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HICPMメールマガジン第707号(2017.02.06)

掲載日2017 年 2 月 6 日

HICPMメールマガジン第707号(2017.02.06)
みなさんこんにちは

トランプの政治(2律背反)の選択
「移民を受け入れるか、排除するか」、「円高誘導をするか、円安誘導をするか」、「国際化を進めるか、国内産業を保護するか」と言う2律背反の政策選択を巡って米国の政治は方向を逆転し、その流れにより、利益を得られる人はその政治を支持し、逆の人は反対する。トランプ大統領の判断は、経済的利害関係を優先しているため、その政治判断は分かり易いが、その経済的利害に関しても、短期的利益と長期的利益は必ずしも同じではなく、むしろ逆になることの方が多い。その選択が政治では重視されてきた。そして、その選択が憲法で決めた枠を逸脱して行われたことで、大きな国家問題になった
私は、半世紀以上住宅・建築・都市問題に携わってきて、トランプの政策は戦後の日本の住宅政策に似ているように思われる。日本でも米国合衆国でも国家には利害の対立する人たちが住んでいて、その人たちは自分の利益を守るためにその主張を行い、行動を起こしている。そこで利害の対立が起こればお互いに争い、解決を見つけることになる。イソップ物語に登場する『ライオンの分け前』の弱肉強食の世の中同様、強者が分け前を独り占めする理屈を考え出し、力によりそれを暴力で従わせることになる。

連邦地方裁判所の判決:必然性のない大統領命令は憲法違反
住宅による資産形成を実現させる取り組みを英米の経験に学ぼうと私、私は20年以上この問題に取り組んできた。米国では独立戦争と南北戦争を経験し、多くの血を流してきた国で、民主国家の建設を目指し、国家の憲法をフランスの市民革命を参考にして建国した。その国の住宅地開発でも、20世紀半ばまでは、「資産形成を実現にする住宅地経営」といって、人種差別条項を住宅地経営が行われてきた。公民権運動が厳しく争われた結果、米国連邦政府は差別を許さない憲法に合わせた行政と司法判断を出してきた。しかし、トランプ政権は、「イスラム教国からの移民がテロをもたらす」という論理で人種、民族、宗教差別を行い、テロにより危険とビザの発給を関連付けた。トランプの論理は「風が吹け(イスラム国であれば)ば桶屋が儲かる(テロを起こす)」と同じ論理で、科学的な論理性はない。国民の憲法違反の訴えを受け、ワシントン州の連邦地方裁判所は「トランプの大統領命令は憲法に定める民主主義を否定する根拠はない」として大統領命令の施行中止を命じた。トランプ大統領はテロとの関係の可能性のみを根拠に、連邦地方裁判所の処分に執行を阻止しようと仮処分申請を行った。その仮処分申請は米国の控訴審裁判で却下され、トランプ大統領は最高裁判所に上告することになった。

政治家の意図と権力の濫用
フィリッピンのドテルテ大統領の麻薬関係者の警察権力による殺戮の背後に、警察官自身の不正・犯罪があったということで、麻薬犯罪者に対する強硬な取り締まりの中断を余儀なくされている。この問題も、警察官の蓋然性判断だけで麻薬犯を殺戮しているのが、凶悪犯罪を起こす必然性を持った麻薬犯に対する殺戮なのかと言うところが、外部にはよくわからない。しかし、この場合も行政権で麻薬犯を取り締まりすることで、法治国の国民への信頼が維持できるかという疑問は、既に以前から問題にされていた。しかし、この事件をメディア情報で検討して、日本の小泉内閣の政治で、「聖域なく構造改革」を掲げて、都市再生事業が行われ、バブル崩壊で地価が下落した損失を救済するために、損失分を法定都市計画による容積率割り増しと、開発許可と確認事務で救済した日本政府の取り組みと基本的に同じではないか。都市計画法を同法の目的ではなく、不良債権を抱えて経営を悪化させた企業の救済を目的にした経済政策を理由に行われた都市計画法と建築基準法の改正は、憲法に照らして正当性があったのか。また、都市計画法や建築基準法に明らかに違犯した開発許可や建築確認に基づき行われた許認可は適法と言えるのか。経済政策のために国民の住宅・建築・都市環境が破壊されても、行政処分の違反を、住民が「行政処分は行政法違反」と訴えた行政事件訴訟に、司法が住民の訴えを却下し、全面的に行政処分を追認した。三権分立を蹂躙した日本の政治を、日本人は第3者の目で考えないのか。日本で憲法違反の行政法の立法が行われ、行政法に違反した行政処分が何百件と行われたが、全て不問にされてきた。

