀行を巻き込んだため世界恐慌規模の影響を与えたが、一般国民でこの間住宅に手を出さなかった人には、隣の敷地の突風みたいなものだった。破産した企業や個人の財産は、市場で安い資産として処分され、それを購入した人の成長の「こやし」になり、その結果、住宅バブルの崩壊からの復興が迅速に実現できたのです。
クリントン政権からオバマ政権はバブル崩壊後の損失を最小限にする方法として、米国の住宅産業が潜在的に持っている健全な産業体質を生かすことでその復興を図った。その健全な体質とは、次の2つの方法であった。このいずれの方法も等価交換販売と健全な経済成長を前提にしていた。
(1)    住宅を健全に修繕と維持管理をして、住宅を「常に売り手市場」にすることが出来る住宅地経営を行えば、住宅の市場価格は物価上昇率以上に上昇するため、それを見込んだ政策であった。
(2)    住宅をリモデリングすることで、これまでの住宅所有階層より遙かに高額所得証が居住するにふさわしい住宅にリモデリングすることで、住宅自体の価値(市場取引価格)を高めた。

日本との比較
日本のバブル経済の崩壊はその約10年前の1991年です。そのバブル経済崩壊の傷跡は「不毛の時代」を経過し、政府は「聖域なき構造改革」と言う憲法違反を犯した立法、行政、司法を駆使し「都市再生事業」を行った。米国であれば倒産させられた企業を救済するため空中権を無償供与した。その付けが国民の都市環境や資産価値の急落となり、住宅産業が不等価交換販売によって被った損失と、金融機関が行った不等価交換金融による巨額な負債を背負わされた国民がその損失と負債に苦しめている。高齢化が進行する中で「下級老人」となり、住宅ローン破産、医療保険の増額、年金額の縮小、雇用機会の喪失に苦しんでいる。政府と住宅産業とが、「返済可能」と説明したとおりの住宅金融政策に従い住宅を購入し25年経過し、所得は計画とは狂いローン返済が出来ず住宅を手放さざるを得なくなった。その中古住宅価格は購入時の半額以下にしかならないため、住宅を手放してもローンだけが購入時価格の20%余残る。政府は日本国民の全てが住宅を購入することで50年以内に例外なく、住宅購入額の半額を失うと公言しいている。その理由を問えば、「住宅の価値は減価償却により、低下して当然である」という。「住宅の不動産価値を減価償却する」という科学的な根拠はない。しかし、日本では政府や金融業界、住宅産業界、住宅不動産業界が、御用学者が指導力を握る学会の間違った理論武装を受けて、その間違った理論を正当な理論のように扱い、政府の政策に取り入れ、大学で教育している。

現在国民が直面している状態。
トランプ政権の政策はまだ具体的な政策は明らかにされていないが、その国民に愛国心を高揚する政策は、国際協調と逆行する国家対立を煽る国家主義の政策で、戦前のドイツや日本の政策と同じ「富国強兵」の方向にある。安倍内閣の政策も、トランプの政策と同じである。安保法制に見る通り、「海外の安い労働力を企業が活用できるために、海外に流出した資本を国家が守る方法は、日本の軍事力しかない」と政府は考えている。国富強兵を高めることは財政力の強化政策であり、そのためには税収拡大を行い、軍需産業(そこには電力産業や公共事業を支える重厚長大産業も含まれる)などを梃子に、巨大企業を拡大することで国家の「富国強兵」策を展開するものである。
日本では福祉財源を削減するため、国家と国民との間に家族を置き、国民に対し国家が憲法で約束した国家保障を国家が回避し、急増する財政支出と言われる福祉・介護は、戦後一貫して行ってきた「第一義的には家族で行う政策」をさらに強化しようとしている。言い換えると、国民は国家から保障を受けるためには、まず家族で助け合いを行い、家族が経済破綻をしたときに国家が救済の手を差し伸べると説明されるが、その救済は憲法が保障するような甘いものではない。家族全体が自殺を選択せざるを得ないような極限状態に近い水準でしかない。最も分かり易い例は、老齢化して年金生活しかできない人に、年金でどのような生活ができるか。高齢化して介護が必要になることは逆らえない現象である。養護老人ホームに現在の年金では負担はできない。働き手の死亡や疾病で家族心中が増大している。

HICPMの今年の取り組み
生活が苦しく生活保護を受けなければならない状況になったとき、日本ではその保有している住宅が生活保護を受ける条件を妨害している。その住宅を売却したくても購入者はなく、その土地も需要はなく、取引の対象にはならない。住宅が国民を貧困かさせるどころか、一旦生活につまずき生活保護を受けたくても、住宅を保有することで生活保護は受けられず、住宅は取壊し費用として300万円の「負の資産」となり、それが住宅所有者の生存を危うくする。政府はハウスメーカーや多くの住宅産業のため、依然、住宅は供給過剰であるが新築住宅政策を推進している。それに加えて既存住宅を買い叩き、内外装をリフォームすれば新築に近い価格で販売できる「中古住宅流通政策」を推進している。米国で行われている住宅バブル崩壊後のリモデリングの政策とは全く似て非なるものである。
日米間の情報交流や政策交流は、こと住宅産業に関する限り全く行われておらず、日米の住宅政策は全く逆の方向に向かっている。その結果、米国では住宅を保有することで国民の経済基盤を守っているのに対し、日本の国民は住宅政策によって、住宅を保有することで爽籟生活を一層苦しくしている。
HICPMは過去22年の活動を基に、米国の住宅産業の経験を尊重し「国民が住宅を取得することで幸せになり、工務店が国民の立場に立つことで健全な成長をする産業の実現」に貢献していきたい。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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