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HICPMメールマガジン第715号(2017.04.03.)

掲載日2017 年 4 月 3 日

HICPMメールマガジン第715号(2017・04.03)
皆さんこんにちは
「下級老人」問題と住宅政策

『下級老人』のことはこのメールでもご紹介しましたが、私の半世紀の住宅人生は、「下級老人問題との取り組みではなかったか」と考え込んでしまいます。住宅問題が産業革命とともに発生し、その対策とが住宅政策として英国で取り組まれ、「衣・食・住」問題の中心として国民の最大関心になり、いずれの国でも、住宅政策は国家の最大政策問題になっています。「下級老人の問題」とは「住宅政策」と不可分の関係であることは世界共通ですが、住宅政策を貧困者にとって猶予のできない問題と世界ではとり組んでいますが、日本だけは、その例外で、苦しんでいる下級老人から、さらに、住宅産業の利益を増大するために、手変え、品替え、搾り取るべきと政府が考えています。

貧困化を再生産する仕組み
エンゲルスが「住宅問題」を書いたのは、19世紀半ば、日本の西山 夘三が「住宅問題」を書いたのは20世紀半ば、現在の住宅問題は、21世紀前半です。時代の社会経済状況は大きく変化していますが、国民の生活に不可欠な「衣・食・住」を金儲けの手段にする「阿漕な業者」によって経済的弱者は「生きるために住宅費の支払いを余儀なくされる」ため、住宅費負担によって「貧困の拡大再生産が起きているのです。
国土交通省が、「国民の住宅購入者のすべては、例外なく、50年以内にその購入した住宅費の半額以上を失う」と「中古住宅の流通改善方策のためのラウンド報告書(平成25年)」で事実として明確しています。その理由を、政府は「減価償却論」を持ち出して自然現象のようにテラッと説明しています。

「減価償却論」は「資本蓄積の便法」であって、「不動産評価理論」ではない
HICPMの本メールマガジンやビルダーズマガジンをご覧になっていらっしゃる方には、「耳にタコ」のはなしですが、政府が住宅の資産価値の下落の責任を押し着せている「減価償却論」は、資本形成を容易にする会計法や税法上の政策・便法であって、不動産鑑定評価理論ではありません。「割増償却理論」が償却論を最もわかりやすく説明しています。償却額は損失扱いをするため税法上の課税対象から控除されます。しかし、帳簿上償却扱いをしても、その対象資産の価値は変化しません。政府は不動産鑑定評価制度の「減価償却論」を持ち込んでいますが、そこにな科学的合理性はありません。

住宅取引価格の下落原因
住宅の価値は自由市場における需給関係を反映した市場価格です。この市場価格の基本となる住宅の取引価格は、住宅の場合建設業法で工事請負契約価格として決めることにし、その方法を建設業法の中では「工事費見積もり額」として決めています。この建設業法第20条の見積もり額は、憲法第14条を根拠にする「等価交換」価格であり、等価交換金融額でなければなりません。それを計算する方法が建設業法第20条で定める「材料と労務の種別に数量と単価を計画にして積算すること」と定めている規定です。
一方、企業が住宅を期待利益を確保し、その希望価格で売却するために、広告・宣伝、営業・販売を強力に推し進め、販売する住宅を企業が希望する価格で顧客に売り抜ける価格を「独占価格」といいます。国土交通省は、建設業者は建設サービス業者であるから、その広告・宣伝、営業・販売にかけたすべてのサービス費用を「材工一式」の概算価格の中に隠蔽(欺罔)して、販売価格として回収してよい。と指導してきました。
「独占価格」と「工事見積もり額」の差額が、住宅会社が「粗利」といって手に入れているものです。その粗利の多くは住宅販売経費として使われてしまうため、住宅購入者がその購入した住宅を「中古住宅」として販売するときには、その費用を中古住宅価格に取り込んで販売することはできません。
ハウスメーカーの場合、住宅の販売谷価格(独占価格)のうち、粗利は直接工事の1.5倍(販売価格の60%)にもなります。その結果、新築住宅販売で使ってしまった広告・宣伝。営業・販売経費は、中古住宅価格に参集することはできず、中古住宅価格は独占価格の購入額の半額以下になるのです。

