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HICPMメールマガジン第720号(2017.05.15)

掲載日2017 年 5 月 15 日

HICPMメールマガジン第720号(2017.05.15)
みなさんこんにちは

私は2017年4月の28日から5月の9日まで、カリフォルニアに「アワニーの原則」とその都市づくりの展開の状況調査と、米国の大学キャンパス(スタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレイ校)のキャンパス・デザインとキャンパス内の建築デザイン様式を調査に出かけました。
HICPMのこれからの取り組みをすることに関し、会員によるHICPMの組織活性化協議会が造られ、HICPMのこれまでの欧米先進工業国の住宅購入者の利益を中心に考える「ストックの住宅」工務店経営の取り組みを基本的に支持し、その活動内容を広く社会に示し、活用できるようにすることが必要だというご理解のもとにHICPM会員法人会社ヴォークス(内海社長)が中心になり、HICPMのホームページの全面的な見直し・検討に取り組むことになり、小林理事が事務局を担当する協議会を立ち上げました。
その取り組みに合わせて、HICPMのこれまでの基本方針をより豊かにし、会員の支援を行うために、現時点で最大の住宅地経営問題に関する過去の調査を総括する「米国におけるニューアーバニズムによる住宅地経営とホームビルダー経営調査」をするため、家族の協力のもと「カリフォルニアの住宅・建築・都市調査」を実施しました。それは私の半世紀を超す住宅問題の取り組みとHICPMでの22年の総括調査ツアーでもあります。この調査報告は目下取りまとめ中で、後日報告会を行う予定です。

HICPMの新しい取り組みに合わせた住宅・都市情報を集めに、HICPMの会員が学ぶべきことは、米国のNAHBが進めてきたことが中心になっていますので、その橋渡しをするためには、これまでの調査研究の総括をし、それを活用できるようにするため、アップ・トゥー・デイトな情報を意欲的に摂取することにしました。私の娘が、ハワイ大学の歴史学の教授ですが、約1年スタンフォード大学フーバー研究所で約1年間研究している機会を利用して、スタンフォード大学と、その娘が博士号を取得したカリフォルニア大学バークレイ校の2つの大学の住宅と建築の調査に出かけることにしました。
輸入住宅ブームのとき非常に多くの人が欧米に出かけ、街並みや住宅を見学に出かけました。米国に出かけ、住宅・建築の見聞を広めることで、日本の住宅産業関係者は断片的なの情報を手に入れましたが、CM(コンストラクション・マネジメント)を始め、住宅産業に成長させる住宅および住宅地経営改善の有効な設計・施工力にはなりませんでした。日本の住宅産業に関し、HICPMが「欧米から学ぶべきもの」と考えている「サステイナブルハウスの4原則」を実現するための知識や技術は、日本の住宅産業では、基本的に受け入れられてきませんでした。欧米の住宅先進国から「何を学ぶか」という問題意識で努力をしないと、せっかく欧米に出かけても技術や経営研修にはなりません。

「米国における住宅・建築・都市」情報
現在HICPMが米国からの技術移転の最大の眼目としていることは「住宅購入者が住宅を取得することにより幸せになる」ことですが、その中で「経済的には」住宅を取得することが、住宅購入者にとって、売り手市場の「住宅投資」になり、資産形成ができるようにすることです。1900年にエベネザー・ハワードが、「住宅経営の発明家」と言って登場した発明内容とは、「住宅の資産価値が経年するとともに向上することができる住宅地経営技法」を発明し、その後その技術は更新されてきたのでした。
特に米国では、住宅の資産形成を妨害する問題として、戦後一貫してセキュリティの問題が、住宅の資産価値を維持向上する基本問題と指摘され、スマートハウスやゲーティッドコミュニテイが取り組まれました。しかし、いずれも政府を挙げての取り組まれたにもかかわらず、この2つのいずれの方法によっても、セキュリテイ向上の問題は解決がされませんでした。また、1970年代のエネルギーショック時代まで米国の経済は、「ベトナム戦争の影響」が国家経済を悪化させ、経済は下降局面を辿ってきました。1970年代から1980年代はそれらの問題を解決する生みの苦しみの時代でした。日米関係では、「プラザ合意」はその区切りとなり、わが国の住宅産業では「輸入住宅」が取り組まれ、米国内で健全であった住宅政策・住宅産業への関心が高まりました。しかし、わが国は、米国の社会が抱えている問題に米国の住宅産業が積極的に取り組んできた住宅産業健全化の成果から学ぼうとしませんでした。代わって、それと逆な国民を犠牲にして住宅産業利益を追求するために、米国の優れた成果の一部をつまみ食いする状態に継続し、米国の優れた住宅産業技術は日本に技術移転をしないできました。
しかも、最近では米国の住宅産業の合理的経営は、住宅の不等価交換販売及び不等価交換金融を不正に行ってきた日本の「差別化」住宅政策及び住宅産業には妨害になると考え、政府も米国の住宅産業に倣うことで、その間違った政策が露見することを恐れ、輸入住宅政策として一時、取り組んだ米国の経済合理主義に立った住宅産業政策に学ぶ姿勢は消滅させ、住宅産業の関心を、ゼロエネ住宅や、日本の木材消費拡大になるといってCLTに関心を振り向けさせ、住宅購入者の負担能力の範囲で売り手市場を維持できる住宅を供給する北米の住宅産業技術への関心を失わせてきました。

