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HICPMメールマガジン第718号(2017.04.24)

掲載日2017 年 4 月 24 日

HICPMメールマガジン第718号(2017.04.24)
みなさんこんにちは
住宅産業の技術の再点検:国民を不幸にする日本の住宅政策

私が現在の住宅産業が取り組むべきとこだわっていることは、「住宅を購入した国民が、住宅を購入する投資で、その住宅が住宅購入者の資産となり、将来の生活の下支えとなるようにすること」です。それはHICPMを創設したときからこの活動の目標です。その目標は、欧米では住宅産業が一般的に実現している日常業務目標です。欧米のホームビルダーが普通にできている「住宅個人の資産形成となる住宅」が、わが国で実現できない理由を調査研究してきましたが、最近になって、それは建築士の設計・施工業務が法律で決められたとおり行われていないことであることが分かりました。戦後の国家再建のカギとして、1950年に建設3法(建築士法、建設業法、建築基準法)が制定されましてから68年を迎えました。住宅建設業務を担う建築士とその行っている設計業務、工事監理業務、施工監理技術者の行う建設業務に遡って、国民を貧困に追いやっている原因を全面的に検討しました。その結果は盆明け頃を目標に住『近代から現代までのわが国の住宅設計業務』(仮称)出版しますが、今回はその中の設計・施工に絞って紹介することにしました。

現場監督の仕事と「同等品仕様変更」
工務店が現場監督をしていて、工事請負契約書に添付されている設計圖書がありながら、下請け業者が行う工事が確定していないため、現場監督が「現場と設計部の間の往復」と「建築主に対する工事説明」に驚くほど時間を採られていることです。請負契約書に添付されている設計図書に必要内容が記載されていないためです。何を設計圖書に記載するべきかの建築教育がされていないためです。
工事請負契約時に建築主と工務店が了解していたはずの材料や工法が、工事が進行するにつれ当初の希望通りの設計の実現は、計画通りの材料費や労務費を支払って実施することができなくなり、請負工事費で設計圖書に記載していた「仮押さえしていた」と施工者が建築主に説明する工事をするためには、契約額で工事を納められる範囲の「同等品」に仕様変更が必要とされています。変更の手続きは特記仕様書で「工事監理者の承認」を受ければ建設業法上適法とされ、請負契約時の設計圖書は建築士の夢で、現実は当初の「坪単価」で工事を納めるために変更はやむを得ないとされてきました。

工事契約用に「設計圖書」と確認申請用の「設計図書」
建築3法には設計圖書と言って建築物をつくるために、設計図と仕様書を契約内容とする記載があります。建設3法で規定している「設計圖書」は、法律によりその目的が違うため、設計図書の内容が法律ごとに違っています。「建築基準法の設計図書」は、その計画は建築基準関係法令に適合していることを審査するための設計図書であるに対し、「建築士法及び建設業法による設計圖書」は、建築主との請負契約、建設業者間の下請け契約という権利義務を伴う「等価交換」を行う工事内容を確定するものです。欧米では建設工事費に対し、工事部分に先取特権を担保に、建設ローンを行い、完成した住宅にはモーゲージを抑えて住宅ローンを行うため、「設計図書を基に工事費見積もりが行われ、等価交換金融が行われます。日本の建設業法も同じ考えに立っています。その工事内容の根拠が設計圖書です。

住宅産業界の混迷の始まり:建築設計教育
建築士法では、個人の年収の5-8倍もするような住宅は、個人財産としても国家の富という観点でも重大な資産投資ですから、その設計・施工に関しては建設3法で、設計・施工業者及び技術者の就業制限を決めています。設計者は建築士資格を持つべきことを定め、建築士は大学で建築に関する専門教育を4年間受けたのち、設計工事監理に関する実務経験を2年間以上積んだ後、建築士試験に合格することを条件にしています。実際は大学の建築教育で、設計圖書を作成する教育や、設計圖書に基づき工事費を見積もる技術教育や工請負契約を締結するための必要な教育は、教育する教師もテキストもなく、全く行われていません。卒業後の2年間の実務経験もその研修内容は曖昧で、申請のみである。建築士試験問題は難解ですが、建築士業務に必要な試験問題はほとんど出題されていません。

