第219回(2007年7月2日)

 みなさん、こんにちは。

 梅雨になってムシムシしています。先週は、行政OBとして国土交通省建築指導課に出かけ、おせっかいと言われるかもしれませんが、見るに見かねて、建築基準法の取り扱いについて救いの手を差し延べてきました。

 今回の法律改正は、確認申請の添付書類を驚くほど詳細に規定し、確認段階の水際で全ての問題を審査確認することで、違反建築を防止しようという対策でした。「安全の強化」ということが、「確認事務の複雑化と強化」にすり替えられて、その実体は、確認検査機関関係の仕事を増やし、そこでの役人OBの仕事を増やそうというものです。

 しかし、建築基準法では、建築主に対して確認済み証どおりに建築物を造る権利を認めているわけではありませんし、確認済み証どおり造らなければならないと規定しているわけでもありません。

 確認済み証は、単に、「建築計画が決まった段階で、その計画が建築基準関係規定に適合しているかどうか、確認の審査を受けよ」、と規定しているだけです。

 一方、確認済み証は、単に確認申請の出された申請書に関して、それが建築基準関係規定に適合していることを確かめた≪確認≫といっているだけです。つまり、まだ計画されていないことについては、確認審査で審査もしませんし、できません。

 そのため、確認済み証が出されても、確認申請書に書かれていないことは何も審査されているわけではありませんから、実際に建築する上で、確認済み証は法律上も建築できる内容全体が決まっていないものとして、工事してよい設計図書であることを認めたものではないのです。そのため、法律では確認済み証のとおり建築せよとは、規定できないのです。建築基準法では、建築工事は建築基準法関連法に適合するように建てなければならないと規定されているのです。

 建築基準法の立法当時の手続きは、確認申請書は申請段階で決まっていることについて申請を出し、建築主事はその内容を法律に照らして確認し、確認済証を交付する。その際、建築主に対し、工事請負契約書を締結し、実際に建築する工事内容が確定した段階には、その添付設計図書を建築主事に見せて下さい。それが、建築基準法第7条で最初にやることです、という考えのもとに作られているのです。

 建築基準法の目的は、建築基準関係規定に適合した建築を建築することです。工事請負契約書に添付された設計図書によって、実際に建設業者の工事する建築内容が決定するのですから、第7条の検査は、工事図面と照合することでしかできません。

 元請業者も下請業者も、請負契約書に添付されている設計図書を見なければ工事をすることはできません。

 建築主事が、建築工事が建築基準関係規定に適合しているかどうかを検査するとき、建設現場に出掛けていって、工事中の建築物を見ても、検査はできません。しかし、建築現場のことや建築の安全について、建築主事や建築確認検査機関の検査員が工事現場に出掛ければ、それで検査ができたということは、絶対にあり得ません。

 コンクリートがマメ板であるとか、鉄筋の継ぎ手長さがまったく不足しているとか、とんでもない手抜き工事は、現場に出掛けてわかるかもしれません。使用している鉄筋の径や、鉄筋のアンカーの長さなど、図面と照合しなければ何も検査はできません。工事業者は契約図面がなければ工事できないように、検査にあたる建築主事は、まず工事図面を建築基準関係法に照らして適合していることを確認してから、その図面と工事を照合検査することによってしか、正しい検査はできません。

 そのため、建築基準法では、第7条の検査の第一にすることとして請負契約書添付設計図書の建築基準関係法との照合を求めていました。そして、契約図書の検査をした後で、この建築については、「次に示す工事に入る前に建築主事の検査を受けなさい」といって、検査に入る時点を建築主に伝えます。そして、もし建築主事の検査を受けずに先に進んでも、最終の工事検査済み証は交付できませんと伝えることになっていました。

 建築基準法は、アメリカのUBC(ユニフォームビルディングコード)を参考にして作られました。そして、建築指導課、UBCの制定団体であるICBOのメンバーになりましたが、これは、日本のアメリカ軍基地の建築物は、UBCの適用を受けていたこともありました。アメリカでは建築許可ですが、そこでの建築物の検査は、建築基準法で既定しているものと同じ内容が実施されています。

 今回の建築基準法の改正で、一旦確認を受けてから、その内容が変更した場合には、もう一度確認申請を出すようにという法律違反の指導が行われようとしています。このメールの冒頭に書いたように、確認済み証どおり建築を造らなければいけない、と法律では規定しておらず、確認済み証は、単に計画が建築基準関係法に適合していることの確認に過ぎないので、確認済み証を受けた内容を変更せよという考え自体、建築基準法の立法の構成にはない法律違反の行政といわざるをえません。

 やるべきことは、「検査段階≪第7条≫で、まず請負契約書について、その契約図書が建築基準関係規定に適合しているかを検査すること」に尽きるのです。

 それにもかかわらず、中間検査の回数を増やすといって、実際に検査自体を技術的にできないような、全く無意味な、ただ現場に出かけるだけの「やったふりの検査」で、役に立たない写真だけを撮り、もっともらしい検査費用だけをかすめ取ろうとするやり方は、余りにも“せこい”、というよりも“犯罪性のある偽装検査”というほかありません。

 私は長年建築行政に携わり、一時は、建築基準法行政を担ってほしいといわれて、建築指導課の中で係長から課長補佐に昇格され、建築基準法の立法当時のいきさつや、多くの行政事例などを、建築基準法制定に関係された行政の先輩たちに教育されました。今になってその頃の事を思い出して、もう一度建築基準法を読み返し、今の間違った建築基準法の運用を放置していては建築行政がだめになると考えて、建築指導課の法規担当課長補佐に、説明に出かけたのでした。

 本当のことを言って、今の建築指導課の建築行政関係者の中で建築基準法をまともに扱える人はいません。それは、地方の建築関係者においても、民間の建築確認検査機関においても同じことです。扱う能力のない人に刃物を扱わせれば、どのようになるかを考えてみて下さい。すでに官界の改正に、はっきりとその症状は出ているのです。

 建築基準法は、それを扱う行政関係者が安心して、自信を持って扱えるようなものに簡素化しないと、正しい施行は望めないと思っています。建築基準法を簡素化して、本当に守らないといけない基本的な事だけを法律に定め、後は、民間団体によるガイドラインとしたらよいと思っています。そのような提案もしてみましたが、多分無視されることでしょう。