三つのエポックメーキングな事業と21世紀の米国の都市白書と「Smart Growth」
米国では過去40年間に、以下の三つのエポックメーキングな取り組みが行われ、それが「アワニーの原則」として纏められ、米国政府(クリント政権、アル・ゴア副大統領)は『21世紀の都市白書』として総括し、LGC(ローカル・ガバメント・チャンセラー)は、その原則を関係団体(ULI:アーバン・ランド・インスティチュウト、NAHB:全米ホームビルダー協会)らと協力して、スマートグロース、ニューアーバニズムとして展開してきた。
(1)エネルギーショックに当たり地球の至言の有限性が社会的に問題視され、シュウマッハの『スモール・イズ・ビューティフル』の理論として提起された実践的取り組みとしてマイケル・コルベットによる太陽、風、水、緑、地熱を利用したエコロジカルな「ヴィレッジホーム」(1975年)が取り組まれました。
(2)    「産業中心の都市計画」から、「生活者中心の都市計画」にする新しい都市計画論がピーター・カルソープによるサステイナブル・コミュニテイ(1980年)が「ラグナー・ウエスト」で取り組まれ、その開発に呼応してアップルコンピュータグループがそのコンセプトを支持し移動したことから、全米の都市計画の考え方を180度転換させました。
(3)    セキュリテイ問題もスマートハウスやゲーティッド・コミュニティというITに依存するのではなく、地縁的なヒューマンリレイション(コミュニティ)によるTND(伝統的金住区開発)がDPZ(アンドレス・ドゥアーニー、エリザベス・プラター・ザイバーグ)によりリゾートコミュニティ「シーサイド」(1980年)で取り組まれました。
この3つのエポックメーキングは事業をこれからの開発の基本に据えよとした6名の建築家を中心に、全米から100名の自治体都市・住宅関係職員による合意形成会議の成果が「アワニーの原則(アワニープリンシプル」(1991年)でした。
現在、NAHBやHUDが住宅地開発事業で取り組んでいるニューアーバニズムは「アワニーの原則」の発展形です。実はこの3つエポックメーキングな開発は欧米の住宅・建築・都市の歴史を調査すれば明らかなとおり、その原点は、1900年にエベネザー・ハワードが提唱した「ガーデンシティ」の中で明らかにしている住宅を購入した資産を向上させ続ける「住宅地経営の思想」を現代的住宅・都市環境に読み替え発展したものでした。その思想に大きな影響を与えた人が、人類は叡智を働かせて「計画を立案し、計画通りの事業をすること」を提唱した『顧みれば』の著者エドワード・ベラミーでした。

