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HICPMメールマガジン第717号(2018.04.17)

掲載日2017 年 4 月 17 日

HICPMメールマガジン第717号(2018.04.17)
皆さんこんにちは

欧米並みのホームビルダーになるためにわが国の工務店が取り組むべきこと
わが国と欧米の住宅の基本的な違いが産業利益中心の「フローの住宅」政策と、住宅購入者の利益中心の「ストックの住宅」政策の違いであることを、2015年、アメリカと、ヨーロッパ(オランダ)と、日本との住宅の3国比較で行い、真逆の違いであることを実証しました。その調査研究結果を、『フローの住宅、ストックの住宅』(井上書院刊)で発行してから、住宅産業に関係している方々に、「では、何をしたらよいか」を考えてきました。その疑問は、私が官僚になって10年たって、日本の建築士行政のトップの地位(建築指導課建築士班長)についたとき、官民で設計業務基準を作成する協議を数回行いました。そのとき米国での設計業務経験豊かな前川国男、圓堂政義ら国際建築家協会(UIA)会長経験者ほか2名と救仁郷仁建築指導課長と私の6人の議論ではっきりしたことは、「建築士法上の規定は米国の建築士法(慣習法)を日本に制定法に取り入れたため、法令条文としては同じであるが、日本では建築士法に明記してある設計・工事監理業務自体が学校教育でも教育されていなければ、行政実務でも欧米同様な行政を行っていないことが指摘され、結局、業建築士の業務基準の作成はできなかった。その設計・工事監理業務の問題が、現在のわが国の住宅産業を、住宅の「不等価交換販売」と「不等価交換金融」という欧米と違った道に追い込んでいる原因であることを再認識させられました。

期待される住宅団体に向けて
HICPMの会員の方々も多数参加しておられるホームビルダーズ研究会という団体があります。ホームビルダーが消費者の利益の拡大のため、相互に協力・研鑽し、資材を共同購入し、ホームビルダーズの経営向上を図る趣旨で設立され5年近くになります。私はこの企業集団に米国のNAHBの「ホームビルダー20」のような取り組みを期待し、顧問を引き受けました。私にはこの団体から特別の目的をもって指導・助言を要請されたわけではなく、HICPMの目的である「住宅購入者が豊かな生活をし、住宅を持つことで資産形成ができる住宅供給をする産業団体の育成」であると位置づけ、会員の方々に、米国のホームビルダー経営を「他山の石」として学べるような米国情報を紹介をしてきました。

建築学的に正しい設計業務を行うか。客引き・売り逃げ営業用の設計か。
会員の方々は会の設立目的に向かってそれぞれ考えておられる総論には間違いありません。しかし、その取り組みには同意できず、私には「隔靴掻痒」の気持ちが払拭できません。皆さんは住宅産業人(プロ)ですが、その技術及び業務の専門知識は欧米と比較し寂しい状態です。わが国の住宅政策は経済政策という産業政策で、学校建築教育、住宅産業教育、職業教育が技術者技能者工務店経営者のために行われていません。プロとして消費者からお金をもらっているのですから、この研究会でも建設業経営管理(CM)の知識・経験を積んでもらいたいと願い、2か月の1回の定期総会のとき1時間程度の講義をする機会に、会の希望に合わせお話してきました。この5年のお付き合いの中で、CMという工務店経営の問題に取り組めないことには理由があることを発見しました。それは、工務店が作成し施工に使っている住宅設計圖書自体が合理的な経営を不可能にしていました。工務店の設計・施工に携わっている技術者が、建築士の資格を持っていても、建築学としての設計教育を受けておらず、確認申請書に添付する設計図書の作成で設計業務をしたと勘違いし、起きている問題だと分りました。建築設計の目的自体が、「逸早く制約させる営業」用の「設計」です。だから建築学の専門知識はなくても営業のテクニックで建築主を満足させられれば制約させられます。ハウスメーカーの営業研修に出かけた工務店経営者の2世、3世は、ミニハウスメーカー営業マンで引き渡し後に責任を持とうとは考えていません。

「制約に進める満足」か、「未来に向けての生活満足できる設計」か
工務店の多くがハウスメーカーと同様に、「客引き・売り逃げ営業」に向かっている原因こそ、設計・施工業務を行う建築士および建設業者の本来業務が何かが問われる問題です。前回の定例会のとき弁護士が『コンプライアンス』の説明をしました。しかし、ここで私が指摘する工務店にとって最も重視すべき法令順守のことは何一つ説明せず、訴訟を受けたときに弁護士の迅速な処理のための営業の話しかしませんでした。実はこの弁護士と一緒に仕事をしたことがあり、建築士及び建設業者の業務が法令上の知識は貧しく、建築士及び建設業者のコンプライアンスの話は無理あることが分かりました。設計・施工業務の基本問題は、学校教育から社会での住宅産業が行っている業務に共通の理解ができていません。設計図書を使えば、正確な工事費見積もれ、正確な工事ができることが法律の建前です。それができなければ建築士法の定めた誠実業務はできません。これができない理由は、わが国の建築教育および住宅産業の業務問題です。私の官僚生活、民間の住宅産業時代、HICPMでの調査研究を含め欧米の住宅産業の技術移転をとおして分かったことを、今回、体系的にまとめることにしました。

