第220回(2007年7月9日) みなさん、こんにちは。 7月6日、関西でグロ−バル研修ツアーによるワンデイバスツアーが実施されました。このツアーの狙いは、定期借地権事業による町づくりが、これからの住生活基本法時代の取り組みとして、大きな役割を果たすようになることを学んでもらうことにありました。 UR(都市再生機構)がゴルフ場跡地を使って、英国のガーデンシティの経験を生かしたとする舞多聞と、シティサイエンス(株)のビレッジガルテン明石大久保フェスタという、2つの定期借地権事業を中心に見学しました。それと合わせて、資産価値の高まる住宅地を中小規模の建設会社で如何にして実現することができるかという事例として、ハイランド≪神戸ガーデンハウス≫によるクラフツマン様式の町づくり、20年前につくられた神戸住宅供給公社によるSVビレッジを見学しました。 定期借地権制度は、日本では大変歪んで一般化されていて、このままでは大変困った事態になる危険性があります。HICPMとしては、日本においてもムカサガーデンで大熊さんが実現されたように、現行の制度を使っても、英国のリースホールドによる住宅地に迫る事業をすることができますので、現行の日本の定期借地権制度の靴に国民の住宅地開発を合わせるのではなく、国民の住生活要求により適切に対応できる英国のリースホールドによる住宅づくりを日本の定期借地権制度の中で実現することが大切だと思います。 以下に、定期借地権で取り組む必要がある主な理由を列挙してみます。 (1)国民の住宅ローンを年収の2.5倍以下に抑えるために、住宅取得費を最少にする上で最も即効性がある (2)住宅に投入できる費用を全て建物建設費に向けられることで、消費者としても費用対効率を最大にできる (3)地主が複数の住宅を一元的に経営管理できるので、町並み管理ができる (4)地主にとって、マイナス資産である不動産をプラスの資産に転換することができる (5)地主にとってその不動産の価値を高めようとする基本的要求と住宅所有者の利益が共通する (1)は、FTA(自由貿易協定時代)になって、日本など先進国の賃金水準は、発展途上国と同じ土俵で競争することになります。特に、昔あった発展途上国は労働集約的産業で、先進国は資本集約的産業という区別がなくなり、IT産業など先進国と発展途上国とが同じ土俵で競争することになり、日本の労働賃金自体は長期的に見て、発展途上国と平準化する傾向にあります。35年の住宅ローンは、元利金等で償還しているとすれば、35年間返済額は一定です。現在、中国の都市勤労者の賃金平均は日本の20分の1で、20年後に4倍にまで拡大しても、日本の5分の1です。日本の賃金はそのレベルにまでは下がらないとしても、現在の半分程度になっても、中国の2.5倍の水準です。この時の日本の住宅ローン負担が、もし現在のように年収の5倍のローンだとすれば実質10倍になり、ローン返済不能≪デフォルト≫を起こす危険性は高まります。しかし、年収の2.5倍の住宅ローンであれば実質5倍で、何とか返済できます。 (2)大都市のように地価が高いところは言うまでもないのですが、地価の安い地方都市でも、国民の所得自体が住宅価格に対して低いため、もし土地代に投資しなければならない費用を住宅に投入できるならば、住宅購入者により良い住宅環境を享受させることができます。定期借地の場合の地代総額と、土地を取得したときのローン返済額を比較して、総額としてどちらが特かという議論をする人が沢山います。今問題なのは、当面住宅建設費にどれだけ投入できるです。地代は自家用車の管理費と同じ程度の重さです。 (3)「土地の権利はその上下に及ぶ」と民法に規定してありますので、土地を所有してしまうと、所有者は勘違いして、土地の上にある住宅地の上空空間の利用についても、排他独占的な利用ができると主張して、土地利用は環境に従わなくてもよいという誤まった行動に走る人が沢山います。しかし、地主が土地を所有して借地にしておくと、借地の条件としてその上空空間の利用について、社会的なルールにあった利用を要請しても、抵抗なく受け容れられると考えられます。事実英国では、リースホールドの長い歴史の中で、都市空間の社会的利用という考え方が、地主にとって最良の資産作りとして行われたことを学ぶことになったと思います。 (4)土地も住宅不動産も、不動産という土地と同じ経済的な性質にされてしまい、土地に建つ住宅は商品ではなくなってしまっているのです。住宅不動産を保有している限り、そのための税金を含む管理料が必要とされるマイナスの資産なのです。そのマイナスの資産をプラスの資産に変える方法は、唯一、不動産からの利益を不動産の管理料以上に高めることをおいてありません。不動産が生み出す利益は、不動産の賃貸料以外にはありません。土地所有者の土地という不動産からの収入は地代しかないということを、地主に理解してもらうことが大切です。土地を売却すれば、それは地主でなくなることであり、土地売買は不動産業者やばくち打ちのすることで、地主のすることではないのです。 (5)地主は同じ土地を持っていても、その土地の提供できる効用(デザイン・機能・性能)が高まることで、より所得の高い階層が入居したいと考えて住み替えが行われるということになれば、従前そこで住宅を持っていた人はその住宅を売却することで大きな売却益を得て転出し、所得の高い人達が所得に見合った住宅費負担をしてそこに居住することで、所得の高い人達の生活要求を満足させるサービスも育っていって高級住宅地になり、地主はより高い地代を手にいれることになります。この考えが、エベネツァ・ハワードのガーデンシティの都市熟成を重視した経営理論なのです。 舞多聞は、英国のレッチワースの経験を生かしたというふれこみで、UR(都市再生機構)と神戸芸術工科大学の指導のもとにつくられた町です。町全体を向こう三軒両隣の6このグループごとに、それぞれ計画を進める纏まりにして、大学の教師たちの講義や指導のもとでの意見交換を通して、共同作業の中で社会性の高い計画を立てるというふれこみで、驚くほど多くの消費者を集めることに成功していました。そこで纏まった考えをもとに、建築主は住宅会社に持ち込んで、具体的な設計図書にまとめるというものでした。 百聞は一見に如かずということで皆さんに見てもらいましたが、有名な大学教授などが関係しているだけで、立派な計画であると思って見てしまわれると、それを修正するのに手間がかかりますので、あらかじめ、舞多聞を見る視点を与えておきました。 つまり、本当のレッチワースのガーデンシティで追求してきたものと、そこで舞多聞で実際に実現したものの違いを考えてもらおうと考えたわけです。今回のツアーでは、舞多聞を見学する目的に、英国とアメリカの複数の優れた住宅地のスライドを見てもらって、どのような考え、計画理論、住宅地経営のやり方で住宅地をつくり、経営してきたかということを説明したこともあって、参加者には舞多聞の本当の姿をよく見て頂けたと思います。 ハイランドとSVビレッジについては、しっかりしたデザインの建築をして、それが居住者に高い満足を与え、社会的に見られることに誇りの持てる住宅でありさえすれば、いつでも建設したときと同じような魅力を維持できる住宅としての姿を維持できることを学んでもらえたと思います。 特にハイランドの場合には、同じサステイナブルハウスの計画理論に立って、クラフツマンというデザインを使い、建築主ごとの特殊な生活要求、デザイン要求に応えて、それぞれに個性を持たせて「我が家」と感じることのできる帰属意識の持てる住宅と、「我が街」と感じることのできるストリートスケープを作っていることを感じてもらえたと思います。 明石大久保フェスタは、定期借地権というものを居住者の立場で活かそうとしていて、本当の英国の定期借地権(リースホールド)の経験を知っていれば、もっと凄い仕事にまですることができたのではないかと思われました。その努力は一見に値するものと評価できました。
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