スマート・グロースの代表事例TOD「ザ・クロッシング」
既に14年以上昔の「アワニーの原則」をまとめた会議の場所を、今回訪問することで、もう一度、現在の米国の住宅地経営環境下での状況とその限界を考えてみようと思いました。娘が私の意図を組んでいろいろ事前に調査をし、私が訪れたいと言った宿泊地のスタンフォードから近い位置にあるピーター・カルソープのTOD(トランジット・オリエンティッド・ディベロップメント)「ザ・クロッシング」は、過去の5回以上訪問し、娘にも5年前同行してくれたところです。HICPMとしてもグローバル研修企画のツアーとして過去2回訪問したところです。そこで今回、娘から提供された資料は、「ザ・クロッシング」は「スマートグロース」の最先端にある開発計画である開発でした。
2003年5月、HICPMはアル・ゴア副大統領がまとめた「ビルディング・リバブル・コミュニテイズ」(住みよいコミュニテイの建設に向けてー21世紀の都市成長政策)と一緒に都市土地協会がまとめた「スマートグロース(健全な都市成長)」の冊子をHICPMでまとめ・翻訳し、HICPMで刊行・販売しているものです。そこに記載されていることが「アワニーの原則」の具体的展開としての住宅地経営の考え方で、米国政府にとっての21世紀に向けての都市成長政策であったわけです。そのスマートグロースの事先例として「ザ・クロッシング」があることを、娘の集めてくれた資料に明記されていました。

「ザ・クロッシング」の住環境
「ザ・クロッシング」は街全体が緑の樹木で覆いつくされた公園のようになっていて、道路から住宅地に入る入口の突き当りのラウンドアバウトの高木が大きな枝を伸ばした小さな森が造られ、その森は住宅地の入り口からも目に入ります。住宅地全体は道路に面しているため、道路からの「ザ・クロッシング」の景観は、高級住宅団地にみえます。その理由は、道路に沿って設けられているサイドウォーク(側道)に面する住宅の側道側に玄関があり、側道から階段を上ってフェンスで囲われたフロントヤードの門を入って、住宅の玄関にアプローチすることになるからです。この住宅の車庫は、「ザ・クロッシング」のゲートを入って、道路に沿って建てられている住宅地の裏側を走る住宅地のサービス道路(バックアレー)に沿って誘導されます。そこには住宅のビルトインガレージが設けられ、ガレージの上階は住宅となり、ガレージハウスの扱いも可能になっています。
「ザ・クロッシング」の門を直進するとラウンドアバウトの小さな森が見えますが、その手前に子供たちが遊べる遊具の整った小公園を取り囲むループになった道路があり、その道路を挟んで住宅が立ち並んでいます。その住宅へは前面道路から車のアプローチをすることになっていますが、車庫およびパーキングスペースは、住宅の前面の壁面位置より後退させられているため、車庫は目立たなくなっています。近代都市計画はナポレオン3世の時代にパリ大改造を行ったセーヌ県知事で建築家オースマンが、都市を市民のものにするため、都市そのものを市民の生活に豊かさと潤いを与えるものにするために公園とすることを目標に掲げ、それをピーターカルソープがサステイナブルコミュニティの基本技術として提案しました。サステイナブル・コミュニティは、まさに豊かな生活のできる都市をつくれば、そこには優秀な人材が集まり、企業はそれらの優秀な人を雇用するためそこに集まってくるという考え方に立つもので、「ザ・クロッシング」はその代表例です。

「アワニーの原則」の生まれたヨセミテ公園の「アワニーホテル」へ
今回のツアーの第一歩はスマートグロースの実践例である「ザ・クロッシング」から始まったことで、ツアー全体の目的を明らかにすることになりました。そしてこのツアーのクライマックスはヨセミテ公園の「アワニーの原則」の合意がなされたアワニーホテルを訪問し、「アワニーの原則」を実現させたLGC(ローカルガバメントチャンセラー)は訪問できなかったが、その置かれているビルを確認し、サクラメントのオールドタウンを見学した。ツアーの最終は、「アワニーの原則」の新しいコミュニティディベロップメントを最初に取り組んだ。「ヴィレッジホーム」の熟成した公園都市を見学しました。それは過去・現在・未来と連続する住宅・都市環境の計画とその発展形を知るためのツアーでした。
今回のツアーのもう一つの目的はスタンフォード大学とカリフォルニア大学(バークレイ校)のキャンパスツアーをとおして、米国の建築デザイン様式とキャンパス・デザインを建築デザインの社会と歴史に対して発信するボキャブラリーを解読することでした。
本ツアーレポートとしては、以下に「主要なツアー見学総括」をするとともに、それに続けて、今回のツアーを訪問順に毎日の見学内容を「各論」として見学したところを解説することにしました。その報告書と映像は、後日、研修会を開催し、その再配布するようにしたいと思っています。
(NPO法人住宅生産性研究会 理事長 戸谷 英世)



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