プロの設計者がまとめる設計業務、営業マンのまとめる設計業務
今日はその基本である設計業務についてご紹介します。先日、ホームビルダーズ研究会の定例会で会員の設計業務が3社から紹介されました。欧米の建築教育のレベルから見れば、設計業務ではなく、それは顧客満足という工務店と建築主との間の営業のための合意形成の方法でした。そこでは、住宅の専門業者(プロフェッショナル)が、建築主と住要求に対応する建築設計業務は問題にされませんでした。建築主は、工務店に「建築主が希望しているように設計図書をまとめる設計作業を行う」と建築主に信じ込ませる方法をとることで設計業務を迅速に行うことを優れた営業とするものでした。その原因は、消費者は情報を集めやすくなっていて、物知りになっており、専門家と対等に専門家でないとわからない事柄に口をきき、一方、工務店はその専門性が弱くなっていて、消費者から尊敬を受けられなくなっています。建築主が「設計者気取りになり、工務店、または設計事務所を使い設計図書をまとめる方法」が、最も制約に結び付けやすいことを暴露していました。工務店や建築士事務所はそこでつくられた設計図書には、建築確認済み証が得られるならば、それ以上の責任を持たなくて済みます。

建築主と議論する内容として、住宅専門技術が必要ですか
設計関係の情報は社会に満ち溢れ、誰でもがそれに接することはできます。しかし、簡単に手に入れることのできる設計情報、施工情報に関して、建築主が、工務店のメンタルテストをするためか、盛んに専門情報を話題にしたがります。設計業務や施工業務として尊敬できる仕事をするためには、自らが使う技術には、それ相当の知識と能力と経験を持たなくてはできません。しかし、その知識や能力を物知りであることを説明するために、建築主と難しい建築知識を話題にする意味はありません。一般の建築主はプロではなく素人とですから、プロにその業務を依頼します。建築主は、「私は、専門情報を知っているから工務店に騙されないぞ」と振舞い、工務店は、「プロとして顧客の要求に応えられる専門知識は何でも持っている」と、双方とも、相手に負けない駆け引きを挑み、こけおどしの情報合戦で安心できると勘違いし、成約に結び付けようとします。最近は病院に出かけて医薬の知識を口にする患者が増えてきていますが、そこで安心する患者も多いといわれますが、名医はどのようにして見つけますか。医者の評判こそ最大の選択の目安ではないでしょうか。実は住宅建設業の選考も同じで、優れた評判の業者を選び、尊敬できる気持ちで設計業務を依頼することがよい成果を実現する方法です。

工務店の能力は過去の業者の事業に表れている
建築主は住宅建築設計の素人です。その思いを生かして建築士という設計の専門家が住宅設計をし、「消費者満足の得られた住宅」が、日本国内に見苦しい姿を晒しています。顧客満足といわれて建てられた殆どの住宅は、数年で魅力を失っています。10年以上たって顧客を引き付けられる住宅は例外的です。私自身、住宅展示会社の役員として展示場経営を10年以上経験しました。出展されたモデルホームは、集客の手段としてつくられますが、3年以上顧客を引き付ける力を持ちません。実際に作られる多くの住宅はモデルホームよりはるかに短い設計期間ではるかに安い費用でつくられます。展示場での集客能力の低下の責任を、出展者は展示会社の集客宣伝力に押し付け、モデルホーム自体の訴求力を問題にしません。展示会社は3年ごとに展示場全体のスクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきました。展示場のモデルハウスをみて住宅を購入した人の住宅は、モデルホームと比較してはるかに貧しい住宅ですから、建築後、数年間で魅力を失って当然かもしれません。現在の住宅設計の仕方は正しい設計業務の仕方ではなく、住宅営業を成功する「制約の成果を上げるための設計」の仕方なのです。それは建築士法第18条で記載してある規定の設計業務に対するコンプライアンスに違反した業務です。

