第217回(2007年6月18日)

 みなさん、こんにちは。

 6月22日(金)に、「住生活基本法時代」の本質をお話するセミナーを開催します。平成19年度国土交通省の予算の中に、危惧していたとおりの住生活基本法の姿が現れ、手遅れにならないうちに「住生活基本法時代とはどのような時代なのか」を住宅産業界の人々に具体的に知ってもらうためのテキストをまとめ、セミナーを開催することにしました。

 住生活基本法時代になっても、基本的には住宅の価値を前提にした住宅ローンや建設ローンに軌道修正はしませんので、金融機関は信用力の弱い住宅業者が建設する住宅へのローンを渋ることになり、強者・弱者の分離が激しくなります。住宅の資産価値自体が問われないため、商品企画、広告宣伝など、口先で顧客を幻惑するこれまでの営業が踏襲され、それがローン返済不能事故発生によって一気に矛盾を露呈します。

 住宅ローン返済不能事故は、年収の5倍のローンを組んでいる人であれば、20年後にはその大多数が破綻します。FTA(自由貿易協定)時代の日本の20年後の平均年所得は250〜300万円で、現在の半分になります。元利均等償還の住宅ローンの返済額は35年間同一ですから、20年後には年収の10倍のローン負担になるからです。

 消費者をローン破綻に追い詰めた住宅会社は、消費者の信用を失い、倒産に向かいます。消費者の年収の2.5倍のローンで住宅を購入させた住宅建設業者は、20年後も住宅購入者のローン負担は年収の5倍であり、破綻を免れるため信用を維持できます。

 住生活基本法の背景となるMBS(証券化)も今のやり方では破綻し、私の試算では20年後から毎年15〜20兆円を、金融支援機構に対し財政支援しなければならなくなります(その根拠を証明します)。

 皆さん、なぜ住宅建設計画法が2006年に廃止になったかご存知ですか。公団・公庫はバブル崩壊後のゼロ金利で従前の期待貸金利益を失ったため、大きな損失が発生したとして、財政支援を受けてきました。しかし、これは日本中の民間企業も同じ経済環境下にあり、その中で生き残った企業が、現在活動しています。金融機関を救済するために、多大な国の金が投入されました。公団、公庫は、ローン返済不能事故による欠損と期待金利を失う繰上げ償還損失全体で、総額約20兆円程度の財政支援を受けてきました。

 小泉内閣は、このような組織は国家の命取りになるということで、廃止を決めたのです。それでいて、国民は世界の先進国の中で例外的に、住宅を所有することで資産を失い、その住宅取得のための重い住宅ローンによって貧しい生活を余儀なくされてきたのです。

 この間違った住宅建設計画法による40年の住宅政策を、「居住水準の向上」という政策目標を実現したと肯定的に評価したうえで、今後は「官から民へ」と民間主導で住宅政策を進めていくと説明されています。このような途は破綻への途です。過去の政策総括こそ、これからの政策には不可欠です。

 民間中心の住宅政策で大きな政策成果をあげている国が米国です。住生活基本法時代では、政府の財政力が縮小して、民間住宅産業の力によって国民の住宅をより良くしようとする経済環境下に日本人が立たされることは事実です。しかし、そこでこれまでの日本の住宅政策の延長線上の政策をすれば、国民も住宅産業も破綻することは必至です。一方、米国のように民間の住宅産業間にルールを設け、そのルールに従って住宅産業がそれぞれの能力を発揮することができれば、その未来に米国の住宅産業と同様の繁栄した社会を描くことができます。

 今回の「住生活基本法時代」のセミナーでは、現在の住宅政策が置かれている日本の社会経済環境を正確に描き出し、これまで米国やヨーロッパが民間中心に進めて成功したやり方を、これからの日本に置き換えて実践するとどのようになるか、どのようなことができるかを、明らかにすることを、セミナーの中心課題とします(対応策について考える)。

 そして、これまでのやり方を踏襲していくと、それは一時的にうまくいくように見えても、やがて破綻する途であることを論理的に明らかにしようと思います。日本の住宅は米国の住宅の2倍も高いにも拘らず、住宅ローンの償還期間を長くしたり、返済プログラムをいじくったり、住宅ローン減税などを使って、目先の返済額を引き下げてきました。デフレ時代のローンの長期化ほどこわいものはありません。

 米国はローンをいじくらず、消費者の購買力で購入できる住宅を造れるよう、CM(コンストラクションマネジメント)に取り組み、ムリ、ムダ、ムラを排除してきました。日本のトヨタやキヤノンがOMに取り組んで、良い品質を安い価格で計画どおり生産し供給していることを、米国の住宅産業もやっているのです。

 私はこのままでは日本の住宅産業はダメになり、消費者に貧しい住宅しか供給されなくなると感じ、住宅産業界が自力でそれを改善しなければならないところにきていると思っております。そのためには、「住生活基本法時代」について、正しい理解を共有することがなければなりません。

 日本社会で前人未到の時代に足を踏み入れようとしている現在、既に欧米が長く経験してきた民間主導の住宅政策について学び、現在の日本で住宅建設業者が生き残るために、どのような取り組みをしなければならないかを考えるセミナーにします。私の45年の住宅政策、住宅産業界の調査研究の総括として行いますので、是非ご出席下さい。