メールマガジン

HICPMめーるまがじんだい706ごう(2017.01.30)

掲載日2017 年 1 月 30 日

HICPMメールマガジン第706号(2017.01.30)
みなさん今日は

工務店の基本とすべき業務上のコンセプト
私は日本の住宅産業が、「住宅購入をしてきた国民に本当に利益を与えてきたのか」という疑問をここ数年考えてきました。しかし、今年のNAHB・IBSに参加し、日本からの住宅産業関係者を一人も見かけませんでしたので、日本の住宅産業者にとって米国の住宅産業から学ぶものはないと考えているのかという、大きなショックを受けました。

その疑問は、1995年に創設したとき、1980年の「プラザ合意」を受けた日本の中曽根政権のとき取り組まれた「輸入住宅政策」において、「住宅購入者に円高差益を還元する」という直接的な政策に呼応してHICPMが創設され、以下の活動に取り組んできましたが、その活動自体が現在の住宅政策では否定されているからです。

(1)    工務店経営を米国のホームビルダーのような経営体質にすることで、工務店に生産性の高い経営を実現させるようにする。そのために老理的な建設業経営管理技術(CM:コンストラクションマネジメント)を工務店の経営技術にするため、米国のCM技術を国内に技術移転する。
(2)    国民が住宅を取得して、個人の資産形成ができるようにするために、国民がいつの時点においても需要に対象となるような住環境を形成し、維持管理をする「住宅地経営管理」を住民の自治組織において行うことが出来るように工務店がその技術を習得する。
今の日本に米国の住宅産業から学ぶものはないと考えているのか、という疑問です。

「住宅の価値」と新築住宅の価格と新中古住宅価格
HICPMは創設以来21年間、上記2つの目標の実現に向けて努力をしてきましたが、現実は日本の工務店にCM(コンストラクションマネジメント)という言葉を知らせることになったかもわかりませんが、私が認識する限り、HICPMが全米ホームビルダー協会から技術移転を受け、日本国内に紹介してきたCMは、日本国内の工務店の経営技術として全く定着していません。

そこでその理由を考えて見ました。その最も分かり易い理由は、CMを実践して住宅生産の中に介在するムリ、ムダ、ムラを排除することで得られる利益を追及するより、「差別化」政策により、実際に建設した住宅の価値よりも高い独占価格で販売したときの利益が、「楽をして、大きな利益が得られる」ためであることが分かりました。

政府が住宅産業経営として最も望ましいと考えているハウスメーカーの場合、その販売価格はその直接工事費の2.5倍になっています。住宅を販売するために広告・宣伝、営業・販売に巨額なサービス業経費を加算し、その要した費用を販売価格で回収という経営です。その販売価格のことを経済学では独「独占価格」と言います。この住宅を購入した消費者が、その住宅を手放さざるを得ないときの販売価格は、「住宅を購入した販売価格から、消費者に住宅を購入させるためにハウスメーカーが費やした「サービス経費」を控除した価格にならざるを得ません。「新中古」住宅価格は、新築住宅の売り出し価格の半額程度として処分されてきた理由です。

政府は中古住宅価格の値崩れを「住宅は減価償却資産であるから」と「経年劣化を理由」に減価を説明していますが、新築住宅で売れ残った住宅を売り切ろうとして「新中古住宅」として損切りをして売り出した価格を経年劣化を理由にすることでは、新築価格の半額になることを減価償却理論では説明できません。減価償却理論は企業の資本蓄積を支援し、企業減税を可能にする方法で減価償却を税法上。会計法上の便法として実施されたもので、住宅の資産価値が減価することではありません。

「差別化」の理論
日本では国土交通省が、住宅建設業は建設サービス業であると社会科学的に考えられない説明を行い、住宅の販売サービスに要した費用は、住宅自体の価値を高めているといい、そのサービスに要した費用を販売価格で回収することを正当化してきました。住宅自体の価値は、建設業法で「見積(第20条)」で定義し、「材料費と労務費用とその生産関係で要した諸経費」と定義しています。そこには、広告、宣伝、営業、販売のサービス経費を直接工事費に加算することを認めてはいません。しかし、それを正当化するために、「住宅建設業」を、「住宅建設サービス業」と産業自体を、「サービス業」と区分し直し、「差別化」の論理が取り入れたのです。

消費者は住宅が提供する「効用(デザイン、機能、性能)」と言う「使用価値(効用)」を入手するため、建設業者と折衝して、住宅購入者のニーズを満足する住宅を建設しようとします。ハウスメーカーをはじめ日本の建設業者は、「消費者のニーズに応えた(満足させた)住宅」を供給することに全力投球をします。そのことを住宅会社は「消費者の満足した価値のある住宅を供給した」と言います。その結果、住宅会社はその「住宅の価値」は、需給関係によって、「消費者と合意を形成で来た価値のある住宅」である。よって、住宅会社は消費者と合意した価値に対し、住宅会社がその要求する価格を請求して当然であると言います。消費者は住宅の価値に満足したから、消費者は住宅会社が設定した販売価格で購入しなければならない、と言ってきました。