建築士法違反の『営業マンに任せた日本の住宅設計』
ハウスメーカーでは営業マンが顧客の要求をハウスメーカーの設計システムを使ってもまとめます。それは建築士法違反です。ハウスメーカーも政府も違反を承知で設計業務を行っていますが、建築士法違反の認識がありません。建築学上の設計をしているのではなく、顧客に制約をさせる満足を与えるために、建築主の目先のやり取で確認申請上の図面を作って「設計業務がまとまったとする満足だけで、設計図書に記載された内容がどのような生活要求を満足させるものかを理解できないでいることが一般的です。確認申請書に添付する設計図書は、その設計内容が建築基準関連法令に適合していることを確認するための設計図書で、建築士法上の建築主の要求を満足させる設計図書でもなければ建設業法上の設計図書でもありません。建築主には設計図書を見ても内容が読み切れないのが一般的です。建築学上設計業務で作成べき設計図書を日本の大学や高等建築教育では教育していません。優れた設計は設計者の建築思想として設計図書で確認できますが、住んでから生活の中で気づかされるものです。

東京大学に代表される建築設計のでたらめ
学校教育だけではなくわが国には建築設計を教育する教育機関はほとんど皆無に近く、設計教育のテキストもなければ、設計教育を満足に教育できる教師もいません。設計業務ができていないため建築主やその建築物の建てられた近隣に疑問をもたれる設計をしたり、設計者、施工者とのトラブルが跡を絶ちません。安藤忠雄という有名建築家は、元ボクサーで建築設計の教育を受けていませんでしたが、世界的な建築設計競技の場で評価されたため、東京大学の建築設計の教授になりました。安藤忠雄が淡路で開かれた花博に合わせて兵庫県知事の後押しでウエスチンホテルを設計し、兵庫県が一生懸命そのホテルを利用して何とか経営を成り立たせてきましたが、その経営は破綻状態です。最大の理由は設計条件を無視した設計が失敗していたためですが、兵庫県知事や東京大学などが後ろについていることで、あとの祟りを恐れて、建築学会、建築設計業界、建設業界、行政界では誰も批判をしません。

設計は創作業務で請負業務でない理由を理解できない日本の建築業界
設計業務は請負業務ではなく、建築主の求める要求を満足させる建築を創造する委任業務です。ホテルが集客できない最大の問題は完成物が設計条件を満足させていないことです。設計業務とは、建築主の期待する完成建築物の実施設計の製図作成ではなく、設計者の設計思想を基に設計条件に応える創作業務です。建築した後も、社会的経済的条件や、建築主の変化するニーズに応え、いつも社会的に求められ続けるような建築(住宅)を設計することが(住宅)設計業務です。住宅を完成すればそれで「手離れした」と考える設計者はプロの業務ではなく、その行った設計業務は建築士法で規定している設計業務ではありません。現在のハウスメーカー、多くの工務店、建築士事務所が行っている設計業務は、顧客に施工にませ踏み切らせたらそれで設計業務は終わりとしています。

「物づくり」のための住宅・建築・都市設計でよかったのか
問題はわが国では、間違った設計業務が行われていることです。「顧客満足」と言われている設計が本来の設計業務ではなくて、建築主に迎合して「顧客満足させた」と勘違いさせて制約に追い込んでいるため、設計内容を工事費見積もりで確認せず、住宅産業での不等価交換販売の悲劇が起きているのです。私がまとめた本では、明治維新からわが国政府の意向を受け、東京大学が進めてきた建築教育にその欠陥の原因があったことを歴史に遡って明らかにしてみました。それは建築設計教育が工学教育として行われ、欧米のように人文科学教育でないためです。住宅を建設するモノ作りのための実施設計は、世界中どこでも建設工学で行われます。実施設計のための基本設計は、その住宅が未来にわたって大切に使い続けられるように計画された設計でなければなりません。その設計は人文科学教育で行われなければなりません。 欧米の住宅・建築・都市は、半永久的に使われているのに対し、わが国の建築・住宅・都市はスクラップ・アンド・ビルドを繰り替えし続けている理由が、設計業務にあるのです。

工務店や建築士の責任があることの自覚を求めたい。
日本の建築士法や建設業法は、いずれも1950年GHQの監督下で米国の建築士法及び建設業法業法(いずれもコモンロー)と同じ内容としてわが国の成文法は作られましたが、政文法で記載された設計業務の実態が、欧米と同じ建築学教育として行われていないことに問題があります。設計業務という用語が法律上登場しますが、その設計業務が欧米と違っています。明治以来の建築教育が欧米と違い、極めて特殊であることと、戦後の日本の建築設計が建築士法及び建設業法上で規定する設計図書ではなく、建築基準法上の確認申請書の添付図書で略式設計と概算工事費を使い、業者の利益を確保する工事監理で建築主に対する背任行為を容認してきたからです。現在まとめているこの書籍は、特に明治時代以降現代までの建築設計業務が世界の設計業務と違って異常であることを説明した本です。ここで取り上げた異常な建築教育を改めない限り、国民は住宅を取得することで資産を失い続けることになります。
(NPO法人 住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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