ハウスメーカーの実際の設計施工業務
現在のわが国を代表する住宅産業の最右翼にあるハウスメーカーは、安倍内閣がダイワハウス会長に安倍総理大臣がハウスメーカーを代表して国家大叙勲を与えたとおり、国家経済を支える住宅産業の中心にある最優良企業です。ハウスメーカーの戸建て住宅は、「消費者の夢の実現」といわれる「注文住宅」です。注文住宅の設計は建築士法で決められたように「建築士が建築主の要求を聞いて設計する」のではありません。ハウスメーカーの設計は、建築士法に違反して、営業マンが建築主の要求を聞き、ハウスメーカーの設計システムを使って設計圖書を作成します。ハウスメーカーはその方法で顧客満足のできた設計図書をまとめています。その設計図書は建築基準法の確認申請書添付図書には、「建築主が会ったことのない建築士法上の建築士が設計された」と記載されています。「建築士がいなくても建築主が満足できる設計業務ができる」ということか、それとも「建築士が設計業務を行わないため法律違反の内容の設計業務が行われているのか」、いずれかではないかという疑問を提起しています。

建築士法及び建設業法上の「設計圖書」
建築士法及び建設業法で定められている設計圖書は、建築主の要求を満足させるだけではなく、建設3法の条件を満足するものでなければなりません。それは住宅の品質とその品質を具体的に決定する材料及び工法が特定され、それが工事費として特定されなければなりません。現場で「納まり図がなければ工事ができない設計図書」では、「実施設計図書」の条件に該当しません。また、その設計図書で工事費見積もりが建設業法第20条に定められている「材料と工事を区別し、その数量と単価を特定し、積算見積もりが正確にできる」ことでなければいけません。現在わが国で行われている工事費積算手法そのものの実態は、欧米で言う略算(概算)方法です。欧米では、「材工一式」の㎡単価や平方フィート単価で工事請負代金や建設ローンを受けるための見積もりに使うことを禁止しています。

わが国の住宅産業、建設産業
わが国の住宅産業(建設産業)は、相場単価(坪当たり単価)がまずあって、設計者は総請負額を相場単価で割り出して、設計すべき延べ面積を出します。その延べ面積の範囲で平面計画を立て、相場単価に対応する材料や工法を仮決めし、それを基に「材工一式」の相場単価を使って工事費見積もりを行い、そこで積算された見積額が工事請負契約額となります。通常、工事費見積もりには、『積算資料』等相場単価が使われます。この相場単価は建設業者に圧倒的に有利になっていますので、業界内では消費者に説明できる業界内に流通する「相場単価」があり、それで見積もりが行われています。
欧米では社会的に合理的は騰勢を基にした市場単価で設計見積が行われるほか、ホームビルダーが工事実績を基にその業者として見積もりに使う「積算用のデータベース」があります。それをいつも更新しホームビルダーとして損をせず、適正利潤を上げることのできるデーター管理をしています。わが国では工務店が実行ベースの積算データを表に出すことはしません。現在、ハウスメーカーの直接工事費と見積もり単価の関係は、直接工事費の約2倍が見積もり単価で、それに一般諸経費を20%加算しているため、建築主の同意が得られにくいと考え、ハウスメーカーは、成約できるようにするために、建築主に誠意を示して、100万円単位の「出精値引き」が行われることも一般的です。