行政権力による憲法違反をストップさせる途
米国のワシントン州連邦裁判所が行った「トランプ大統領のビザ発給中止命令は、憲法違反で、無効」の裁判所の判決は、全米だけではなく、世界中の多くの人々が、米国は民主憲法を守ったということで、信頼できる国と感じたに違いない。トランプ大統領のテロリストを排除するためという理屈は、「その命令により入国を阻止された人が、本庁にテロリストであるか、その容疑の高い人である」場合、大統領命令は多くの人に支持されたに違いない。しかし、その肝心なところは全く証明されていない。トランプ大統領の意図は政治的判断として、政治家が主張することは自由であるが、それを大統領命令として強制する際には、「それが米国憲法に適合していること」を国民に説明する責任がある。
今回の問題は控訴審で議論され、その結論にも異議が出され、最高裁判所にまで上告されることは必至だと言われる。私は問題を解決するために、暴力を使わず、憲法で定めた法律の手続きで決めようとして、まず連邦地方裁判所は国民に納得の行く説明で大統領命令が憲法に照らして違反していることを明らかにしたところに、米国の政治の良さ(信頼性)があると考える。
トランプ大統領が、「一人の裁判官によって妨害された」と批判したところに、米国の司法制度を蹂躙したトランプ大統領の間違いがある。裁判所は憲法に照らして判断をしたもので、裁判官個人の判断で行ったものではない。大統領命令も大統領個人の恣意でなく、大統領府が叡智を絞って憲法に適合すると考えた筈である。大統領命令も憲法に照らして正しいと十分検討された筈であるから、この論争は最高裁判所まで3審で争われることになる。その間の議論は米国民だけではなく、世界中の人々に米国の民主主義の考え方を明らかにするもとで、楽しみにされてよい法廷闘争と考える。

日本の不動産価格評価とその説明理論
最近多摩ニュータウンの住宅に投げ込まれる中古住宅のチラシを見ると、新築住宅の場合5千万円を超える住宅がたくさん売りに出されている半面、中古住宅と言われるマンションの販売価格がどんどん安くなって、公団が分譲した2DKマンションが600万円で手に入る状況になっている。言い換えれば、中古マンションの売り手は損失を被っていることになる。
住宅を売り急ぐ人がいると宅地建物取引業者は取引仲介手数料をできるだけ早く手に入れるために、売り手の足元を見て買い叩くことが一層激しくなっている。そして、一つの住宅団地で安い取引実例が生まれるとそれが前例となり、それ以降のマンション取引価格はその事例以上の価格が付けられなくなる。そのような中古住宅価格の価格を決定する上で日本の不動産鑑定評価制度には、国土交通省が介入して、「減価償却理論」を取り入れさせたことが大きく影響している。
減価償却理論を不動産鑑定評価に取り入れることには、全く科学的な根拠がない。減価償却論は、元来、会計法上または税法上で、資本集積をよりやりやすくするため、企業の資本地蓄積や減税を企業に有利にする政策で、減価償却した資本価値が減価するものではない。設備投資等の資本を2倍償却や3倍償却することは企業の資本蓄積を容易にするための政策であって、不動産鑑定評価とは全く関係のない。日本では新築住宅を販売するときの価格を、政府は住宅政策として、住宅の請負工事価格は、建設業法に定める工事価格ではなく、建設業者は建設サービス業者であるからと、政府は、業者の言うままに、広告・宣伝、営業・販売と異サービス業務に費やした費用の全てを販売価格の中に混ぜ込んで回収する価格(経済学的に「独占価格」と定義されている。)で販売してよいと言ってきた。
そのサービス業務に費やした費用は、中古住宅販売には使ってしまった費用として中古住宅販売価格に加算できず、中古住宅価格は直接工事費を露見させることになる。新築住宅価格が不等価交換価格であり、それを消費者が購入できるように住宅会社の付け値のどおりの不等価交換金融を行ってきた住宅政策の不正を隠蔽するために持ち出された不動産鑑定評価が、減価償却論による不動産評価である。その結果、「日本では新築住宅を購入した人は、例外なく、その購入価格の半額を失うことになる」と国土交通省が「中古住宅の流通改善のためのラウンドテーブル報告書」(平成25年)で言明している。