消費者が満足したものは「住宅の品質」と言う「使用価値(効用)」です。「使用価値」は、「デザイン、機能、性能という住宅の効用」です。そのいずれの使用価値も金額で計測することはできません。使用価値を計測する尺度は、価格ではありません。使用価値が高くても、住宅の経済価値が高くなるわけではありません。しかし、政府は住宅金融公庫があった当時、高い性能表示された住宅には割増融資を行い、高性能住宅は高価格として良いという政策をしてきました。例えば、「高気密のアルミ窓」と「優れた障子や襖」を比較すれば、性能と建具の関係は比例しないことは明白で、使用した材料価格と職人の技能手間が建具の価値を決定するのです。

一方、住宅会社が販売価格として定めている価格は、住宅の経済価値です。住宅の経済価値は見積によって材料と労務費を積算して計算される見積額です。「差別化」とは、「住宅の使用価値」に対する満足を、「住宅の経済価値」に対する満足であると「欺罔する行為」を言います。「使用価値」と「経済価値」とはいずれの言葉にも、「価値」という言葉を修飾していますが、全く異質な価値です。建築主が希望する住宅の提供する効用(使用価値:デザイン、機能、性能)に満足しても、その経済価値を認めた訳ではないので、住宅の販売価格はハウスメーカーと建築主との間で、新たに経済価値に関しては当事者間で合意形成されなければなりません。そのときの需給関係で決まる価格は建設業法で定めた見積価格を基準に、当事者間の力関係で決められます。住宅の品質(使用価値)に満足したから、ハウスメーカーの販売価格を受け入れなければならない理由にはなりません。

しかし、国土交通省の住宅政策上の行政指導では、住宅購入者が自らの希望する使用価値に満足したならば、住宅会社の提示する住宅価格は適正な価値を表す価格と見做して購入することを勧めています。「使用価値に対する当事者間の満足」を、「経済的な売買の満足」とすり替える「欺罔」を許してきた政策が、「差別化」と言う住宅政策で、憲法第14条違反で民法及び刑法上の欺罔に該当する行為です。その結果「差別化」による住宅価格を受け入れた消費者は、ハウスメーカーが提示したサービス経費を販売価格で回収する独占価格と、建設業法上の見積価格の差額分の損失を被ることになります。

米国の住宅産業と日本の住宅産業
米国のホームビルダーは建設業者で、それを行政上縛っている法律が建設業法「慣習法」です。米国の建設業法で規定されている請負価格の規定は、1950年に占領軍の指導で日本の建設業法が作られたこともあって、見積もりに関する規定は基本的に同じです。米国では住宅の請負契約を行うときは、見積額を明らかにして、請負契約を締結することにしています。米国では、金融機関が建設金融(コンストラクションローン)をする場合には、建設先取特権(メカニックスリエン)を担保に建設金融が行われ、その際、建設工事見積書を添付することが条件になります。同様に消費者が金融機関からモーゲージローンという「住宅ローン」を受ける場合にも、ローン申請には工事見積書の添付をすることは融資条件で、その見積書は「材工分離」見積となります。

そのような工事費見積書を正確に作成するためには、設計図書が正確な見積のできるものでなければなりません。日本では工事請負を行うとき、「設計図書を添付すること」が定められていますが、「建設業法で規定する設計図書」とは、GHQの指導による立法当時の説明では、正確な見積が出来る設計図と仕様書であることが求められていました。しかし、日本では建築基準法における「確認申請書に添付する設計図書」と「建設業法上の工事請負所に添付する設計図書」をまぜこぜにしてしまい、「建築確認申請書に添付する設計図書で建設業法上の請負工事の設計図書」としてしまい、「工事費見積書」を米国で行われている「概算(平方フィート当たり単価)」でよいと曖昧にしてしまいました。確認申請に添付する設計図書は、建築基準法に適合していることを確認するものであって、工事費見積書のベースにしたり、工事施工を行うための設計圖書ではありません。

結果論として言えることは、確認申請書添付の法令適合確認のための設計図書を設計圖書(生産図面と仕様書)として明確にしなかったことで、工事費見積書が「材工一式」と言う概算見積もりを容認することになり、それが住宅の「不等価交換販売」と「不等価交換金融」を容認することになっているのです。米国の住宅産業は「等価交換販売」と「等価交換金融」を行うため、設計図書が合理的につられて、住宅産業界がムリ、ムダ、ムラを排除して合理的な住宅生産に向かおうとしています。それに対し、日本の住宅産業は設計も見積もりますが、米国でいえば「概算」(アバウト)で、正確さがなく、その曖昧な中に利益と経費を隠す結果、住宅購入者が住宅を購入することで損失を被っているのです。

CMを実現させない風土
概算による設計図書では工事内容が確定できず、現場納まりが工事請負段階では決まっていないため、結局現場ごとに行き当たりばったりの工事納まりが行われ、職人の現場工事の標準化、規格化、単純化、共通化が崩され、工事費は高くなって、消費者の負担が大きくなります。工事費が重層下請で痩せていけば、工事に手抜きが発生せざるを得なくなり、消費者の受け取る住宅に問題が残ります。私は米国の住宅産業が、消費者の利益を重視していることをもて、わが国の住宅産業は、もう一度、「米国の健全な住宅産業に学ばないといけない」という認識を改めて確認しています。みなさんはこのような私の認識をどのようにお感じになられるでしょうか。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷英世)



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