政府の住宅政策
わが国の住宅政策は1976年の住宅建設計画法の政策がバブル経済の崩壊で破綻し、住宅建設計画法、住宅金融公庫法、都市基盤整備法など住宅政策の基本関係法は廃止され、2006年からは住生活基本法という民間中心の住宅政策に転換しましたが、そこで実際に行われている住宅政策は、住宅建設計画法時代のスキーム(不等価交換販売と不等価交換金融)をそのまま継承しています。日本の住宅政策は住宅建設計画法以来、住宅産業救済と日本経済の発展のためで、住宅購入者の利益は考慮していません。住宅産業が販売したいと考えている住宅を国民が購入できる資金を融資することが日本の「フローの住宅政策」で、「国民がローンを返済できるか、どうか」や、「その住宅がストックとして国民の資産形成になるか、または負債形成になるか」という将来のことを考えてはいません。

「相場単価で出発した設計図書」と「材工一式の概算単価」で決められた工事請負契約
曖昧な設計図書と「材工一式」の概算単価で工事費を見積もり、その額はハウスメーカーの場合、販売価格が直接工事費(工事のため直接支払った工事費)の約2.5倍です。その請負金額は建築主の支払い能力を逸脱していることは明らかです。建築主の購買力は建築主が支払える金額ですから、政府はハウスメーカーが販売したい額に見合った住宅金融を住宅建設計画法時代は住宅金融公庫に行わせてきました。現在は住宅金融支援機構でMBSの買い上げで担保し、金融機関にハウスメーカーの希望販売価格通りの融資を行わせ、ファイナンシャルプランナーがローン返済能力の範囲と言って、実際35年先までの返済能力は不明のまま、当面のローンを販売価格通りつけて住宅を購入させてきました。建築主がハウスーカーの提供する住宅を購入できる金融を行なうことで、日本の住宅産業は回転してきたのです。その破綻は、35年の元利均等償還により、住宅購入時から20年たって期待通り所得が増えず、ローン返済が困難になり、住宅を手放さざるを得なくなって中古住宅販売で、購入額の半額以下でしか売却できなくなって、初めて実際の価値の約2倍で不等価交換販売されたことに気づかされます。

「自己責任」、コンプライアンス、アカウンタビリティ
この住宅政策の結果、住宅を購入した人が住宅を維持できなくなり、夜逃げ同然の転居を余儀なくされ、その結果「下級老人」が社会問題になっている現実に対し、住宅政策の説明責任(アカウンタビリティ)が問題にされなければなりません。ハウスメーカーが行ってきた住宅産業経営は。営業マンが設計を行い、建築主があったこともない建築士資格を有する設計者が、「確認申請書には名前が記載されている有印私文書は、建築基準法違反です。建築士による設計業務が行われていない設計圖書は、建築士の業務として建築士法で期待している業務とかけ離れた確認申請書の添付設計図書で、建築士法で規定する建築士の誠実業務に照らして建築士法違反です。その設計図書を基に相場単価と言われる「材工一式」の概算工事費で工事費見積もりを行い、それて工事請負契約を締結していることは、建設業法違反です。政府は盛んにコンプライアンス(法令遵守)と言いながら、建設3法の施行における住宅政策による建設3法違反は、建設行政によるンプライアンス違反です。政府のコンプライアンスが問だいです。

「下級老人」を生み出している住宅政策
すべての国民は「衣食住」と切り離されることはありません。日本の「下級老人」問題に表れている生活の窮乏化のメカニズムを住宅という視点から見ると、基本的にわが国の住宅建設価格が不等価交換販売と不等価交換金融の仕組みを経由して国民の住居費負担の大きさになっていることが確認できました。尾の事実を言い換えると、国民は賃貸住宅の居住しようが、持ち家を購入しても、不等価交換販売と不等価交換金融の2重苦を避けることはできません。住宅を維持できなくなった持ち家所有者が、その住宅を売却して別の住宅に逃げ延びたと思っても、そこで生活しなければならない住宅もまた、不等価交換販売と不等価交換金融の結果生まれた住宅であるため、どこへ逃げても日本の住宅政策の罠から逃れることはできなくなっているのです。住宅の設計・施工に関係している住宅産業がその業務を改め、等価交換販売と等価交換金融にしない限り、「下級老人」を生み出す社会に与している事実から潔白を示すことはできないということです。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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