第218回(2007年6月25日)

 みなさん、こんにちは。

 先週、国土交通省住宅局住宅政策課長から、ハウジングアンドコミュニティ財団でHICPMが中心的にまとめた研究報告の説明を依頼され、半日かけて説明を行ってきました。

 政策課長は大変な勉強家で、以前、「住宅基本法」から「住生活基本法」に法律名が変更になったときも、私の申し出で意見交換の場を作ってもらい、半日間の勉強会をされていました。

 今回説明した研究報告は、過去7年間の研究成果の総括として、HICPMの書籍『住宅による資産増殖手法』(税込3,675円)として販売しています。その内容をよりわかるようにということで、添付メールのとおり、6月29日にHICPMでセミナーを開催します。内容は、住生活基本法時代に住宅産業界が最も重視すべきことが、資産価値の向上できる住宅開発をすることで、そのために現在、各住宅産業において具体的に取り組めることを明らかにしたものです。多くの住宅関係者、金融関係者に聞いてもらいたいと思っています。

 6月22日には、「住生活基本法時代」のセミナーをHICPMで開催しました。住団連の方にも参加して頂いた他、住宅関係のジャーナリズムの方も取材に来てくれました。HICPMの会員の方も熱心に質疑に加わって頂き、参加された方からは、積極的な評価の感想も寄せられています。そこで、もっと多くの方にも「住生活基本法」の本質について考えてもらえるといいなあと考え、もう一度、「住生活基本法時代」のセミナーを企画したいと思っています。後日またご案内しますので、その際には、前回参加できなかった方にもご参加頂いて、多いに意見交換が交わせたらと思っています。

 実は、住宅政策課長との話も、その中の半分くらいは、住生活基本法時代について、国民を本当に住宅で守るためには何をしなければならないか、ということが議論の中心になりました。彼は、民間中心になって国民に被害を及ぼさないようにするためには、規制強化は避けられないという考えを、再三にわたり提起していました。私の考えは、不正によって金儲けをする現在のゆがんだ住宅産業の体質を改め、国民のためを考えて仕事をすれば、それが企業利益に反映するような環境に変えなければいけないということを強調しました。

 彼は、私に対して、「それをやるためには何をしないといけないのか」と尋ねました。私は、「日本の住宅産業界は、数の上では買い手市場になっているが、実態はストック自体が貧しいために売り手市場になっていて、しかも、売り手が口先だけで国民をだますことで商売できるような環境にしていることに問題がある」ということを説明しました。その1つの例が、性能表示したものに経済的な価値があるわけではないのに、性能を理由に高い付け値をするようなことを放置していることにあると、例示をしました。

 次に、住宅産業が発展するためには、消費者が、住宅を購入後、その生活を通して満足することこそ、住宅産業発展の前提にされなければならないことを明らかにしました。そのため、消費者のニーズに応えた内容を備えた住宅を、原価公開によって等価交換を確実に実現することによって、消費者の満足を勝ち得ることができることを説明したわけです。住宅産業は消費者の満足を得られるようにすることで信用を高め、口コミで仕事を拡大できるというアメリカの住宅産業を見習うことが必要であると説明しました。

 住宅産業界自体が、自らの供給している住宅の消費者が誰であるかも明らかにしないで、貧しいストック住宅より優れていることを謳い文句に、性能表示で高い性能ならば、経済的に価値の低い住宅でも、正当に高い値段をつけられるといって、事実上は、詐欺商売をやってきたこれまでの住宅販売を、もう一度正確に総括しないといけないと思います。販売した住宅が、その価格相当の価値があると自負できるならば、販売業者は販売価格で買い戻せなければいけないということを、住宅産業全体のコンセンサスにしないといけないのです。

 等価交換をしてない住宅は、基本的に瑕疵のある住宅です。瑕疵とは、契約の瑕疵を法律では言っているのです。それらの住宅は例外なく瑕疵保証をしなければならないという契約の完全履行を、国家が担保することが必要です。現在の瑕疵保証保険のように、消費者に保険負担を転嫁できることは、瑕疵保証の民法の規定に照らして違反です。瑕疵保証制度を強化することは、それ自体として間違っていません。しかし、現在の制度は、瑕疵をいかに上手にだましきるか、逃げ切るかにあって、瑕疵自体を作らないで済む住宅建設という根治療法には向いていません。

 結局、国民の安全を守るという口実で、政府は制度上の安全検査の名のもとに多くの関所を作り、役人OBを関守に雇用し、その人件費を国民に負担させることになっているのです。役人OBは、業者の不正に目をつぶることで多大の儲けを不正業者に与え、その儲けを外郭団体の賛助会費として供出させ、その外郭団体に天下りさせる役人OBの給与を負担させるという、これまでのやり方だけが拡大されていくのではないかという問題を提起しておきました。私の意見は想像によるものではなく、行政の実際を知った上での意見ですから、誰も否定することはできません。

 私が、住生活基本法を皆さんに知ってもらいたいということは、ある意味で、法律とは諸刃の剣で、それを悪く使うか、それとも正しく使うかで、効果は全く反対になることを知ってもらいたいからです。住生活基本法を正しく知り、その弱点は何かを知り、その活用できるところは何かを知らなければ、この法律を国民のためによく使うことはできません。現在の住生活基本法は、住宅建設計画法が機能停止になり、廃止になってしまえば、つまりその後、住宅政策をやるという法律がなくなれば、住宅行政関係職員の存在の基盤が奪われるということになります。住生活基本法は、兎も角、役人とそのOBに生活を守る基盤として作られた法律という意味が一番大きかったと言えます。

 実は、日本住宅公団の設立にしても、科学技術庁の成立の背景にも、役人の生活基盤という問題がその支えになっていたことを忘れるわけにはいきません。役人に憲法で決められた仕事をさせるために、仕事の場を広げることは一向に問題ありません。それが本末転倒して、役人が生活するために職場を拡大するということは許されません。

 官僚が自己増殖することによる弊害をわかりやすい形で示したのが、ソ連のゴルバチョフ時代でした。共産党自体が官僚制を抑えられなくなって、その解決に国民の力を利用しようとして、情報公開(グラスノーチス)をやったところ、ソ連の国家体制自体が崩壊してしまったのです。

 社会保険庁、郵政公社、介護保険による金儲け、偽装牛肉、偽装マンション、どこを突ついても、全て詐欺商売のオンパレードです。住宅産業は、まさにその中で、これまで国民に過大な住宅費負担を押し付け、国民の財産の侵害をやって来た産業であるという認識がなくてはならないと思います。その厳しい反省の上に、住生活基本法時代には民間住宅産業自体が自らの担うべき社会的な責任や使命をしっかり理解しないと、本当に国民に不幸を与える産業という、これまでの悪い体質を拡大再生産することが危惧されます。

 住生活基本法の時代は、もはや責任を政府に転嫁できる時代ではなく、民間住宅産業自体が自立して、自らの取り組みに責任を持たなければならない時代なのです。その産業に需要者としてお金を支払ってくれる消費者を豊かにすることなく、住宅産業自体が存続できないことを肝に銘じておくべきです。