工務店の粗利
中小零細工務店の粗利はハウスメーカーほど多くはなく、私が調べたところ見積書では30%を切っていますが、上代と下代、下請け業者に対する下請け粗利と与信管理費用、長期優良住宅は瑕疵補償等の行政関係手数料等、欧米の見積もりでは直接工事費に参入してはならない「粗利」の中で処理する費用を計算すると、工事の材料費及び労務費の支払いベースの直接工事費以外を粗利計算すると、工務店の粗利比率は、35-40%を超える状態にあります。
この粗利の中からハウスメーカーに準じる広告・宣伝、営業・販売経費を捻出するわけですから、工務店の純利益は一見大きな粗利を取っているようですが、ほとんどなしに等しくなっています。「工務店が厳しい経営を迫られているから、必要経費を販売額に算入して何が悪いのか」という反論は一生懸命頑張っている工務店の方からよく聞かされます。

北米のホームビルダー経営
米国やカナダのホームビルダーは、材工一式の見積もりは概算として建設業法上も金融上も許されていないため、材工分離の積算で工事額を見積もります。工事請負額を請負契約額として確定してから、ホームビルダーはCM(建設業経営管理)として実際の工事計画(資金管理計画、品質管理計画、工程管理計画)を立案します。
その実施計画において、徹底手的に無理、無駄、斑を排除し、厳しい資材購入計画、技能者調達計画を立案し、厳しい施工条件の下でのCM計画により、最大利益の追求を図ります。そのときの利益拡大の最大の手段が「生産性の向上」です。工事費見積もり額が同じでも、工期が短くなれば建設業者の期間あたりの粗利も職人の賃金も拡大します。通常、CMを徹底することで、10-20%以上の粗利の拡大や職人賃金の向上を実現しています。
北米ではNAHBやCMHCはホームビルダーに対して、広告・宣伝、営業・販売に費用を使ってはならないと厳しく指導しています、広告・宣伝、営業・販売にかけた費用はすべて企業経営にとって損失であるだけではなく、顧客に利益を与えることになりません。
ホームビルダーが立派な仕事をし、顧客に高い満足を与えることができれば、その建設した住宅はホームビルダーにとって最大の高校等になり、住宅購入者は最大の営業宣伝マンになってくれます。
そのような経営をするためには、ホームビルダーはその営業圏をできるだけ狭く設定し、効率的にホームビルダー事業を行えるようにして、限られた地域でのプレゼンス(存在感)を高めることが重要であるといっています。

すべて現金決済と設計図書
住宅金融としてモーゲージを行っている国では、モーゲージとの対応で、コンストラクションローン(建設金融)とその担保としてのメカニックスリエン(建設先取特権)の交換が行われ、わが国のような与信管理が不必要になっています。基本的に現金決済ベースの取引になります。その結果、与信管理費用が不要になることが下請け業者、ホームビルダー、住宅購入者のすべてにとって合理的な取引を可能にします。モーゲージとメカニックスリエンは連動しており、その裏には「材工分離の正確な見積もり・積算とそれを支える設計図書がなければなりません。
不等価交換販売と不等価交換金融を事実上維持させている原因は、工務店が合理的な建設業経営管理ができていないためで、その原因が日本の住宅産業で横行している設計圖書が、建築確認申請書の設計図書で建築士法や建設業法で求めている設計図書でないことが分かってきました。
私が官僚の世界から放逐された直接的な原因が、有名建築家の不誠実業務を糺そうと行政処分を仕掛けたことにあったのですが、それから半世紀近くたって、国民が住宅取得することで資産を失って下級老人問題の原因が住宅問題にあることが分かって取り組みをし始めたところですが、それは政府の不正な住宅政策と闘わなければならないことであり、住宅産業界の体質改善を求めることになり、反発されていることも分かっています。

住宅生産性研究会として取り組み
住宅を取得することで国民を幸せにするという産業倫理の実現のため、住宅生産性研究会は米国やカナダのホームビルダーが実施してきた経験を研究し、それに倣うことは決して無理ではないと思っています。しかし、その取り組みは非常に広範囲にまたがる問題で、これまではCM技術能力の開発を考えて取り組んできましたが、最近数年間の検討では設計業務と見積もり業務というところで問題を整理する必要があると確信し、5月を目処に問題を整理することにしています。できれば出版できる資料にまとめる予定です。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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