「不等価交換販売」、「不等価交換金融」
国土交通省が行ってきた小見出しの住宅政策は、米国では「詐欺(フロイド)」行為とされ、犯罪として取り締まりの対象とされている。日本でも建設業法第20条の工事費見積ではその見積方法を明記し、建設工事に必要な材料と労務の数量と単価を明確にし、それに関係する諸経費を加算することとされているが、「広告・宣伝、営業・販売といったサービス業務経費」を「直接工事費」と欺罔して、請負工事費として回収することを認めてはいない。
システムバス、システムキッチン、高給断熱窓やドアなど大手建材メーカーが販売している建材住宅設備の定価は異常に高額である。それらの価格をメーカーの営業店に行き、「安く購入できないか」質問すると、「ここでは言えないこと」と断って、「指定店に注文すれば8掛けくらいで購入できる」という。ハウスメーカーを紹介され、住宅価格の交渉をすると、それらの住宅設備や建材のメーカー納入価格は「他に口外しないこと」と断って、定価の20%で納品されていると漏らし、その分の住宅価格を引き下げてもメーカーは損しない」と言う。高額な住宅設備の定価は、設備業者の建設業者への納品価格ではなく、消費者から材料費と欺罔して取り上げる価格である。実際の取引価格はその「半値8掛け5割引き」で、定価と大手ハウスメーカーの仕入れ価格の間には、5倍から10倍もの価格差がある。サービス経費が「材工一式」の見積もりにより隠蔽されている。
中小零細な工務店から、大手ハウスメーカーまですべての業者が顧客に定価で見積もる欺罔を行っているため、大手建材メーカーの割引率の不平等に不満を持ちながら、与信管理の元代金後払い、割引ルート販売特権と説明され、誰もそれを表立てて問題にしない。全ての損失は住宅購入者に低下見積を押し付けてきた。ハウスメーカーの特別のルートで仕入れ価格を聞くと、政府の住宅政策では住宅業者が「差別化」することで、顧客を欺罔することで利益を得ることを積極的に推奨している。そのため、日本の住宅産業の経営は、利益を挙げられても、「欺罔により利益を上げる」と言う消費者に対する倫理的な経営は、悪化の一路を辿っている。

日本の住宅政策の異常さを考えてみませんか

このような憲法に違反し、建設業法に違反することが国土交通省の住宅政策により推奨され、住宅産業自体がそのシステムの中で利益を挙げている訳であるから、欧米のような等価交換販売と等価交換金融を基礎とする住宅産業に向けて改革しようとしても、手の付けられる糸口が見つからない。私は日本の住宅産業の現状は消費者に苦しみを与えているものであることを認識することが無い限り、改善の糸口が見つからないのではないかと考えている。そして、日本の政府や住宅産業と切り離して、欧米の住宅産業が取り組んでいる合理的に生産過程に介在するムリ、ムダ、ムラを排除し、住宅購入者の利益を最優先する方法を日本国内で実践する工務店を増やしていくことではないかと考えている。
私自身が米国の優秀なホームビルダーの実践している方法が日本で実践することはできないかと考えて検討した結果は、胃腸一隻に米国どおりにはならなくても、過去の明治・大正・昭和の戦前までは日本でも米国のホームビルダーが行っていることと同様な経営が行われたいたことを確認でき、日本でもそれを実施することはできると判断できた。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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